マビックカーボンリム、ハーモニーハブでトラックホイール作製

ブログを通じてご連絡いただきました。リムとハブの持ち込みでのホイール依頼です。

詳しく伺いますとマビックのカーボンリムとハーモニーハブというトラック用のハブを使ってほしいとご依頼いただきました。スポークはCX-RAY、ニップルはSqorxProとご指定いただきました。スポークとニップルはこちらでご用意いたします。持ち込みの場合この方法が一番出来上がりが安心です。スポーク長まで計算されて持ち込みいただいてもいいのですがERDの出し方でスポーク長が違うときがありますのでスポークは当方で用意するほうが問題なくいきます。

マビックカーボンリム 約400g
ハーモニーハブ ウクライナ製

マビックリムは国内価格では1本10万円近くします。ハブのハーモニーハブはウクライナ製のハブです。カーボンシエルで作られています。ともに初めてのリム、ハブですが組み方は一般的ですので問題ありません。穴ありリムなので組み立ては穴なしリムより早くできます。初めての高価なリムなので少し緊張しました。

前輪 ラジアル組
後輪2クロス イタリアンのご指定です

前輪はラジアル組、後輪は左右2クロス組です。後輪ハブが両切りハブなのでJIS組が多いのですがギアは片方しか使わないのでイタリアンで組むということになりました。

ワッシャーを使って組み立てます

リムにはワッシャーが付属しますのでワッシャーを使って組み立てます。カーボンリムではワッシャーを使うことは少ないのですがマビックがワッシャーを指定していますので使って組み立てました。

ホイール取り付け金具込みの重量です
前輪スポークテンショングラフ
ホイール取り付け金具込みの重量です
後輪スポークテンショングラフ

リムの指定テンションは説明書にかかれていませんでしたのでスポークテンションは約110kgfで仕上げました。均一に張れば自然とセンターは出ます。

フレームに取り付けた写真を撮らせていただきました。リムのマビックシールが黄色で差し色となっています。 シンプルな自転車は本当に美しいです。

カーボンチューブラーホイールのインプレお送りいただきました

アルミのチューブラーホイールをご注文いただきましてからカーボンチューブラーホイールもご注文いただきましたお客様よりカーボンホイールのインプレをお送りいただきました。ホイールはリムブレーキ用です。いつもロングライドで楽しまれています。

35mm高カーボンチューブラーホイール

おひとりの方が長い期間乗っていただいていますのでアルミとカーボンの違いもよくわかります。お値段的には倍の違いはあるのですがどちらのホイールにも良さがあり、場面場面で使い分けておられるようです。

以下お送りいただきましたインプレです。とても参考になります。

カーボンチューブラーホイールの感想を送らせていただきます
比較のホイールは以前製作していただいたアルミのチューブラーホイールになります
カーボンチューブラーホイールで1200キロ程走行しました
まずは平坦の巡行速度ですが2キロ程上がっています。まあ20キロが22キロになったくらいですが緩斜面では違いはよくわかりません
10%
を超える斜面ではかなりよく登るようになりなした凄く楽に感じます
長時間走行する自分にとって一番重要な振動吸収性能ですがとても良いです比較の多スポークのアルミチューブラーホイールよりも振動はありません 

こちらのホイールの方がロングライドに向いているのでは思うくらいです
ブレーキ(リム)性能ですが雨の日も走行しました 

アルミリムと違いはありません 

よくききます 
平坦主体のコースで10時間位走ると30分から1時間位早くなるようです
以上本当に感じたままを送らせていただきます
またなにかありましたら宜しくお願い致します

今回もいいお話をいただけてありがたいです。インプレを読ませていただきますとチューブラーホイールはやはり素晴らしいホイールといえます。ホイール沼に入り込むのは仕方ないところです。

今回のリムブレーキ面は強化加工をしています。1本約4000円オプションで追加料金をいただきましたがブレーキの効きは格段に上がっているようです。カーボンのリムブレーキではブレーキに不安があるとよく伺う話ですがオプションを追加されることでディスクに替えなくても良いようです。一つのアイデアとして良いと思います。強化リムの効果を知ってからはカーボンホイールをご注文の際必ずご案内するようにしています。

お客様からはここがいい、この点をよくしたらどうですかとアドバイスをよくいただきます。出来るだけ情報を共有しましてリーズナブルに自転車ライフを楽しんでいただけるようにしたいと考えています。

カーボンホイールをピスト用に組み替えました

お客様よりご連絡がありホイールの組み換えのご注文をいただきました。これで4セット目になります。

お預かりホイールは46mm高のカーボンホイールです。組み替えに使うハブも同梱いただきました。

SONY DSC

ホイールを分解して新しいトラック用のDTハブを使って組み替えます。

組み方もご指定されています。

仕様は次の通りです。

リム 46mm高カーボンリム 前輪20H後輪24H

ハブ DT 370track 20・24H

スポーク ピラーwing21 シルバー

ニップル DT  SquorxPro ブラス シルバー

前輪は2クロスでイタリアン、後輪も2クロスでJIS組みです。

ホイールをばらして再度組み立てる作業を行います。

ハブを取り出すとニップルはリムの中に残っています。穴なしリムの為バルブ穴が1個あるだけなのでひたすら振り続けてニップルを取り出します。沢山ニップルがあると意外と楽に出てくるのですが個数が少なくなると時間が掛かります。ガラガラと振り続けてすべて出し切るまで耐えるだけです。運が良ければ数分で終わりますが出てこないときは5分くらい振り続けても出ないときがあります。気分転換でコーヒータイムにして休憩するとポロっと出てくることが間々あります。面白いものです。

ニップルすべて取り出したリムを使って新しく組み立てします。

SONY DSC
SONY DSC

ハブはDTの370トラック用のハブで作ります。DTのハブには前輪用に20Hハブがあります。トラック用で20Hがあるのは知りませんでした。通常の20/24Hホイールリムが使えるのが今回のポイントになります。お客様の情報力に感心しています。

後輪ハブは両切りの通常のハブです。JIS組みで組み上げます。

wing21 20本 102.5g
CX-RAY 20本 97g

スポークではwing21、CX-RAYのどちらかと迷われました。前輪の総グラム数ではスポーク1本分の違いです。ほんの少しですがwing21のほうが重いのでわずかに剛性も上がります。この差がお好みの乗り味にどう影響するかも今回のスポーク選択の結果に興味あります。

私は鈍感なので分からない分野ですが分かる人はわかるのでスポーク選択は非常に奥が深いです。

今回組み上げの段階で一つ不思議なことが起こりました。

前輪ですが左右のテンション差はスポーク長が同じなので通常に組み上げますとスポークテンションが左右ほぼ揃ったら理論上センターはしっかり出ます。

組み上げて馴染みだしも終わって左右のテンション差も同じに仕上げたのでセンターが出ているか調べました。すると約0.5mmもずれているのです。理由が分からないのでしばらく戸惑いました。

落ち着いて考えてみますとわかりました。ストレスリリーブ(なじみだし)が足りなかったのです。もう一度しっかりと馴染みだしを行いました。

テンションを測りますと左右テンション差が出ていました。もう一度スポークテンションを揃えます。果たしてテンションを測りなおしますと左右一致しています。

ストレスリリーブが足りないとセンターは出ないということがよくわかります。一つ賢くなりました。細かいことですがホイール作りはこのような積み重ねだと思います。

ホイールは完成しました。左右のスポーク長が同じなので100~110kgfで仕上げています。

通常のギアが沢山ある後輪なら左右のテンション差が大きいので緩いほうの左スポークテンションを高めるために右スポークテンションを130kgf前後の高い数値で仕上げます。今回のホイールでは左右が同じなので100~110kgfで十分です。カーボンリムの為、剛性が高く歪は少ないので130kgfまで上げる必要はありません。

テンション値が低過ぎる場合リムが体重で歪み駆動ロスが発生します。しかし高過ぎるとリムを傷めるもとになります。スポークテンション値を決めるのも意外と難しいものです。私の場合リムメーカーの指定値範囲で仕上げるようにしています。直感的な勘でのホイール作りは難しいということでお勧めしません。

カーボンリムの場合150kgfと高い数値で仕上げても耐えるだけのリム強度はありますが割れやすいという欠点もありますので注意が必要です。高過ぎず緩すぎずの頃合いで仕上げることがポイントのようです。

前輪、後輪ともに2クロス組
後輪 931g 
後輪 左右2クロス JIS組
前輪 860g
左右2クロス イタリアン

出来上がりましたホイールは手組感ある美しいホイールです。

OnyxHub,Hed Belgium rimでグラベルホイールの作製

ブログを通じてご連絡いただきました。

HEDのアルミリム、アメリカのONYXハブを使ってホイールの作製依頼です。スポークはサピムのCX-RAYを使います。お客様よりハブとリムはお持ち込みです。スポークはこちらでご用意いたします。

スポークも持ち込みしたい方もおられます。スポーク長の計算をご自分でされて、組むだけを手組ホイールファンでという方も今までおられました。この場合スポークが短い方もおられ、これでは組めないとお断りした方もおられます。持ち込みの場合はリムとハブだけのほうがお互いロスが少ないと思います。

さて、今回お送りいただきましたリムは初めてのリムでした。ハブは取り扱いの経験があります。HEDのホームページからわかりますがグラベル用のワイドリムでリム外径30mm内径25mmと幅広です。700cと650cがありますがお送りいただきましたリムは700cの方です。

ワイドリムなのに軽量です
幅30mmのワイドリム
ジョイント部分です 溶接接続できれいな仕上がりです

ワイドリムなのに重量は意外と軽く460g前後です。リムのジョイント部分は溶接です。とても仕上げがきれいで縦ブレが取りやすいリムで、つまり真円に近づけるのが容易です。値段だけはあると感じました。

アルミリムなのでカーボンリムのように割れに対する心配はいりません。グラベルに適していると思います。剛性や破損に関してアルミリム、カーボンリムどちらも良いところ弱いところがあるのでどちらを優先するかです。どんなものでもプラスマイナスはあります。

前輪ハブ
特許の特殊構造 後輪ハブ

ハブはONYXのVesperハブです。ホームページからの情報ですがとても高価なハブです。フリーを回しますと驚きます。全く音がしません。特殊な構造をしているのが分かります。分解も容易でグリスアップはやりやすいようです。

ハブとリムだけで立派な自転車が買える部品を心配することなくお送りいただいたことはありがたいなと思います。

ご用意するスポークはCX-RAY、ニップルはブラスを使って組み上げました。

製作において縦ブレ取りではリムがほぼ真円になるまでにスポークを調整します。出来るだけ均一に張ることが肝心です。スポークは強弱強弱という形でバランスが取れるときれいに振れ取りができます。つまりスポーク張力が均一にならなくても振れ取りはできます。しかし振れを取り終わるだけでは出来上がりはまだ8合目で、もうひと頑張り必要です。テンションを揃えることで長く使われても駆動ロスが出にくいホイールとなります。

各スポークに伝わる力はどのスポークにも同じだけ力が伝わります。スポークに強弱があれば伝わる力は減じます。すべてのスポークが揃っていれば当然ロスは少なくなります。これがホイールの良さを決める大きなポイントと考えています。

また、日をあけてスポークテンションを調整することも大切です。一番楽な方法は一度乗ってみてスポークの張りを再調整するのが一番いい方法ですが遠方の方にはこれが出来ません。このため時間をあけて何度も馴染みだしを行っています。

カッコイイホイールです
前輪762g
スポークテンションばらつき度5%以内に調整
後輪1012g
スポークテンションばらつき度5%以内に調整

出来上がりました。非常に存在感があります。色の組み合わせが印象的です。とてもカッコイイので使ってみたいホイールです。グラベルホイール、期待できます。

チューブラーホイールのインプレをいただきました

チューブラーホイールのインプレをいただきました。 ご自分でもホイールを組めるベテランライダーさんからのご注文 です。

新規にご注文いただきましたホイールは今まで使われていたホイールと同じ仕様で、使われたいたホイールから取り出したハブを再利用するというご注文です。

つまり今まで乗られていたホイールと同じホイールのご注文だったわけです。お客様はビルダーが作ったホイールならどんな感じに変わるのだろうかと興味津々で新しいホイールが届くのを待っておられました。

シマノハブで組んだマビック チューブラーホイール
マビック リフレックス 32h
シマノ FH-5800 32h
シマノHB-6600 32h

ご自分で作られたホイールをばらして取り出したハブと新しいリムをお送りいただきました。とてもよく整備されているハブです。シマノハブの良いところは新品の時が一番悪い状態で整備次第でどんどんよく回るハブに育っていく点です。重いのですがよく回ります。

スポークは前輪を1.5mmのバテッドスポーク、後輪の左を同じ1.5mmのスポークで、右を1.8mmのスポークで作るというご注文でしたのでスポークメーカーはこちらで提案しました。

使うスポークはDTのレボリューションとコンペティションです。このスポークで提案しました。ホイールの仕様はすでにブログ記事にしていますのでご参照願います。

以下お客様よりいただきましたインプレです。記事にしてよいと了解いただいています。

自慢げになりますがこのように書いていただきました。

早速ですが、感想です。

昨日、4時間位乗車しました。結論は、身体に優しいホイールです。

道路のデコボコや段差を越える時の衝撃が、まろやかになりました。

4時間乗っても、疲れ難いです。乗り始めはタイヤの空気圧が低くなったと

勘違いする程でした。加速のキレが低下した感覚です。

しばらく走るうちに乗り心地が良く感じられました。ペダルを回すのが楽しくて、

ずっと乗っていたい感じです。はっきり言って、クセになります。

ペダルを止めても、スピードの落ち方が少ないように思います。下りのライン取りも、

それ程気を使わずに狙ったラインをトレース出来ます。

自分が組んだホイールとは、全く違います。同じハブほぼ同じリムで、

違うのはスポークと組み手です。素晴らしいホイールを、ありがとうございました。

今やアルミチューブラーホイールは絶滅危惧種ですのでご自分で作るかオーダーしなければ手に入りません。外周部を軽く仕上げるにはチューブラーを選択するのは一押しのアイデアです。

今回このようなインプレをいただきましてビルダーとしてとてもうれしくありがたいと思います。スポークテンションを揃えることに少しは技術の差があったようです。

お客様がご自分で組まれたホイールとは明らかに違うと言っていただきました。とても素敵な勲章をいただいたようなものです。これからも注文してよかったといっていただけるように精進したいと思っています。

RR411リム、DURAハブで組むアルミホイール

同じお客様よりこれで6セット目のホイールをご注文いただきました。今までの出来上がりを気に入っていただいています。今回はDuraハブの新品を手に入れられたので新しくホイールを組むというご注文です。

Duraハブ 366g

DURA9000シリーズのハブですがディスコンとなっていますのでなかなか新品が手に入りません。今や貴重品です。うまく手に入れられて、このハブを使ってほしいとお送りいただきました。

リムは最近組み替えを終えたホイールのお預かりリムです。次のホイールを決めるまで預かって下さいということで保管していました。

今まで5セットも組ませていただきましたのでお客様はご自分のスタイルを分かっておられます。前輪には細いスポークのサピムLaser(2.0/1.5/2.0mm)で組み、後輪はサピムRace(2.0/1.8/2.0mm)を使っています。

前輪を細いスポークで乗り味を柔らかくして後輪は少しスポークを太くして剛性を上げています。ロングライドに適したホイールです。

スポークの太さを変えることで乗り味や剛性を調整しています。手組ホイールならではの方法です。自由にリム、ハブ、スポークを組み合わせることで乗り手の好みに合わせることが出来ます。

自転車は使う部品をいろいろ変えてグレードアップできます。中でもホイールは一番影響力があります。自転車には早さが必要ですが乗り心地も大切です。ホイールはリム、ハブ、スポーク、ニップルの4つの部品の組み合わせでいろいろな組み合わせが出来上がります。ホイールは一番面白くて奥が深いと思っています。

ご使用のホイールを今まで何回も組み替えしましたのでお客様はスポークを前輪はLaser、後輪にはRaceを指定されました。ご自分の乗り方と相性がいいのは前輪Laser後輪Raceという組み合わせです。スポークの組み方は前後ともに王道の左右3クロス組です。

DT RR411リム
SquorxProニップル ニップルワッシャー

リムはDTのアルミリムRR411を使います。21㎜高、21.5mm幅、重量435gです。オフセットリムも作られています。後輪にはオフセットリムを使います。これで左右のスポークテンション差を少なくできます。このリムを購入しますとアルミのSquorxProニップルとニップルワッシャーが付属します。しかし今回はブラスSquorxProを用意して組みます。

DTはニップルワッシャーを使うように指定しています。ワッシャーはリム穴部分の強化に適しています。ワッシャーを使うのは理にかなっていますがいつも使うわけではありません。必ず要るとは言えないのがニップルワッシャーです。使っていない完組ホイールも多いです。このワッシャーには研究の余地があると考えています。

ご注文いただく前のホイールは2mm径のDTチャンピオンで組まれたホイールに長く乗っておられました。2mm径のスポークは剛性がありすぎだったようです。長年チャンピオンで組まれたホイールに乗っておられたので細いスポークに組み替えたときの印象はガラッと違っていました。お好みに合ったのだと思います。これ以来、ホイールの注文はこちらにいただくようになりました。

ホイールは使われているスポークで性能や乗り味が変わります。高級ホイールにはサピムのCX-RAYがよく使われています。CX-RAYは優秀なスポークですが CX-RAYを使っているからいいホイールであるということはありません。体重にあわせたスポーク数、スポークの太さの選択が大切と考えています。

前輪739g
振れは最小に スポークテンションを最大限揃える
後輪949g
振れは最小に スポークテンションを最大限揃える

完成しましたホイールは前輪739g後輪949g前後1688gと軽量です。しっかりスポークテンションを揃えました。振れは最小に、スポークテンションは最大限一致させます。ロングライドに適し、踏み込んだらしっかり反応するホイールが出来上がりました。お客様からのインプレが楽しみです。

マビックリムでチューブラーホイールの作製

今回もお持ち込みでホイールの作製依頼です。ハブとリムをお送りいただきました。

マビック リフレックス 387g

ハブはシマノハブを使います。前輪はアルテグラのHB-5800、後輪はFH-6600と旧タイプのディスコンハブです。無理やり新旧に分けていますがハブ性能はとても優秀です。シマノハブの良いところは定期的なメンテをすれば20年でも30年でも使えるところがいいです。

今回のハブは再利用ですが丁寧にメンテされていますので回転がとても滑らかです。上手に育てたハブといった感じです。メンテを欠かさなければいつまでも良好な性能を維持できるところがシマノハブの優れたところと思います。部品供給も長くあるのでこの点でも良いところと思います。

HB-5800 32H 140g
FH-6600 32H 373g

ハブの重量を測ってみました。前後で約500gと重いのですがホイール中心部の重さなので回転には影響しません。重いは丈夫ということがいえます。よく「軽さは正義」という人がいますが軽さだけが良い製品の基準ではないことがよくわります。

リムはマビックのリフレックスです。現行ではマビックオープンプロ・チューブラーとなっています。新品のリムをお送りいただきましたので長く保管されていたのでしょう。

今はチューブラーリムの選択肢は少ないのが現状です。アルミリムではクリンチャーホイールばかりなのでチューブラーホイールが手に入りません。手組するしかないのですがチューブラーの良さをもっと知っていただきたいものです。

リム重量はとても軽量です。リムにタイヤを貼り付けるのでクリンチャーホイールのようにビードが影響してのスポークテンションダウンはありません。ホイールの性能はそのまま反映します。これもチューブラーホイールの良いところです。

チューブラータイヤの選択肢も少なくなっていますがプロ選手はチューブラーホイールを使う人が多いです。それだけチューブラーホイールには安心感があるということだと思います。クリンチャーホイール全盛ですがきらっと光る長所の多いのがチューブラーホイールです。

前輪にはスポークは1.5mm径のDTレボリューションスポークを使っています。今回のように32本使う多スポークホイールには細いスポークを使えばスポークがショックアブソーバーの働きをしてくれますので乗り心地が優しくなります。疲れにくいホイールが出来ます。

後輪は右ドライブ側にDTコンペティション左にレボリューションの組み合わせです。右ドライブ側を太くして剛性を上げています。ホイールの剛性はスポークの総面積に比例しますので左右スポークの太さを変えてスポークの総面積を増やしています。

ニップルはSquorxProブラスを使っています。アルミニップルは強化されて丈夫ですがブラスと同じ強度ではありません。より安全なほうを選ぶということでブラスを使っています。

軽量で強度の高いレボリューションは利点の多いスポークです。このスポークを使うにあたりあまり知られていない注意点があります。

中央部が1.5㎜と細いので取り扱いが難しく、ねじれ易いスポークです。テンションを上げるにつれてスポークがねじれますので、このねじれを防ぎながらテンションを上げることが大切です。もう一点このスポークにはカットできる余裕がありません。スポーク長計算で失敗してもカットすればよいということはできません。しっかりと計算してスポーク長を出さないといけません。

タイヤを貼り付けるチューブラーホイールはテンションダウンがない
前輪722g 
前輪スポークテンショングラフ
前輪 レボリューション 左右3クロス組
後輪985g 外周部は軽量です
後輪スポークテンショングラフ
後輪左レボリューション右コンペティション 左右3クロス組

ホイール重量は前後で1707gですがホイールの外周部は非常に軽量です。スポークは細いスポークを使っていますので地面からの衝撃を吸収してくれます。つまり疲れにくいホイールです。今ではなかなか手に入らないチューブラーホイールですが部品を組み合わせて作り上げる手組ホイールなら大丈夫です。乗り心地の良い、乗って楽しいホイールが完成しました。

TNIワイドリム使用アルミホイールの作製

カーボンホイールをご注文いただきましたお客様より気兼ねなしに使えるロングライド用のアルミホイールをご注文いただきました。リピートオーダーはうれしいです。お納めしたホイールの良さを認めていただきましたからまたご注文いただけるということですのでビルダー冥利に尽きます。

今回のプランはお客様からのご指定です。とても詳しく研究されています。リム、ハブはお送りいただきました。スポークとニップルをこちらでご用意することになりました。

AL22W 22mm高24mm幅 452g
AL31W 31mm高24mm幅 500g
ティアグラハブ 前後517g

リムはTNIのワイドリムを使います。ハブはシマノティアグラハブ(黒)です。ハブは事前に調整されてとても軽快に回ります。前後ともに28hという組み合わせです。

前輪リム AL22W 28h 

  ハブ シマノHB-RS400 28h黒

  スポーク TB2015 2.0/1.5/2.0mm  2クロス組

  ニップル ブラス シルバー

後輪リム AL31W オフセットリム 28h

  ハブ シマノFH-RS400 28H黒

  スポーク 左TB2015 2.0/1.5/2.0mm シルバー  3クロス組

  スポーク 右TB2018 2.0/1.8/2.0mm シルバー  2クロス組

  ニップル ブラス シルバー

当初この組み合わせで承りましたがTB2018の指定寸法のスポーク在庫がなく、揃えるのに時間が掛かることをお知らせしますと快く代替品をお受けいただきました。

TB2015 2.2/1.5/2.0mm
WING 21

提案スポークはwing21で、重量はTB2015,TB2018の中間の重量です。わずかの重量差ですが剛性は高まります。ホイールが硬すぎる場合は細いスポークに替える。剛性が足りなければ太いスポークに替える。このようにスポークを変えることで大きな投資をしなくても性能の改善はできます。入門用として最初についてくる鉄下駄といわれているホイールも見違えるほどよくなります。お勧めいたします。

さて、リムの高さは前後で変えておられます。前輪は22mm高、後輪は31mm高です。前輪を低くすることで約50g軽量化を図れます。後輪は剛性を高めて駆動力を上げるという組み合わせは面白い方法です。いろんな組み合わせが出来る手組ホイールならではの方法ではないかと思います。

このリムはチューブレスレディーです。テープを巻いてバルブを用意すればチューブレスホイールとして使用できます。

TNIのこのリムは優秀です。剛性が高く価格的にもこなれています。後輪には穴が3mmオフセットしたものを使います。これで後輪左右のスポークテンション差を少なくできます。通常より約10%改善できます。加えて 一般にヨンロク組といわれている組み方をご指定されました。 左右の組み方を変えることで2%ほど高めることが出来ます。

スポークテンションに関してはご指定がないので当方の組み方で行っています。

前輪は約110kgf後輪ドライブ側約125kgfで仕上げています。テンションを揃えることを一番に優先して作り上げています。こうすることで振れの出にくいホイールに仕上がります。ホイールを組むことが出来るベテランライダーさんからの注文があるのもこれが理由です。振れ取りとテンション一致を同時に行うことは自慢げになりますが結構難しい作業です。

前輪スポークテンショングラフ 揃っています
後輪スポークテンショングラフ  揃っています

スポークテンションが揃っていることの利点はまず狂いが少ないことがあげられます。長く乗られても振れはホンのわずかです。勿論馴染みだしは何度も行うことが必要です。完組ホイールの馴染みだしはプレス方式です。この方法だけでは後から振れが出やすいです。プレスだけでなくスポークを握ることを丁寧に何度も行うことで狂いの出にくいホイールが出来上がります。ホイール作りの基本です。

今回のようにご自分でもホイール組ができる方のご注文は私も勉強になります。お客様には送料代が掛かりますがお好みのホイールが出来上がります。ご一緒にスポークの選択を行い組み方の相談を行います。お互いに知恵を出しあってホイールを作り上げていきます。また、スポーク計算の失敗で余分なスポークを購入する必要もありません。私のほうは工賃をいただいて勉強ができます。お互いウィンウィンです。

前輪771g
後輪1038g

出来上がりのホイールは前輪771g後輪1038gでした。前後高低差のあるリムで作り上げましたホイールはロングライド用として使用される予定です。軽いホイールだけが走るホイールではありません。インプレが楽しみです。

36mm高ディスクカーボン定番ホイールの作製

5月初めに当ブログにあるお客様よりオールラウンドホイール用としてディスクホイールを提案してほしいと連絡がありました。いつものようにお勧めの46mm高と36mm高のホイールをご案内いたしましたところその時お返事はいただきませんでした。まあこういうものは縁のものですのでよくあることです。

どういう経過なのかわかりませんが5月末に再度ご連絡いただきました。約1月考えられたようで最終的に36mm高のディスクホイールをご注文いただくことになりました。ありがたいことです。

昨今の部品事情の悪化や円安など自転車部品調達に関しての状況はそんなによくありません。注文してもなかなか入ってこないのが実情です。しかし今回不思議な縁でしてご注文いただきました3日前に予備で発注していましたカーボンリムが入荷していました。すぐに取り掛かることが出来ます。約一週間で納品ができます。

定番ホイールですので今まで何度も内容を書かせていただいています。おさらいしますと次のような部品の組み合わせです。

前輪700g
後輪809g
穴なしリムは利点が多い

リム 28mm幅36mm高カーボンリム 

   フックタイプ 前後ともに24h 穴なし ディスク用

ハブ TNI REVOハブ 前後ともに24h

スポーク ピラーwing21 黒 

ニップル DT SquorxPro ブラス黒

穴なしカーボンリムはチューブレスホイールとして最適です。穴があるとテープを巻いて運用しなくてはいけません。このリムはバルブ穴が1つだけです。手組ホイールファンの定番ホイールは穴なしリムを使います。

実際の運用ではテープを巻くリム、巻かないリムの違いは使ってみれば非常によくわかります。穴なしはとても便利で経済的です。テープ運用ですとパンクの時にはテープをはがして、またテープを巻かないといけません。このことは何度も書いていますのでまたか!になりますがユーザーに向き合ったリムといえます。

リムが円安で少し高くなりましたのでホイールの価格は若干円安の影響を受けています。しかしブランドホイールの価格と比べますと格安で価格は1/3の値段です。無名のホイールですが性能は安物ではありません。

カーボンリムは剛性が高いので真円に仕上げていくのはアルミリムよりも高精度に仕上ります。そしてスポークテンションを均等にして仕上げることが肝要です。

リムメーカーの指定ではスポークテンションは120~130kgfがいいということなのでこの案内に従って仕上げています。勿論校正したテンションメーターを使っています。タイヤインストール後のテンションダウンを考慮して強すぎず弱すぎずというところです。ハイテンションはリムを真円に保つのにはいいのですが引っ張りすぎるのもいけません。本来衝撃を和らげるショックアブソーバーの働きもするスポークがリムの割れるもとになるのです。何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しです。

スポークはピラーのwing21です。知名度はサピムのCX-RAYと比べて低いと思います。

しかし実力はなかなかのものを持っています。Jベントの部分が2.2mmと太いのがいいです。弱いといわれている部分を強化されています。中央部の比翼型の部分が空力をよくしています。風洞実験でも好成績ということです。詳しくはピラーのホームページでわかります。

ニップルはDTのSquorxProです。ニップル内部に滑り止めを注入してあります。ニップルは普段注目されませんがとても大切です。カーボンリムの場合アルミニップルではガルバニック腐食も考えられますので丈夫さを考慮してブラスのほうを選んでいます。とても高価なニップルですが使う価値はあります。

穴なしリムの作業は仮組までが大変です。時間が掛かりますので集中力が必要です。注意してニップルを取り出さなくてはなりません。ポロっとリム内に落さないようにするのが大変です。

スポークテンションを均等に張ることが大切です
振れ取りとスポークテンションの均一化は別のものです

仮組が終わると通常のホイールと作業は同じで振れ取りを行います。注意点はスポークテンションが均一でなくても振れ取りはできることです。スポークが強弱強弱とバランスが取れていますとテンションが均一でなくても振れ取りが出来ます。

ホイール作りの上手下手はこれで分かります。下手な人が作るときれいに振れ取りされていても一か月もすれば振れが出てきます。スポークテンションにバラつきがあるとこのようになります。ホイールはスポークテンションを均等に張って仕上げることが肝心です。勿論当ホイールのスポークテンションのバラつき度は非常に低いです。

仮組は一日でおわります。しかし仮組が終了してからが腕の見せ所です。組みあがってから何度もスポークテンションの調整を行います。お客様には早くお届けしたいのですが辛抱していただいています。時間をあけて出来上がったホイールを休ませながら調整するのがコツです。ストレスリリーブというのですがしっかりと何度も馴染みだしを行っています。こうすることで長く使われても真円を保っていることが出来ます。特別な手法ではありません。丁寧に組み上げているだけです。ご安心願います。

キンリンXR31T/RT32hリムに組み替え

今まで何度もご注文いただきましたお客様より手持ちホイールの組み替えをご依頼いただきました。

ホイールはDTリムRR411を使用したホイールです。RR411リムのホイールを他にも持っておられるお客様は1セットをキンリンのワイドリムに組み換えを希望されました。

RR411からキンリンのワイドリムXR31T/RTに変更です。リム重量は重くなりますが空力アップです。分解しましたRR411リムはしばらくお預かりしましてシマノ105ハブで再度組み上げる予定です。今はハブが手に入らないので少し先になります。部品不足はまだまだ続きそうです。

お預かりしたRR411

さて、ハブはDuraハブを使われていましたのでそのまま移行します。新しくリムとスポークを交換します。シマノハブは丈夫で長持ちです。高価なハブですがいろいろ組み替えを楽しめます。

組み換え後の前輪 829g スポークはLaser
均等にスポークを張っていいるので振れが出にくい
組み換え後の後輪 1008g スポークはRace
左を高いテンションで作れます(ブルー)オフセットリム使用

新しいホイールの内容は次の通りです。

リム XR31T/RT 前後とも32h 後輪は3mmオフセットリム

ハブ Duraハブ HB7900 FH7900 32h

スポーク 前輪 サピムLaser 2.0/1.5/2.0mm

     後輪 サピムRace 2.0/1.8/2.0mm

ニップル SquorxPro シルバー ブラス

31mm高24mm幅のキンリンXR31T/RTは約500gのリムです。軽くはありませんが剛性が高く空力が高いリムです。軽さを取るか剛性かとなりますと、どちらも大切ですが、あえて言いますと剛性です。こちらの方が重要と思っています。

スポークはお客様からのご指定で前輪はLaser、後輪はRaceと太さを変えています。細いスポークを沢山使ったホイールは疲れにくいホイールです。今までから何度も記事にして提案しています。多スポークホイールはスポークがショックアブソーバーの働きをしてくれますのでロングライドに適しています。

DTのRR411リムも後輪はオフセットリムでした。今回のリムも後輪は3mmセンターがずれたオフセットリムを使っています。

ハブのギア数が増えましたので物理的な理由で左右のスポークテンション差が大きくなりました。後輪右スポークがカンカンに張っているのに左はゆるゆるの状態となります。この大きなテンション差を少なくする方法にオフセットリムを使います。

今までの記事に何度も書いていますので参考にしていただきたいのですがギアが増えたためにハブのセンターオフセット値が増えます。ハブの形状は変えることが出来ません。リム側のセンターをずらすことでハブオフセット値を是正するという方法です。

簡単に一言でいえば10%ほどスポークテンション差を改善できます。この値は大きいです。駆動効率が大きく上がります。掛かりが良くなるということです。

ワイドリムで剛性が高く、チューブレスで走れて、ロングライド向きのホイール、最後にリーズナブル、いいとこだらけのホイールです。お勧めです。