チューブラーホイールのリム替え②

チューブラーホイールの前輪も取り換えることにしました。

今回は後輪よりも手早く行うことが出来ています。普段ニップルの緩み止めにはリンシードオイルを使っています。オイルが固まるのに数日かかりますが手軽なので愛用です。

縦ブレ横ブレを取って組み上げ完成しますがスポークテンションのデータを取ってみました。この仮組出来上がり直ぐのデータ取りでよくわかります。振れ取りだけではテンションは揃っていません。

スポークテンションが揃っていなくてもホイールの振れ取りはできます

何百ホイールを作っていますが、振れ取りだけの仕上がりは全くダメな出来上がりです。神の手は持てないということです。見た目では全くわかりませんがスポークのテンションが揃っていません。

余談になりますが、

オークションなどで売りにでている99%のホイールはスポークテンションが揃っていません。目視では振れはありませんというコメントがよくあります。それはその通りだと思います。しかし残念ながらスポークテンションは揃っていないのが現実です。この点を理解して購入を考えるべきです。中古は中古でそれ以上のものではありません。

話題を戻します。

スポークテンションを出来るだけ揃えています
TB25リムを取り換えまた新しいホイールが出来上がり 長く使えるホイールです

スポークのテンションを揃えることばかりやっていると今度は振れ取りが正しくできません。振れ取り+テンションを揃える、どちらも出来て初めて完成です。

ハブ、スポークは再利用ですが調整されたシマノハブはあたりが出ていますのでとても滑らかな回転です。クリンチャーホイールしか知らないライダーさんにはチューブラーホイールをお勧めします。外周部が軽いので今まで乗っておられたホイールとは違った良さを感じていただけると思います。試されるとよくわかります。

チューブラーホイールのリム替え

36穴のチューブラーホイールのリム交換を行いました。チューブラーリムはキンリン社のTB25です。剛性の高いリムで、今現行で手に入るリムの中では数少ないリムの一つです。絶滅危惧種になるリムの一つかもしれません。

同じリムの穴位置合わせてリムを重ねて固定します
ニップルを順番に緩めて新しいリムに移動していきます

リムの交換はとても簡単にできます。写真のようにリムの穴位置を合わせて固定します。あとは順番にニップルを緩めてスポークを新しい方に付け替えていくだけです。

注意点として緩めたニップルをリムから取り外すときにポロっとリム内に落とさないようにすることがコツです。

後はニップルを締めて通常の組み方を進めるだけです。今回は後輪ですので右ドライブ側から仕上げて次に左非ドライブ側を締めていくという組み上げ方です。

同じリムを取り換えて長く使うことが出来る手組ホイール、お勧めです。

サビたマビックスポークの取り換え

当初振れ取りのご依頼でお預かりしましたマヴィックのコスミックカーボンですが簡単に済むと思っていました。しかし残念ながらそうとはいきませんでした。

腐食した前輪スポークです

ホイールを点検しますとスポークはざらついています。何の汚れかなと思っていました。きれいにしようとふき取っても取れません。よくよく見るとスポーク表面が腐食しているようです。

ご依頼は振れ取りなのでまずはニップルにオイルを注して回しやすくしてから作業に取り掛かりました。

運が悪かったのか第1本目のスポークのニップルを回したのですがカーンと大きな音が出てスポークが折れました。よく観察しますとスポークの根元、ねじ部分が赤茶色になっていましてさびが出ています。最初の一本目で折れるとは!  本当にがっかりしました。

マビックの製品はディーラー管理がしっかりしていますので細々とホイールを作っている手組ホイールファンのようなホイール屋には部品をわけてくれません。マヴィックホイールを買って部品どりするしかありません。

お客様に正直にこの状況をお話しましたところお客様は錆のことはご存知でした。折れた理由を説明し、結果的には手に入るスポークを使って取り換えることになりました。

分解には特殊な道具が必要です

マビックのハブは簡単に分解できます。ただ特殊な道具が必要です。写真のハブレンチはホイールについているものです。中古品を買った場合はついていないかもしれません。おまけに取り換えの部品は正規で買っていないとディーラーさんは出してくれません。この点が一番困るところです。

お客様はこのマビックホイールを中古で買われたのでディーラー登録されていないホイールでした。今回はこれで困りました。ホイールの弁償を申し出たのですがお客様もそこまでしなくて良いと言っていただきました。スポークは市販のスポーク交換でいいということになりました。

マビックのホームページを調べますと製品の構造など詳しい情報を知ることが出来ます。ホームページからの情報では271mmのスポークでしたがハブ、リムのERDを計測しスポーク長を出しますと必要なスポークは269mmでした。ちょうど中間の値で作ることにしています。スポークは270mmのDTエアロコンプを用意しました。

純正のスポークより12g重い

純正のマビックスポークは超扁平スポークです。見た目のアピール度が高いスポークと思います。残念ながら市販スポークでは同等品は手に入りません。

用意しましたエアロコンプとマビックスポークの重量を比べますと見た目はマビックが重そうに見えますが細めのエアロコンプの方が12g重いので驚きます。剛性は上がります。スポークが細くなりましたがやはりホイールの存在感はあります。さすがにフランスのホイールは見栄えがいいです。購入者の気持ちにぐっと入り込む作りをしています。

スポークをエアロコンプに取り換えました 分解には専用の道具が必要です
スポークを取り換え後のスポークテンション
テンション調整のみ行った後輪
お預かり時点のスポークテンション状態 少しバラつきがありますがしっかり乗れます
出来るだけスポークテンションを揃えています

ここで注意点があります。専用道具がないとメンテが出来ないようになっているマビックホイールなので中古品を買う場合には覚悟が必要です。

直せる力がある人、面倒見てくれる人が近くにおられる人でないと安いからとか見た目がいいとかで気軽に買うホイールではないと思います。正規品でないと部品が手に入らないブティックブランドのホイールは礼儀正しく正規ルートでお求めなるのが賢明です。

お客様はこのホイールは中古品として売るつもりはないと仰っています。スポークが純正でなくてもいいと了解いただきました。ありがたいことです。結果的にはホイールは蘇りました。

リムの荷重試験をお願いしました

ホイールのリムは常に地面に接しているところが凹んでいます。この凹みの連続で自転車は前に進みます。凹みといいましてもほんのわずかな凹みですので見た目にはわかりません。出来るだけ真円に近い状態を維持できるリムほど駆動ロスが少ないと考えています。

地面に接しているところのスポークテンションはこのように凹んでいます

ずっとこの歪を調べリムの剛性を知ることが出来ればロスの少ないホイールが作れると思っていました。重りをリムに載せて歪を測ればよいとわかるのですがどのようにして調べたらよいか分からなかったのですが大阪産業技術研究所という公的な機関で調べていただけることを知りお願いしました。

約3週間で荷重試験の報告書をいただきました。ただし、理事長の承認が必要なので詳しいことは公表出来ません。概要だけはお話できます。

荷重試験の報告書です

XR31T 505g
完組ホイールのS社リム538g

試験的に行いますので調べるリムはキンリンのXR31TリムとS社完組ホイールリム2点を調べていただくことにしました。

この2点を選びましたのは今までの作っているアルミホイールの中で一番成績の良いリムと一般的な完組アルミホイールから取り出したリムを比較することにしました。

荷重試験はリムの上から圧力をかけて一定の時間内で0kgから100kgに至るまでのリムの変化をグラフにしていただきました。

通常は試料をお渡しして結果の報告書をいただくということでしたが、初めてのことなので立ち会わせていただきました。残念なことですが現場の写真は撮らせていただきましたが発表は出来ません。どのような機械を使って調べるかということも発表できないという規則なのでできません。ただ、結果は予想していた通りで今までの疑問が解けて喜んでいます。

完組ホイールのS社リムとXR31Tの剛性は大きな違いがありました。キンリンのリムで作ったホイールはよく走ります。平地でも登りでもよく走るホイールです。特に平地では力を発揮します。

この理由は100㎏の荷重をかけてリムの変化の違いを比べてみましたところ約1.5倍の違いがあったことが分かりました。これから考えられることはXR31Tの方が走るときのリムの凹みが少なく真円を保つ力が高いということです。

リムの剛性とスポークの均一化が大きく影響するという考えていましたがこれは正しいようです。勿論ほかの理由もありますのでリムの剛性だけで決めつけることは早計ですが意味あることには違いありません。

XR31T/RTのリムは505g、完組ホイールS社リムは538gのリムです。重量は完組ホイールの方が重いので剛性はこちらの方が高いと思っていましたが今回の荷重試験では違っていました。この点も面白いと思います。

一般には軽いリムが好まれますが走るホイールは軽さだけではないと考えています。剛性が高いホイールがよく走ると考えます。アルミホイールよりカーボンホイールの方がよく走る理由はリムの剛性がアルミより高いからといえます。次回はカーボンリムで荷重試験をお願いしようと考えています。

振れ取りのご依頼です

21年の3月にご注文いただきました多スポークホイールの振れ取り依頼の連絡をいただきました。

多スポークホイール
前輪はほとんど変わっていません
後輪の振れが出た状態

後ろのディレーラーが壊れてホイールに当たり振れが出たとのこと。ホイールが届きましたのでどんな具合なのかデータを取りました。なるほど後輪は大きく振れています。前輪もデータを一緒に撮りましたが前輪はほとんど狂いもなくきれいな状態でした。やはりホイールを組み上がってから馴染みだしをシッカリとしておくと狂いが出にくいものです。

ほとんど変わりのない前輪
振れ取りが終わって、締め増しとスポークテンションを均一化

前輪は少しの再調整で済みました。後輪はまず振れを取ってからスポークテンションの再調整です。後輪スポークは全体に締め増しを行っています。

もともときれいにテンションを揃えていますので大きく振れている部分を元に戻すと振れはなくなりきれいに回ります。後輪の振れがとれてきれいに回りましたら改めて全体の締め増しを行いました。右ドライブ側を調整してから左を揃えていく方法が一番正確で手早くできると思います。

振れ取りは呼び名の通り左右に振れている部分を直すのですが、振れを取るだけでは不十分です。同時にスポークテンションを揃えることがとても大切です。

ホイールはもともと馴染みだしを十分取っていますので今回のようなトラブルがない限りそんなに振れは出ません。ホイールの作製で馴染みだしの方法としては一度乗ってみてから再調整するのが手っ取り早い方法です。販売のホイールなのでこの手法が使えませんが自分用のホイールなら何度でも調整ができるので試し乗りしてから本格調整するのはお勧めです。

自転車、ホイールは購入したときからメンテが始まります。ECサイトでお安く買えるホイールは価格的には魅力がありますが個人で直せる力のある人、直せる環境がある人にはどんどん試されたら良いかと思いますが代理店が無く直接中国や台湾メーカーに交渉しないといけないホイールには注意が必要です。

テンションメーターなしで組んだホイール

久しぶりにテンションメーターを使わずに前輪ホイールを組んでみました。

結論から言いますと、縦横のフレをとりきれいに回るホイールが出来ましてもテンションメーターなしではやはりまともなホイールは組めません。前輪ですので左右のニップルを均等に回していけば組めるはずですが実際はなかなかうまくいきません。経験を積んでも手の感覚だけでは難しいのが現実です。

XR31T、シマノハブで組みました

このブログでテンションメーターなしで組んだという記事を21年1月17日に出しています。約2年経ち少しは上達しているのですが、やはりメーターなしではしっかりとしたホイールは組めないということです。

組むスピードはとても速くなりました。振れのないホイールは約1時間で組み上がります。しかしプロとしましては早く仕上げているとは言えないようです。上手な人は30分で組み上げます。まだまだ修行が足りません。

ダイヤルゲージと手の感覚だけで作って調べた最初のテンションデータです

ゆっくりなのはニップルにグリスを塗りながら着実に作っているのが理由ですが、早く作れるということはニップルを無駄に回していないということでホイールの丈夫さアップにつながります。何度も締めたり、ゆるめたりすればニップルのねじ部分は弱くなるということです。特にアルミニップルの場合は注意が必要です。とはいうものの腫れ物に触るというようなものでもありません。

縦ブレ横ブレをダイヤルゲージで管理

上のグラフを見ますと振れ取り台に取り付けたダイヤルゲージと手の感覚を頼りに組んだホイールですがテンションメーターを使ってグラフ化するといかに人の感覚は頼りにならないかがよくわかります。

組み上げた後さらに1時間ほどメーターを使いながら調整施したホイールのスポークテンションが次の通りです。

テンションメーターを使って仕上げたホイールのスポークテンションデータです

何度も馴染みだしを行って各スポークは出来るだけ均等に張り、フレは最小になるように仕上げています。同じ言葉の繰り返しになりますがスポークを握っただけでは分からないものです。正しく道具を使えばいいホイールが出来上がります。テンションメーターなんかいらないと豪語する人は神の手を持っておられると思います。

フリーの爪をハブシェルに収める方法

ハブの整備でお困りのお客様より問い合わせがありました。

ノバテックの後輪ハブF482SBをグリスアップして外したフリーをハブシェルに納めるときです。爪が4つ立っているのでどうしてもハブシェルに入らないとのこと。

グリスの量は難しい 多すぎても爪が立ちにくい 少なくてもダメ
4つの爪が邪魔をしてハブシェルに入らない

フリーをハブシェルに入れるのですが4つある爪が邪魔をしてすんなり入らないということです。一つの爪を押さえても後の3つが立っているので入りません。どうしたらいいのかと考え込んでしまいます。

実は初めてハブフリーを引き抜いたとき同じように悩みました。じっとフリーを眺めていてピンとひらめきました。知恵の輪のゲームみたいなものです。

荷造り用のPP紐を用意する
紐でグイっと縛るとフリーは入る

答えは荷造り用の平らなPP紐を20cmほど切りフリーの爪に巻き付けます。平らな紐がミソです。紐をグイっと引っ張りと4つの爪を締めあげてハブフリーをシェルに押し込めばすんなり入ります。あとは紐を引っ張り出せば終わりです。簡単にフリーは収まります。

お問い合わせのお客様には喜んでいただきました。たぶん皆さん同じようにされていると思うのですが今回のように問い合わせてこられる方もおられるのでお知らせいたしました。

10速ホイールに11速スプロケットを入れてみた

お客様より10速ハブに11速スプロケットを取り付けることが出来ると教えていただいたことを既にブログに記事にしています。

FH-7900にCS-HG700を取り付けました

しかし実際はどうなのかは試していませんでした。果たして取り付けは大丈夫でした。CS-HG700にはスペーサーがついていました。これを使わずギアだけを10速ハブに取り付けるとうまくいきます。教えていただいたとおりの結果です。ロー側は34TなのでディレーラーはGSタイプがいりますので注意が必要です。

既に10速ハブは使えることを記事にしていますがリムブレーキ部品はだんだんと絶滅危惧種になりつつあります。安価なハブに注目が行きますと値上がりしますので光が当たってほしくないのです。手持ちのディスコンハブは大事にしたいと思っています。

36穴ハブ24穴リムでホイール作製

シマノカップアンドコーンハブで前輪20H後輪24Hのカーボンホイールを作るために手に入れたホイールがあります。シマノの下位グレードwh-rs100ホイールを分解しました。

ハブを取り出して組み立てたカーボンホイールがこのホイールです。

TNIカーボンリム シマノ24穴ハブ スポークwing21使用
559gの24穴オフセットリムが余りました

ハブだけ使いましたのでリムが余ってしまいました。後輪用の24穴オフセットリムを使わずに置いてあったのですが36穴ハブを使って組み立てることにしました。使用するハブはティアグラハブFH-RS400 36穴ハブです。

スポーク長はspocalcで計算 2.17クロス組

36穴ハブ、24穴リムを使って組むのは今までにブログ記事にもしていますが今回はSpocalcの計算ソフトで2.17クロスを入力してスポーク長を出しました。変則組ではいろんなやり方があります。日本流では5本どり、6本どりというのですが英語圏の言い方で作ります。

24穴ハブを台湾ハブで作ると軽量にできますが価格も当然高くなります。最初の目的は24穴のカップアンドコーンハブでカーボンホイールを作るということが目的でした。余ったリムが勿体ないので今回のように手持ちの36穴ハブで変則組ホイールを作製しました。

後輪1087g 重い=剛性が高い 決してマイナス要因ではありません
2.17クロス組

実用ホイールとしては元のホイールよりもいいホイールが出来上がりました。古い36穴ハブがあれば24穴リムに使えますのでカーボンホイールも作れます。ダイナモハブも36穴なら安価に手に入りますので24穴カーボンリムを用意すれば面白いホイールが出来上がります。36穴ハブはアイデア次第で楽しめると思っています。

最近まで知らなかったスプロケットの話

恥ずかしながら最近まで知らなかったのですがお客様より教えていただきました。10速ハブで11速のスプロケットが使えます。

早速シマノのホームページを調べてみました。

シマノホームページより

スプロケットの説明文にはこのように書かれています。

11速で使うには1.85mm厚のスペーサーを入れるこのスプロケットですが逆にスペーサーを使わなければ10速ハブに使えるということです。

最近約5年前に作製しましたチューブラーホイールの調整しました。ホイールはキンリンのTB25を使っています。ナローリムですが剛性もありとても組みやすいリムです。チューブラーリムの選択肢はあまりありません。今や貴重品になりつつあります。

整備しなおした10速ホイールです
FH7900 Duraハブ

ホイールの内容は次の通りです。

リム TB25 36H

ハブ Dura FH7900 36H

スポーク TB2015

ハブは10速ハブのFH7900DURAハブです。10速ハブですがこのホイールを11速で乗ることが出来ます。10速ハブのホイールを数セット持っていますので11速で使えることが分かり喜んでいます。

今頃何言うてる?と笑われそうですが意外と知らない人もおられると思います。現にここにいますので...

シマノのマニュアルを隅から隅まで読む人はまずおられないと思います。上記の説明文にはスペーサーを使わなければ10速で使えますよとは書いていません。何か理由があるのかもしれません。

今まで11速をあきらめてローラートレーニング専用にしておられる10速ホイールが11速で使えます。オークション出品で昔の名ホイールをただ10速という理由だけで購入をあきらめていた人もこのスプロケットを使えば大丈夫です。ただし注意点が一つあります。ギアのロー側が34TなのでロングケージのGSディレーラーが必要です。ショートケージのSSではこの34Tギアは適応していません。SSの場合は一番ローの34Tギア使用をあきらめることです。ギア全部使えなくてもホイールを使えるということに重点を置くということで良しとします。

そんなに声を大きく言うことではないと思うのですが長年知らなかったことなので喜んでいます。笑われそうですが...