エントリーモデルのスポークは太い

1万円台で購入できるシマノホイールのエントリーモデルをお使いの方に提案したいと思います。

シマノWH-R501のリム重量、スポーク重量を調べますと次のように仕様です。

前輪リム重量 538g
前輪スポーク 20本 144g

後輪リム重量531g
後輪スポーク 24本 179g
WH-R501
後輪リム重量 538g24本179g1本7.4g
前輪リム重量 531g20本144g1本7.2g

空気抵抗を減らすとして前輪には扁平スポークを使っているのですがこのスポークがなんと7gスポークです。扁平には間違いないのですが形だけの扁平スポークと考えます。

サピムのスポークをグラムでわかるようにしました。次の表です。データはサピムのホームページから得ています。

品名仕様1本重量g
cx-rayWeight: (64 pcs x 260 mm lg) 272 g4.3
cx-sprintWeight: 334 g (64 x 260 mm)5.2
   
LaserWeight: 283 g (64 x 260 mm)4.4
RaceWeight: 14G (64 pcs x 260 mm lg) 363 g5.7
   
LeaderWeight: 14G 2,0 mm (64 pcs x 260 mm lg) 431 g6.7
サピムホームページより

このシマノホイールはどなたにも使えるように考えられたホイールですから少スポークのホイールではありますがとても頑丈に作られています。つまりスポークを太くして剛性を高めています。本当にスポークの太さには驚きです。

体重の軽い人が乗ればなんとガチガチの硬いホイールだと感じることでしょう。大は小を兼ねるのですがこのようなホイールは長時間乗れば疲れるホイールであることは間違いありません。

仮に細い5gスポークを使って28hの前輪ホイールを作るとスポークの重量は今回のシマノホイールとほぼ同じグラム数になります。剛性は減らず地面からの振動を吸収するホイールが出来上がります。

ホイールの出来上がりではスポークの選択がとても重要です。スポークで乗り味、性能は大きく変わります。

現在シマノエントリーモデルのホイールでご不満の方は、簡単にはホイールの買い替えもありますがスポークを軽量スポークに変えるのも一つの案になるかなと思います。お試しください。

後輪スポークを取り換える②

今お使いのディスクカーボンホイールの走りがもっさりするので改善するのにいい方法はありませんかとご連絡いただきましたことは前回の記事に書きました。

非ドライブ側のCX-RAYをコンペティションに交換

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します、とお伝えしました。剛性を高めるにはスポークの数を増やせばよいのでリム、ハブを交換すれば一番いいのです。しかし費用も掛かることですのでそんなわけにはいきません。

ここで提案しましたのはスポークを太くする提案です。

今使われているスポークはCX-RAYです。最強のスポークと言われていますが剛性に関しては細いスポークですので魔法は使えません。今回の対処は単純にスポークをCX-RAYからDTのコンペティションに変更するだけでした。

ホイールをお返しして、本日結果を教えていただきました。以下のコメントです。

今日ビワイチに使ってきましたが確実に剛性が上がっていてモサッとした感じがとれていました。ただ、やはりあのホイールじたいが重たいのでヨッコラショってなってしまうので重さだけがネックかなと思います。

スポークの重量が約20g増えたのですがやはり結果は良好でした。理論通りです。ねばりがあり軽量の最高スポークでも乗り手の体重、乗り方に応じて選ばないといけません。まさに20g増のマジックです。

また違うお客様のお話です。

約2か月前ですがホイールが固すぎるのでスポークをすべてコンペティションからCX-RAYに交換したお客様がおられます。コンペティションは剛性があって反応はいいのですが長時間乗ると疲れるとのことでした。

別のホイールで前後ともにCX-RAYスポークのホイールもお持ちで、こちらのほうが疲れないとのことでした。こんなことから剛性を下げることをお勧めしました。

コンペティションからCX-RAYに替えられた結果、とても具合が良く楽に乗れるとお返事いただきました。剛性が高すぎるのも疲れるホイールとなります。

このようにホイールに不満のある方はスポークを変えるのが結構安上がりでいい処方箋と思います。

シマノのローエンドホイールはガチガチの高剛性で組まれています。これは万人向けのホイールに仕上げているので仕方ないことです。前輪後輪スポークを体重にあわせてLaser、CX-RAYなどに替えると見違えるホイールに変化することは間違いありません。お試しください。

Bang for the buck

自転車フォーラムを読んでいましたらこの熟語が出てきました。アメリカ俗語で支払いに見合う価値とあります。面白い表現と思いメモしていました。いつか使えると思っていました。

後輪 823g
前輪708g

本日、このブログ記事に発表いたしましたお客様より次に紹介しますホイールの印象をお送りいただきました。本当にうれしくて何度も読み返しました。

もちろん私が組んだホイールの宣伝になるということもあるのですが、良かったと言っていただきますととても励みになります。

インプレにはタイヤのことが書かれています。使用するタイヤで大きく走る印象が変わります。実際に使われているからこそわかることです。ホイールはロードバイクで一番大切な部品の一つです。ご参考になるかと思います。

手組ホイールファン様

先日ホイールを納品していただきました**です

早いもので購入から2カ月が経ちました。

購入したホイールは現在メインとして使用しています。

まず全体の感想ですが、非常に満足しております。

今後は他のリムハイトのホイールもお願いしたいと思っています。

今回は46mmのディスクブレーキモデルでしたが重量も1500gを下回り、登りでも軽快に登れますし、平地での巡行も非常に安定しています。

このホイールで初めてチューブレスタイヤを使用しました。まずIRCのFormula pro RBCC 28cを試しましたがタイヤとホイールの相性は抜群です。簡単にビードが上がりますしシーラント無しでもエア漏れもほとんどなく1週間で1bar空気圧が下がる程度でした。

外観もホイールと28cのタイヤはベストマッチだと言えます。乗り心地はチューブレスということもありますが、非常に滑らかでタイヤとホイールが振動を吸収していることを感じます。平地主体のコースやロングライドではこれがベストの組み合わせかなと思います。

ただ峠などの長い登りが続くコースでは28cのタイヤはさすがにもっさり感は否めません。そこでIRC Formula pro S-light25cを履いてみました。

するとこれがまた印象がガラッと変わります。RBCC28cが315gなのに対してS-Light25cは220gと軽量なので当然かもしれませんが、登りが圧倒的に軽快になりました。登りのダンシング時にはホイールがしっかりと力を受け止めて適度なしなりが推進力を生んでくれている感覚があります。

自分はあまりブランドにはこだわらないので、この価格でこの性能なら2~3倍のお金を払ってブランド品のホイールを買う理由は無いな。。。と感じています。

このように私自身非常に満足していますので、友人にも自信をもってこのホイールを勧めています。近々友人から問い合わせがあるかもしれませんが、その時はご対応いただけると幸いです。

今後ともよろしくお願いいたします。

****

お納めしましたホイールはBang for the buckのようです。良かった。

後輪スポークを取り換える

このブログの記事に何度か使わせていただいている方のカーボンホイール点検依頼を受けました。私の作ったホイールではありませんが一見さんではありませんのでお受けしました。ちなみにこの方は京都の方です。

DT350ストレイトプルハブ使用 非ドライブ側CX-RAY ドライブ側CX-sprint
お預かり時タイヤついた状態でのスポークテンショングラフ  タイヤのビードが影響してスポークテンションは大きく下がっていますが約100kgをキープしています。悪くないです。

ホイールは手組ディスクホイールです。後輪がどうももっさりするとのことです。このもっさりという言葉ですが、国語辞典では見てくれがぱっとしなく動作が鈍い様子と書かれていますが見た目は洒落たロゴが入ったホイールです。

乗り手はFTP300近いパワーライダーさんですのでおそらく剛性が足りないのではないですか?ということをお伝えしました。

ホイールの剛性が足りない場合はスポークを増やすのですが、スポーク数を増やせないなら、つまりリム、ハブを交換できない条件では太いスポークに変えるしかありません。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。ということはスポークを変えればいいのですがいきなり2mmの太いスポークに交換もできません。理由はカーボンリムの場合太いスポークはカーボンが割れる恐れがあるからです。

いつも使っているリムメーカーでは一番太くて1.8mmまでと注意を促しています。おそらく今回のリムも同じと思いますので太さは1.8mm迄のスポークに交換することにしました。

ホイールを調べますと左非ドライブ側にはCX-RAY、右ドライブ側にはCX-sprintと扁平スポークを使い分けています。粋な使い方です。

サピムのホームページでCX-sprintを調べますと

Some professionals use the CX-Sprint on the drive side and the CX-Ray on the non drive side. This shall bring a more equal stiffness on right and left side in one wheel.

ホームページのデータによりますとCX-sprintの重量は260mmで5.2gです。DTのコンペティションは4.9gの丸スポークですので扁平スポークのほうが軽いように見えますがコンペティションのほうが軽いのです。260mmでCX-RAYは4.3gです。

最終的には左スポークCX-RAYを取り換えてDTのコンペティションに替えることにしました。右ドライブ側はそのままCX-sprintで残しています。

取り換え前のCX-RAYスポーク 12本で54g
取り換えスポーク コンペティション12本で75g

総重量はCX-RAY12本で54g、コンペティションで75gでした。約20gの増加です。わずか約20gの重量差ですが理論的には剛性は上がっています。

タイヤ外してテンション調整前の状態 左側にばらつきアリ
左側のスポークをできるだけ均等に調整しました

再度乗られた印象を聞かせていただくのが楽しみです。

ピラースポークが届きました

この7月末の話です。

いつも買っている自転車部品セラーとメールでのやり取りですが、サピム・チャイナではCX-RAYは一本もないとのことでした。できるだけいろんなディストリビューターから買っておく方がいいよとアドバイスくれました。

9月になっても自転車部品業界はあまり回復していない模様です。

まあ私のように細々とホイールを作っている分には大きな影響がないのですがやはりいまだにアルミリムは手に入らない状況です。早く前のようにもどって欲しいです。

さて、いろんなところから分散して買ったほうがいいとアドバイスをもらった時にピラーのウィングスポークがいいよと勧めてくれました。以下ピラーのホームページより引用しています。

ピラースポークではトリプルバテッドのスポークはよく使うのですがウイングスポークは初めてです。飛行機の羽のような構造ですので空気抵抗に関してはCX-RAYよりも風洞実験で良い結果が出ています。

ブランド力はサピムが上かと思いますがピラーは実利優先の私には合っているスポークと思います。

2か月経ってやっとピラースポーク10kg届きました。当分安心です。 スチールはスチールですのでこれからどんどん使っていきたいです。 もちろんサピム、DTと使いますがピラーもメインで使っていこうと思います。

約10kg届きました

アメリカにBoydというホイールメーカーがありますがボイドさんのブログを読むと販売するホイールのスポークはピラースポークにすべて切り替えたと書いています。

ブランドにとらわれることなくいいものはいいという姿勢は大事と思います。。

前後1355g、超軽量ディスクカーボンホイールの作製

3月末のことです。

今までに36mm高、46mm高のディスクカーボンホイールを2セットご注文いただきましたお客様よりもっと軽いディスクホイールが出来ないかとお問い合わせがありました。

リムメーカーに35mm高28mm幅ディスク用リムで360gというリムがあることをお知らせしました。

すぐにご注文いただきましたのですがリム発注後いくら待っても送られてきません。

毎月メールで問い合わせしましたが今作っているところですという返事です。相手は中国の会社ですので日本のメーカーさんとは考え方が違うようです。

落語での蕎麦屋の出前は「今、出ました。」ですが、このメーカーは「今、作っています。」ばかりです。仕方なしにお客様に事情をお伝えし、辛抱していただきました。

待つこと5か月、8月末にやっと出荷案内が来ました。それでもまだ航空便で10日ほどかかります。

やっとのことで届きましたリムがこのリムです。

リム重量351gは軽いです。
穴なしリム 内部センターチャンネルに穴がありません。

実測値は351gです。驚きの軽さです。もっと軽いリムはあると思うのですが強度も大切です。同種類を45mm高で発注したことがありますので強度的には安心していました。

仕様は

リム 28mm幅35mm高 軽量カーボン 穴なしリム

ハブ TNI REVOハブ

スポーク サピムCX-RAY

ニップル DT SquorxPro ブラス 黒

という構成です。

いつも買っているリムと比べますと一段格上のリムです。前後で代金が約2万円アップとなります。ブラスニップルを使っていますが100g~120gほど同規格と比べて軽くなります。

簡単には100g2万円アップです。これを安いと考えるか高いと考えるかはユーザー次第です。

前輪 617g サピムCX-RAY使用
前輪スポークテンショングラフ
後輪 738g 穴なしリム サピムCX-RAY使用
後輪スポークテンショングラフ

前輪 617g 後輪 738g 前後で1355gです。

私は1300g台のホイールが10万円前後の価格なのでカーボンホイールの中では高価ではないと思うのですが如何でしょうか?

いずれにしましても3セットお納めしていますのでそれぞれの印象を教えていただけると思います。とても楽しみです。

ヘッドインとヘッドアウト②

お預かりホイールを続けて研究させて頂きます。

先ずスポークの状態を見ます。グラフにするとわかりやすいのでいつも先ずグラフです。

スポークテンションは緩くてバラつき偏差値が高いです

状態がよくわかります。前輪は後輪と違い駆動には影響ありませんので緩いのかもしれません。

表をじっと見ますと先ず思いつくのは前輪のスポークテンションがとても緩く、ばらつきも大きいです。タイヤなしで約70kgf前後のテンションです。ホイールはクリンチャーホイールアルミですのでタイヤインストールしますとタイヤビードが影響してスポークテンションは10~20%下がります。ばらつきが大きいスポークテンションでしたら一部のスポークが50kgを割る可能性があります。緩いと問題です。

スポークテンションのバラつきと緩さが一番ホイールにとってスポークが折れたりニップルが飛んだりする原因になります。

現にお客様からの話では、特別に粗い乗り方をしたわけでもないのに2回ニップルが飛んだということを伺っています。ニップルはアルミなので破断することはブラスより多いのは事実ですが緩いスポークも原因の一つではないでしょうか?

ホイールのスポークはサピムのCX-RAYです。地面からの振動を吸収してくれるスポークですので乗り味は柔らかいです。柔らかい乗り味を狙って作っているのでしょうが何故ここまで緩いスポークテンションで仕上げるのかがわかりません。

73kgfは使えるテンションですが、私は緩いと思います。一般には100kgf前後で仕上げるといわれています。しかし正解はありませんのでこれが正解ですといわれると正解であるところがホイールです。

どの教科書を見ても(外国の本ばかりで日本語の教科書はありません)この数値が最適ですと書かれていません。しかしシマノからは発表されています。

先日、お客様よりご存知ですか?とシマノがホイールの適正テンションを表にして発表していると教えていただきました。これがその表です。シマノのディーラーマニュアルの16ページに掲載されています。

これはネットにアップされていますのでいろんな情報がよくわかり勉強になります。私はこの表を見落としていました。

シマノディーラーマニュアルより

シマノが発表している数値から考えますとお預かりホイールはギリギリOKですが通常は緩いと思います。

私には緩いと思いますが表を教えていただいたお客様はご自分でもホイールを組まれますので別の方法で調整されています。

先ず一番高い数値で組んでいろいろ乗ってみてゆっくり好みの数値にテンションを下げて調整する方法です。

私は大体このテンションと決めてしまいますがあとで微調整する方法もいいですね。ホイール組が出来る上級者ならではの方法です。

スポークテンションを均等に約100kgfで仕上げています

ホイールは上図のようにテンションを調整してお返ししました。どのように変わったかがわかるように引き取り時と調整後のグラフを添えています。

ヘッドインとヘッドアウト

あるビルダーさんの組まれたホイールを点検する機会を得ました。

ビルダーさんの作った前輪ホイールはヘッドインで作っています。CX-RAYで組まれています。

前輪ホイールを見ますとラジアル組ですが一般的な組み方ではありません。

ホイール組は外国の本で勉強しましたので呼び方はカタカナ英語の言い方で述べます。

左右のフランジ幅は70mmのハブです。ヘッドインで組まれています。ヘッドイン、ヘッドアウトというのは見た目からです。

スポークの通し方で決まります。スポークをハブの外側から内側に通して組む方法がヘッドアウトです。スポークを内から外側に通して組み上げるのがヘッドインです。

私のクロスバイク前輪ホイールはヘッドアウトで作っています。私も少し贅沢にサピムのCX-RAYです。

同じハブで作りましてもヘッドインとヘッドアウトでスポークの角度が若干違います。以下壁を支えるツッカイ棒の角度のような話をいたします。

このブレイシングアングルは計算ができますが、簡便にはスポーク長の計算ソフトで角度を知ることができます。下図は計算ソフトを利用してブレイシングアングルを出しています。

フランジ幅を外側から計測
ハブフランジの外側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル
フランジ幅を内側より計測
ハブフランジの内側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル

今回のハブではヘッドインでは7.2度、ヘッドアウトでは6.3度という結果が出ています。

0.9度の違いがあるのですがホイールの性能にどのくらい影響するのかはわかりません。

角度が多いほうが支えることが支える力が高いと思うのですがどのくらいよくなるのかはわかりません。まあよくなるのでしょう。

ではハブに与える影響はどうでしょう。

ハブを外から締め付けるような作り方になるのでリムのERDが短いと角度がつきますので支える力が強くなるのですがハブのフランジ角度次第ではハブフランジに余計な力が加わることになります。つまりハブを傷つけてしまうのではと心配します。

そんなに大きな影響を与える角度ではないのですがさあどっちがいいのでしょう?

フランジ幅がもっと広いバイテックスハブRAF12なら80mmの幅があるのでブレイシングアングル角度は8.1度になり横剛性は確かに高くなると思います。10mmの違いは大きいです。

TNIのエボリューションハブのようにフランジ幅が70mmのハブならヘッドインとヘッドアウトのブレイシングアングル角度差は0.9度ですので効果はよくわからないです。しかし見た感じは大きく変わります。造りが違うと主張しているように見えます。見た目も大切です。

完組ホイールはヘッドアウトで作る方法が一般的です。ほとんどのホイールメーカーがこの方法なのです。お預かりホイールのようにヘッドインはブレイシングアングルがわずかといえども大きくなるので横剛性を高める効果があると思うのですがどうなんでしょう?作るのに時間が掛かる割には効果がないとホイールメーカーは判断しているのかもしれません。

パワータップハブの交換依頼がありました②

パワータップハブを交換しました後輪はお返ししました。

ハブ交換後のホイールです。
ハブ交換後のスポークテンショングラフ

グラフをお付けして納品していますのでご依頼いただきました時の状態とはあまりの違いに驚かれたようです。

このような話はどうしても自慢話になってしまいますのでいつも記事にはどうかと迷うのですがビルダーでホイール性能は違うということを知っていただきたいと思います。。

お客様はとても礼儀正しい方なのでビルダーさんの情報はお教えいただいていません。ただハブの組み換えをしてほしいということでした。

さて、前輪も心配になられたので見てほしいと再度ご依頼を受けました。

前輪のスポークを調整します。

お送りいただきましたホイールは振れもないきれいに回るホイールでした。

いつものようにテンションを点検します。

調整前のテンショングラフです

グラフにしますとよくわかります。見た目ではわかりません。

ホイールのスポークテンションは平均約50kgfで張られています。とても緩いです。タイヤインストール前でこれではとても危険です。

スポークは強弱、強弱とバランスはとれて張っています。これで振れが出ていないのです。

通常、クリンチャータイプのリムはタイヤインストールしますとタイヤビードの影響でスポークテンションは10~20%下がります。お預かりホイールは強弱、強弱でスポークは張られていますので緩いところのスポークは30kgf以下になるところが出てきます。

スポーク折れは緩いスポークに起こりやすいので30kgf以下に下がったスポークは強い衝撃でスポークが折れ、ニップルが破断する可能性がとても高くなります。安全性が一番大切なのにこれではとても心配です。

私が普段使っているカーボンリムメーカーの推奨するスポークテンションは

前輪が100~120kgf

後輪ドライブ側が125~135kgf

としています。メーカーは違いますが大体どのメーカーも同じと考えています。

今回お預かりの前輪は平均50kgfですのでメーカー推奨テンションの約半分です。

以下、点検して気になるところを書かせていただきます。

カーボンホイールを作れるビルダーさんなのでテンションメーターは持っておられると思います。ひょっとして校正していないメーターなのかもしれません。パークツールのメーターならば20%くらい狂っているのはよくあることです。

また、振れを取ったからこれで終わりということではありません。均一にスポークを張ることも大切です。テンションのバラつき偏差値はとても高い数値です。

使われているスポークはDTのレボリューションです。軽量ですが扱いがとても難しいスポークです。レボリューションはサピムのLaserと同じ種類のスポークで2.0/1.5/2.0mmの形状です。サピムのホームページではプライヤーなどでスポークの回転防止をしながら組まないといけないと書かれていますが今回のお預かりホイールのスポークにはプライヤーなどで抑えた傷がありません。これではスポークのテンションが緩いのはよくわかります。きつく締めあげるとスポークがねじれますがこれをやらずに組み上げています。スポークがゆるいはずです。

調整後のスポークはテンションです。均一に張っています。

人様が組んだホイールを観察させていただきますとよくわかります。辛口でホイールを評価しましたが自分のホイールに反映させ、いいホイ―ルを提案する動機付けとなります。

納品後お客さまより連絡が入りました。もうこの自転車屋さんに行くことはないそうです。

トラック用カーボンホイールの作製

何度もご注文いただいています超ベテランライダー様よりトラック用の後輪カーボンホイールをご注文いただきました。競輪場を仲間で借りて練習されるようです。

当初はシマノDURAハブで考えておられたのですが台湾のBitexも作っていますよと提案しました。カップアンドコーンではありません。シールドベアリングを使っています。

シマノだけではありません。

リムは36mm高28mm幅のカーボンリムです。何度も使っていただいていますのでどんなリムかはご理解いただいています。今回は28穴の穴なしリムです。

スポークは練習用なので丸スポークも考えておられたのですがサピムのCX-RAYシルバーをお勧めしました。練習用といえども競技に使いますので少しでも空力の良いほうがいいと思います。ニップルはDTのSquorx-pro ブラスでシルバーを選択しました。

穴なしリムの利点は第一にテープが不要です。剛性を比べたことがないのですが穴がないので穴アリリムよりは強度は高いようです。ホイールを作る側には面倒なリムですが使う側には利点の多いリムといえます。

今回は28穴で作らせていただきました。スポークテンションは124kgfで出来るだけ均一になるように調整しました。

シルバースポークにシルバーハブが新鮮です。
ダブルスレッド JIS組 3クロス
出来るだけ均等になるようにスポークを張っています

トラック用の後輪ホイールは左右スポークテンション差がありません。前輪を後ろに取り付けるようなものです。ホイールはとても新しい感覚です。今までのトラック用のホイールとは少し違います。左右のテンション差の駆動ロスはないので走りの結果を楽しみにしています。