格安ディスクホイールを分解する

どうして格安ホイールを販売できるのか疑問に思い英国の通販サイトで購入しましたホイールです。サイトでの評価は割れています。失敗と思った人、値段なりという評価、コスパが良くて普段使いにはこんな素晴らしいホイールはないという評価、大きく左右に割れる評価です。

実際はどうなのか約12000円の格安アルミディスクホイールを分解して調べてみることにしました。

前輪用920g
後輪用1183g

前輪920g後輪1183gのホイールを分解しますとこのような部品でした。

リム578g 重いリムですが丈夫ということでもあります
前輪ハブ 161g 軸がスチールの為重い
後輪用422g 軸、フリーがスチールの為とても重いハブです
前輪用スポーク24本 171g
後輪用スポーク24本 172g
ブラスニップル 24個 23g

リム 578g

ハブ 前輪161g 後輪422g

スポーク 前輪24本 171g 後輪24本172g

ニップル 前輪24個 23g 後輪24個 23g

リムもハブもスポークもすべて非常に重い部品でした。

リムの575gは驚きです。この重量のリムは初めてです。

ハブの重量もびっくりします。

スポークは2mmの丸スポークです。

ニップルはブラスです。

ハブの重さは気にはなりますが中心部の重さですのでホイールの回転には影響しないと考えます。とても重いハブですが重いということは丈夫ということでもあります。このハブの軸とフリーがスチールでした。重い理由はこれです。

TNI REVOハブ アルミで出来たハブはやはり軽いです

いつも使うTNIのREVOハブは243gでボディーも軸もフリーもすべてアルミです。この違いが重量に出ています。ベアリングの性能差はあることはあるのでしょうがあまり問題ないと思っています。回転性能は十分と考えます。スチールの部品は重量に大きく影響しますが安価で丈夫です。軽くするためにアルミの部品にすれば値段が高くなります。この安価で丈夫なことは大きなマイナス要因ではありません。

リムは非常に重いリムでした。今まで軽量したリムの中で最も重いリムでした。普段重くても500gくらいのリムばかりなので575gはびっくりしました。とても重いです。

シマノホイール 559g

シマノホイールでも安価なホイールを分解したときのリムは559gでした。この時も驚きましたがこれを上回るリムでした。しかし重いということは丈夫で剛性が高いということでもあります。この点が大切です。

地面に接する部分が凹む  Ford博士の論文より

自転車のホイールは回転して前に進むのですが地面に接しているところは常に凹んでいます。凹みは連続しているのですがこの凹みは駆動ロスにつながります。真円で凹みが少ないほどロスが少ない訳です。

重くて丈夫なリムは剛性があるので変形しにくいわけで、凹みが少なく真円に近い状態で前に進行するのではないかと考えます。漕ぎ出しは重いがスピードに乗ると凹まない分よく進むと考えます。登りには適しませんが平地では使えるリムとして有望です。

以前の記事に取り上げましたFord博士の理論ではバテッドスポークにすればストレートスポークよりも軽量化を図れてリムの凹みは少ないと実験証明しています。

重くても変形しにくいリムを使ってバテッドスポークでホイールを組みたてればFord博士の理論を使えると思います。駆動ロスの少ないホイールが出来ることになります。ホイールは軽いに越したことはありませんがよく走るホイールは軽さだけでもないということです。楽しみが出来ました。このホイールを組み替えてみます。

乗り味を柔らかくするといって緩いスポークにするのはダメです

お客さまから11月20日のソフトスポーキング記事について賛同というか同じ経験をされたとご連絡いただきました。乗り味が柔らかくなるのでスポークテンションを緩くしておきますと自転車屋さんから言われたというお話です。

スポークのテンションを高い低いの調整で乗り味を変えるという方法は全く理にかなっていません。

柔らかく乗るということでスポークテンションを緩くするということはスポーク折れにつながります。ホイールにとって良いことではありません。お客様は緩く作られたスポークが何度も折れた経験があるので最終的にはご自分でホイールを作ることにしたといっておられます。

あるビルダーさんの作った前輪 緩くてテンションがばらついている センターはドンピシャでした

テンションを緩めて乗り味を柔らかくする。この考えは意外と広くはびこっています。あるビルダーさんの作ったホイールを点検させていただいたことがありますが前輪は74kgfでした。このビルダーさんには適正値かもしれませんが私は緩いと思います。

ホイールは地面に接する場所は凹んでいます。この連続で前に進んでいるのですがテンションが緩いと凹む率も高くなります。均質にスポークテンションが74kgfならまだ凹んでいるところは50kgf以上を保つことが出来ますがテンションのバラつきが大きい場合に問題が起こります。クリンチャーの場合タイヤをはめるとビードが影響して10~15%スポークテンションが下がります。これはどんなホイールも同じです。テンションのバラつき度が高く、おまけに緩いスポークとなりますとスポークは折れやすいです。

下のグラフは同じホイールの後輪グラフです。今度は驚くばかりのハイテンションです。11枚のギアになったためどうしても左スポークは緩くなります。当然右側を高くするのですがハイテンション過ぎるのも問題です。

後輪は凄いハイテンションです  左非ドライブ側のバラつきは大きい  センターはドンピシャです

高いほうが良いのかということになりますが今度はリム、スポークの強度に影響しますので高すぎるのもだめです。この辺りは経験になりますが前輪は100~110kgf、後輪はドライブ側を120~130kgfあたりに納めるのが良いようです。しかし正解はありません。低すぎるのもだめ、高すぎるのもだめということです。ホイール作りは難しいです。

カーボンリムで1輪車を作る

一輪車競技で全国的にとても有名な方がおられます。この選手にカーボンリムで作った一輪車の乗り心地を試していただきました。

一輪車なら体重がリムだけに荷重されます。選手所有のアルミリム一輪車と乗り比べていただき印象をお聞かせいただきました。結果は乗りやすくスピードが違うということでした。残念ながらタイムは測っていません。印象を伺っただけです。客観的なデータがないのでブログ記事にするのはためらったのですが敢えて記事にいたしました。

選手所有の一輪車
有名選手のアルミリム一輪車

選手は2種類の車輪を持っておられました。どちらもアルミリムで作られています。

手組ホイールファンのカーボン一輪車

手組ホイールファンの一輪車はカーボンリムで作ったカーボン一輪車です。36mm高28mm幅の定番ホイールに使用するリムで作りました。今回の試乗で一輪車というものを初めて知ったのですが構造はとてもシンプルです。ハブもママチャリ用のハブみたいな構造で、直接ハブフランジ外側にベアリングを取り付けます。自転車のフォークにサドルを取り付けるというような構造です。いろいろと調べてみますと一輪車は奥が深いです。あまり詳しくないのですが演舞、スピード競技があるようです。

48穴ハブに一穴飛ばしで2クロス組

さて、今回使用しましたハブは48穴のハブでした。販売されているハブは36穴と48穴ハブがあります。今回は48穴ハブを使い、リムは24穴リムです。穴を一つ飛ばしで組むことにしました。

スポークはWing21です。細いスポークですが乗り手の体重を考えますと十分剛性を得られると考えています。選手所有の一輪車のスポークは13番の太いスポークです。伺った話ではとても硬い乗り心地だそうです。やはりスポークが太いの影響していると思います。

作りました一輪車を選手に試していただきました。選手の一輪車とはずいぶん印象が違ったようです。転がりがアルミリムのホイールとは比較にならないくらい楽に回ったと話されています。

この結果を聞くのが目的です。 やはり思っていた通りでした。カーボンリムとアルミリムでは剛性が違います。自転車は乗り手の体重で地面に接する部分は凹んでいます。常に地面と接している部分は凹んでいる状態が続きます。ホイールが前にすすんでいる間は凹みが連続します。この凹みの大きさが大きいか小さいかが前に進む力に影響するわけです。リムの剛性が高いと凹みは少ない訳で、駆動ロスが少なく回転するということになります。ホイールの良し悪しはリムの剛性が大きく影響するということになります。

一輪車の場合とてもシンプルな構造なのではっきりとホイールの優劣が分かります。余計なものが入らないのでリムの剛性がはっきりします。選手の力が変わらなければホイールの良さで成績は大きく変わると思います。今回の試乗からカーボンリムの剛性が高いのがよくわかりました。一輪車のスピード競技にもカーボンホイールを使う選手が出てくると思っています。

ホイール作りはアートです

日本語で書かれたホイール作りの本はありません。いろいろ当たってみましたがメンテナンス本などで大まかな手順を解説している記事ばかりです。記事としてはいろいろありますがホイール作りだけを解説して本として出版されている日本語の本は知りません。

ホイール作りを始めたころArt of Wheelbuildingという本を見つけました。残念ながら国内では見つけることが出来ませんでした。とても高価な本なので購入をあきらめていましたがPDFファイルで手に入れることが出来ましたので紹介します。無料でした。

1999年の初版ですので20年以上前の出版です。作者はDTSwissのメカニックとして長年活躍された人のようです。

記事の中で使われている部品などはさすがに時代を感じますがホイール作りの基本をしっかりと学べます。今ではほとんどスポークワッシャーを使うことなどありませんがこの本ではスポークワッシャーの有益なところも解説されています。ニップルワッシャーではありません。スポークワッシャーです。リムのたわみから出る駆動ロスを防ぐ方法として有益と知ることが出来ました。

スポークを針金でくくりハンダ付けを行う方法も詳しく解説されています。参考になると思います。私はこのソルダリングに関してはBicycle Wheel作者のJobst Brandtさんを支持していまして効果にはそんなに期待していません。しかしとても詳しく述べておられるのでソルダリングはいいのかもしれません。正直なところ分かりません。いい人にはいい、要らない人にはいらないのでしょう。

日本には世界企業のシマノがありますが自転車のホイールを解説した本は出版されていないのは不思議です。親方のやることをみて覚える徒弟制度的な業界なのかもしれません。今はYouTubeで覚える時代なのかもしれませんが皆さん教えたくないところは上手に隠しています。秘伝のたれは誰も教えてくれません。いろんな本を読んでみるとタレの調合方法はわかってきます。習うより読む、これは意外と上手くなる早道かもしれません。

46mm高カーボンホイールのインプレをいただきました

昨年11月にご注文いただきましたお客様より約1年使われた印象をお送りいただきました。

写真はお納めしましたホイールです。ブログ記事として昨年の11月14日に掲載しています。

後輪868g
前輪669g

ホイールは穴なしリムで作りました46mm高のリムブレーキカーボンホイールです。手組ホイールファンのいわば定番ホイールです。長期にわたって乗り込まれた印象はとても参考になると思います。

お客様にブログ記事にいいですかとご連絡しまして了解を得ました。厚かましいことですがホイールの宣伝という期待もあります。1年間という長期の印象は本物です。ノーブランドながら丁寧に作りましたカーボンホイールです。ブティックブランドと十分勝負出来ていることをわかっていただけると思います。

以下原文です。

1年で5000kmほど乗ったので、インプレをお送りさせていただきます。



■総論
非常に満足しております!

次は軽量の別手組ホイールもお願いしたいくらいです。


■0発進
元々キシリウムPROの軽量ホイールを使用していたため、0発進では重さを少し感じていますが、メインがサイクリングロードなのであまり気にしていません。後述の伸びの良さを考えれば十分すぎると思います。

■登り

長い登りなどはキシリウムに軍配が上がりますが、ロングライド中にある短い峠や坂程度であれば、46mmでもなんとかなる印象です。

長い登りを楽にということであれば、手組ホイール自体の価格がメーカー品よりもはるかに安いので2本用意した方がよいなと思っています。



■巡航
30kmを超えたあたりからの伸びと維持は、以前乗っていたアルミなどと比べると非常に楽です。以前は30km程度巡航でしたが、30km半ば程度の巡航が増えました!加減速がない場所での利用が多い私にとっては、46mmがメインホイールとなっていてほとんど1本で事足りてしまいます。


■乗り心地
ここが一番気に入っています。チューブレスレディ×corsaというのもありますが、非常にしなやかです。
振動なども吸収されている感があり乗り心地は今までの中で最高です。25c運用ですが、28Cなども試していこうと思います。

以上です。何かのお役に立てば幸いです。

このようにホイールを気にいっていただいています。リム高の低いホイールも考えていただいているようでありがたいことです。1年経っても忘れずにインプレをお送りいただけて本当にうれしいです。

ホイールの剛性について論じた記事について

SheldonBrownさんのホームページを昔から参考にしていました。この方はすでに亡くなられているのですがご家族が意志を継がれてホームページを続けておられます。

スポーク長の計算でよく使う計算ソフトもこのホームページから得ることができました。いろいろホイール作りに関して参考になることが多いのでお勧めいたします。

興味深い記事が沢山あるのですが何度も読み返しています記事を紹介したいと思います。

https://www.sheldonbrown.com/rinard/wheel_index.html

ホイールの剛性は次の要素で決まるということがよくわかります。

スポーク数

スポークの太さ

リム重量

ハブフランジ幅

リムの高さ

ホイールに興味がある方にお勧めサイトです。

読者さんよりご連絡いただきました

ブログを読んでいただいています読者さんよりご連絡いただきました。

和歌山のロードバイクチームにおいてボランティアでメカニックを引き受けておられます。40年以上の自転車経験がある方です。

ホイール作りではスポークテンションが最優先ということに賛同していただいています。もちろんテンションメーターの校正器も自作されています。スポークテンションは正確に測ることが必要と道具の写真をお送りいただきました。タイヤの空気圧もポンプに正確に測れるメーターを取り付けておられます。

手作りの校正器です  ホイール作りには欠かせません
スポークを取り付ける金具がオリジナル
テンションメーターは校正器を併用しておられますので精度は安心です
正確な空気圧は大切です

スポークを握ればわかる人がおられるかもしれませんが人の感覚はいい加減なところもあるものです。この方も数値で示すことが出来るならできるだけ数字で話をするのがいいといっておられます。

このブログはほとんどがホイールの話題です。宣伝じみた記事もあるのですがブログに共感するところがあるとご連絡いただきました。ありがたいなと思います。

チューブレスタイヤの難点

暫く使わずに置いてあったカーボンホイールに空気を入れようとしましたところ空気が入りません。調べてみますとビードがすこし外れていました。

カーボンホイールのリムとタイヤは相性があります。簡単にビードが上がる場合があると思えば少しずれ気味というか空気は入るのですが時間が経つと外れ気味という組み合わせもあるようです。ただこれは私の意見であってそうは思われない方もおられるかもしれません。

いずれにしましてもタイヤに空気を入れることにしました。

先ずタイヤを外してシーラントを除去します。こびりついたシーラントが残っているとビードは残念ながら上がりません。タイヤの縁にこびりついたシーラントをきれいに取り除くことから始まります。こびりついたシーラントは結構厄介で布切れでは取れません。ワイヤブラシを使ったことがありますがタイヤを傷つけると思いブラシはやめています。結局は爪を使ってこそげ取っています。

こびりついていたシーラント滓を爪でこそげとりました  なにかいい道具はないでしょうか?

左右の縁にこびりついているシーラント滓を取り除くのに15分くらいかかったと思います。

兎に角、新品状態に戻さないと空気は入りません。ビードが上がらないことは必至です。

チューブレスタイヤを使い始めたころはこれが分からなく苦労しました。何度もやり直して今の方法にたどり着いたわけです。これはベテランであろうとビギナーさんであろうと一緒です。誰でも最初はビギナーです。

写真を見ていただきますとわかりますがタイヤにこびりついたシーラント滓です。これだけタイヤについていたので空気漏れを起こすわけです。

チューブレスタイヤはコンプレッサーがあればとても楽です

コンプレッサーを持っておられる方は自転車屋さんでない限りあまりおられないと思いますがタイヤをきれいにしましたら一気に空気を入れるとすんなりビードは上がります。

ブースター付きポンプでもよいが1万円くらいします  コンプレッサーは約3万円、悩むところです

ブースター付きのポンプでもうまくいきますが成功率から考えますとコンプレッサーのほうが楽です。

確かにチューブレスタイヤは乗り心地が良く構造的にもよくできたタイヤだと思います。これからはフックレスタイヤが普及していくと思います。しかしタイヤメーカーはメンテナンスでこんなにややこしくて面倒な作業があることは一言も説明書きに書いていません。メーカーにとってこの作業は当たりまえのことなのかもしれません。使う立場から一言いいますと不親切だなと思うのです。

私には30分ほどの作業ですが初めての方にはどうしていいのか分からなく途方に暮れてしまうことになります。もちろん自転車屋さんにいけばよい話ですが、そもそも自転車さんもハイどうぞとタイヤを渡してくれるだけで詳しくデメリットを教えてはくれません。文句を言えばそんなこと当たり前のことでしょうと怪訝な顔をされます。

あるときタイヤ管理でいい解決方法をお客様より教えていただきました。

半日くらい乗るのならシーラントなしでも乗れるのでチューブレスホイールにはシーラントを入れません。この方法だとなるほど面倒な作業はなくなります。チューブレスでもリムテープが必要なホイールはクリンチャータイヤで乗ることにする。つまりチューブで乗ればいいのです。とてもいいアイデアと思いますが今のところシーラントを使っています。

いろんな媒体を読むとチューブレスタイヤは乗り心地よく、いいことばかり書かれています。実際、初めて乗ると軽やかな乗り心地には驚きます。まあ、これはすぐに慣れてしまうのですが。しかしいいばかりではありません。メンテは大変です。これも慣れれば済むことですが、この山は結構厳しいと覚悟が必要です。シーラント滓を取るのが本当に面倒です。

ホイール組み替えのご依頼

ホイールを今までに3セットご注文いただきましたリピーターのお客様よりメールをいただきました。

内容は次のとおりです。

アレックスリムズのRXD 3というホイールをギャップでフロントホイールのリムを曲げてしまわれたようです。購入された店でリムを取り寄せて、修理を依頼されたのですが、技術的に修理出来なかったようです。どうしてもスポークが折れるとかで仕上げることができません。仕方なく別の店に持っていかれて組み直しをされました。しかし出来上がったホイールはすぐにフレが出るそうです。このようなことから手組ホイールファンでもう一度直してほしいとのことでした。

お送りいただきましたホイールはもともと黒のスポークでしたがこれしかできないということでシルバーのスポークに交換されています。

前輪752g スポークはサピムRaceシルバー変更されています
後輪832g 軽量です
前後ともにオフセットリムを使っています

このアレックスリムのホイールは2つのお店を経て私のところにやってきました。

いつものようにホイールを点検しました。スポークテンションを測りますとホイールの状態がよくわかります。グラフにしますと作り手の腕前がはっきりします。

前輪 ブレーキ側が非常にハイテンションです 強弱強弱とばらつき度が高く均一に組めていない
後輪 メーカーの組んだ状態です

ホイールは横ブレが出ていますが縦ブレは少ないホイールでした。残念ながらスポークテンションは強弱強弱と均一ではありません。この状態のホイールは暫く使うと必ず横ブレが出てきます。またスポークテンションは非常にハイテンションで張られています。極度のハイテンションはリムやハブを傷め、スポークが折れる原因となります。

お客様は詳しいことを仰いませんがどちらの店主もメカニックとしてとても有名だそうです。今は完組ホイールが全盛なのでまともな手組ホイールが出来るショップはとても少ないということがこのことでもよくわかります。リムブレーキからディスクブレーキと覚えることがたくさんあります。ホイール組などしなくても十分ビジネスは出来るのが現実です。新しいホイールを買ってもらえばよいということでしょう。

さて、お客様と打ち合わせの結果、前輪スポークをピラーのwing21黒に交換しました。後輪はそのままでスポークテンションの調整を行います。

組み上げましたが一度強い圧力がかかったリムは歪んでいることが多く非常に組みにくいことが多々あります。今回も強く当たって凹んだリムなので歪んでいる部分がどうしても調整しにくく、スポークの均一化を行うと凹み部分に大きな振れが生じてしまいます。

結構難しいのでこんな場合は少しぐらい振れが残ってもスポークテンションを優先したほうがいいです。このほうが後で狂いが少ないです。無理すれば振れは取れますがスポークテンションが揃っていないとあとあと狂いが必ず出てきます。少々の振れよりテンションを優先するほうが良いかと思います。そうはいっても今回の振れ取りはよくできたと思います。

スポークを緩める、強く張るの繰り返しで調整していきます。2回目のベテランメカニックさんが組んだ結果が上記のグラフのようになったのは仕方のないところもあるのですが時間をかけて振れとテンションのバランスを取りました。まあ簡単に言いますと少し妥協することです。

前輪752gから727gに変わりました  25g軽量化です
スポークテンションを揃えることが第一です  預かった時とかわりました
後輪はスポークテンションの調整のみ行いました
左6番目のスポークの場所に小さな凹みがありましたので難しい調整です

リムにひずみがありますので今回の妥協点はバラつき度5%前後です。通常のホイールでは3%以上になるように仕上げています。DURAホイールが5%前後なのでこれ以上を目標にしているのが理由です。細かくテンションメーターでチェックすることで何とか左右のバラつき度を5%以内に仕上げることが出来ました。

一般的には一人オーナーさんの自転車ショップは技術力があるのですがすべてに優れているショップは限られています。完組ホイールばかり販売している最近の自転車屋さんは自転車の整備技術はあるがホイールは組めないようです。組めても精度は低いです。やはりメカニックとホイールビルダーは違うので餅は餅屋がいいです。

TheBicycleWheelを読み直す

以前のブログ記事に書きましたがホイール作りに関して日本語で書かれた本はありません。海外では出版されていますが特に有名な本はこの本です。検索しますと何冊かヒットしますがやはり一番はこの本のようです。

海外のビルダーさんはこの本で勉強しているようです
発売当時定価24.99ドルでした 今はとても高価です

作者のJobstBrandtさんはスタンフォード大学の工学博士でポルシェやヒューレットパッカードのエンジニアをされた方です。第三版のこの本は中古で手に入れました。もう絶版ですが定価は25ドルです。値上がりしていまして倍近くで購入しました。新品はとても買えない値段となっています。

しかし不心得者がネットにアップしていますので記事内容はネットで見ることが出来ます。私も恥ずかしながら10年以上前にネットで読んだ一人ですがやはり紙ベースで見るのとは違います。

本になっていますとパラパラとめくっているだけで新しい発見があります。復習ができます。疑問点を書き込みできますのでこれもプラスになります。

面白い記事をご紹介したいと思います。

ソルダリングについて書いています
どのように計測したかを書いています

76ページのソルダリングについてです。昔からスポークのソルダリングについて議論されてきたようです。ブラントさんはソルダリングする前とソルダリングした後のホイール、同じホイールに同じ負荷をかけてホイールのひずみを計測した実験をしています。結果ではほとんど変化はなかったということです。結論としてどちらも同じとしています。

ソルダリング賛成派の人は自転車に乗った状態と置いて測るのとは条件が違うという意見が多いです。私は利点がわからない派でして違いがわかりません。してもしなくても私には同じですので飾りとしてソルダリングはします。手が込んだホイールに見えるので時々します。お客様のホイールにはハンダが下手なので行っていません。

そんなに英語は得意ではありませんが文学英語ではありませんのでとても分かりやすいです。買うと高価な本ですがネットで調べることはできますのでホイール好きの方にお勧めします。