先日銀輪ホイールをご注文いただきましたお客様より再度のホイールチェックをご依頼いただきました。ホイール調整は2セット目になります。
4年ほど前にプロビルダーさんにオーダーされた銀輪ホイールの再点検です。
わざわざビルダーさんへ持参しなくても私のほうで調整出来るとご判断いただいたようです。
お預かりホイールは次の通りです。
前輪
リム マビックオープンプロ36穴
ハブ カンパハブ
スポーク コンペティション シルバー左右3クロス組
ニップル DTアルミニップル
後輪
リム マビックオープンプロ36穴
ハブ カンパハブ
スポーク 右ドライブ側 コンペティション シルバー 2クロス組
スポーク 左ノンドライブ側 コンペティション シルバー4クロス組
左サイドにソルダリング
ニップル DTアルミニップル
私のほうではお預かりしましたホイールはいつもスポークテンションを調べます。下図のグラフが前後輪のテンショングラフです
ホイールの縦ブレ横ブレはしっかりとれています。上写真の通りセンターも驚くばかりの真ん中です。ニップルはアルミニップルですので長めのスポークでニップルのすり割りを突き抜けて作られています。このように少し長めにするとニップルの頭が飛ぶ心配はいりません。アルミニップルの弱点をよく知っておられ、扱いなれた方です。
後輪は左4クロス右2クロスと凝った組み方をされています。左スポークにはとてもきれいなソルダリングを施されています。これだけきれいにソルダリングできる人は少ないと思います。クロモリロードにはぴったりに美しいホイールです。
組んである状態ですのでハブのサイズが正確にわかりません。このためほぼ同等のシマノハブで後輪スポークテンション左右比率を計算してみたいと思います。
あくまで計算上の理論値です。後輪は左4クロス右2クロスで組みますと理論値では左52:右100の比率で組めます。通常の左右3クロスなら49:100、左3クロス右2クロスなら50:100の比率です。左サイドのスポークテンションは49,50,52と約1%刻みで改善されます。大幅な改善とみるか、なんやそれだけとみるかは個人の感じ方です。私は大きな改善とみています。
こうしていろんな36穴リムでのクロスパターンを仮定しますと左4クロス右2クロスは一番高い比率で組めます。しかしこのハブで4クロス右2クロスを組みますと左スポークは計算値ではオーバーラップしますのでは一般的には行いません。
オーバーラップとは写真のようにスポークが重なり合うことです。スポーク同士が接触しあう組み方ではスポークが曲がって干渉しあうことがあるのでお勧めしないといわれています。私はやったことがないので良いのか悪いのかはわかりません。
調整後の左テンションの計測値は約52kgf:123kgfで仕上がっています。11速に伴ってハブオフセットの値が大きい最近のハブでは左スポークテンションがとても緩い仕上がりになりますのでこの実測値は高い仕上がりと考えます。
お預かり時の各スポークテンションを調べますと上図のテンショングラフになります。グラフで見るととても分かりやすいです。スポークテンションは強弱強弱と波打ちながらもきれいに振れ取りが出来ています。振れはほとんどありません。これだけきれいに振れ取りをされていていれば通常ならOKです。
このホイールはとてもきれいな仕上がりですのでスポークテンションが揃っていないのは残念です。
いつも各スポークテンションの偏差を5%以内に収めていますのでオーナー様はこのホイールのスポークテンションがもっと揃うようにということで今回依頼されました。
各スポークテンションを揃えて且つ振れを最小になるように再調整終わったグラフが下図のグラフです。
どのくらいパフォーマンスが上がったかを感じ取ることは低速時では難しいと思いますが各スポークのテンションがほぼ同じに引っ張っていることにより高速時では違いがよくわかると思います。可視化しますとよくわかります。スポークテンションの均一化はとても大切です。
今回はいろんなホイール、自転車を乗ってこられた目の肥えたユーザー様に信頼を得たことがとてもうれしいです。