レーシングゼロの振れ取り アルミスポークは難しい

レーシングゼロの振れ取りをご依頼いただきました。原因は伺っていませんが10mmくらい大きく振れています。

前輪640g
後輪877g

レーシングゼロのアルミスポークを事前に用意しています。理由は勿論失敗したときの取り換え用ですがテンションメーターの換算表ではアルミスポークのデータがありませんのでスポークテンションを測る際データを取っています。

スポークを引っ張って計測しています これなら正確です

デジタル計では31が120kgfと出ています。当然グラフ用のソフトは何kgfと出るのですが数値は違っています。つまりその都度換算しなくてはいけません。

お預かりしました時にいつものようにスポークテンションをメーターで測りました。グラフに出ています数値は後で換算します。先にバラつき度を見ています。

お預かり時の前輪 ほとんど振れがありません いい状態です
後輪 お預かり時はバラつきが大きい状態です

前輪はほとんど振れもなく3カ所ほど触りましたがメーターに出るほどではありません。とてもよくできています。

後輪は大きく振れていますのでスポークテンションのバラつきも大きく出ています。

パークツールのSW11  使うほうにテープを巻いてわかるようにしています
DTのスポークホルダーを使いました

用意した道具はパークツールのニップルレンチSW11です。ねじれ防止にはDTのスポークホルダー黒を使いました。このホルダーは赤と黒がありますが太いスポークには黒を使います。ギリギリですがレーシングゼロのアルミスポークに使えます。7cmと幅広くねじれ防止ができますのでスポークが折れにくいです。

アルミスポークは剛性が高く軽いスポークですが硬いので脆い感じがします 扱いが難しいです

今回の振れ取りでは失敗をしています。スポークを折ってしまいました。ちょっとしたことですが面倒くさいと思ったのが原因です。ねじれ防止にプライーを使ったのです。プライヤーでしっかり押さえながらやったのが間違いでした。圧力が一ヶ所に偏ったのでしょう。ぽきんと簡単に折れてしまいました。

用意していましたスポークに取り換えて再度ニップルを回したのですがまたもや折れました。この時はさすがに気持ちが折れました。何が原因なのかしっかり考えました。やはりスポークのねじれ防止のサポートが不足でした。面倒がらずにスポークホルダーを使えば良かったです。

新しくスポークを用意して再度取り掛かりました。今度は慎重になっています。何度もテンションメーターで確認しながらニップルを回しました。スポークホルダーもニップルの根元に来るようにしてねじれをしっかり防止して回します。

実際のスポークテンションは左73kgf・右120kgfです よく揃っています

スポークテンションを出来るだけ揃えて、出来るだけ振れを少なくしました。テンションと振れの兼ね合いで出来上がりが最良にポイントを探して調整します。ある程度の妥協も必要ですが出来るだけいいところを見つけます。

改めて感じる点があります。アルミスポークは難しいです。軽くて剛性が高いスポークですが硬いので脆いようです。ねばりがありませんのでねじれに弱いと思います。手を抜けば簡単に折れますので扱いには注意が必要です。しかし怖がっていても前に進めませんので正しく怖がればうまくいきます。

シマノDura7850とゾンダのリムを比べてみました

ご提供いただきましたDuraホイール7850を分解しましていろんなことを学ばせていただきました。今回はリムについてみてみたいと思います。

Dura前輪リム 443g
ゾンダ前輪リム 445g
左Dura  右ゾンダ どちらも穴ナシリムです

DURAリムの重量は443g、ゾンダも445gとほぼ同じ重要です。作り方も穴ナシリムです。リムの内側にはニップル穴がありません。リムの内部に穴がないということは通常の穴ありリムと比べてどのくらい強度があるのかは正確なところわかりませんが強度が穴アリと比べて高いということは想像できます。

Dura
ゾンダ 

ニップル穴の部分はどちらもアルミリムを削らずに残して穴のない部分を削って軽量化を図っています。削る前のリムの厚みは結構ある感じがします。ニップル穴の部分を残して他の部分を削るということは作るのに手間のかかったリムであるということです。

Duraホイールは特殊なプラグでスポークを固定している

ホイールに作り上げていく作業ではDuraホイールは特殊なプラグを用意して外からスポークを通すという組み上げ方法を選んでいます。方やゾンダは通常のニップルをマグネットで運んで組み立てる方法です。

作業工程を考えますとDuraホイールのほうが外からニップルを締めるので楽と思います。カンパのようにマグネットを使う方法は材料費が安く済みますが熟練のビルダーさんでないと難しいと想像します。

どんな方法で作業しているかわかりませんが仮組まではシマノ方式のほうが楽のようです。カンパのようにマグネットでニップルを外に引っ張り出す作業は時間が掛かる感じがします。あくまで想像ですので実際はとても簡単にやっているのかもしれません。そうでないとゾンダの価格は安いと思います。

DURAは特殊な部品を使い、ゾンダは普通の部品を使っている、これだけ考えても面白いし国民性というか文化的な違いを感じてしまいます。愚直に技術を推し進める無骨なシマノ、方やセクシーなホイールを売り込み上手なカンパ、どちらも素晴らしいです。しかし3G組はうまく考えたものだとつくづく実感します。

Dura7850とゾンダのスポークは取り付け方法が違う

魔改造ホイールにどうぞと提供していただきましたDuraホイールから取り出したスポークとカンパニョーロのゾンダホイールから取り出したスポークをじっと見比べてみました。

上Duraホイールのフロントスポークは特別仕様です  下ゾンダより取り出したスポークは普通のスポークです

どちらもストレートプルスポークです。しかしじっくり観察しますとDURAホイールの前輪スポークは両側に頭があり、中にアルミプラグが入っています。方やゾンダの前輪スポークは一般に販売されているスポークと同じ(全く同じものではありません)ようなスポークです。

Duraホイールのスポークは手が込んでいます。作り込んでいる感じがします。スポークとしての役割はどちらも同じ役割を果たしているのですがこうも違うと文化論まで論じてしまいそうな違いを感じます。

スポークの機能は同じです。このDURAホイールは約15年前に購入されたと伺っています。勝手な想像ですがこのスポークを見ればシマノの設計チームの意気込みが感じられます。ただし評価はいたしません。

取り出しましたスポークは今や貴重品です。大切に保管したいと思っています。 いただきましたホイールからいろいろ学ぶことが出来ました。ありがたいです。次は後輪ハブについてみてみたいと思っています。

31mm高24mm幅キンリンワイドリム使用アルミホイールの作製

約1年このブログをお読みいただいた方よりスポークテンションが揃っているホイールはどのようなものなのか使ってみたいとご連絡いただきました。

今使っておられるホイールはDTのRR411リムの28穴です。ご自身のホイールと比較してみたいので新しいホイールは28穴のホイールを提案して欲しいとご依頼いただきました。

普段は100km~120km走られるロングライドをメインで楽しんでおられるようです。クロモリフレームに乗っておられるベテランの方です。

提案のホイールはこのブログで何度も紹介していますキンリン社のXR31T/RT 31mm高24mm幅のアルミリムを使ったホイールを提案しました。

ハブはノバテックの軽量ハブ、スポークは前輪にバテッドの1.5mmスポークです。後輪左は1.5mmのバテッドスポークを使い、右には1.8mmのバテッドスポークを使います。中央部が細いバテッドスポークはショックアブソーバーの働きをしますので地面からの衝撃を吸収してくれます。ロングライドに適した疲れにくいホイールです。

左前輪用 右後輪用 3mmオフセット

前後ともに28穴リムで作製します。後輪はオフセットリムなのでスポークテンションの左右差を少なくできます。約10%是正できますのでこれは大きなメリットです。リム重量は約500gと重量はあるのですが31mm高なので軽いほうといえます。リム剛性が高いので走行中の体重が原因で起こるリムのひずみは小さいです。このため駆動ロスが少なく、空力の良いよく回るホイールに仕上がります。以下詳細です。

リム XR31T/RT 前後共に28H

ハブ ノバテックA291SB,F482SB 共に28H

スポーク 前輪TB2015 2.2/1.5/2.0mm シルバー

スポーク 後輪左Laser 2.0/1.5/2.0mm 右コンペティション 2.0/1.8/2.0mm シルバー 

ニップル DSN シルバー

前輪750g
出来るだけスポークテンションを揃えています
後輪936g
オフセットリム使用で左のテンション値が高く仕上がっています

出来上がりました。振れは最小になるように、スポークテンションは出来るだけ均一になるように調整しています。特に後輪左のスポークテンションは高く仕上がっています。

今使っておられるDTホイールとこのキンリンホイールの乗り比べは楽しみです。

因みに当方のキンリンホイールとゾンダを乗り比べられたユーチューバーの方がおられます。この方のご意見ではキンリンのほうがいいようです。

Duraホイールを分解して新しい前輪を作りました

頂戴しましたDURAホイールの前輪をばらして新しいカーボンホイールを作りました。

DURA WH7850 前輪658g

ハブはストレートプルスポーク用です。正確にハブを計測すれば意外と簡単です。

しかし穴ナシリムを使ってのホイール製作ですので難しいことには違いありません。

新生のカーボンホイールです。

新生カーボンホイール 659g

リム 36mm高28mm幅カーボン穴なしリム 16H

ハブ DURA WH7850から取り出した前輪ハブ

スポーク ピラー wing21 黒

ニップル DT SquorxPro ブラス 黒

スポークはDuraの時のスポークより少し重くなりました。僅かな重量ですが剛性は上がっています。しかしニップルが軽くなりましたのでホイール総重量は変わりません。リム高が増えましたので空力は上がりました。

特殊スポークです

取り出しました前輪スポークは写真のように特殊なスポークです。両側に頭がついています。今回のカーボンホイールに使えないかと考えましたがサイズ的にカットして使うには余裕がありません。このため新しいスポークが必要です。

次は後輪です。今リムを注文しています。6月の入荷予定です。手に入り次第取り掛かります。

魔改造ホイールに使ってくださいとDURAホイールを頂戴しました

アルテグラホイールのテンション再調整のご依頼受けまして難易度の高いホイールであったことを記事(5月3日)にしました。扱いが難しいと逆に闘志を感じさせるホイールなのでジャンク品を探して魔改造を試みたいとブログに書きました。するとあるお客様よりご連絡いただきました。

15年前に購入されたということですが現在は3本ローラー用のホイールです。使っていないDURAホイールWH7850があるので新しく生まれ変わるのなら使ってほしいといっていただきました。このご連絡にびっくりしましたがせっかくの御厚意なのでありがたく頂戴しました。

前輪658g
後輪869g

お送りいただきましたDURAホイールです。きれいなホイールなので分解するのはもったいないですがばらしました。

前輪は658g、後輪は869g、前後で1527gです。スポークは特殊なニップルで固定されています。このニップルがもとで扱いが難しくなっています。ゾンダのように通常のニップルを使う構造なら整備がもっと楽になり今も販売され続けているロングセラー商品になっていたかもしれません。いただいたホイールなのにとやかく言うのも行儀悪いと思いますが敢えて申し上げると製品の性能にこだわりすぎて

造り込みすぎたかも?です。

常に新築の木造建築を好む国と石の家に長く住む国の考え方が出ているのかもしれません。しかし、シマノの製品はとても長持ちします。良い製品は長く使えるので補修部品は要らないように作られているのも事実なのでどちらがいいのかわかりません。

前輪 穴ナシリム443g
前輪ストレートプルスポークハブ123g
スポーク・ニップル 16本で88g 1セット5.5g
後輪用リム 穴ナシオフセットリム 467g
後輪用 275g ストレートプルスポーク使用
後輪用 スポーク・ニップル 20セット127g 

ばらしました。前輪リムは443g、スポークとニップルで88g、ハブは123gです。後輪リムはgでオフセットリムです。スポークとニップルで127g、ハブは275gです。これらのリム、スポーク、ニップルは今やとても貴重な品物です。

これから新しくカーボンリムを用意して新生のカーボンホイールを作ろうと思います。ご提供いただきましたお客様に感謝!!です。

カンパ・ハイペロンウルトラのスポークテンション調整

カンパのハイペロンを購入したのですがテンションを見てほしいと連絡が入りました。お客様は以前カーボンホイールをお買い上げいただきました堺市の自転車屋さんのオーナーです。自転車の整備には自信があるがホイールの調整は任せるというお考えです。

きれいな状態です
前輪584g
後輪772g

こちらもある程度のことはできますが自転車の整備はメカニックさんにお任せしたほうが楽です。自転車屋さんへ相談に伺うことは多々あります。まあ仲良くすればよいわけです。お互いに情報交換して腕を磨くのが大切です。

いつものようにホイールのテンションを点検しますと次のような状態です。

前輪 緩くてバラつき度が大きい
左の非ドライブ側のバラつき度が大きいです

前輪が異常に緩いにです。この点がお客様も気になられてこちらに送ってこられた理由です。

何故こんなに緩いのかわかりませんがお客様と相談の結果目標値を約90kgfで仕上げるようにしました。後輪は張りすぎでもなく緩くもないテンションです。出来るだけ均一になるように調整しました。

細かいことですがホイールはインターナルニップルを使っています。後ろから調整するので締め増しするのは楽です。締めるのは楽にできますがどの程度テンションが上がったのかはわかりにくいのが難点です。この説明でピンと来られる方はなかなかの腕をお持ちだと思います。こまめに校正したテンションメーターで確認するのが一番の近道のようです。

前輪を約90kgfで仕上げました
後輪 出来るだけスポークテンションのバラつきを少なくしています

調整が終わった状態です。飾っておきたいホイールですがいつでも出番があれば使える状態にしておくのも大切なことです。めったに出会えないホイールに会わせていただきました自転車屋さんに感謝です。

カーボンホイールのアルミニップルをブラスに交換

中華カーボンホイールの中では名前の通ったホイールのアルミニップルを交換してほしいとご連絡いただきました。

ご自分でもホイールのテンション調整ができるベテランライダーさんですがテンションメーターの校正が出来てなく少し不安があるそうです。やはりカーボンホイールのテンション調整はシビアにしたいとご希望です。

お預かり時の前輪スポークテンション  バラつき度が高い

このメーカーのリムは購入したことがあります。いいリムで長く使っています。ただ今回知ったのですが、残念ながらこのメーカーが販売する既成ホイールに関してはスポークテンションのバラつき度が大きく本来の力が発揮できないホイールと思いました。メーカーのビルダーさんに当たり外れがあるのかもしれません。

前輪603g
後輪734g
ダブルスクエアニップル

ニップルはダブルスクエアのブラスニップルに交換しました。このニップルなら前からでも後ろからでも回すことが出来ます。テンション調整で締め増しするには後ろから調整したほうがしやすいと思います。ダブルスクエアはとても使いやすいお勧めのニップルです。

スポークテンションは出来るだけ均等になるように調整します
スポークテンションのバラつきを少なくします

ニップル交換が終わりスポークテンションのバラつき度を5%以下にするように(数値が少ないほうがいい)しています。今まで何度かDuraホイールを調べたことがあり、バラつき度が5%前後でしたので手組ホイールファンでは5%よりよくなるように調整しています。Dura以上を目標としています。

スポークテンションは125~130kgfで均一になるようにしています。タイヤをはめると10~15%テンションダウンしますのでそれも計算に入れて調整しています。

最近のアルミニップルは強化アルミを使われていますので強度面では心配することは無用といわれています。しかしダート環境でのレースに出られることが多いのであれば腐食のことを考えた方が良いかと思います。アルミニップルも弱点はあります。レースで泥だらけになることが多いのであるなら、レース後洗っていても腐食は知らない間に進むものです。見た目はきれいでもスポンとスポークが抜けることがあります。その点ではブラスニップルは重くなりますが安心度は高いです。

再生バルブを使ってみると合格でした

使用済みのチューブから取り出したバルブを使ってチューブレスタイヤをインストールしてみました。

再利用のバルブは使えるか?試してみました
ゴムワッシャーを一枚入れました

空気をコンプレッサーで入れてみますと一気にビードが上がり、これは使えると思いました。

では空気漏れはどんなものかと調べてみますと大丈夫でした。丸一日置きまして再度測ってみると良い結果が出ています。

空気を入れて測ると6.12気圧です  一日後にもう一度測ります
一日経って5.72気圧を表示

6.12気圧を入れて一日経って測ってみますと5.72気圧でした。

一日経ってこの減りでしたら合格です。

再生バルブは使えます。ホームセンターで買ったゴムワッシャーで空気を止めれば古いバルブでチューブレス運用はできます。但しシーラントは入れています。

キャノンデールhollowgram 35ホイールを調整

シクロ選手のお客様よりご連絡いただきました。今まで何度もレース用のホイールを作らせていただきましたリピートオーダーのお客様で、今回はキャノンデールhollowgram 35カーボンホイールの再調整依頼です。

前輪721g ブレーキ側16本 右非ブレーキ側8本
前輪 左クロス組右ラジアル組
後輪861g 左14本右14本 1:1組
左右クロス組

お預かりしましたホイールは前輪24H後輪28Hの組み合わせで前輪は2:1組、後輪は1:1の組み方で作られています。

ホイールはいつものようにスポークテンションを調べてからどうするかを決めていきます。

前輪、後輪は次のような状態でした。グラフにしますとよくわかります。

前輪のグラフ  左ブレーキ側約120kgf右約158kgfと右が高過ぎる
後輪グラフ テンションは均一ですがもっと揃えることが出来ます

前輪は2:1組で左ブレーキ側と右非ブレーキ側とのテンションを見ますと右側が少し高すぎるように見えました。少しテンションを下げることをお勧めしました。

調整後の前輪  全体として少しテンションを下げました

低すぎるのも問題ですが高過ぎるのも注意が必要です。少しだけテンションを下げて調整しています。

調整後の後輪  左右のスポークテンションは出来るだけ均等になるように調整しています

後輪はテンションをあげて、均一化に注意をはかり調整を行いました。

前後共にスポークは出来るだけ揃えることです。振れ取りかテンションかとなりますとテンションが優先です。

もともとよくできたホイールでした。しかし使われる前に状態を知っておかれたので安心されたと思います。今シーズンはこのホイールで大会に出られるようです。お手伝いできてありがたいと思っています。