通勤やロングライドに愛用されている手組ホイールの状態を知りたいというご連絡が入りました。
私はいつもスポークテンションが揃っていることが大切とこのブログに書いています。このテンションの一致にとても興味を示された方からのご依頼です。
今乗っておられるホイールを調整しますとどのように変わるのかを知ることは私にとっても勉強になりますのでテンション調整をお受けすることにしました。
前輪 915g
前輪DURA HB-7900 36h 左右3クロス組
後輪 1036g FH-7900 36h
Duraハブは丈夫で美しいですね。左右3クロス組です。
お預かりしましたホイールはマビック36穴オープンプロに36穴Duraハブ、スポークはDTチャンピオンにブラスニップルという構成です。
いつもホイールをお預かりしますとスポークテンションを点検いたします。グラフにしました。
以下ホイールを点検しました。
前輪
お預かりの時状態
センターはしっかりと出ています。驚くばかりです。
センターがよく出ています。
きれいに組まれています。目視では縦、横の振れはありません。センターも驚くばかりドンピシャです。
スポークテンション
スポークテンションが約60kgfです。とても緩い仕上がりです。スポークテンションは強弱、強弱でバランスが取れています。
スポークテンションは約58kgfと緩い仕上がりです。緩いテンションはスポーク折れの原因になりますのでもう少し高いほうが良いと思います。
一般には前輪は100~110kgf、後輪右110~120kgfが良いとされています。
各スポークを計測しました。バラつきがとても多い仕上がりです。各スポークが強弱、強弱とバランスが取れているので振れが出ていないのです。お預かり時のスポークテンションをグラフにしています。
各スポークにばらつきが多いホイールは長い期間使用すればスポーク折れの原因になります。今まで折れなかったのはスポークが太くて36本あるので各スポークへの負担が分散されて負荷が少なかったと思います。
リムテープを少しめくってスポークの長さを見ましたが適正でした。
作業
各スポークテンションを約100kgfにあげてしっかりと揃えています。
各スポークのテンション調整を行いスポークのテンションを揃えできるだけ均一になるようにします。振れは最小に、テンションは最大限均一に、このような作業を行います。
最後にスポークの緩み止めのためロックタイト220を各ニップルに一滴注いでいます。固着しないタイプですので簡単に緩めることができます。
後輪
お預かり時の状態
下写真と比べたらセンターが少しずれているのがわかります。
左非ドライブ側に約0.5mmずれています。しかし問題なく乗れるのは確かです。
きれいに組まれています。振れもありません。センターが少しずれています。
スポークテンション
強弱、強弱と続いています。これでバランスが取れています。一ヶ所ゆるゆるでグラフにならない箇所があります。
スポークテンショングラフで見ることにしました。各スポークのテンションを測りますとよくわかりますがバラつきが非常に大きいです。後輪も強弱、強弱の連続です。強弱、強弱とバランスが取れていますので振れが出ていません。この理由で見た目ではきれいにできています。ホイールは見た目ではわかりません。
ホイールが回り、力が各スポークに加わりますとばらつきスポークが原因で駆動効率は下がります。加わる力が一定でも受ける側のスポークにばらつきがあるので均一に力が伝わりません。しかしこれらの違いがわかるのは高速時で低速ではあまり分からないと思います。
スポークが36本あるのは非常に強力で欠点が目立ちにくいです。グラフでもわかりますが1ヶ所ゆるゆるのスポークがあるのに乗れています。多スポークホイールの良いところが出ています。
作業
後輪です。各スポークを均一になるように仕上げています。
●スポークのバラつきが大きいので先ずこれを是正します。
ドライブ側と非ドライブ側とは少しずらしています。下写真と少し違います。
ほんの少し非ドライブ側に寄せています。
●センターがずれていますので先ずセンターを出してからほんの少し非ドライブ側(左側)に寄せるように調整します。0.2mmくらいが良いかと思います。タイヤをインストールしますとリムは右に寄りますので事前に少しだけ寄せておいてスポークの調整をします。
●各スポークテンションのバラつき偏差は5%以内に収めます。
●最後にロックタイト220を各ニップルに少し注いで固定します。スポーク、ニップルを痛めることはありません。固着しないので緩めることも容易です。
まとめ
お預かり時と修正後は見た目は同じです。振れもほとんどありません。
後でホイールはご自分で作られたのですかと伺いますと自転車屋さんにオーダーされたそうです。振れ取りができれば完成と思われている方が多いのは事実です。あと一歩足りないのが残念です。
各スポークを見直し、スポークテンションを均一になるように調整しました。
恐らく乗り味はスポークテンションを上げましたので少し硬くなった用に感じられると思います。これはホイール剛性が上がったということではありません。スポークテンションと剛性とは別の問題です。ホイールの剛性はスポークの総面積に比例しますのでテンションを上げたから剛性が高まるということではありません。
乗り味が変わったのか、あまり変化はないのかインプレを教えていただけると思いますので楽しみです。