ホイールの手軽なアップグレード

今回はお客様よりわかりやすく箇条書きで教えていただいた注意点を参考にしまして記事にしています。ご存知の方はなんや~という記事ですがどなたもビギナーの時があります。

ホイールにはリムの剛性、ハブ、スポーク、タイヤと4つの要素を組み合わせて作りこみますがあとで修正が利くところはベアリング、スポーク、ニップル、タイヤです。

スポークも取り換えることはできますが最終の手段です。ニップルもいったん決めるとあまりさわりません。こうなるとベアリング、タイヤとスポークテンションが大きく寄与すると思います。この3つの中ではベアリングは簡単な人には簡単、難しい人にはむずかしいです。こうしてみていきますとタイヤとスポークは後で修正しやすいです。

先ずスポークテンションの均一化はお金のかからないアップグレードです。ただ、むずかしいのが難点です。

費用のかからない調整がもう一つあります。

クロスバイクのホイールにもバランス調整をしています。ロードバイクに負けません

ホイールバランスです。完組ホイールではこのバランス調整したリム使っているのをホイールの有利点として謳っているホイールが多々あります。ホイールのウリとして宣伝していますがこれはどんなホイールでも後からできることです。特別なものではありません。

ホイールの回転が止まるとほとんどのホイールはバルブ側が下に止まります。このバルブが時計の3時、9時の位置でもバルブが止まるように重りを取り付けて調整するのです。

ゴルフショップで購入したパター用の鉛板
1円玉 1枚1gです
9時の位置でも止まるように枚数を調整する
必要なグラム数を鉛板に交換

ホイールにはバルブの重量が回転に影響しています。またアルミリムの場合ジョイント側にスリーブを使って接続しているリムがあります。中級リムではほとんどがスリーブジョイントです。このスリーブジョイントのアルミリムではバルブホールの反対側に重さの偏りがあります。

アルミリムではスリーブとタイヤバルブの重量が回転に影響します。溶接ジョイントではバルブ側が回転に影響します。このようにリムの重量バランスが回転に影響与えています。

ホイール回転を円滑にできるホイールバランス調整は簡単にできます。そして効果は大です。

用意するのは1円玉とゴルフショップで鉛板を購入した鉛板です。タイヤが常に止まる位置の反対側に1円玉を1枚、2枚と増やしてバルブが3時の位置でも止まるグラム数になったら一円玉の枚数分が〇グラムですのでアルミ板を〇グラム分切り取ってリムに貼り付けます。これだけです。わずかな費用で済みます。

ホイールの回転調整に数グラムの鉛板を張るだけで明らかに回転は変わります。ホイール回転の音が変わります。

 

通常の自動車のホイールには必ず施されているバランス調整です。自転車も行うべきと思います。

ホイール調整のご依頼

キンリンXR22T/RT20・24hをお買い上げいただいたお客様より今までご使用のホイールの再調整を依頼されました。

ホイールはイーストンのアルミホイールです。最初の状態を知るためにスポークテンションを調べました。

次のグラフが最初の状態です。

お預かり時の前輪スポークテンション
お預かり時の後輪スポークテンション

では先ず前輪について説明いたします。

スポークテンションが数か所大きく違う場所がありました。細かく調整しなおしましたのでグラフはきれいな丸になっています。まあ完ぺきではありませんが使える状態にしました。

修正後の前輪スポークテンショングラフ

 

次に後輪です。

修正後の後輪スポークテンショングラフ

上図が調整後の後輪です。

 

一ヶ所、理由はわかりませんが大きく歪んでいるところがあります。おそらく落車が原因と思われます。振れ取り台のメーターで見ますと1mm以上の凹みがあります。

この凹みが原因で縦ブレ横ブレが起こります。

今回このホイールの再調整では完全な丸にはできません。お預かりの時点では無理やり丸にしようとしていましたので非常に緩いスポークが数か所ありました。これがホイールの性能を悪くしていた原因です。前へ進む力がこの緩いスポーク数本で減じていたと思います。

 

スポークのテンションを調整してリムを丸い状態にすることはできませんので、凹みは凹みと受け入れて調整いたしました。まあ、無視するわけです。そしてスポークのテンション均一化だけを最優先しまして調整しました。グラフで見ていただくとわかりやすいです。ホイールの9時のポイントがへこんでいるのですがスポークテンションはおおよそ均等に張られています。

リムに1mmの凹みがあるのですがタイヤに空気が入りますとわからないと思います。今まで乗っておられたので先ず大丈夫です。

ホイールセンターはハブの設計上どうしても左が緩いので(53kgfまで上げています)リムセンターを左に0.6mm寄せています。つまりスポークを適正値より強く引っ張って調整しています。本来の適正値で調整すると50kgfは大きく下がる数値になりますのでリムが左に寄るのを承知で調整しています。

タイヤがはまりますと0.2ミリほど右に寄りますが、使用時のホイールは少し左に寄っています。しかしこの状態は使えない状態ではありませんので最終的にはブレーキ側で調整することでお願いしました。

 

お届しましてお返事がありました。このホイールは中古品を買われたようです。販売した人はへこんでいることなどはお客様には話していないようです。使っている間に不都合な点がわかられたようです。中古品のリスクは身に染みたとおっしゃっています。見た目だけではわかりません。安すぎるホイールは怪しいです。

中古品マーケットはいろんな媒体で増えていますが自分で直せる人、またメンテができる人のルートを持っていない人は手を出すのは危険です。

ホイール再調整のご依頼

先日、銀輪ホイールのご依頼をいただきましたオーナー様の奥様が所有のホイール調整を依頼されました。

 

ホイールは次の仕様です。

マビックリムの手組ホイール 前輪858g
後輪 1065g

リム マビックリム

スポーク DTチャンピオン 2.0mmストレート

ハブ シマノ前HB5800 後FH5800

ニップル ブラス シルバー

前輪 858g 後輪1065g 前後1923g

 

このホイールはユーザー様のご友人が組まれたホイールとのことです。

 

前輪の振れは±0.2mmの振れでした。とても優秀です。きれいに回ります。

軽いホイールではありませんが見た目はほとんど振れていないクラシックなクロモリロードにはぴったりのスタイルです。

 

ただ奥様は踏んだ時にスピードに伸びがないホイールというご不満をお持ちです。

 

さて、スポークテンションを調べました。下図のグラフが分かりやすいと思います。

お預かり時の前輪スポークテンショングラフ

前輪 左67.8kgf スポークテンションばらつき25.7

右64.0kgf スポークテンションばらつき15.7

お預かり時の後輪スポークテンショングラフ

後輪 左40.9kgf スポークテンションばらつき40.8

右101.8kgf スポークテンションばらつき23.0

 

となります。総じてとても緩い仕上がりです。しかもスポークテンションのバラつきが大きく目立ちます。振れは全くないのにとても残念な仕上がりです。

修正しました。

テンションを上げて均一になるように修正
修正後の後輪スポークテンショングラフ

今まで何回もテンションのバラつきを記事にしてきました。今回も同じ説明の繰り返しになってしまします。

見た目ではホイールの良し悪しはわかりません。きれいに車輪は回っていてもパフォーマンスは全く違います。理由は各スポークテンションばらつきにあります。

スポークテンションがばらついていますとクランクを回して発生した力が各スポークに伝わるまではどのスポークにも同じ力が伝わりますが車輪を回す力はバラバラのスポークで駆動ロスが生じます。スポークの張りは揃っていないといけません。

 

オーナー様が踏み込んでも伸びないとおっしゃるのはリムの剛性が大きく影響しますがスポークの張りが不揃いなのも原因の一つと思われます。

スポークテンションの均一化調整はお金のかからないグレードアップになるのではないでしょうか。ただし経験が必要なのでハードルが高いのが難点です。

テープ選びにてこずる

リムテープの交換を行って感じたことを今回記事にしています。私の経験不足でこの結果になったのかもしれませんが意外と同じような経験を持つ人が多いと思います。

以下DT RR421アルミリムを使ったグラベルロード用のホイールでチューブレスレディーホイールとして取り扱った時の経験です。

 

RR421はチューブレスレディリムなのでチューブレスで使うにはテープを貼って空気止めを行うことが必要です。先ずはテープを貼ってバルブを取り付けます。リムテープは定番の黄色テープを用意しました。。

定番の黄色テープ

リム面をアルコールできれいにふき取り油分を取り除きます。ピンと引っ張りながらゆっくり空気のふくらみを取りながら巻いていきます。指圧をするような感覚です。通り重なる部分を10cmほど取りカットし、千枚通しでバルブ穴のところを突き刺してバルブをセットします。

タイヤは方向がありますので注意が必要です。私は手軽な石ケン水を使っています。タンク付きのポンプで空気を一気に入れますと一発でビードは上がりました。

 

タイヤに書いてあります推奨空気圧まで入れて様子を見ることにしました。

 

4時間くらい経って空気圧は1気圧くらいまでに減っています。残念ながらこれでは使い物になりません。しっかりとテープは注意して貼っています。しかし考えられるのはリムとテープがきっちりと貼れてなくどこかで漏れているのです。

 

どうやら一つのテープでどんなリムでも使えるとはいかないようです。これでなんでも使えるテープはないようです。

ブルーのテープで試してみました

ポリイミドテープとブルーテープ

リムとテープの相性が悪いと考えましてもう一度別のテープで試みました。いつも使うブルーテープです。うまく行きません。次にポリイミドテープを試してみました。

同じ手順でテープ貼りを行いビードも一発で上がるのですが6時間ほどでタイヤはペコペコになっています。これもうまくいきません。

 

DTリムは梨地仕上げのためキンリンリムのようにつるんとしていません。少しざらざらしています。これが影響しているのかなと思います。。なかなかピタッとテープがくっつかないのです。

 

ビードは上がるのですが長持ちしない原因はここにあるとにらんでいます。

リムとテープの相性は相当あるようです。テープ代は結構嵩みます。安価に済まそうといろいろやってみるのですがなかなかピタッと来るものがありません。

 

DTリムにはDTテープがいいのかもしれません。テープ選びはなかなか手強いです。

グラベルロード用のディスクホイールの組み換え

ホイール組み換えをご依頼頂きました。

DT RR421 disc rim使用

ホイールはお近くの自転車屋さんで組んでもらったグラベルロード用のディスクホイールでした。組んでもらって1年もたっていないとのことです。組み直しの理由は1本ゆるゆるのスポークがあり、どうしても直らないので組み直しを考えられたようです。

 

自転車屋さんには何度も持っていかれたのですがもうこれ以上は無理ですといわれたようです。

スポークが緩すぎてテンションメーターが使えない

お預かりホイールのスポークテンションを調べました。これで大体の様子がわかります。

グラフを見ていただくとわかりやすです。

 

よそ様が作られたホイールにどうのこうのいうのは失礼かもしれませんがちょっとひどい組み方です。見た目はとても恰好良いホイールです。このホイールはもともとがリムが歪んでいますので自転車屋さんも困ったのでしょう。

最大限に直してこのスポークテンションでした

ニップルを一度緩めて組み直しましたがうまくいきません。どうしても一ヶ所緩いところが出てしまいます。自転車屋さんが言われるようにリムのひずみが影響していると思います。お預かりしたときに緩いスポークがありましたがその位置です。通常これだけ歪のあるリムは使わないで新しいリムを用意するのが自転車屋さんのプライドだと思いますが少し残念なことです。

 

このホイールを作られた時テンションが異常に偏っています。どうしてもうまく作れないリムは確かにあります。お客様とお店とはいろんなやり取りがあったと思いますが詳しくはわかりません。

新しいリムで作り直します。RR421は軽量です。

さて、新しいリムが届き組み直しました。ニップルは当初はアルミでした。重くなりますが丈夫さのほうで勝っているブラスに替えていただきました。

お預かりのホイールではスポークがニップルを突き抜けて作られていればそのままアルミでもよかったかもしれませんがやはり丈夫さではブラスですのでブラスニップルをお勧めいたしました。

スポークの頭だ見えません アルミニップルでこの状態は危険です
取り換えたニップルの頭部ねじ山はきれいな状態でスポークがつきぬけていなかったことがよくわかる

今までに数百本とホイールを組んできていますがアルミニップルの頭が飛んだとご連絡いただいたことは4回あります。率にすれば本当に少ないのですがやはり頭が飛んだことには多い少ないはありません。

十分注意してアルミの弱点を知っているつもりでも頭が飛ぶときはあります。原因はほんの少しですがスポークが短かったことです。ニップルのすり割りのところまでスポークが来ていても経年変化で弱点が出たのだと思います。すっかりと突き抜けていれば頭は飛ばなかったと思います。

こんな経験もありますので安全性を考えますとブラスです。ホイールメーカーがブラスニップルを使うのはこんな理由からだと思います。

ニップルをすべて取り換えて完成しました
前輪スポークテンショングラフ
後輪スポークテンショングラフ

今回のホイールでいろいろ勉強させて頂きました。

●どうしても歪のひどいリムはあります。ひどいリムでは無理して組まずに新しいリムで組んだほうが安全です。

●振れが少ないホイールだけでは良いホイールとは言えないことです。オーダーされたホイールのスポークが適正に張られているかどうかを調べることが肝要です。スポークをたたけばよくわかります。音がバラバラでは揃っていません。いいホイールはスポークを叩けば、弾けば同じ音がします。

●アルミニップルは軽くてホイールの軽量化に貢献します。しかし扱いが難しいのでブラスを選択されたほうが楽に組めると思います。

銀輪ホイールの作製

以前ホイールをお納めした方のご友人からご注文いただきました。

前輪28h
前輪スポークテンショングラフ
後輪 28h
後輪スポークテンショングラフ

 

今回は銀色のヴェロシティA23アルミリムと銀色のハブを使います。この部品を使ってのご依頼です。クロモリ自転車にはぴったりの組み合わせです。見た目はクラシックでありながら中身は新しい高性能の部材を使っています。

ヴェロシティ A23
ヴェロシティ ハブ 28h
TRADIZIONE クラシックハブ28h

ロングライドでは地面からの振動で疲れるので振動を吸収してくれるホイールがいいというご希望です。

ホイールはリムとスポークの選択で乗り味が大きく変わりますのでスポークは私のほうで提案いたしました。

 

前輪はピラーのTB2015 2.2/1.5/2.0mmのトリプルバテッドスポークを使います。中央部が1.5mmの細いスポークはショックアブソーバーの働きをします。振動を吸収してくれますので乗り味の柔らかいホイールに仕上がります。

 

後輪は右ドライブ側にDTコンペティション 2.0/1.8/2.0mmと太くして左側にはサピムD-light 2.0/1.65/2.0mmを使っています。剛性を高める意味もあって太くしています。後輪の左右の違いは軽量化と左右スポークの応力の違いを利用して左スポークテンションを高めています。もちろん後輪リムはオフセットリムなので左テンションは通常リムよりも10%ほど高くでき力の伝達ロスを防いでいます。

ハブは計測してスポーク長を計算します

A23リムは精度が高くとても組みやすいリムでした。銀輪リムはなかなか手に入らないのでよい選択をされたと思います。銀輪ホイールは完組ではあまり販売されていません。結果的には手組ホイールになります。

 

フレームとのバランス、走りの具合など聞かせていただけるのが楽しみです。

キンリンXR31T/RTホイールのインプレをいただきました

昨年10月にお納めしましたホイールのインプレをいただきました。記事にさせていただくことにご了解を得ました。これからのホイール作り、購入の参考にしてください。

前輪

リム  キンリンXR31T 18h

ハブ  シマノ アルテグラHB-6700 18h

スポーク サピムCX-RAY 黒  ラジアル組

ニップル  ブラス

重量  757g

 

後輪

リム  キンリンXR31RT オフセットリム 24h

ハブ  シマノ アルテグラFH-6700 24h 10速用

スポーク  コンペティション2.0/1.8/2.0mm 黒 2クロス組

ニップル  ブラス

重量   1013g

前後1770g

以下ご感想いただきましたメールです。

 

ずいぶんと遅くなりましたが、平坦も登りも走れたので感想をお伝えさせて頂きます。

正直エアロ効果をあまり期待はしてなかったですが、その違いにとても驚きました、私はリムAL22WにRS400ハブの手組も所有していますがそれよりは明らかに時速30キロ保持の巡行が楽です、リムハイトが高い分、重量は重たくなったとしても今回作成していただいたホイールのほうが明らかに楽に走れます。ハブの回転もとても滑らかで良く回りますね、足を止めていた時にスルスルと転がっていく感覚はとても気持ちいいものです。あと、フリーの音が静かなのが私は好きなので今回のハブ選択は私にはベストです。

登りもリムの剛性が高いからでしょうか、ダンシングしたときに力が逃げずにちゃんと前に転がっていきます、横にたわまないという言い方だとわかりやすいでしょうか。登りでも向かい風は普通にあるわけですから軽さも大事でしょうが空力も大事なのがよくわかりました。今回作って頂いたホイールは万能に使えますが、ロングライドに使うのに適したホイールと思いました、楽に長い距離を走るのに適していると思いす。見た目も悪くないです。私の自転車には最高にマッチしていると思います。

それと、私が何より気に入ったのが製作者の高い技術力と、ホイール作成に真面目に取り組んでいただいたことがハッキリとわかる品物だったということです。リムとハブの選択や完璧と呼ぶにふさわしい調整は私の所有欲を満たすには十分すぎるものです、また機会があればよろしくお願いします。ありがとうございました。

 

こんなにほめていただきまして恐縮いたしますがXR31T/RTリムがいいことには間違いありません。

 

1本500gほどのリム、ハブも前後で約500gありますのでビギナーの方は少し重いホイールと敬遠されますが剛性がありますのでご心配は取り越し苦労に終わります。

踏んだ力が逃げなく適度の空力も得られます。ゾンダ、レー3何するものぞ!と思っています。

ブランドのあるなしに関わらず剛性の高いリムを使いスポークが適正に調整できているホイールはよく走ります。

DTSquorxニップル用の電動ビット

DTのニップルの中でもSquorxニップルをよく使っています。このニップルは長さ15mmでねじ部分が長く、頭部分が強化されています。ニップルの頭が飛びやすいアルミニップルの弱点を補っています。最近はブラスばかり使っていますがこのニップルならアルミもいいかなと思います。

DT Swiss pro lock SQUORX nipple

RR411などのDTアルミリムには一緒についています。リムとニップルのセット販売です。単品で購入しますと1個80円ほどの高価なニップルですがリムと一緒に販売されています。リムが安いのか高いのかわかりにくいのですがこのリムはお買い得かな?と思っています。

 

このニップルは専用のニップル回しが用意されています。手回しではとても時間が掛かります。よく使うので電動用のビットが欲しかったのですがいろいろ探しても販売されていません。売ってないのでニップル回しを一つ潰して電動ビットを作りました。

上が手回し部分を取り除いたニップル回し

中がどのようになっているのかわからなかったので金鋸で少しずつ握りの部分を切り取りました。バイスに挟んでのこぎりで刻んでいけば簡単に取り外しができました。あとは適当な長さに切っています。

しかしこの方法は回り道でした。取り出した金具部分は上写真ようになっていますのであっさり根元を金鋸でカットしてしまう方法が一番良いと思います。

これを使って最後までホイールを仕上げることはできませんが仮組まではこのビットが活躍します。手回し用と電動用と2つ使って時間短縮しています。

サピムCX-RAYは偶数の長さで販売されています

ホイール作りの中でスポーク長をまず計算します。それからスポークを用意します。この時スポークを発注するのですが長さの偶数、奇数が問題となります。1mm単位で販売されているスポークなら問題がありません。

CX-RAYは偶数の長さで販売されています

Wheelproの計算ソフトを無料で使わしてくれているロジャー・ムッセンさんはスポークの小数点は切り上げにしてくださいといっています。例えば283.2mmの場合284mmのスポークを用意します。0.8mm長いのですが短いよりはいいというわけです。

私はスポークカッターを持っていますので目測ですがほぼ283.2mmに近い長さにカットしてスポークを用意しています。ほぼ近い寸法でも通常は少し長めになります。ニップルを突き抜けるほどにはなりませんが短いということはほとんどありません。

 

個人用のホイールなら1mmニップルから突き抜けていても特別問題ではありませんがお金をいただくホイールなら見た目も大切です。

 

長さが偶数単位で販売されているスポークでは長さがうまく合わないときがあります。1mmの差ですがこれは結構大きいです。しかしスポークが短くなることは避けないといけません。ニップルの頭が飛んだりするトラブルの元になります。突き抜けるほうなら見た目が少し悪いだけで問題がありません。特にアルミニップルの場合は少し突き抜けるほうが正解値です。

ニップルワッシャーで長さ調整する方法もあります。ワッシャーの本来の目的ではありませんがこれもありです。長さ調整の方法としてニップルの長さで調整するとうまく解決できます。

DTのスポークカルクで計算したところニップルを変えてみるとスポークが奇数から偶数に変わります。図のように12㎜のニップルと14mmのニップルではスポーク長の結果が偶数、奇数と違います。この方法で長さ調整すれば奇数、偶数の調整ができます。スポークカッターを持っていなかったときはこのように調整していました。今はスポークカッターがあるのでしていません。

チューブラーホイールをクリンチャーに組み替え

オールドカンパハブを使用のチューブラーホイールをクリンチャーに組み替えるご依頼がありました。ホイールの名医になるにはどれだけ患者さんに接したかで決まります。新も旧もこなせないといけませんので引き受けました。

オールドカンパハブ使用チューブラーホイール

36hのクリンチャーリムは手に入りにくいのですがキンリンのXR240リム36hが手に入りますので提案いたしました。ナローリムですが強度があります。安価な点もうれしいところです。

ボスフリーがないと分解できません

お預かりのホイールは前後輪ともに本当に古いなというのが第一印象でした。6速ですので特殊な器具を使わないとフリーは外せません。ボスフリーはいろんな種類があります。昔からのライダーさんや最近はやりの自転車レストアに興味がある方はよくご存じと思いますがこういった金具は見つけたら手に入れておくととだと思います。

 

先ずホイールのスポークテンションを測りました。下図のグラフが前輪のグラフです。後輪は測定不能の数値でしたので割愛します。

緩いスポークテンションで均等に張られていません

ホイールを組み直すにはこのフリーを外さないと前へ進みません。長年ほっておかれたので固着していました。オイルをさして動きやすくするなど四苦八苦しましたが何とか外せました。固着したフリーを外せたときはほっとします。ちょっとした感動の気分を味わえます。よかった!と思う瞬間です。

フリーを外せるかがキーポイントです

全部ばらしてハブを磨きました。昔のハブは磨くと本当に美しくなります。ピカピカになります。この点が今のハブに一番欠けているところです。もちろんインダストリー9やクリスキングなど美しいハブはあるのですがとても高価です。値段を考えますと購入には躊躇してしまいます。

ハブを計測 前輪用ハブ
後輪ハブ

ハブはしっかりと寸法を測りスポーク長を出しました。ここまでくれば通常のホイールと変わりません。スポークはテンションを均等になるようにします。スポークテンションは前輪約100kgf、後輪右110kgfの張り具合まで調整して完成です。

組み換え後の前輪
前輪スポークテンショングラフ

今回の組み換えのキーポイントはハブに合ったボスフリーを揃えているかということでした。合うボスフリーでしたのでよかったです。