ヘッドインとヘッドアウト

あるビルダーさんの組まれたホイールを点検する機会を得ました。

ビルダーさんの作った前輪ホイールはヘッドインで作っています。CX-RAYで組まれています。

前輪ホイールを見ますとラジアル組ですが一般的な組み方ではありません。

ホイール組は外国の本で勉強しましたので呼び方はカタカナ英語の言い方で述べます。

左右のフランジ幅は70mmのハブです。ヘッドインで組まれています。ヘッドイン、ヘッドアウトというのは見た目からです。

スポークの通し方で決まります。スポークをハブの外側から内側に通して組む方法がヘッドアウトです。スポークを内から外側に通して組み上げるのがヘッドインです。

私のクロスバイク前輪ホイールはヘッドアウトで作っています。私も少し贅沢にサピムのCX-RAYです。

同じハブで作りましてもヘッドインとヘッドアウトでスポークの角度が若干違います。以下壁を支えるツッカイ棒の角度のような話をいたします。

このブレイシングアングルは計算ができますが、簡便にはスポーク長の計算ソフトで角度を知ることができます。下図は計算ソフトを利用してブレイシングアングルを出しています。

フランジ幅を外側から計測
ハブフランジの外側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル
フランジ幅を内側より計測
ハブフランジの内側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル

今回のハブではヘッドインでは7.2度、ヘッドアウトでは6.3度という結果が出ています。

0.9度の違いがあるのですがホイールの性能にどのくらい影響するのかはわかりません。

角度が多いほうが支えることが支える力が高いと思うのですがどのくらいよくなるのかはわかりません。まあよくなるのでしょう。

ではハブに与える影響はどうでしょう。

ハブを外から締め付けるような作り方になるのでリムのERDが短いと角度がつきますので支える力が強くなるのですがハブのフランジ角度次第ではハブフランジに余計な力が加わることになります。つまりハブを傷つけてしまうのではと心配します。

そんなに大きな影響を与える角度ではないのですがさあどっちがいいのでしょう?

フランジ幅がもっと広いバイテックスハブRAF12なら80mmの幅があるのでブレイシングアングル角度は8.1度になり横剛性は確かに高くなると思います。10mmの違いは大きいです。

TNIのエボリューションハブのようにフランジ幅が70mmのハブならヘッドインとヘッドアウトのブレイシングアングル角度差は0.9度ですので効果はよくわからないです。しかし見た感じは大きく変わります。造りが違うと主張しているように見えます。見た目も大切です。

完組ホイールはヘッドアウトで作る方法が一般的です。ほとんどのホイールメーカーがこの方法なのです。お預かりホイールのようにヘッドインはブレイシングアングルがわずかといえども大きくなるので横剛性を高める効果があると思うのですがどうなんでしょう?作るのに時間が掛かる割には効果がないとホイールメーカーは判断しているのかもしれません。

パワータップハブの交換依頼がありました②

パワータップハブを交換しました後輪はお返ししました。

ハブ交換後のホイールです。
ハブ交換後のスポークテンショングラフ

グラフをお付けして納品していますのでご依頼いただきました時の状態とはあまりの違いに驚かれたようです。

このような話はどうしても自慢話になってしまいますのでいつも記事にはどうかと迷うのですがビルダーでホイール性能は違うということを知っていただきたいと思います。。

お客様はとても礼儀正しい方なのでビルダーさんの情報はお教えいただいていません。ただハブの組み換えをしてほしいということでした。

さて、前輪も心配になられたので見てほしいと再度ご依頼を受けました。

前輪のスポークを調整します。

お送りいただきましたホイールは振れもないきれいに回るホイールでした。

いつものようにテンションを点検します。

調整前のテンショングラフです

グラフにしますとよくわかります。見た目ではわかりません。

ホイールのスポークテンションは平均約50kgfで張られています。とても緩いです。タイヤインストール前でこれではとても危険です。

スポークは強弱、強弱とバランスはとれて張っています。これで振れが出ていないのです。

通常、クリンチャータイプのリムはタイヤインストールしますとタイヤビードの影響でスポークテンションは10~20%下がります。お預かりホイールは強弱、強弱でスポークは張られていますので緩いところのスポークは30kgf以下になるところが出てきます。

スポーク折れは緩いスポークに起こりやすいので30kgf以下に下がったスポークは強い衝撃でスポークが折れ、ニップルが破断する可能性がとても高くなります。安全性が一番大切なのにこれではとても心配です。

私が普段使っているカーボンリムメーカーの推奨するスポークテンションは

前輪が100~120kgf

後輪ドライブ側が125~135kgf

としています。メーカーは違いますが大体どのメーカーも同じと考えています。

今回お預かりの前輪は平均50kgfですのでメーカー推奨テンションの約半分です。

以下、点検して気になるところを書かせていただきます。

カーボンホイールを作れるビルダーさんなのでテンションメーターは持っておられると思います。ひょっとして校正していないメーターなのかもしれません。パークツールのメーターならば20%くらい狂っているのはよくあることです。

また、振れを取ったからこれで終わりということではありません。均一にスポークを張ることも大切です。テンションのバラつき偏差値はとても高い数値です。

使われているスポークはDTのレボリューションです。軽量ですが扱いがとても難しいスポークです。レボリューションはサピムのLaserと同じ種類のスポークで2.0/1.5/2.0mmの形状です。サピムのホームページではプライヤーなどでスポークの回転防止をしながら組まないといけないと書かれていますが今回のお預かりホイールのスポークにはプライヤーなどで抑えた傷がありません。これではスポークのテンションが緩いのはよくわかります。きつく締めあげるとスポークがねじれますがこれをやらずに組み上げています。スポークがゆるいはずです。

調整後のスポークはテンションです。均一に張っています。

人様が組んだホイールを観察させていただきますとよくわかります。辛口でホイールを評価しましたが自分のホイールに反映させ、いいホイ―ルを提案する動機付けとなります。

納品後お客さまより連絡が入りました。もうこの自転車屋さんに行くことはないそうです。

トラック用カーボンホイールの作製

何度もご注文いただいています超ベテランライダー様よりトラック用の後輪カーボンホイールをご注文いただきました。競輪場を仲間で借りて練習されるようです。

当初はシマノDURAハブで考えておられたのですが台湾のBitexも作っていますよと提案しました。カップアンドコーンではありません。シールドベアリングを使っています。

シマノだけではありません。

リムは36mm高28mm幅のカーボンリムです。何度も使っていただいていますのでどんなリムかはご理解いただいています。今回は28穴の穴なしリムです。

スポークは練習用なので丸スポークも考えておられたのですがサピムのCX-RAYシルバーをお勧めしました。練習用といえども競技に使いますので少しでも空力の良いほうがいいと思います。ニップルはDTのSquorx-pro ブラスでシルバーを選択しました。

穴なしリムの利点は第一にテープが不要です。剛性を比べたことがないのですが穴がないので穴アリリムよりは強度は高いようです。ホイールを作る側には面倒なリムですが使う側には利点の多いリムといえます。

今回は28穴で作らせていただきました。スポークテンションは124kgfで出来るだけ均一になるように調整しました。

シルバースポークにシルバーハブが新鮮です。
ダブルスレッド JIS組 3クロス
出来るだけ均等になるようにスポークを張っています

トラック用の後輪ホイールは左右スポークテンション差がありません。前輪を後ろに取り付けるようなものです。ホイールはとても新しい感覚です。今までのトラック用のホイールとは少し違います。左右のテンション差の駆動ロスはないので走りの結果を楽しみにしています。

パワータップハブの交換依頼がありました

お客様より連絡がありました。

見た目はきれいに組まれたホイールです。振れもありません。
リムは国内の部品屋さんで調達されたそうです。
穴なしリムですが私の使っているメーカーではありません。

後輪カーボンホイールのパワータップを交換してほしいとのことです。穴なしリムで作られたカーボンホイールです。ハブを壊してしまい依頼されたビルダーさんにハブ交換を頼まれたのですがなかなか動いてくれないとのことでした。

当初は頼まれたビルダーさんにお願いすることが一番いいですとお伝えしました。

お返事ではなかなか取り掛かってくれなく数か月待っているということでした。業を煮やして私のほうに連絡があった次第です。

持ち込みの仕事は失敗すると弁償しないといけないことがあります。難しいことが多くありますので先ずお送りいただいて直せるかどうかをお返事しますということで納得いただきました。

後輪ホイールと新しいパワータップハブが送られてきました。

品物を確認しますと取り換えできないことはないことが分かりました。失敗しても弁償できると考えましてお受けしますとお返事しました。

お送りいただきましたホイールは以下の通りです。

リムメーカーは分かりませんが国内の部品屋さんで取り寄せられたそうです。ハブはパワータップハブG3、スポークはDTのレボリューション2.0/1.5/2.0mm黒、ニップルはアルミニップルという構成です。

いつもお預かりの時はスポークテンションを確認します。お預かり時のスポークテンションは次の通りでした。

スポークテンションが緩すぎるところがありグラフにできません。

とても緩い仕上がりです。通常ハブの構造から左スポークテンションは緩いものですがお預かりホイールは右が緩いので相対的に左も緩い仕上がりになります。一ヶ所はゆるすぎてテンションメーターで測れないくらいのゆるゆるでした。

グラフからわかりますが後輪右ドライブサイド約90kgf、左非ドライブサイド約36kgfと本当に驚きの数値です。しかし見た目はきれいな仕上がりで振れもありません。スポークをぐっと握ればゆるゆるですが見た目はきれいな状態です。

たくさんホイールを乗り比べておられる方はよくわかることですが、カーボンホイールが初めての方にはわからないことだと思います。私の感想をお知らせしまして驚かれました。

私も20年ほど前にホイールをあるショップに依頼した時のことを思い出します。出来上がった時はうれしくて乗っていたのですが2,3回乗って後輪スポークが折れました。ビルダーさんにもっていったのですが乗り方が悪いということで工賃を請求されたのです。何?工賃と怒ったのですがこれがきっかけでホイール作りにのめりこむようになりました。

閑話休題、

人様が作られたホイールをあーだ、こーだと批判するのはよくないと思っています。しかしながら今回のお預かり品はちょっとひどいと思いました。穴なしリムを扱えるのですからそれなりの技術があるビルダーさんと思います。本当に残念です。

お客様はとても礼儀正しい方でビルダーさんの詳しい話などは一切されません。

果たして失敗しましても弁償出来ることを確認しましたのでハブの組み換えをお受けしました。併せてアルミニップルからブラスニップルに交換も提案しました。やはり丈夫なブラスニップルがいいと思います。

作り直しを行いながら考えました。何故ビルダーさんは部品が揃っているのになかなか手をつけなかったのでしょうか?面倒な作業だから?すぐにできるのに勿体つけるために?いろんな事情があるにしましても数か月もお待たせするなんでひどいな、いろんなこと考えながら作業を進めました。

ブラスニップル分が重くなりました。右ハブは交換前のハブです。
スポークテンションはできるだけ均等にしています。右側を高くして相対的に左を上げています。

出来上がりのホイールの見た目はお預かり時点と同じです。違う点はスポークを均等に張っているところ、ブラスニップルで少し重くなりました。

ハブのセンターオフセット値が大きいので左スポークテンション値は高くできませんが出来るだけ右のテンションを上げて相対的にテンションを高める方法を取っています。もちろん均等にスポークを張ることが大切です。

お客様に報告しますと前輪も心配なので見てほしいとのことでした。お預かりすることにいたしました。後輪がどのように変わったか教えていただけるのが楽しみです。

カーボンホイールの評価を頂きました

36mm高のディスクカーボンホイールをお納めしました方より評価をいただきました。

とても良いといっていただいています。少し自慢話のようになりますがお客様よりいただきました生の声ですので参考になれば幸いです。

そしていい意味での発破をかけていただきました。とてもありがたいことです。感謝申し上げます。

以下、インプレです。

拝啓 手組ホイールファン様

先週、高さ36ミリのディスク用カーボンホイールを購入させていただきました**です。 まだまだ暑い日が続きますが、早速タイヤを組み付け2時間ほど試走してきました。 普段、山に向う時は、30ミリのアルミホイール、平坦な行程の場合は45ミリのカーボンホイールを使うことが多いのですが、 まず感じたことは、このホイール向かい風でも良く進むホイールだという事です。 特に斜め前からの時には、何故か後ろから押される感覚があり、非常に楽ですね。 また、横風に対しても神経質にならずに巡航できるところが有り難いです。 そして登りも問題なく適応できるポテンシャルを確認出来ました。 いつもと同じ坂道も1〜2枚重いギアを使えました。 乗り心地もGOODでカラダに優しいし、 うーん、これならこれ1本でいけそうな 使い勝手の良い「万能ホイール」さんです。 あくまで個人の感想ですが、これからもコスパの高い良質なホイールを作成願います。

                                       敬具

ホイール内容は次の通りです。

前輪670g

前輪

リム  36mm高28mm幅カーボンリム 24h  

ハブ  TNI REVO 100mmスルーアクスル

スポーク サピムCXRAY 2.0/2.3/0.9/2.0mm 黒 2クロス組

ニップル  DTswiss suorxpro ブラス 

重量  670g 

後輪793g

後輪

リム  36mm高28mm幅カーボンリム 24h     

ハブ  TNI REVO 142mmスルーアクスル 10・11速用

スポーク サピムCXRAY 2.0/2.3/0.9/2.0mm 黒 2クロス組

ニップル  DTswiss suorxpro ブラス

重量  793g  

前後1463g

穴なしリム使用 テープがいりません

リム高、重量のバランスが良いホイールです。お客さのお言葉通りこれ1本で行けそうです。

タイヤ空気圧の問い合わせがありました

36mm高ディスクカーボンホイールをお求めいただきましたお客様よりタイヤの空気圧の問い合わせがありました。

リムメーカーではホームページで発表していますので詳しく知るには調べられたら良いのですが抜粋してお知らせいたしました。

以下その情報です。

体重と空気圧との関係です

お客様の体重から考えますとタイヤ空気圧は高すぎたようです。そんなに下げても良いのかと驚かれていました。

せっかくのカーボンホイールですのでお勧めの空気圧を知っておいてあとはご自分の好みに調整していく方法がいいのではないかと思います。私は低めが好みなので推奨気圧より1気圧ほど低いです。

特定メーカーの宣伝をするつもりはありません

空気圧計はポンプに付属品でもいいのですが専用品を持っていても良いのではないでしょうか?そんなに高価な物ではありません。タイヤは重要で乗り味は大きく変わります。空気圧もその一つです。

超軽量ホイールのご依頼

このブログに連絡が入りました。約40年近い超ベテランの方より練習用のアルミホイールをご依頼いただきました。以下ご依頼要件です。

下記の条件を満たすホイールは作成可能でしょか?

・アルミホイール

・重量は前後で1300g台

・クリンチャーで構わない

 結構大雑把で申し訳ないのですが。 ハブ、スポークはとりあえずおまかせで構いません。

お客様はヒルクライムの本番ではカーボンチューブラーホイール、普段の練習ではゾンダやシマノホイールを使っておられます。

キンリン XR200リムはナローリムです。軽量ながら剛性が高い

さて、1300g台となりますと使用リムは限られてきます。キンリンのXR200なら390g前後ですので試算して提案しました。

一案単品重量数量重量合計
XR200 20/243902780
ノバテックハブ3101310
前輪スポーク CX-RAY4.52090
後輪左スポーク Laser51260
後輪右コンペティション61272
nipple 14444
1356g

当初は前輪をCX-RAY、後輪左Laser、右コンペティションというスポーク選択でした。

ご連絡を重ねてご質問、ご希望を伺って前後ともにCX-RAYで組むことになりました。

決定案単品重量数量重量合計
XR200 20/243902780
ノバテックハブ3101310
前輪スポーク CX-RAY4.52090
後輪左スポーク CX-RAY4.51254
後輪右スポーク CX-RAY4.51254
nipple 14444
1332g

今使っておられる練習ホイールがすべてCX-RAYで組まれていて、シュータッチがしないということですので剛性は足るということで決定しました。ホイールの剛性はスポークが大きな要因です。

CX-RAYは粘りがありLaserとの差はほとんどないというものの歴然と差はありますので選択としては間違いありません。ただ価格的なことでは大きく違います。この辺りの折り合いをつけるのはお客様の判断です。

果たしてCX-RAYに決められましたが長く使われることを考えますとよい選択と思います。

前輪586g リムテープ込み  左右CX-RAY使用
前輪スポークテンショングラフ 
後輪760gリムテープ込み 左右CX-RAY使用
後輪スポークテンショングラフ

スポークテンションデータと一緒にお送りしました。13mmのナローリムはお客様には昔を思い出すリムとして懐かしがられました。

軽量ながら剛性があるリムですのでワイドリムが主流になっている今もよく使われるリムです。しばらく使ってみてご感想いただけます。楽しみです。

多スポークホイールのおすすめ

このブログで頻繫に取り上げます多スポークホイールの紹介です。

見た目は重そうなホイールです。

先ず重量を試算してみます。積算しますとだいたいの重量がわかります。

 品名単品重量g数量重量合計g
XR31T/RT 28/32h4902980
ノバテックハブA291SB 28h F482SB32h3101310
前輪スポーク Laser528140
後輪左スポーク Laser51680
後輪右コンペティション61696
nipple16060
1666g

前輪 28h 729g
後輪 32h 940g

見た目は重そうなホイールですが実際の重量も前後で1669gと軽量です。

シマノアルテグラホイールWH6800では前輪705後輪944g前後1649gです。ほぼ同等の重量です。

以下、詳しく述べます。

リムは24mm幅31mm高のアルミリムです。後輪は3mmオフセットのリムです。リムセンターが3mmずれることにより11速による左スポークテンションの低下を補正しています。

ハブは台湾のノバテック製を使います。前後で約300gと非常に軽いハブでベアリング交換も容易です。

リムは台湾のキンリン社リムです。前述のように31mm高ですので空力もあります。約490gと決して軽いリムではありませんがリム剛性が高いので踏み込んだ力が逃げにくい優秀なリムです。

スポークはサピムのLaserを前輪と後輪左に使用しています。後輪右側のドライブサイドにはDTのコンペティションを剛性強化のために使います。

組み方ですが前輪は左右2クロス組、後輪は左右3クロス組で組んでいます。オーソドックスな組み方です。

後輪をオフセットリムで組んでいますので11速に伴う左スポークのテンション低下を補っています。ニップル穴が真ん中のリムより10%ほど上がります。これはとても大きいメリットです。

タイヤ選択はリムが24mm幅のワイドリムですので23mmから25,28mmと使えます。タイヤの幅の105%のリム幅が一番空力での効率が良いとされる105%ルールから考えますと23mm幅のタイヤが意外とよい選択なのかもしれません。

また、チューブレスレディーリムですのでチューブレステープを巻きましてバルブ、シーラントを用意すればシューブレスホイールとして使用できます。

ほぼ同じ重量のアルテグラホイールと比較してスポーク数が大きく違います。前後16h・20hではスポークは太いスポークを使います。スポークの太さで剛性を高めています。

方やこの多スポークホイールではスポークを細くして本数を増やしています。

スポーク面積で比較しますとよくわかります。少スポークのホイールのスポーク面積と多スポークホイールのスポーク面積の比較です。

完組ホイールでは下図のように少ないスポークで剛性を維持しています。手組多スポークホイルではスポークを細くして完組ホイールと同じスポーク面積になるようにしています。この点が大きな違いです。

  スポーク数スポーク数スポーク数スポーク数
スポーク面積16202832
1.5mm1.7728.3235.449.5656.64
1.8mm2.5440.6450.871.1281.28
2.0mm3.1450.2462.887.92100.48

この多スポークホイールのおすすめポイントはロングライドに最適な点です。地面からの振動はホイール、ハンドルと伝わります。長時間のライドにはこの振動で疲れるのです。軽量スポークのLaserやCX-RAYで作った多スポークホイールの良さはスポークが地面からの振動をショックアブソーバーの働きで和らげることができます。細いスポークが振動をやわらげるのでロングライド向きホイールということになります。

もちろん剛性のあるリムを使っていますので踏み込んだ力は逃げにくいホイールです。スポークが多いので見た目はモダンホイールではありませんがクラシックな姿からクロモリフレームにはとても相性が良いと思います。

見た目はおとなしいホイールです。残念ながら3G組のように一目見てわかるカッコよさ

ありません。しかし実質本位のコスパが高いホイールです。用途の多いオールラウンドホイールとして使っていただけます。わかる人ならわかるホイールです。

XR31T/RT 24・28hホイールの作製

このブログにご連絡いただきました方よりご注文いただきました。

最初はキンリンのXR31T/RT 20・24hをご希望でしたが残念ながらリムの在庫がなく24・28hを手配できることを申し上げました。

スポーク数が前後で8本増えますので40gほどの重量が増えます。重量が増えることのデメリットよりもメリットの方をお話いたしました。

スポークが増えることによりホイールの安定感は増します。コーナーでよれることなく回れます。ダンシングでもシュータッチはしなくなります。若干空気抵抗が増えるかもしれませんが微々たる増加と考えます。スポークが増えて丈夫になりますので振れは出にくくなります。つまり回転が安定します。40g増えることによりホイールは強化されます。いわばトレードオフの関係です。

最初は重量が増えることに躊躇われたのですがけっしてこれがマイナスではないことをご理解いただきましてご購入いただきました。

前輪24穴後輪28穴ホイールの重量は1600g少し超えたところで完成しています。

前輪スポークはCX-RAY、後輪左にLaser、右コンペティションという組合せです。

スポークの良いところを引き出していると思います。

CX-RAYを前輪に使います。空力とスポークのサスペンション機能を引き出す目的です。後輪の右側にコンペティション、6gスポークを使って剛性を高め、左に5gスポークLaserで軽量化とスポークテンションアップを図っています。

組み方は前輪をラジアル、後輪左は3クロス組、後輪右は2クロス組としています。

いつも使っていますwheelproのスポーク長計算ソフトでは左右のテンション比率が表示されますので理論上の違いがよくわかります。

ノーマルリム 左右2クロス組 テンション比率は43:100%です。左が低いです。

通常リムでは左右2クロスで組む場合43:100のテンション比率です

3mmオフセットリム 左右2クロス組 56:100%の比率です

リムはオフセットリムですのでオフセットリムで13%のアップです。

3mmオフセットリム 左3クロス右2クロス 58:100の比率です

後輪の3クロスで通常の左右2クロス組と比べて2%テンション比率は上がります。

が今回の組み方では58:100と計算上では非常に高い比率に仕上がります。あくまで計算上の数値です。

左を細いスポークで組んでいますのでさらにテンションを上げることができます。実測では左86kgf右123kgfと左右の比率は約70:100の比率です。

ゾンダ、レー3のように2:1組によりスポークテンション比率の差異を改善することなく1:1組で十分な比率を得ることになります。

これはスポークの役割から見ても有益なことです。つまり2:1組の場合仮にゾンダで見てみますとゾンダ後輪は21本です。2:1組ですので左が7本右14本です。左はラジアル組なので駆動には直接働きはありません。右の14本が駆動に影響します。

車輪のスポークはプル、プッシュの役割がありますが14本のスポークでプルが7本です。

2:1組のゾンダでは7本がプルスポークです。

では今回の28穴ホイールの場合はどうでしょう。1:1組ですので左14本右14本で構成しています。プルスポークは14本、プッシュスポークも14本です。この14本のスポークがすべて同じ力で張られていませんので左側の7本が右側に比べて緩く張られていますので7本の約60%としまして4本分の力をプッシュスポークとして働いていると考えます。

合計11本のスポークがプッシュスポークの働きをします。

プルスポークの違いだけでホイールの性能を論じるのは大雑把すぎるとご批判あると思いますが論理的には誤っていないと思っています。

後輪 リムテープを巻きまして938g
左スポークテンションはとても高く出来上がっています。
前輪24h リムテープ巻きまして701g
前輪スポークテンションは110kgfで仕上がています。

当ホイールの一番足りないところはお客様には申し訳ないのですがとても地味なところです。この点はどうしようもありません。3G組のホイールなら遠くから見てもわかりますがこのホイールにはそんなプラスアルファの要素がありません。実質本位です。

あなたのカンパには負けないよ!という天邪鬼的な方にはもってこいのホイールです。私から申し上げますのは厚かましいですが今までの実績から判断しましていいホイールには間違いありません。コスパは最高です。

お客様からの印象が楽しみです。

ディスクカーボンチューブラーホイールの作製

2年前、アルミのチューブラーホイールとクリンチャーホイールを2セットお買い上げいただきましたお客様より連絡ありました。カーボンホイールを2セット作ってくださいと剛毅なご注文です。売上は確かにうれしいのですが、信頼していただいたことがなお一層ありがたいです。

ご依頼はシクロクロスのレース用にチューブラータイプのカーボンホイールのご注文です。

ホイールのことはよくご存じで使用目的がはっきりされています。ご注文の内容は的確で私のほうも提案しやすかったです。

チューブラーリム 35mm高25mm幅 365g
穴なしリムです

ご提案しましたリムは35mm高25mm幅のチューブラーカーボンリムです。重量は365gと非常に軽量です。ハブはTNIのレヴォハブ24・24hです。

TNI REVO ディスクハブ使用

一般にカーボンホイールではよく使われるスポークはサピムのCX-RAYです。しかしながら今回はDTコンペティション2.0/1.8/2.0mmを提案しました。

理由は剛性です。シクロクロスのレースでは瞬発力が大切と聞いています。私はレースに出ませんのでこのような情報はお客様より教えていただいた生の情報です。ストップアンドゴーの激しいシクロレースでは剛性がとても重要です。

CX-RAYは万能スポークと考えがちですがホイールの剛性はスポークの総面積に比例するという原則から考えますと剛性を出すならコンペティションとなります。ブランドには信頼がついてまわりますがスチールはスチールです。

CX-RAYなどの5gスポークではなく、6gスポークのコンペティションで組み上げることになりました。

1グラムの差ですがホイールの剛性はガラッと変わります。注意点はリムメーカーでは剛性のある2㎜のスポークを使うのは禁止ということです。カーボンが割れる恐れがあるのです。果たしてメーカーが勧めるギリギリの1.8mmスポークで作ることを提案しました。

尚、スポークが太くなりますとホイールはとても組みにくくなり、組み上げの難しさはぐっと増しますので注意が必要です。

カーボンリムはチューブラータイプです。幸いにもニップル穴のないタイプが手に入りますのでいつものように穴なしリムで作ります。このタイプのリムは扱いが難しいですが穴ありリムより強度があります。

わずかの差の積み上げが結果的に大きな差につながります。いわゆるマージナルゲインの積み重ねです。ニップルは腐食に強く強度の高いブラスニップルを使います。

前輪ホイール
均一にスポークは張られています
シルバースポークは手組ホイールの象徴
スポークテンションが均一です

ホイール作製の注意点として駆動効率のロスが発生しないように各スポークテンションをできるだけ均一になるように調整します。ホイールは作り方で出来不出来が決まりますのでとても重要なポイントです。

高性能の手組ホイール ブランドホイールに負けません

前後セットで1500gを切るホイール、2セットの完成です。レースに使われたご感想が楽しみです。