ダイナモハブでMTB前輪ホイール作製

ダイナモホイールの作製依頼をいただきました。

お客様からのご注文はこれで3セット目のダイナモホイールです。今回は息子さんの通学用のホイールのようです。電池を気にすることなく大容量で明るく乗れるので安心安全です。

ダイナモホイールを使っているのでよくわかるのですが、これは本当に便利です。ロングライド、通勤用としてお勧めします。

アラヤMTBリム RM-17 460g
シマノ ダイナモハブHB-NX23 36H

リムとハブをお送りいただき、スポークはこちらで用意します。部品はリユースでリムにひずみがありました。歪のあるリムはスポークテンションの均一化には問題があります。フレかテンション優先かを選択することが必要です。

振れ取りを優先すると回り方がきれいので見た目はいいのですがしばらく乗っているうちに振れが出ることがあります。スポークテンションを優先しますと最初から振れが出ているホイールですが振れは現状維持が出来ます。一般には振れとりとスポークテンションの均一化はどちらも大切で両方を優先することが必要です。

今回は不本意ながら振れ取り優先で作ることにしました。やはり揺れ揺れのホイールでは見た目もよくありません。前輪ですので大きく振れが発生するとは思えませんので振れ取り優先で作りました。

スポーク36本のMTBホイールです。中央部が1.5㎜のスポークを使っています。細いスポークはショックアブソーバーの働きをしますので乗り味が柔らかくなります。MTB用のホイールは完組ホイールにはあまり無いようで、手組ホイールを選ぶライダーさんが多いと思います。

作製しましたホイールの詳細は

リム アラヤMTBリム RM-17

ハブ シマノ ダイナモハブHB-NX23

スポーク レボリューション シルバー 3クロス組

ニップル 12mmブラス

前輪1730g
リムの歪でテンションの均一化はできません

リム、ハブはリユースです。リムに歪があると振れ取りはできますがスポークテンションの均一化は難しくできませんでした。グラフにするとよくわかります。今回は前輪ということで駆動には大きく影響しませんのでご辛抱いただきました。

完成しましたホイールは高容量のライトを使え、毎日の通学に安心安全にお使いいただけます。販売していないものを作るのはビルダー冥利に尽きます。

Rovalホイールの剛性アップ

自転車仲間より紹介してもらったということでご連絡いただきました。

今乗っておられるホイールはスペシャライズドのRoval アルピニストCLX IIですが、もともと買った自転車についているホイールと比べてもスピードが伸びないということでした。困ったことに安価なホイールの方がよく走るといっておられます。高価なホイールはよく走ると思っておられたのですが期待外れのようでした。超軽量に作られたホイールも乗り手のパワーと合わなければミスマッチを起こす一例です。

後輪675g 超軽量です
右ドライブ側16本 左非ドライブ側8本 スポークはエアロライト
お預かり時のスポークテンショングラフ

ホイールの詳細をスペシャライズドのホームページから調べてみました。

スペシャライズド ホームページより

スポークは後輪スポーク左右ともにDTのエアロライトを使われています。2:1組でドライブ側に16本、非ドライブ側に8本という組み合わせで左右のスポークテンション差を是正しています。グラフを見ますとよくわかります。左と右のテンション差が少ないです。

ホイールはよくできているのですが剛性が足りなくて乗り手の力に合っていません。ではどうすればいいのかとなりますと

①新しいホイールを購入する

②スポークの剛性を上げてホイール全体の剛性を強化する

今回の場合はスポーク交換が最善です。安価に剛性アップが図れます。

ホイールを分解しますとよくわかります。

エアロライト 16本で72g
コンペティション16本 105g  33g増

ドライブ側のエアロライト16本の重量は72gでした。これをコンペティションに交換します。コンペティション16本は105gで33g重量が増えます。僅かな重量増ですがスポークを交換するだけで剛性は大幅に上がります。

Tヘッドスポーク

ホームページから得たスポーク長は288mmでした。実測しますと同じ寸法です。コンペティションに交換しました。ここで注意点があります。スポークはTヘッドという特殊な形をしています。このスポークは一般には販売していませんのでこちらで作ることにしました。

ニップルはアルミリムを使われていますので再利用はしていません。新しいニップルを用意して組み上げます。

後輪675gから709gに増加 これだけで剛性アップは価値がある
左エアロライト(扁平) 右コンペティション(丸)
スポーク交換後のテンショングラフ

高級ホイールでも乗り手との相性があります。どなたにでもピッタリということはありません。お客様はせっかく購入されたホイールでしたがもともと自転車についているホイールの方がよく進むのでがっかりされました。

ホイールは乗り手の実力に合った剛性が求められています。軽いホイールがよく進むということではありません。今回の事例では高級ホイールですがスポークの剛性が足りなくて、いわゆる温いホイールで乗り手の力が正しく伝わっていないホイールでした。

最上級の高価なスポークを使っていても乗り手に合っていなければ実力は発揮されません。重量は増えますがスポーク替えで剛性を上げて改善しました。高価なホイールなのに温いホイールで期待外れの方はスポークの交換を検討されたらいいと思います。よくなります。

REVO後輪ハブのベアリング交換

後輪スポークのドライブ側1本が折れたということでご連絡いただきました。届きましたホイールはすぐにお直ししましたところハブにゴリ感があったので点検しました。

ハブの手入れは、メンテナンス作業の基本として、先ずはきれいにすることから始まります。

非ドライブ側ベアリング 反対側より叩いて取り出します
たたき出した軸棒 ベアリングと一緒に外しました
軸棒を直接叩くのではなくDTの道具で軸棒を保護しています

ハブフリーを引き抜いてラチェット部分の清掃後、ハブ軸を叩いて非ドライブ側のベアリングを取り出します。たたくときには直接ハブ軸を叩くことは軸棒を傷めますので注意が必要です。

ハブはアルミで作られていますのでヒートガンで温めるとわずかに膨張します。こうするとベアリングを叩いて取り出したり、圧入したりするときには楽にできるようです。おまじないのように何でも温めています。

スライドハンマーでカツン、カツンと引っ張ればOKです

ハブシェルには6902ベアリングが使われています。ラチェットラチェット側のベアリングはスライドハンマーで取り出しています。軸棒をひっくり返してベアリングに通し、軸棒の後ろからベアリングを叩くという方法もありますがスライドハンマーなら一発で取り出すことが出来ます。

ハブメンテナンスにDTの道具は使いやすい よくできています

ベアリングの圧入にはDTの道具を使っています。たたいてベアリングを入れていくのですがセンターを出すことが一番難しいところです。DTのハブツールはよくできていて今回のハブはDTハブではありませんがうまく使えます。

ネジを使って圧入していくのに便利です
叩くことで圧入、取り出しには安価な道具です

写真のようにねじ棒を使ってゆっくり両サイドより圧入していく方法もありますが、たたいて圧入しています。これは慣れだと思っています。軸棒のセンター出しが難しいのですが失敗したらやり直したらいいだけです。必要なのは少しの勇気です。

フリー側には15267ベアリングが2個使われているので先ずはラチェット側のベアリングをスライドハンマーで取り出しています。

15672ベアリングが使われています フリー内部にスナップリングが見えます
プライヤーで取り外したスナップリング 専用の道具が必要です
ベアリングをプレス機械で圧入、取り出しを行います

奥にあるベアリングを取り出すのはプレスの道具を使っています。一つ目のベアリングは前からベアリングを押し出します。奥の内部にはスナップリングがあります。プライヤーでこのスナップリングを取り出すのも難関の一つです。リングの取り出しが終わればプレス機械で奥にあるベアリングを押しだして2個のベアリングは取り出し完了です。

圧入にはこの逆を行います。

ここまでの作業は文字で書けばこんな作業だとわかるのですが、圧入には軸棒の心出しが難しい作業です。ベアリングの取り出しは叩いて取り出す作業ですので少し雑でも作業は進みます。

しかし圧入には心出しが必要ですので慎重な作業が必要です。これがベアリング扱いを難しくしています。プレス道具はあまり使わない道具の筆頭ですが、使うときはとても楽で正確にベアリングを圧入できます。楽にかつ正確に行うために便利な道具をいつも探しています。

ハブのメンテナンスは面倒ですが作業が終わると達成感はとても大きいです。コスパを考えますとベアリングは安価に入手できますので作業は自分でやるのが一番です。しかし今流行りのタイパを考えますと上手な人に任すのが良いかと思います。特殊な道具を揃えることも要りません、このほうがお安いかもしれません。

意外と気づかないハブの音、大きくなると要注意!

最近お預かりしましたホイールですが納品時よりハブの音が大きく感じました。後輪ハブの音がカリカリカリと大きくなりますと要注意です。

フリー内部の汚れ こまめなメンテが必要です

ハブフリー内部のグリスが汚れ、グリス切れが起こっています。後輪は定期的にスプロケットを取り外し、フリーを抜いてきれいにして新しいグリスを入れることで回転は安定します。こまめなメンテが必要です。シールドベアリングを使ったハブはメンテナンスがいらないように見えますが全く違います。

いままでお預かりしましたホイールのハブ内はグリスが切れていることが多くフリー内部は真っ黒状態のホイールが多かったと感じています。いつも乗っているロードバイクはフリーの音の変化はなかなか気づきにくいのですが、空で回して音の確認が必要です。

乗っておられる地域によっても違うのですが最低でも半年ごとにハブフリーを抜いて汚れをとり、グリスを塗ることでハブは長持ちします。シールドベアリングといえども汚れは内部に入っていきます。

油汚れは油でとる

ハブフリー内部をきれいにするのはそんなに難しいことではありません。人それぞれのやり方があると思いますが布切れと綿棒でふき取れば手軽です。

油汚れは油で取るといいますが綿棒にグリスをつけて拭き取るようにしています。10本ほど使えばきれいに仕上がり最後は綿棒が汚れなくなります。30分ほど時間が掛かりますが一手間かければ長持ちします。

ミニベロディスクホイールのご注文

今乗っておられる20インチ451の折りたたみ自転車をフロント部分だけディスク化され、前輪のディスクホイールを作ってほしいとご依頼がありました。リム、ハブ、スポークはご自分で手配されています。ホイールの組み上げだけをご希望です。

ミニベロ用リム キンリン社Nb-Rリム

届きましたリムはキンリン社のNb-Rリムでした。キンリンリムは剛性が高いので良いホイールが出来ます。

74mm幅ディスク用20H

ハブはなかなか手に入らないミニベロ用74mm幅のディスク用20穴ハブです。うまく手配されたと思います。スポークは星のスターブライトです。ご自分でスポーク長を出されて同梱されていました。

正確にERDを出すのが基本です
ハブの計測 正確に測るのが基本です

部品が届きましたので早速計測します。正確にリムのEDRをだし、ハブを測ることにしました。お客様は組み方を2クロスでご希望です。

すべて測り終えてスポーク長を計算しますと、送られてきたスポークは2mm短いスポークでした。

2mm短いスポークで作れないことはありませんがやはり安心安全を考えますと強度面で心配です。長めのスポークは後で調整できますが短いスポークはどうにもなりません。スポーク長を出すことはホイール作りの最初のハードルといえます。結果的にはこちらで新しく用意しましたスポークでお作りすることになりました。

ミニベロのディスクタイプは珍しいと思いますが、ホイールの作る手順は通常ホイールと同じです。適切なスポークテンションによって均一になるように調整します。

とてもかわいらしいディスクホイールです
2クロスで組みました
スポークテンションのバラつき度は5%以下を目標としています

出来上がりましホイールはとてもかわいらしいです。ブレーキをディスクにしますとブレーキングの安心度は上がるのではないかと思います。ご感想が楽しみです。

ノバテック トラックハブの分解

ノバテックのトラックハブ後輪用を分解します。ノバテックのトラックハブのシャフトはボルト止めのタイプと軸棒がねじ式のタイプがあります。今回はねじ式なので、ベアリングを交換するには軸棒をたたいてベアリングを取り出します。

塩ビ管とポンチ

ハブを乗せる台はホームセンターで塩ビパイプの部品を使っています。ホームセンター内をぶらぶら歩いていますと思わずこれ使えるとヒントを得ることがありますが今回使う台もホームセンターで見つけました。

両側のロックナットを外してからパイプ台に載せたハブの軸棒をプラハンマーでたたいてベアリングを取り出します。カツーンとたたけば簡単に軸は抜き取ることが出来ます。残ったベアリングは反対側からポンチでたたきます。事前にヒートガンで温めておけばアルミは膨張しますのでとても楽に取り出せます。

取り出したベアリング

取り外したベアリングです。シールには6000-2RSと書かれています。新しいベアリングを圧入すればまた新品に戻ります。トラックハブはベアリング2個使われているハブなので構造はシンプルです。取り扱いは難しくはありません。

Rovalホイールは手組ホイール

Rovalのホイールにしようかと迷われた結果、手組ホイールファンのカーボンホイールをご注文いただきましたお客様から教えていただきました。

今まであまり気にしていなかったホイールにSpecializedのRovalホイールがあります。じっとホームページを見ていますとこのブランドのホイールは手組と書かれています。

スペシャライズド ホームページより

リムはカーボンリム、ハブはDTハブ、スポークはSapimのスポークを選択し手組しています。言わば市販の部品を使っているホイールということでホームページにも手組と書かれています。わざわざ手組と示しているということは手組しているということに誇りを持っていると感じます。

●Rovalのホイールのホームページ情報ではDTハブ、サピムスポークなど普通に手に入る部品を使用しています。

●Rovalホイールの価格は手組ホイールファンの2倍から3倍しますので安物のホイールには乗っていないと自慢はできます。

しかし手組ホイールファンも手組ホイールです。

チューブレスタイヤ運用についてのコメントいただきました

12月18日の記事、チューブレスタイヤ、ビード上げが大変です②にコメントをいただきました。

チューブレスタイヤの扱いではタイヤ中に水を400ccほど入れてしばらく置いておくという方法は面白いと思いました。チューブラータイヤでのテープを使った場合では薬剤を使われています。

手組ホイールファンではチューブラータイヤは相変わらず親指でごしごしと擦ってテープの残りを取り除く方法でやっています。

ヒートガンの熱を皮手袋で防御しています

方法は皮の手袋とヒートガンを使っています。親指でこすり取るわけですがヒートガンを使って温めたテープ滓を取り除いています。やけどしないように皮手袋を使います。ヒートガンの熱と擦るときの摩擦熱を皮手袋で防いでいるのです。皮手袋はとても役に立ちます。

コメント欄からチューブレスタイヤ運用のヒントを投稿していただきました。知らなかった方法を教えていただきました。ありがたいです。

古い登山靴は滑る

テレビで古い登山靴と新しい登山靴の滑り具合を比較した実験をやっていました。

裏のビブラムソールは見た目が同じようでも古いビブラムと新しいビブラムとでは地面のグリップ力が全く違います。

見た目は同じようなビブラムソールはですが比べてみると違います

今持っている登山靴をテレビの実験と同じように斜めに設置した板面に置いてみて比べてみました。一つは長年使っている古い登山靴、もう片方は昨年購入した登山靴です。裏のビブラムソールは見た目では違いがわかりません。

古い登山靴が滑り落ちる角度に新しい登山靴を置いてみました
昨年購入の登山靴は同じ斜度で止まっていました 滑り落ちることはなかったです

斜めにした板の上に古い方の登山靴を置くとすぐに滑り落ちてしまう斜度に新しい方の登山靴をおきますとしっかり止まっていました。見た目は同じようでも新しい靴は滑りません。

厳密な実験ではありませんが古くて劣化しているソールは見た目では分からないようです。古いビブラムソールはグリップ力が劣っていると推察できます。

とても簡単な実験ですが見た目が同じでも古いゴム製品はグリップ力が劣化してくるということでこれはタイヤにも通じると考えています。

いつも走っている淀川河川敷でベテランライダーさんにタイヤ交換はどうされていますと伺ったことがあります。答えは、「もったいないのですが毎年交換しています。」ということでした。

へ~!毎年!と驚きましたが素晴らしいと感じています。古い登山靴の実験からでもわかるようにゴム製品はナマもののようです。見た目はきれいでも古いゴム製品は劣化しているということです。タイヤも同じことが言えそうでグリップ力が変わってくると思います。

自転車で、一番安上がりで効果のあるアップグレードの方法はタイヤといわれていますがこれは本当だと思います。しかしきれいなタイヤを捨てるのはなかなかできないのも事実です。

チューブレスタイヤ、ビード上げが大変です②

前回記事の続きです。

スポーク調整が終わったカーボンホイールにチューブレスタイヤを取り付けようとしています。これで3回目の挑戦になりますがうまくビードが上がりません。タイヤは新品のタイヤではないのでどうしても簡単にビードは上がってくれません。

3度目の試みです これだけシーラントが残っていました ビードが上がらない元です

諦めないでもう一度ビードの部分をきれいにしました。今度は丁寧に前のシーラントの滓を取り除きました。親指の爪を使って丁寧にこすって取り除きました。写真で分かりますが前回手を抜いていましたのでシーラントが残っていました。今度はもう何も残っていません。やっと新品状態にできました。

もう一度石ケン水を使ってトライしてみました。果たしてビードは上がりました。ただし、パキンパキンとビードが上がる音はしません。新しいタイヤでしたら甲高い音がしますが今回は音がしません。空気圧は4気圧ぐらいで止まったままですがタイヤはふくらんでいます。どこかで空気が漏れているのでしょう。

バルブコアを外してシーラントを30ccほど入れてみました。タイヤ全体にシーラントがいきわたるように回して再度空気を入れてみましたらパキンと音がなりビードが上がりました。

約2時間奮闘してやっとホイールは使えるようになりました。チューブレスタイヤは乗り心地はいいのですがやはりメンテが大変です。タイヤ2本連続で本当に疲れました。クリンチャーに戻そうか迷っています。