シマノハブのオーバーホール

ホイールの組み換え前にハブのオーバーホールの依頼も受けました。ハブはシマノハブです。

きれいにしましたシマノハブ HB-9000 FH-6800

新品の時から一度も手入れされていないようです。

シマノハブはカップアンドコーンですのでベアリングの調整は自由度が高いです。シールドベアリングのように固定されていません。好みに調整できます。しかしこの好みにできるというところが意外と整備のハードルを高くしているのかもしれません。

シールドベアリングならベアリングを取り換えるだけでとても作業自体は簡単です。道具さえあればベアリングを取り出して圧入するだけです。

シマノハブの場合ベアリングにたどり着くのにいろいろ作法?があるように思います。この解決にはシマノのホームページを見ることが近道です。メンテナンス情報がしっかり開示されていますので安心です。

シマノ ホームページより HB-9000のメンテナンス情報
シマノ ホームページより FH-6800のメンテナンス情報

お預かりのハブはHB-9000,FH-6800で、作業を始めるとすぐに問題に突き当たります。最近のハブ構造は昔の単純な構造ではありません。開け方が分かりにくいです。作業の基本は同じことですがハブの修理ばかりやっているのではないので初めてのこともあります。こんな時に間違ったことにならないようにシマノのホームページを見て製品のメンテナンス情報を確認しています。図を見ますとハブ構造がよくわかります。とても的確で安心して作業を進めることが出来ます。

下手な職人ほど余計なことをすると時計修理の超ベテランの方から伺ったことがあります。直せないなら余計な手を加えないで欲しいといっておられました。

シマノのホームページで確認するのは素人くさい方法ですが近道で作業がはかどります。おススメです。

チューブラーホイールのスポーク交換

タイヤを取り外したチューブラーホイールを3回目の組み直しを行いました。スポークを細いスポークに変更です。ピラーのTB2015(2.2/1.5/2.0mm)を使います。

スポーク36本使って 781g

手組ホイールファンではスポークテンションを変えることで乗り味を柔らかくするというやり方は行いません。この方法はホイールにとって良いところはありません。駆動ロスが増すだけです。

ホイールの剛性を生かすにはスポークの張りを下げることも上げすぎることもよくありません。スポークテンションを上げすぎるとホイールの剛性が落ちます。さがりすぎるのもリムのスポークがたわみ折れる原因となります。スポークを均一のテンションにして最適なテンションに張ることが大切です。

難しいことに最適値はこの値というような決まった数値がありません。この範囲がいいだろうというようなあいまいな数値です。私は100~110kgfで収まるようにしています。しかし決して70kgfということにはしません。緩いスポークテンションはホイールにはよくありません。

細い弾力あるバテッドスポークは力を逃がすことが出来るので結果的には地面からの衝撃を柔らかくできます。いわばショックアブソーバーの働きをしてくれます。

今回の組み替えではスポークを取り換えると同時にハブのグリスアップも行いました。シマノハブはまめにグリスアップを行いますと育っていきます。回転が滑らかになります。

このホイールは約10年前に組んだホイールですがこれで組み替えは3回目です。最初は2mmのストレートスポークでした。このスポークを選んだのは安価なのが理由です。

2mmスポーク36本 277g

次にDTのバテッドスポーク(2.0/1.8/2.0mm)に交換しました。この時点ではまだスポーク交換が乗り味を変えるのにとても有効手段とはあまりよく知りませんでした。ホイールの軽量化という理由で交換しました。スポークは36本ありますのでこのDTコンペティションも私にはオーバースペックです。

Ford博士の理論からバテッドスポークの有効性を科学的な論証から知ることが出来ましたので進んで交換に至りました。

1.5mmスポーク36本 174g

今回のスポークは中央部が1.5mmのスポークは体重から考えましても最適です。ロングライドにぴったりのホイールになりました。ホイール重量も大きく最初の2mmスポークの時からは約100gと大きく軽減されています。最初に述べましたようにバテッドスポークの効果でリムの変形を少なく出来ます。

いまのところ後輪はDTのコンペティション(2.0/1.8/2.0mm)で作っています。これはこのままにしておこうと思っていますが将来は左側だけ細いスポークに替える予定です。

ホイールは多スポークホイールなのでトラブルでスポークが1本折れても少し振れが出るくらいで楽々自宅に帰れます。輪行にはこんなホイールが必要です。地面からの衝撃は吸収してくれますので疲れにくいホイールになりました。細いバテッドスポークをうまく使って、剛性を大きく落とすことなく軽量化を図るスポーク交換はとても有益な方法です。

Ford博士のホームページは勉強になる

ホイールの研究で博士論文を出された博士のホームページbicyclewheel.infoは勉強になります。バテッドスポークの扱いについて論じています。

Replacing 32 straight gauge spokes with double-butted spokes gives almost the same benefit of 36 straight gauge spokes, but for about 70 grams less.

上記はホームページからの引用です。詳しくはホームページで調べられたら良いと思いますが記事の中で上記の内容が書かれています。

32本のストレートスポークを使ったホイールをバテッドスポークに取り換えると36本のストレートスポークのホイールと機能は同じで約70gの節約だそうです。

バテッドスポークの有効性を論じています。経験でなんとなくバテッドスポークのほうがいいということが分かっていたのですがシミュレーションでその良さが分かりました。

軽量化を図る方法としてバテッドスポークを使うことでスポークの本数を減らしてもホイールの強度は大きく変わらないことを論理的に証明しています。理論で武装して高い技術でホイールを作るというのが理想です。

ミヤタのテープがない

ミヤタのチューブラーテープを長く使ってきました。接着剤でリムに貼り付ける方法が昔から取られてきましたが私はテープ派でした。テープを使う理由は輪行していて山の中でパンクを考えますとテープが楽というのが理由です。レースに出ませんので重くなるのは問題ありません。手軽さを買っています。

代替品を探しています

ミヤタのテープをよく使うので買いだめしてあったのですが予備がなくなってきました。備蓄しておこうといろいろ当たったのですがどこの店にもおいていません。ネットでもどのショップも在庫していません。

長くお世話になっているショップに聞いてみても在庫がないということでした。注文はしているが入らないという返事でした。

ないものは仕方ないので代替品がないか探すことにしました。ミヤタサイクルは自転車の部品屋さんですので化学製品のメーカーではありません。ここにヒントがあります。両面テープを何種類か買ってみますと使えそうなのがありました。やっぱりミヤタのテープはOEMでした。

原材料が上がっていますのはよくわかるのですが両面テープはとても高価です。便利というだけで高価なテープを購入するよりもやはり接着剤で張り付ける方法が一番財布に優しいようです。

少し厚みがあるのですが代替品を試したところうまく機能しています。これなら暫くは代替品を使おうと思っています。長年使っているテープを使えないのは辛いものです。しかし代替品で使えるならこれからはこれに代わると思います。少しくらい重くなってもかまいません。いろいろ探すのも楽しいです。

百均のマニュキアが活躍しています

ホイールのスポークに差し色で赤のスポークを1本入れることがあります。とてもおしゃれな感じがします。しかしスポークはペイント式なので剥げることがあります。このスポークのメンテナンスには 手軽に手に入れることができる 百均のマニュキアでタッチアップすることにしています。

百均のマニュキアが活躍しています

このマニュキアはフレームの傷処理にも結構役立っています。塗料は沢山いりませんのでちょうどいい量で安価です。マニュキアを使っているとは大きな声で言えませんが塗料ということに違いはないのでいいこと聞いたとお客様は喜んでおられます。

使えるテープを探す

7,8年ほど前ですがリムテープを沢山使うので何かいい方法がないものかと考えていました。

海外の自転車フォーラムでも私と同じことを考えている人が沢山いましてフォーラムに投稿していました。

ある賢い人が自転車部品メーカーは化学製品を作れないということを投稿していました。そうです、どこかのテープ会社に注文しているわけです。この記事を投稿した人はこの会社のこのテープがいいですと教えてくれていました。

同じ思いの世界中の人が(英語圏ですので世界中の人が読んでいます)これがいいとかこのテープははがれやすいとか意見を出してきました。

フォーラムの読者の中には自転車屋さんもいますので早速使ってみるという投稿をしていました。小さな穴が開いてじわりじわりと広まってきているようです。

年間では沢山のテープを使いますのでこの話はとてもありがたい話です。とてもいいヒントを得たと思っています。

いろんなテープを試しています

自転車部品の販売店さんの邪魔をするつもりはありません。長尺のテープを買っても余るだけの人もおられるので費用対効果を考えますと自転車部品のテープで十分な方が多いと思います。55mのテープを買っても使い切るには何年もかかる人が多いと思いますのでその都度入用買いされたほうが鮮度の高いテープを使えると思います。

下はシマノのテクニカルマニュアルから引用させて頂きました。

シマノ テクニカルマニュアルより

マニュアルを読んでいますとリムテープにポリイミドテープを使うと書かれています。やはり大会社は違います。隠しません。

市販のポリイミドテープ

これを読んですぐにポリイミドテープを購入しました。

Soft Spokingについて

TheBicycleWheel  を読んでいて面白い記事(71ページ)を見つけました。SoftSpokingについてです。

Brandtさんの本は勉強になります
Soft Spokingについて

もう15年ほど前になるかと思います。自称メカニックさんに初めて手組ホイールを頼んだ時にあなたはビギナーだからホイールのスポークテンションは70kgfに緩くしておきました。乗り味が柔らかくなりますというようなことをいわれたことを覚えています。乗り味を柔らかくするためにスポークを緩く組むのかとその時は感心しました。

約一ヶ月新しいホイールを取り付けて乗っていたのですがスポークが折れました。パン!と大きな音がしてホイールを見ますとスポークが折れていました。怪我しなくてよかったです。

今になって思うのですがめちゃくちゃなビルダーさんです。

乗り味を柔らかくするためにスポークテンションを緩めたホイールは下作です。適切なスポークテンションに仕上げて乗り味の調整はスポークの太さ、数で決めることが必要です。決してスポークテンションを緩く仕上げることではありません。

初めてのオーダーホイールは70kgfに仕上げたといわれたのですがこのメカニックさんのテンションメーターはパークツールのTM-1でした。TM-1は正確なメーターではありません。おそらく校正もされていなかったと思います。

初めてのオーダーホイールはゆるゆるのSoftSpokingであったようです。

では適切なスポークテンションはいくらにすればよいのかとなりますがこれが難しいです。

いつも購入しているカーボンリムメーカーでは、前輪は100~110kgf、後輪ドライブは120~130kgfと推奨しています。しかし絶対これでないとというわけでもありません。前輪90kgf、後輪110kgfでも使えます。

振れ取りでお預かりしましたシマノのDuraホイールは意外と緩かったし、違うメーカーではものすごいハイテンションで組まれたカーボンホイールもありました。いろいろです。

これが正解というスポーキングはないのですが、ビギナーだから70kgfで緩く作りましたはありません。

2:1組が容易にできるかも?

スポーク長の計算には悩まされるところです。計算式を使ってスポーク長を出すのは大変ですのでネットにて発表されている計算ソフトを活用しています。

1クロス、2クロス、3クロスはまだ理解できるのですが1.5クロスとなりますとなに?となってしまします。ホイールを作っていますと徐々に言葉の意味が理解できてくるのですが小数点がついたクロスとはどういうことなのか最初はわかりませんでした。

wheelproの新しい計算ソフト 2:1組、3G組が入りました

こんな難しいことを特別勉強しなくてもスポーク長を計算してくれるソフトがあります。ソフトの中でも一番よく使ってきましたwheelproの計算ソフトが最近バージョンアップされているのを知りました。

ストレイトプルのハブ、3G組、2:1組みんな揃っています。自転車屋さんがホイール組めない時代ですのでこのソフトが発表されてどれだけの人が使うのかわかりませんが喜んでいる人がいるのは確かだと思います。インターネットの時代ですので世界中の人が見ているのですから日本では使う人が少なくてもDIYが盛んな国では活用する人が多いと思います。

2:1組では16:8、14:7,27:9の組み合わせが考えられます。

一般的なのは右16:左8の組み方です。これなら24穴のリムに32hのハブが使えます。14:7になりますとリムもハブもほとんど販売されていいません。ハブは28穴を使えば出来るのですがリムは販売されていません。27:9も同じです。

カーボンリムは別注して2:1組リムを入手出来ます。他にはアルミリムの場合は24穴が使えます。別注のアルミリムは販売されていません。21穴のアルミリムは見たことありません。ホイールメーカーのリムだけです。ハブもほとんどのハブメーカーは販売していません。

部品が手に入らないから計算ソフトは役に立たないかもしれません。しかし数社は作っていますので探せば手に入ります。一番楽なのは現行の完組ホイールから取り外すことです。

ゾンダのハブで作りました3G組 穴なしリムで作りました 難易度はとても高いです
リムは別注しています

古くなったカンパのホイールから2:1組のハブを取り出して新しく3G組カーボンホイールを作るのも良いかと思います。ホイール作りのハードルが極端に高くなるのは確かですが作り上げたら感動します。間違いありません。

スポークテンションを音で聞き分ける

NHKの自転車番組チャリダーでホイールを作る場面がちょこっと出ていました。番組のなかでスポークを調整する場面があり興味深く見ました。ビルダーさんがスポークを弾いて音を聞きながらテンションを揃えているしシーンがあったのです。

音を聞き分けて調整するときに便利です

スポークテンションを音で判断する方法は昔から行われています。私も同じことをするのですが音を出すのにギターのピックを使っています。これなら簡単に音をだすことが出来ます。手軽にスポークテンションを揃えることが出来るので振れ取り台の横にはいつもピックを置いています。ピンピンと弦をはねるようにして音を聞き分けています。

音を聞き分けてスポークテンションを揃えていくのですがこの方法には一つ欠点があります。それは何kgfで引っ張っているのかが分かりません。基準になる音が何kgfなのか知っておかないといけません。

何kgfで引っ張っているかを知ると調整がし易い  校正器があると楽です

テンションメーターと併用すればいいのですがパークツールのTM-1では正確な数値は期待できません。TM-1はとても誤差が大きいのが難点です。まずTM-1の校正が必要です。校正器はその気になれば簡単に作れます。正確に何kgfかを知る環境を整えれば音で聞き分ける方法はとても手軽で有益です。

音でスポークテンションを揃える方法はとても手軽ですがやっているとキリがないのです。いつまでも完ぺきに音が揃うまでと続けてしまうことがあります。テンションがきれいに揃っていなくてもホイールは使えますのである程度の妥協点を見つけてやめることも必要です。

テンショングラフは分かりやすい

本日ホイールが届きましたと連絡いただきました。ホイールをお納めしましたお客様にはホイールのスポークテンションの状態を記録したグラフをつけて納品しています。グラフがあればわかりやすいとほめていただきました。

スポークテンショングラフがあればホイールの状態がわかり易い

写真のグラフですが一番気になる数字はグラフの上に記されていますスポークテンションばらつき度です。今まで点検しましたシマノのDURAホイールは大体5%くらいでした。このため手組ホイールファンでは5%以上の数値をいつも目標としています。

大体2~3%のバラつきで収まります。前輪は左右のスポークが同じ長さなので均等にするのは比較的楽です。後輪は左右の長さが違うのでバラつきが大きくなりがちです。

ホイール作りのビギナーさんが作ると振れ取りができているのにバラつき度が20%、30%はざらに起こることです。ホイール組の一番難しいところです。ニップルを均等に回していてもうまくいかないことが多いです。

スポークテンションを均一にする一番の利点は振れが出にくいことにあります。どのスポークも均一に引っ張っているなら誤差が出にくいのは自明です。

トルクを伝える力もスポークが均一なら均等に伝わりますので駆動ロスは少ないです。ただこの駆動ロスに関してはわかりにくいと思います。期待したほどではないとがっかりされるかもしれません。今まで使われていたホイールの出来がいまいちなら違いはよくわかると思います。まあそれぐらいと思っておかれるのが良いでしょう。

スポークテンションのバラつき度が大きくても振れ取りが出来ていればよくできたホイールと思います。バラつき度の5%と2%の違いがわかる人はまずいないと思います。

では何が違うのかといいますと振れが出にくいので長く使われても駆動ロスが少ないというメリットです。

また違う言い方で、ばっちりセンターが出ているとよく言います。センターが出ていることはとても大切ですがセンターを出すためにスポークテンションのバラつき度が悪くなることもあります。この場合はバラつきを度優先して作っています。スポークテンションが揃っていればそれ以上悪くなることは少ないのです。手組ホイールファンではテンション優先にしています。

ながながとグラフのことで記事にしていますがリム、スポーク、ハブ、ニップルこの4点で作るホイールですが奥が深いです。