前輪をヘッドインで組むのとヘッドアウトではどう違うか?

写真は20年ほど前のトレックMTBのホイールです。あまり乗りませんが今も現役です。

ヘッドインで組まれた前輪

注意して観察しますとフロントホイールのスポークはヘッドインで組まれています。

簡単にホイールの剛性を上げる方法として知られています。

ハブにスポークを通す呼び方としてヘッドイン、ヘッドアウトはとても分かりやすい言い方だと思います。スポークの頭が内側か外側かで分けています。世界標準ではこの言い方のようです。

前回の記事で紹介しましたSheldonさんのホームページでは同じリム、ハブでスポークの組み方だけを変えてホイールの剛性を測った結果のデータがあります。

ヘッドインで組みますと一般的なヘッドアウトのホイールと比べて13%剛性が高いというデータがあるようです。

記事を読むと詳しくわかりますが、簡単に言いますとスポークの角度が変わるから剛性が上がるということです。ハブフランジの厚みでハブからリムに向かうスポークの角度が内と外ではほんのわずかですが角度が違います。この差で剛性が違うわけです。

ヘッドインで組みますと剛性が上がります。しかしフランジの外側が少し斜めに加工してあることが必要です。フランジが角ばっていますとフランジにスポークからの無理な力が加わるのでフランジが割れるかもしれません。ハブのフランジに丸みがあればヘッドインで組んでも良いかもしれません。試してみても良いかと思います。

リムがひび割れする理由

後輪ホイールを組み換えでお送りいただきました。後輪ホイールのリムがひび割れしていました。このホイールのハブを取り出して新しいホイールに組み替えします。

ハブを取り出し新しいホイールに組み替えの予定
スポーク穴にひび割れ

組み替える前にどうしてリムが傷んだのかを調べてみました。ホイールはいつもお送りいただきました時にスポークのテンションチェックを行っていますので今回も同じ作業を行いました。

ホイールは振れが大きくはありません。振れ取り台に乗せて回してみると振れはありますがきれいに回っています。以下のグラフが今回のホイールのスポークテンショングラフです。

グラフを見ますとよくわかります。リムがひび割れたのには理由がありました。極端なスポークテンションで組まれています。グラフには大きく山が四つあります。この 四つ の山でリムはバランスが取れていましたので振れなく回っていました。しかしスポークテンションの高低が大きくありますので一部の高いところにテンションが集中します。

リムが回転するときにはリムが地面に触れるところは体重が掛かりますので常に凹んでいます。この凹みが連続しながら回転しているわけですが、凹む時には体重で圧力掛けますのでスポークテンションが高くなります。残念ながらスポークテンションの高低差が大きく作られていますので高い部分に体重がかかるとなお一層テンションが加わることになります。この状態を長い期間続くとなれば何時かはリムが耐えきれなくなりスポーク穴のところにひび割れがでるということになるわけです。

スポークテンションが揃っていなくても振れ取りはできますのでこのようなテンションばらつきが大きいホイールはトラブルが出やすいということになります。今回のひび割れたリムの原因はスポークテンションの不揃いから起こったといえます。

上図は新しく作り替えたホイールです。このように出来るだけテンションを揃えて負荷が一部に大きくかかることを防ぐことです。スポークテンションを揃えると間違いなくリム割れなどのトラブルを減らせます。

ビードクリームを使ってみました

チューブレスタイヤを使うようになってビード上げには石ケン水を使っています。タイヤが新品の場合比較的容易に上がりますので特別不自由していませんでした。タイヤインストールにはビードクリームがいいですよと以前からお客様より教えていただいていましたが使っていませんでした。

しかし最近ですがビードクリームを使ってみたのですがこれはいいと思いました。メーカーの宣伝をしたくない方針でブログを始めましたのですが今回は別です。

ビードクリームはタイヤをはめるのに最適です。私は力がないので最終的にはプラのタイヤレバーを使っていますがとても楽にタイヤインストールできます。写真は50g入りで1000円ほどです。

作業はタイヤ左右のビード部分にスポンジにつけたクリームを軽くこすりつけるだけです。少量で事足ります。スタート位置が分からなくなりますのでタイヤのマークから始めたらわかりやすいです。大丈夫かな?と思うくらいです。いつも通りタイヤをリムにはめるのですが簡単にはまります。クリームが滑りやすくしているのでしょう。力がいることはいるのですが楽に滑っていきます。なるほどと納得できます。

チューブレスタイヤを使うようになってパンク修理がとても面倒でした。この作業が嫌なのでチューブレス運用をやめる人もおられます。いやな作業の軽減化につながるビードクリームはお勧めです。もっと早く使えば良かったと思うはずです。

シマノハブデータを使う

ホイール作りにはハブ、リムは必ず実測しています。しかしシマノハブでは実測していません。ハブデータが発表されているからです。正確なので失敗したことはありません。

データはシマノホームページから得ることが出来ます。今回のハブはFH-R7070です。

以前のブログにデータの使い方を記事にしましたが今回はおさらいです。

シマノ ホームページより

一例をあげます。ハブデータにはオフセット値が記されています。

初めて見たときのこのオフセット7.45の意味が解りませんでした。じっくり見ていましてあっ!なるほどとすぐにわかりました。センター値からずれている数字です。

フランジ間の数値÷2でセンターが出ますのでこの数値からオフセット値を足せばいわけです。

フランジ間 55.7÷2=27.85

27.85+7.45=35.3

35.3この値がハブの左センター値です。

55.7-35.3=20.4

フランジ間の値からこのセンター値を引いた数字が右センター値になります。

左35.3  右20.4 

スポーク長の計算ソフトに入力すればスポーク長が得られます。最近の計算ソフトは進化していましてスポークの伸びも考慮した数値が出ます。一つのソフトを信頼するのもいいですが私は2つのソフトを使って比較しています。

出た数値が違うときがあるのですがどちらを選択するかは経験です。

チューブラーホイール、前輪から音が出る

昨年末にお納めしましたお客様よりお尋ねのご連絡をいただきました。ベテランライダーのお客様ですが初めてチューブラーホイールを試されました。

下記のような内容です。

チューブラーホイールで約2000キロ走りました。乗り心地が良く疲労が少なくて快適に乗れています。
相談ですが
ここ3回位100キロを超えるとフロントホイールから異音が発生します。
変速機の整備不良でチェーンがスプロケットに擦れているような音がします。
実際最初は変速機が原因だと思い色々やったくらいです。
音は走行中に発生します。

止まっている時に前輪を持ち上げて手で
回しても綺麗に回ります。
走行中にペタルを止めても音がします。
前輪を逆に付けると治ります。
音はどんどん大きくなってきています。
素人考えだと前輪のベアリングが原因ではないかと思います。
恐れ入りますが御返答お願い致します。

ベアリングが不良品であったかもわかりません。取り敢えずべリングを交換しますということでお送りいただきました。

バルブホールのテープ処理がされていません  音の原因でした

ホイールが届きましてすぐにスポークテンションを見ました。ほとんど変化していません。1っか所だけ調整しましたがほぼさわらなくても良い状態でした。

ホイールを軽く回ししました。特別以上はありません。ふと、バルブ部分を見ますとタイヤをバルブ穴に通したままでした。

これを見て音が鳴る理由が分かりました。

チューブラータイヤではテープ、セメント2種類インストールの方法があります。どちらの方法でもバルブをネジで固定しないタイヤの場合タイヤインストールが終わるとバルブをしっかり固定する必要があります。

バルブを固定していないとホイールが回っている間にタイヤがほんのわずかですがずれを起こしてしまいます。距離を走ると回転でタイヤに熱を持つのでしょう。接着面が柔らかくなりタイヤがほんのわずかですが動いてしまいます。

こういう状態になりますとわずかですがタイヤがずれます。バルブとアルミバルブ穴がこすれて音がするわけです。走っている間一定の間隔で音がするなら確実に変な音の原因はこれです。

対処方法は?

テープに切り込みを入れます
バルブにテープを通します
クロスして2枚張ると完璧です

バルブを固定することです。方法はテープを使って固定します。絶縁テープを使って写真のようにテープに小さな切込みを入れ、タイヤバルブに通してリムに固定するのです。2枚テープを用意してx印で貼ると効果的です。

テープを貼って固定しました

処理が終わりお客様にはベアリング交換しないでお返ししました。ご連絡いただいたときにすぐに対処方法をお知らせすることが出来ればよかったのですが今回はできませんでした。反省点です。

チューブラータイヤが初めてのお客様はこれで一つマスターされました。誰でも最初は初心者です。ベテランライダーさんでも皆さんスタートは一緒です。ご参考になれば幸いです。

ベアリングをポンチで叩いて取り出す

バイテックスハブを購入してずっと置いてあったハブですが少し傷がついていました。このハブをベアリング交換の勉強用に使うことにしました。ベアリングを外して新しくベアリングを圧入する手順の確認を行いました。普段やっていないとやはり腕は錆びてきますので余っているハブの整備に時々行っています。

まずベアリングの取り外しです。

スライドハンマーで取り出すのは楽です

いつもベアリングを取り出しのにスライドハンマーを使っていました。スライドハンマーを使う場合引き抜き金具を取り付けてハンマーで引っ張るだけで簡単に取り出せます。このブログでも何度も紹介してきました。しかし今回ポンチを使って取り外すことを試してみました。

先ずフリーを外します。ハブシェルの中にはベアリングと円筒の金具が入っています。ポンチの場合どうすればいいのかをやってみました。

円筒をずらすと向こう側のベアリングが見えます

写真を見ていただきますとハブシェルの中には円筒があります。これを少し指でずらしますと向こう側のベアリングが見えます。このベアリングをポンチでたたき出します。

ポンチでたたくと楽にはずせました

ハブシェルを覗いて反対側のベアリングをポンチでたたく方法はずっとシェルを傷つけると思っていましたのでやったことがなかったわけです。しかし今回やってみてとても簡単なことが分かりました。スライドハンマーが簡単と思っていましたが、ポンチで取り出す方法も意外に楽でした。

フリー内部のスリーブをずらしてポンチでたたくのは手っ取り早いです。数回たたけばすぐに外せます。大仰なものがいりませんので費用も掛かりません。

ネジで締めていく方法は楽です あればこんな道具もべんりです

ベアリングを再度取り付けるにはベアリングと同じ寸法の金具を使って打ち付けながら入れる方法、長ネジを使って圧入する方法があります。時間かからないのはたたく方法ですがセンター出しが難しいです。写真のようにねじを使って圧入する方法は少し力がいりますがセンターは出しやすいと思います。どちらの方法も外したベアリングを使うと楽です。

一日置けばどのくらいテンションが変わるか?

今作業中のカーボンホイールの組み立てが終わり一回目のストレスリリーブ(なじみだし)も終わりました。

いつもホイールは一日、二日おいてから再調整していますのであまり気にしなかったのですがどのくらい変化しているのか見てみました。

仮組1回目
2回目のグラフ ストレスを取っています

ホイールは仮組の時に一回、仮組終了で一回と2回ストレスを取っています。

今日3回目になるのですが測ってみました。

1日前のデータと大きく変わりませんが次のグラフのようになります。

3回目のグラフです 少しドライブ側が緩みました

やはり少し変わっています。1日置くとなじむというかキンキンに張っていたスポークも休息取ったようです。129kgfから126kgfと少し緩んでいます。右ドライブ側を少しテンション上げて戻すことにしました。

ストレスリリーブ(なじみだし)でリムを床に於いて踏みつけるような手荒いことをする人がいますがこれは厳禁です。スポークを握ってなじみだしするのが一番リムに優しい方法と思います。10年ほど前ある自転車屋さんがこうするんや!と教わったことがありましたが一番リムにひどいことをしていることが後でわかりました。スポークを握る方法が一番良いと思います。

このホイールは3回目のなじみだしです。ここまでするとほとんど変わりません。しかし後もう一回行います。長く使われても振れは出にくくなります。偉そうなことを言っていますがちょっとした疑問の積み重ねと思っています。

後輪スポークの組み替え

カーボンホイールを昨年お納めしましたお客様より後輪スポーク交換のご依頼がありました。

昨年のホイール前輪はサピムのCX-RAYでしたが後輪はDTのコンペティションでした。

1年経ちまた新しいホイール、前後ともCX-RAYで組んだホイールを再注文いただきました。新しく組んだホイールの乗られた印象はコンペティションで組んだホイールよりもCX-RAYのほうがお好みでした。やはり比べると好みがはっきりしてきます。

ホイールの剛性はリムとスポークの剛性で決まります。リムの変更は勿体ないので簡単にはできません。剛性の調整にはスポークです。スポークを取り換えることで好みの乗り味に変えることが出来ます。

CX-RAYに替えました
スポークテンションが均一

ベテランライダーのお客様は1年半コンペティションのスポークで乗られたのですが新しくCX-RAYのホイールに乗られてからお好みがはっきりされたようです。CX-RAYのほうが足に優しいと感じられました。このためスポークを変更することを決められました。

つまりスポークの太さ調整です。太いコンペティションから細いCX-RAYに替えられました。

このようにスポーク変更の相談が増えてきています。ホイール乗り味が硬すぎて疲れる場合は柔らかくする、踏み込んでもっさりと今一つの反応の時は剛性を上げるかのどちらかです。

あまり知られていませんがスポークはとても大切なパーツです。フレームと共に自転車の乗り味に大きく影響しています。 長く乗り込んでいかないと分からないことですが乗り味の好みはだんだんはっきりしてきます。スポークの修正で乗り味は大きく変えることが出来ます。自転車を楽しく乗るにはとてもいい方法です。

ホイールは完成しても1日置く

今カーボンホイールの作製中です。まだ途中なのですがほぼ完成しています。完成しますといつも1日以上日を開けて再調整します。一日置くということはスポークがなじむというか変化します。センターも少しずれが生じます。

ではどのくらいなのか今まで検証してきませんでした。ただなじむという言葉だけです。

一度一日置いてどのくらい変化するのか調べてみました。

ホイールはほぼ完成していまして左非ドライブ側を少し調整、右ドライブ側をもう少しテンション上げようと思っています。

完成したときの状態です。116kgfのテンションです。

グラフがほぼ完成時のグラフです。グラフでは右側だけを計測しています。

次に1日間を開けてスポークテンションを計測しました。

一日置いて測りました。108kgfです。

データを取り、グラフにしてみました。116kgfから108kgfと大きく下がっています。

ホイールはなじみだしの繰り返しとスポークテンションの均一化が必要です。完成したと思っても日を開けて再点検が必要です。

ホイールの出荷前にスポークテンションの再調整を行っていますがやはりこのひと手間が大切のようです。

自分用のホイールなら一番いい方法は一度乗ってみて調子を見てから再調整です。これが最良の方法です。私は売り物のホイールを作っていますので出荷前に再度調整しかできません。しかし良心的と自負しています。

チューブレステープを貼る

チューブレス専用リムでない限りリムテープは必ず要ります。多くの方は何度か失敗されていると思います。簡単そうに見えてリムテープ貼りは難しいです。

テープを貼ったけれどきっちり押さえつけることができなく浮いてくることがあります。テープが浮きますと空気は漏れますのでチューブレスタイヤのインストールは失敗します。

リム面の仕上がりでも貼りやすさが違います。今までやりにくかったのはDTのリムです。DTリムは梨地でざらついている仕上がりです。このリム面にテープを貼るのはとても難しいのです。

先日お客様よりいいアイデアを教えていただきました。一度テープをはってから押さえつけるのにクリンチャータイヤを一度はめてクリンチャーのチューブで押さえつけるという方法です。リム面に圧力をかけられるなかなかのアイデアです。行きつけの自転車屋さんに教えていただいた方法のようです。私もこれならうまくいくと思いました。

チューブラータイヤでリム面を押さえつけると楽になじみます。

数日たってからふと思いついたのです。クリンチャーのチューブでテープを押さえつけなくてもチューブラータイヤでいいのではないかと考えました。そう、チューブラータイヤの空気圧で押さえつけます。このほうが手軽です。

DTリムのホイールがありますのでチューブラータイヤに4気圧ほど入れて押さえつけてみました。果たしてうまくいきました。ピタッと貼りついています。

最初にこの2行を書けば終わりなのですがご辛抱ください。リムテープはチューブラータイヤで押さえつけるとうまくいく。この話を先のクリンチャーのやり方を教えていただいた方に連絡しますとそれはアリですね、と返事をいただきました。

意外とチューブレスタイヤに関しては超ベテランのライダーさんもビギナーさんもスタートは同じのようで手こずっておられる方が多いようです。参考にしてください。