サピムCX-RAYは偶数の長さで販売されています

ホイール作りの中でスポーク長をまず計算します。それからスポークを用意します。この時スポークを発注するのですが長さの偶数、奇数が問題となります。1mm単位で販売されているスポークなら問題がありません。

CX-RAYは偶数の長さで販売されています

Wheelproの計算ソフトを無料で使わしてくれているロジャー・ムッセンさんはスポークの小数点は切り上げにしてくださいといっています。例えば283.2mmの場合284mmのスポークを用意します。0.8mm長いのですが短いよりはいいというわけです。

私はスポークカッターを持っていますので目測ですがほぼ283.2mmに近い長さにカットしてスポークを用意しています。ほぼ近い寸法でも通常は少し長めになります。ニップルを突き抜けるほどにはなりませんが短いということはほとんどありません。

 

個人用のホイールなら1mmニップルから突き抜けていても特別問題ではありませんがお金をいただくホイールなら見た目も大切です。

 

長さが偶数単位で販売されているスポークでは長さがうまく合わないときがあります。1mmの差ですがこれは結構大きいです。しかしスポークが短くなることは避けないといけません。ニップルの頭が飛んだりするトラブルの元になります。突き抜けるほうなら見た目が少し悪いだけで問題がありません。特にアルミニップルの場合は少し突き抜けるほうが正解値です。

ニップルワッシャーで長さ調整する方法もあります。ワッシャーの本来の目的ではありませんがこれもありです。長さ調整の方法としてニップルの長さで調整するとうまく解決できます。

DTのスポークカルクで計算したところニップルを変えてみるとスポークが奇数から偶数に変わります。図のように12㎜のニップルと14mmのニップルではスポーク長の結果が偶数、奇数と違います。この方法で長さ調整すれば奇数、偶数の調整ができます。スポークカッターを持っていなかったときはこのように調整していました。今はスポークカッターがあるのでしていません。

チューブラーホイールをクリンチャーに組み替え

オールドカンパハブを使用のチューブラーホイールをクリンチャーに組み替えるご依頼がありました。ホイールの名医になるにはどれだけ患者さんに接したかで決まります。新も旧もこなせないといけませんので引き受けました。

オールドカンパハブ使用チューブラーホイール

36hのクリンチャーリムは手に入りにくいのですがキンリンのXR240リム36hが手に入りますので提案いたしました。ナローリムですが強度があります。安価な点もうれしいところです。

ボスフリーがないと分解できません

お預かりのホイールは前後輪ともに本当に古いなというのが第一印象でした。6速ですので特殊な器具を使わないとフリーは外せません。ボスフリーはいろんな種類があります。昔からのライダーさんや最近はやりの自転車レストアに興味がある方はよくご存じと思いますがこういった金具は見つけたら手に入れておくととだと思います。

 

先ずホイールのスポークテンションを測りました。下図のグラフが前輪のグラフです。後輪は測定不能の数値でしたので割愛します。

緩いスポークテンションで均等に張られていません

ホイールを組み直すにはこのフリーを外さないと前へ進みません。長年ほっておかれたので固着していました。オイルをさして動きやすくするなど四苦八苦しましたが何とか外せました。固着したフリーを外せたときはほっとします。ちょっとした感動の気分を味わえます。よかった!と思う瞬間です。

フリーを外せるかがキーポイントです

全部ばらしてハブを磨きました。昔のハブは磨くと本当に美しくなります。ピカピカになります。この点が今のハブに一番欠けているところです。もちろんインダストリー9やクリスキングなど美しいハブはあるのですがとても高価です。値段を考えますと購入には躊躇してしまいます。

ハブを計測 前輪用ハブ
後輪ハブ

ハブはしっかりと寸法を測りスポーク長を出しました。ここまでくれば通常のホイールと変わりません。スポークはテンションを均等になるようにします。スポークテンションは前輪約100kgf、後輪右110kgfの張り具合まで調整して完成です。

組み換え後の前輪
前輪スポークテンショングラフ

今回の組み換えのキーポイントはハブに合ったボスフリーを揃えているかということでした。合うボスフリーでしたのでよかったです。

前輪46㎜高、後輪56mm高カーボンホイールのインプレ

楽しみにしていましたホイールのインプレをご連絡いただきました。ホイールの詳細は以下の通りです。

前輪683g Duraハブ18h
CX-RAY 18h ラジアル組

前輪 46mm高28mm幅カーボンリム

ハブDURA HB9000 18h

スポーク サピムCX-RAY

ブラスニップル

後輪877g Bitex BX301 8:16
左8本右16本 1:2組

後輪 56mm高30mm幅カーボンリム

ハブBitex BX301 8:16

スポーク コンペティション ストレイトプル

ニップル ブラス

前輪18hラジアル683g、後輪24h2:1組877gのホイールです。前後で1560gです。とても軽いホイールです。

穴なしリムです

久しぶりに走られたそうですが良かったと印象の連絡いただきました。以下メールでいただきました。走力ある人のインプレです。次のホイールに参考になると思います。

 

今日3週間ぶりに自転車乗って160キロ程走ったんですがメチャクチャ走ります。正直下りは怖いほどスピードのるのできょうは路面がスリッピーだったせいで怖かったです。

 

1500gちょっと重量ありますけど初速のもたつきなど無かったです。平坦もスピードの乗りがかなりいいので僕にはもってこいです。誰かの後ろについた時にホイールの惰性が強いので大分脚も休められますし、そこからさらに平坦でアタックとかしやすいです。

 

登りはキシリウムproと同じです。キシリウムの方が軽いですけど剛性が今回のホイール方が高いのでグイグイ進んでくれるので重さは気になりません。これ一本でなんでもいけるので正直キシリウム要らないです。。。

3週間ぶりに走ったわりには走れた感覚ですが大分ホイールに助けられました。お世辞でも無くてホンマです。気にいりすぎました。

 

詳しく教えていただきました。ビルダーとして本当にうれしいご連絡です。このホイールは後輪を2:1組にしています。後輪スポークはコンペティションを使ってスポークを太くしています。硬さがすこし増えますが力のある方なので逆にい良いのだろうと思います。

存在感あるリムは空力の良さを十分体感していただけるリム高です。前後輪ともにリム幅が広いので良好な空力を得ることができます。

どんどん作り手としてのデータが増えてきました。沢山乗っていただいて得れる情報は貴重です。それにしてもカーボンホイールは穴なしリムがいいですね。リム打ちパンクがありません。テープがいりません。穴ありリムよりは穴がないので剛性が高いと思うのですがいかがでしょうか?

サピムスポークのTCSとは

えー馬鹿馬鹿しいお話を一席・・・ではありませんが15年以上サピムのスポークを使ってきましたが最近TCSとは何かを知りました。

サピムのホームページより引用

ホイールを作るのに全く関係のないことですがサピムのホームページを見ていてもスポークの説明でこのTCSという言葉が出てきます。じっくり読んだらわかることですが長年使っているのにわからなかったことが分かったので記事にしました。

ネジ部分の終わったところが四角に加工されています

TCSはTorsion control squaresの略です。ねじれをコントロールする四角ということです。

じっくりサピムのストレイトプルスポークを観察しますとねじ部分が終わったところが四角に加工されています。スポークがねじれないようにこの部分をプライヤーなどで挟めばねじれを防ぎます。ホイールを作る機械ロボットがこの部分を挟むように作られているという話です。

なんでスポークのねじ部分の終わったところが丸でないのかがよくわかりました。スポークを挟みやすくしているのです。ここを挟めば丸スポークはねじれません。本当によく考えられています。

タイヤを選ぶ

ロードバイクで一番コスパの良いアップグレードはタイヤで次にホイールといわれています。まずタイヤが大切と考えいろいろ試してきましたが何でも彼でもというわけにはいきません。時間的にも経済的にも無駄が多いです。お店で評判を聞くのもいい方法です。バイク仲間からの情報も大切です。

 

ホイールをお買い上げいたいた方に使っておられるタイヤをおたずねしますとコンチネンタルGP5000を使っている方が多いようです。よく知られているタイヤで評価がとても高いタイヤです。

私はコンチネンタル・チューブラータイヤのコンペティションでインストールがしんどい(西日本の方言)のを知っていますので今のところはGP5Kを試していません。

チューブラーのコンペティションはしんどい!

BicycleRollingResistanceというホームページを参考にしています。ご存知の方が多いと思いますが海外のサイトですのでまだ知らない方に紹介したいと思います。

タイヤの商品試験を発表しているホームページでとても勉強になります。「暮らしの手帳」の商品試験と同じようにタイヤをテストしていろいろな切り口で評価しています。このホームページから得た情報でタイヤを購入してきました。

 

転がり抵抗の少ないタイヤを探すのに有益な情報が多いのです。競技に出ないライダーですがコスパの良いタイヤを探したりするのにとても参考になります。すべてコンチネンタルのGP5000で行くのは間違いではありませんがいろいろ試してみるのも楽しいです。タイヤ、ホイールは奥深いです。

 

36mm高のディスクカーボンホイールを作製

36mm高28mm幅のカーボンリムでディスクホイールをご注文いただきました。

36mm高28mm幅 ディスク用418g

リム重量は420g前後の軽量リムです。ディスク仕様になりますとリムブレーキと比べて少し軽くなるようです。

TNI REVOハブ

ハブは手に入れやすいTNIのREVOハブです。24hの仕様です。体重のある方は違うメーカーを探されることをお勧めします。

 

スポークは前輪にCX-RAY、後輪にDTコンペティションを使います。前輪のCX-RAYは乗り味が少し柔らかく、ねばりを感じると今までのお客様よりご報告いただいていますのでお勧めいたします。

後輪はお好みで剛性を上げて反応よくするにはスポークを太くしてコンペティションを使う、乗り心地を優先する方はCX-RAYを使うなど組み合わせは自由にできます。

リムメーカーは2mm径のスポークの剛性が高いスポークは勧めていません。カーボンリムには不向きなようです。

シマノHPより

組み方はシマノ方式です。前輪は逆イタリアン、後輪はJIS組みで組みます。ブレーキかけたときに出る力をハブにかかる負担が少なくなるようにする方法のようです。検証したことはありませんがシマノさんが勧める方法です。

バルブ穴のみ

リムはニップル穴のないリムです。作るには難度が上がりますがリムテープがいらないのでランニングコストは少なく済みます。クリンチャーで乗ってもリムテープがいらないのでリム打ちパンクは発生しません。ユーザーには良いリムです。

後輪834g 軽量です
左ブレーキ側のテンションが高く左右のテンションバランスが良い
前輪678g 軽量です
左右のテンションバランスが良い

上写真が完成しましたホイールです。前後1512gとディスクホイールながら重量はとても軽量です。

 

スポークのテンション比率はハブのセンターオフセットが少ないのでリムブレーキのホイールと比べて高い数値を得ることができます。組み方を2:1組のように変則的なことをしなくても良好なテンションを得ることができます。

スポークの左右テンションを見ますとディスクホイールのテンション比率はとても良い数値に仕上がります。通常のリムブレーキよりテンション比率はいいです。

リムブレーキの場合後輪ハブのセンターオフセット数値が高く右スポークテンションが高くても左スポークテンションがゆるいホイールが出来上がります。このためいろいろ組み方を工夫されることなったのですがディスクホイールではこのような心配はいらないようです。ハブの幅が広くなったのでセンターオフセット数値が低くなりました。

 

ややこしい説明ですがグラフで示しますとわかりやすいです。図で見ますと内円が大きいです。これはテンションの比率が良好であることがよくわかります。

 

こうしてスポークテンションだけみますとディスクブレーキのホイールはリムブレーキと比べてテンション比率は優秀です。ホイール重量で見ますとハブが重い分ディスクホイールはリムブレーキと比べて重くなります。スポークテンションから見ますとリムブレーキよりも内容がいいと考えます。スポークの張り方で工夫しなくてもノーマルな1:1組で良好なスポークテンションを得ることができます。こうしてみるとどちらも一長一短です。

リムブレーキ、ディスクブレーキどちらであってもスポークテンションを揃えることにが一番大切ということには変わりはありません。

コロナのおかげでなかなか部品が揃わずお客様には長い間お待たせいたしましたが良いホイールが出来上がりました。

ストレイトプルスポークを使って感じたこと

ストレイトプルスポークのホイールをべた褒めする人がおられます。でも本当にそうでしょうか?

スポークメーカーのDTがJベントとストレイトプルスポークの性能は同じと言っています。Jベントは折れやすいという人がいますがJベントもストレイトプルスポークも強度的にはほぼ同じのようです

 

私もストレイトプルハブ、スポークを使います。ホイールを作っていてああ、こういう理由でメーカーはストレイトプルハブになったのかと思うようになりました。以下、ストレイトプルスポークを使った印象を述べたいと思います。

ハブにスポークを通しておけば作りやすい
スポークを先に通しておけば効率が良い
  • 先にスポークをハブ穴に通しておけば簡単にスポークを取り付けることができます。仮組に時間が掛かりません。私もこれをやってみて楽だなと思いました。難しいことを考えることなくニップルを通していけます。これなら楽でいいわ、というところです。ホイールメーカーがこのハブを使うのは納得です。時間的に短縮できるのはこのハブです。

ホイールメーカーのYouTubeを見ていますと分業して組み立てしています。ハブにスポークを通すことだけの仕事をしている人、スポークにニップルを通す人、スポークテンションを上げて振れ取りする人、最終検品する人とすべて分業して作業効率を上げています。ストレイトスポークハブはこのように作業効率を上げるには最適です。

 

  • Jベントスポーク用のハブではグラグラとスポークが動きますのでリムにスポークを通すには時間が掛かります。方やストレイトプルスポークではハブの穴位置が決まっていますのでただ通すだけです。

 

  • 同じように作業効率ですが、スポークを曲げなくてニップルを通すことができます。Jベントスポークの場合ニップルを通すときにスポークを若干曲げないとうまく通すことができませんがストレイトプルスポークでは曲げなくてもスポークを後ろに少し引けばニップルを楽に取り付けることができます。

 

このようにストレイトプルスポークで組み上げるのはJベントより確実に間違えることなく短時間でホイールを作り上げることができます。ホイールメーカーでは経済性、生産性が先に立つのでストレイトプルスポークを使っているのだろうと思います。

不満なところとして

●ハブの穴が決まっていますので2クロス、3クロスと選択ができません。決まった組方しか選べません。ラジアルとクロス組のミックスなどJベントならいろいろ変化を選ぶことができますがストレイトプルスポークでは1つしか選択できません。

ストレートプルハブ、スポークを使うと

●ハブ計測の仕方などストレイトプルスポークを使ってをホイールを作る情報を詳しく得ることができないのが問題でハードルを高くしているように思います。

●作り方としてはストレイトプルスポークのほうが作りやすいのにスポーク長の計算方法やハブを少し分解しないと組み上げることができないのでこれが難しいと思わせる一つでないかと考えます。

以上がストレイトプルスポークのホイールを作って感じていることです。

DTが言うように強度的な問題ではどちらもほぼ同じとなりますと組み方が固定的なストレイトプルより一つのハブでいろいろ組み方が出来るJベントのほうが好きです。

それにしても作る工程など考えてもそんなに違いがないのにストレイトプルスポーク用の部材の割高なのは何故でしょうか?

ベアリングに使う特殊な道具

ハブのベアリングを交換することがあります。競技に出るような実力ではないのでベアリング交換を頻繫にはしません。しかし技術力は磨いておこうという気持ちがありますので一般ライダーさんよりはベアリングに触ることが多いです。

 

ホイールのベアリングの交換で必要なのは少しの勇気です。ホイールを壊してしまうのではないかと心配してしまうのですがすぐに壊れるものではありません。ご安心ください。

ゆっくりやればそんなに難しくはありません。

 

ベアリング交換では先ず引き抜きの道具が必要です。ベアリングに引き抜き金具を取り付けて引き抜く、もしくはたたき出す方法が一般的です。

私はスライドハンマーを使っています。いろいろ他の方法も試してみましたが私にはこの方法が一番楽でした。私は自動車工具の店で購入しました。通販でビックリするような値段の高いものが出ていますので注意が必要です。相場感のないものには手を出さないようにしています。

アタッチメントだけでもポンチでたたき出せばOK!
スライドハンマーとアタッチメント

他の方法にはスライドハンマーに取り付けるアタッチメントと同じ方式の固定金具で後ろからたたき出すという方法です。スライドハンマーの代わりにポンチでたたき出す方法です。ポンチの代わりにアンカーボルトを使う方法もあります。

アンカーボルトでたたき出す

 

では次にベアリングを圧入していく方法です。

 

これもいろんな道具があります。自動車の道具屋さんで購入しました道具がこれです。安価な値段でしたので試してみました。

ベアリングを叩いて圧入します

ベアリングを叩いて圧入していく方法です。慣れれば簡単に使えますがセンターを正確に出して圧入するには技術がいるなと思います。

長ネジを使った簡易ベアリング圧入治具

長ネジを使ってベアリングを押し込んでいく方法もあります。これが一般的かもしれません。

 

DTのベアリングサービスセットも使っていますが同じようにセンターをしっかり出しながらたたいてベアリングを圧入します。センター出しの補助金具を一緒に使います。すこし慣れと勇気が必要ですが楽に圧入できます。YouTubeを見てやれば楽にできる?と思います。

DTのベアリングサービスセット

まあお金で解決や!という気持ちでやればすんなりいくようです。弁償しないといけないとか壊してしまったら次がないとか心配してしまうとうまくいきません。しゃんとした姿勢で正しく道具を使えばうまくいきます。

 

以前DTの工場を紹介するYouTubeを見ていましたらハブにベアリングを圧入している場面を見つけました。注意して見直すと面白い圧入の道具を使っています。

あっこんな道具でやっている!とみつけてうれしくなりました。いろいろ道具を検索しますと多分この道具を使っているのだなと考えました。年間どれだけ使うのかといろいろ悩みましたがこれなら簡単に芯を出しながら圧入できます。

プレス機で圧入できます

難点が一つあります。組んであるホイールには使えません。ハブ単体なら容易にベアリングを圧入できます。通常ホイールのベアリング交換するときホイールはそのままの状態です。ホイールを分解してからハブをとりだすことなどしません。ホイールの姿のままでは使えないのです。この点が不満です。ホイールベアリング交換には半人前の道具ですが道具好きにはたまらない道具です。あまり使わないけれど使いやすい道具です。年間何回使うのか?といろいろ考えてしまいますがすごい存在感のある道具です。

テンションメーターなしで後輪を作ってみました

テンションメーターなしでどのくらいの精度で作り上げることができるかを試してみました。もう何百本も作っているので少しはましなものができるかなと思ってやってみました。

パークツール振れ取り台を使用

使いました振れ取り台には縦ブレ横ブレを取るときに指標となるようにアナログのメーターを取り付けています。通常の振れ取り台にはメーターがついていないのであればとても便利なものです。

 

先ずは基本通り縦ブレです。しっかりと縦ブレを取りながら仕上げていきます。メーターを見ながら縦ブレを取りました。

 

以前にも後輪ホイールは右から左ということを記事にしています。後輪は先ず右スポークのニップルを回してテンションを上げていきます。リムはグーっと右に寄るのですが気にすることなく右側だけで縦ブレを取ります。

テンションが上がり右に寄っているリムを今度は左スポークのテンションを上げてリムをセンターに寄せていきます。後輪は右を先に調整してそのあとリムを左に寄せていく方法が一番早い作り方です。

 

出来上がりました。仮組から30分くらいで仕上がります。振れも縦ブレ±0.1mm、横ブレ±0.1mmまで追い込んでいます。我ながら上手になったなと思います。

 

スポークを握ってみてきっちり張れているし全く振れなしです。リムは振れ取り台できれいに振れずに回っています。さて、スポークテンションを測ってみました。スポークテンションをグラフ化してみました。

黄線右ドライブ側、ブルー線左非ドライブ側

いや、驚きました。ホイールのテンショングラフは上図の通りです。スポークが全く均等に張れていません。がたがたの折れ線です。きれいな丸に仕上がっていると思っていましたが結果は最悪のグラフでした。

 

いつもはホイール作製工程の中にスポークテンションメーターで測りながら作り上げていくようにしています。このため仕上がりのグラフはこんなにひどくはありません。見た目は全く振れのないホイールですが中身はいい加減な仕上がりです。きれいな新品ホイールでも出来が悪いとこのようなホイールが出来るということです。

 

やはりテンションメーターを使って作ったほうがいいものが出来ると思います。テンションメーターなしでホイールを作るのは大工さんがメジャーなしで家を建てるようなものだと聞いたことがあります。感覚を磨けばテンションメーターなど無用というようなことをいう人もいますが人の感覚はいい加減なものだと今回実感しました。自分用に楽しんで作るならそれはそれでよいと思いますができれば良い物を作りたいものです。

 

私は今まで作ったホイールにはスポークが折れた経験はありません。アルミニップルの頭が飛んだトラブルは数回ありますがスポークが折れたということは一度もありません。それはスポークを均等に張って作ってきたからだと思います。

 

今回の出来上がりでは力が正しく伝わりません。チェーンを回して出来た力はホイールのギアを使って伝わってきます。ホイールに伝わった力はどのスポークにもお均等に伝わります。自転車は前に進むのですが均等にスポークに加えられた力は受ける側のスポークがバラバラのスポークテンションでは力のロスが生じることは自明です。緩いスポークは折れる原因となります。ピンと均等に張られてこそロスが少ないのです。

 

各スポークが均等に張られていなくても強く引っ張られているスポークがお互いにバランス取れていると今回のホイールのように振れのないホイールに出来上がります。人の感覚は優れていますが時にはいい加減なものだとよくわかりました。見た目ではホイールの良さは全くわからないものです。

サピムCX-RAYは使いやすい

最強のスポークといわれていますサピムのCX-RAYですが値段も最強のようです。

500本入りの袋です

黒のCX-RAYは小売価格ではなんと1本500円以上します。シルバーで1本350円です。驚く価格です。10年以上前の話ですがこのスポークを知った時はびっくりしました。なんと高いスポークでしょう。前輪20本後輪24本でホイールを作りますとスポークだけで15400円以上となります。さぞかし性能のよいホイールができるだろうかと思ったものです。リムよりスポークのほうが高いのです。サピムのホームページでも最初のページに紹介されています。強度も1600 N/mm2です。

このスポークで作ったホイールをアメリカのホイールメーカーが風洞実験しまして空力を調べますとサピムのLaserと比べて1%のワット数の違いがあるということです。1Wの差で価格が3倍のスポークを使うのかということです。

今までお客様にこの話をしますとLaserでいいですということで収まることが多く結果的には安価なLaserで作らせていただくことが多いです。

ここで作るほうからの話をいたします。CX-RAYはとても高いスポークですがホイールを作るにおいてはとても扱いやすいスポークです。高いがいいぞ!ということです。

このスポークでホイールを作りますと失敗が少ないです。扁平スポークなのでスポークホルダーを使うと簡単にねじれ防止ができます。

DTのスポークホルダー
ピラーのニップルレンチで使っています
タキザワさんのHPより VARの工具です
お値段が手ごろな価格と思います

扱いにくいスポークは丸スポークです。特に1.5mm径のスポーク、サピムLaserは扱いが難しいスポークです。理由はねじれ易いのです。ねじれを防ぎながらスポークのテンションを上げる必要が生じます。プライヤーなどでねじれを防ぐことが必要です。これは技術的には高度なテクニックが必要でサピムのホームページでも難しいですよと述べています。いいスポークであることには全く異論はありません。私の好きなスポークです。

これに反してCX-RAYもねじれ防止をしながらテンションを上げるのですがスポークホルダーを使いながらテンションを上げていきます。

プライヤーでねじれ防止をしながらテンションを上げるのとスポークホルダーを使うのとは全く作り上げ方が違います。CX-RAYのほうがはるかに楽です。ホイール作りはこんなに簡単なのかと思わせてくれるスポークです。

価格的にはお高いスポークですがホイール作製においては一番お勧めできるのはCX-RAYではないかと思います。予算が許せるならCX-RAYで作られることをお勧めします。適度なねばりがありますのでスポークを曲げながらリムに通すことなどとても楽に仕上げることができます。長ささえ間違えなければ空力がよく乗り味がマイルドでおまけに軽量のホイールが出来上がります。

値段も性能も作りやすさもまさに最強スポーク!と思います。