多スポークホイールのインプレお送りいただきました

多スポークホイールのご注文いただきましたお客様より乗られた印象を連絡いただきました。とても分かりやすく教えていただいています。興味深く読ませていただきました。完組ホイールにはない良さがあり長く愛用していただけます。ありがたいです。

以下全文です。


●使用自転車と用途
クロモリのスポルティーフフレームに、クロスバイクのパーツを移植して乗っています。
用途は普段使いに週末50km程度の街乗り、連休には荷物を積んで一日100km程度、峠を含め数日間のツーリングです。


速さは求めていない&メンテナンスが好きなので、レーシーなハイエンド完組みよりカスタムできる手組みホイールに興味がありました。
webで検索してたら手組みホイールファンさまの詳細で丁寧な内容のブログを見つけたので、依頼させて頂きました。


●比較ホイール
クロスバイクについていたWH-R501との比較になります。
初めてのホイールのアップグレードなので、正しいレビューかは自信がないですが…。
シチュエーションごとに感じた差を書かせていただきます。


●低速、街乗り
自分に一番多いシチュエーションで、25~30km/hの街乗りです。
意外にもR501も決して悪くない印象で、重量が近いからか加速や漕ぎだしもそれほど差は感じませんでした。

R501を自分なりに玉当たり調整やスポークテンションの均一化などのメンテはやっているので、それが好影響だったのかも知れません。
新ホイールはまだ初期の状態なので、ハブの慣らしが終わって調整したらまた印象が変わるかもです。



●高速
30km/h以上からは、新ホイールとR501で差が出てくるように感じました。
まず新ホイールは高速でも路面からの衝撃が少なく乗り心地が良いです。
スピードの伸びも新ホイールの方が余裕があると言いますか、踏んだだけ素直に加速するキャパの広さのようなものを感じました。
(リムの形状とかも関係しているのでしょうか…エアロ効果?)
30km/h以上で巡行する人なら、新ホイールの方が良いと思います。


●登り
一番差を感じたのが登りでした。
両ホイールとも重量は1900g代でほぼ近いのですが、明らかに新ホイールの方が登りやすく疲れないです。
登りは重量の影響が大きいと思っていたので、この差は凄く意外で驚きました。

新ホイールは力をかけて踏んだ分だけ登ってくれると言いますか…。
R501の頃はダンシングはしんどい割に進まなくて微妙だと思っていたのですが、新ホイールですとダンシングの有効さが分かった気がします。
乗り方のバリエーションが増えることでスプロケもよりクロスレシオに出来そうで、ホイールによって全体の構成が変わるかも知れないと思いました。


●下り
高速での安定さから、下りも新ホイールの方が有利だと思います。
ただ自分は安全第一で、下りでスピードは出さないことにしているので…新ホイール実力は十分分かってないと思います。



●まとめ
R501と比較して、新ホイールは高速や力をかけた時の安定感や効率が優れている。
過酷な状況へのキャパが広いように感じました。
荷物を積んで峠を越えるツーリングの際は、きっとこの差はさらに大きく感じると思います。
今回組んでいただいたホイールをお手本にメンテや調整しながら、自分も手組みホイールに挑戦してみようと思います。
この度はありがとうございました。

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インプレとしては以上になります。

乗り甲斐&メンテし甲斐のあるホイールを作って頂いてありがとうございました。

完組少スポークホイールにはない良さが分かっていただけたと思います。私は自分のホイールに慣れきっていますのでなかなか差異を申し上げても伝わりにくいのですがこのようにお客様から教えていただきますとすごく参考になります。

シマノハブで36mm高カーボンホイール作製

リムブレーキ用36mm高のカーボンリムを使って作製しました。

仕様は下記に通りです。

440g前後の穴なしリムは用途が広い

リム 36mm高28mm幅穴なしカーボンリム 18・28h

ハブ 前輪 シマノHB-6700 18h

アルテグラ HB6700 

   後輪 シマノFH-RS400 28h

ティアグラ FH-RS400

スポーク サピムCX-RAY シルバー

ニップル DT SquorxPro シルバー

ハブにシマノハブを使っています。シマノハブは前後で約520gと重いのですが丈夫でメンテナンスも楽にできる優秀ハブです。軽さを犠牲にしていますがメリットが多いです。

アルテグラの18hはディスコンハブです。もう販売されていません。

後輪ハブはティアグラハブで現行品です。

個人的に感じていることはシマノハブのグレード違いは外観、見た目を変えているだけで中身は共通部品が多いようです。DURAハブは少し違いますがアルテグラ、105、ティアグラなど中身の部品は共通品が使われていますので回転性能は同じと思っています。異論がある方がおられると思いますが今まで使ってみての印象です。

ティアグラとアルテグラは2グレード違います。外観の仕上げが違いますので下位のハブには高級感がありません。しかしシマノディーラーマニュアルを見ますと中の部品は共通部品が使われていますので回転は変わらないと思っています。

実利志向が強いのでティアグラハブは好きなハブです。ただしティアグラハブの新品はカップアンドコーン調整が固めなので少しゴリ感があります。ほんの少しですが玉押しを緩めて使っています。しっかりとハブの調整を行えば回転は見違えるほどになります。

前輪はラジアル組、後輪左非ドライブ側は3クロス組、右ドライブ側は2クロス組です。左右のテンション比率が1%ほど上がりますので取り入れました。劇的に性能が良くなるわけではありませんが1%上がりますので左3クロスで組みました。もちろん左右2クロスも良いかと思います。

スポークテンション値はリムメーカーの指定が120~130kgfとありますのでしっかりと守っています。テンション値の均一化と振れの最小化を守って作り上げました。

前輪697g CX-RAY使用
スポークテンションは均一に
後輪968g CX-RAY使用 左3クロス右2クロス組
スポークテンションは均一に

見た目は地味ですが手組感が大きく出ています。前輪697g後輪968g前後1665gです。

軽量にするなら台湾ハブを使えばいいのですがあえて重量のあるハブを使ったことには理由があります。前後で1600g台のホイールは軽くはありませんが重くもありません。前述通りハブのメンテナンスが楽です。丈夫なハブは乗った時のひずみが少ないので数値では表せないのですが駆動ロスが少ないと言われています。重くてもシマノホイールに使われているのはこの理由と推察します。

普段使いのホイールには勿体無いかもしれませんが丈夫なハブを使っていますので気兼ねなく使えるホイールです。外周部は剛性が高く軽量リムなので回転は駆動ロスが少ないです。是非ともおススメしたいホイールです。

DURAホイールの調整依頼②

先日シマノDURAホイールの再調整を承りましたことを記事にしました。

この時のホイールの調整で感じたことをもう一度詳しく考えたいと思います。

ホイールのスポークテンションがとてもハイテンションで調整されていました。後輪の非ドライブ側が92kgfほどのテンションでした。

お預かり時のスポークテンショングラフ

通常スポーク数が1:1組の場合左:右のテンション比率は左50前後:右100の比率です。つまり右の約半分が左になりますのでこのホイールでは右は180~200kgfのスポークテンションでないとセンターが出ないことになります。

ご依頼主はヤフオクでDURAホイールを購入されたのですが購入された時からすでに左テンションは90kgfであったようです。つまり右は異常なハイテンションのホイールでした。私のほうに送られてきたときはスポークもねじれたスポークであったのですがねじれはヤフオクで購入したときからねじれていたと聞いています。

前のオーナーは自分で調整したがうまくいかずヤフオクに売りに出したと考えられます。ヤフオクで落札してそのまま2年間乗っておられたのですが事故なく乗れたのが幸いです。

さて、シマノのマニュアルはネットで検索できます。本当にこのシステムは素晴らしいといつも感心しています。自転車のことはシマノのマニュアルで勉強する、これだと思います。大概のことはこれで事足ります。

あるショップの人が自転車の組み立ての際パソコンを横に置いてマニュアルを見ながら作業しているショップオーナーさんがおられたことを思い出します。

しかし頼りになるマニュアルですが読み違えますと大変なことになると思います。

今回のDuraホイールではおそらくマニュアルの読み違いだと思っています。

マニュアルではホイールの推奨スポークテンションも細かく記載されています。

例えば次のように書かれています。

シマノマニュアルより

左側66~92kgfと書かれています。では右側92kgfと高いほうに調整しますと右側ドライブ側は当然左の倍180kgf以上になります。センターを出すには左の倍以上にテンションを上げることが必要です。

通常、後輪ホイールの調整は右ドライブ側から左非ドライブ側に行うのが手順です。先ず右を140kgfに調整してから左を調整すれば驚くばかりのスポークテンションにはなりません。この手順が一番うまくできる方法です。後輪は右から左です。

ホイールを組める人ならすぐわかっていただけると思います。

DURAホイールの調整依頼

以前手組ホイールをお買い上げいただきました方よりご連絡いただきました。

お預かりのDURAホイール

シマノDURAホイール7850―c24-TLをヤフオクで購入され2年乗られたのですが振れが目立って来たのでご自分で振れ取りされました。残念ながらうまく振れ取りできなかったので再調整のご依頼です。

私も駆け込み寺になれるほどの実力はないのですが一応お受けすることにしました。

当初簡単と思っていたのですが実際当たってみるとどうしたものかと悩むほどとても難しい仕事でした。

ヤフオクで購入された時にスポークテンションを測っておかれたのでその状態に戻されたそうです。テンションメーターを持っていると正確な数値は分からないですが元の状態に戻すことが出来ます。ヤフオクで購入時状態に戻してお送りいただきました。

ホイールの状態を戻してくださったのはよかったのですがもとのヤフオクで購入された時からすでにすごいハイテンションで変更されたホイールでありました。本当に驚きのテンションでした。

テンションが高すぎてグラフにできないほどの数値でした。

いつもホイールをお預かりしますと最初にスポークテンションを調べます。この時のスポークテンションが上図です。テンションが高すぎてグラフにできない数値でした。この時は本当に驚きました。この状態で乗っておられたのに驚きました。事故なく2年間乗れられたことはとても幸運と思います。

作業に取り掛かります。

各スポークのリム側に少量のオイルを注してゆっくり緩めることから始めました。ハイテンションなので硬くて回りません。あまりの硬さなので少し力を入れたらスポーク1本折ってしまいました。いきなりの失敗です。この時は気軽に引き受けたこと後悔しました。

人様の品物なので慌てました。最初は青くなりましたが落ち着いて考えますと部品はまだ手配できそうです。調べますとやはり手配ができます。先ず、折れたスポークの交換部品を手配してお客様に時間が掛かる旨連絡して了解を得ました。

詳細に部品には番号がつけられています。シマノマニュアルより

取り換えスポークが届きましたので作業再開します。

折れたスポークの取り換え作業は簡単そうに見えますがなかなか元に戻せないものです。取り外しは簡単ですが復元は難しいものです。シマノの取り扱いマニュアルをしっかり読み込んでどのように組み立てているかを考えました。

しっかりと読み込むことが必要です。プラグの回し方に注意!! シマノマニュアルより

マニュアルの項目順に進めていきますと躓づくところが必ず出てきます。どうしてうまくいかないのか考えて解決するしかありません。誰も教えてくれません。簡単ですよと言ってくれるだけです。

今回の解決方法は汚れ、ホコリを取り除いて徹底的にきれいにすることでした。新品状態に戻せば意外と簡単に進みます。

何とか無事に乗り越えることが出来ました。

シマノのマニュアルには推奨スポークテンションが書かれています。

スポークテンションの推奨値が書かれています。理解するには注意が必要です。 シマノマニュアルより

今回のホイールでは右ドライブ側は117kgf~143kgf、左66kgf~92kgfと書かれています。

この数値は推奨値ですので間違いないのですが、通常ハブでは左テンションは右の約半分以下になります。仮に左を92kgfにしてセンターを出すなら逆算すると右は180kgf以上になることです。お預かり時のグラフでは左平均92kgfです。どおりでお預かりしたときのテンションが高いはずです。

調整が終わってテンションを測りました。今回のホイールは右ドライブ側を140kgf、左67kgfでほぼセンターが出ています。最初は慌てましたが何とか調整終えることが出来ました。

調整済みのスポークテンショングラフ

今回修理お受けして感じたことです。

●少し前の製品ならまだ修理備品の手配ができることがありますが古い製品をオークションで購入される場合は本当に注意が必要です。

●オークションに出ている品物は何らかの理由があります。説明には書かれていない理由があります。

ホイール、自転車は買った時からメンテが始まります。自分で直せる人、直してくれる人が近くにいる人ならいいですがオークションなどでの購入は実力にあわせないと失敗することがあります。なかなか掘り出し物はないと心得たほうが良いと思います。

●大きい自転車屋さんも技術的にはいい加減な人が多いと聞きます。まずは腕の良い自転車屋さんを見つけて沢山買い物することで仲良くなることです。

スポークを交換しました

マビック36hオープンプロリム、シマノDURAハブ、DTチャンピオン(2.0mm)スポークで組まれたホイールのスポーク交換の依頼を受けました。

MAVIC rim Duraハブ DT チャンピオン 使用 
MAVIC rim Duraハブ DTチャンピオン 使用

2㎜スポークですのでとても剛性の高いホイールです。普段の通勤に使われた愛用のホイールとのことです。以前ブログに紹介しましたホイールですがこの時はテンション調整をさせていただきました。今回はこのホイールのスポークをすべて取り換えます。

前輪はサピムのLaser(2.0/1.5/2.0mm)、後輪にサピムのRace(2.0/1.8/2.0mm)に交換します。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例するといいます。お預かり時点ではチャンピオンの36本ホイールですので100㎏以上ある人がキャンプの道具を運んでも十分乗れるホイールです。

今回はご自分の体重を考えながらスポークを変えることにより軽量されました。

DTチャンピオン 後輪 36本
DTチャンピオン 前輪用 36本
前輪用 サピム Laser 36本
後輪用 サピム Race 36本

取り換える前にスポークの重量を比べてみます。

前輪チャンピオンLaser重量差
277156121
後輪チャンピオンRace重量差
27722849
合計170

170gの軽量化です。

前輪のLaserは中央部が1.5mmの細いスポークですが36本ありますので十分な剛性です。スポークの中央部がショックアブソーバーの働きをしますので地面からの振動を吸収してくれます。

後輪のRaceも中央部が1.8mmで振動を吸収してくれます。これらのスポークを使うことで疲れにくいホイールが出来上がります。ロングライドに最適なホイールです。

一般的に完組では少スポークホイールです。剛性を高めるために太いスポークを使って剛性を高めています。多スポークホイールに仕上げることでスポークの総面積は同じであっても細いスポークを使ったホイールは疲れにくいホイールに仕上がります。もちろん空力では若干劣りますが比べれば少しという程度です。他に良い点が多々あります。

前輪スポークテンション
後輪スポークテンション

さて、上のグラフはスポーク取り換え終わった時のスポークテンショングラフです。できるだけ振れを少なくし出来るだけテンションを均一になるように調整しています。

ずっと通勤に使われていましたホイールですので乗り味が変わったことはよくお分かりと思います。どれだけ変わったか教えていただくのが楽しみです。

エントリーモデルのスポークは太い

1万円台で購入できるシマノホイールのエントリーモデルをお使いの方に提案したいと思います。

シマノWH-R501のリム重量、スポーク重量を調べますと次のように仕様です。

前輪リム重量 538g
前輪スポーク 20本 144g

後輪リム重量531g
後輪スポーク 24本 179g
WH-R501
後輪リム重量 538g24本179g1本7.4g
前輪リム重量 531g20本144g1本7.2g

空気抵抗を減らすとして前輪には扁平スポークを使っているのですがこのスポークがなんと7gスポークです。扁平には間違いないのですが形だけの扁平スポークと考えます。

サピムのスポークをグラムでわかるようにしました。次の表です。データはサピムのホームページから得ています。

品名仕様1本重量g
cx-rayWeight: (64 pcs x 260 mm lg) 272 g4.3
cx-sprintWeight: 334 g (64 x 260 mm)5.2
   
LaserWeight: 283 g (64 x 260 mm)4.4
RaceWeight: 14G (64 pcs x 260 mm lg) 363 g5.7
   
LeaderWeight: 14G 2,0 mm (64 pcs x 260 mm lg) 431 g6.7
サピムホームページより

このシマノホイールはどなたにも使えるように考えられたホイールですから少スポークのホイールではありますがとても頑丈に作られています。つまりスポークを太くして剛性を高めています。本当にスポークの太さには驚きです。

体重の軽い人が乗ればなんとガチガチの硬いホイールだと感じることでしょう。大は小を兼ねるのですがこのようなホイールは長時間乗れば疲れるホイールであることは間違いありません。

仮に細い5gスポークを使って28hの前輪ホイールを作るとスポークの重量は今回のシマノホイールとほぼ同じグラム数になります。剛性は減らず地面からの振動を吸収するホイールが出来上がります。

ホイールの出来上がりではスポークの選択がとても重要です。スポークで乗り味、性能は大きく変わります。

現在シマノエントリーモデルのホイールでご不満の方は、簡単にはホイールの買い替えもありますがスポークを軽量スポークに変えるのも一つの案になるかなと思います。お試しください。

後輪スポークを取り換える②

今お使いのディスクカーボンホイールの走りがもっさりするので改善するのにいい方法はありませんかとご連絡いただきましたことは前回の記事に書きました。

非ドライブ側のCX-RAYをコンペティションに交換

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します、とお伝えしました。剛性を高めるにはスポークの数を増やせばよいのでリム、ハブを交換すれば一番いいのです。しかし費用も掛かることですのでそんなわけにはいきません。

ここで提案しましたのはスポークを太くする提案です。

今使われているスポークはCX-RAYです。最強のスポークと言われていますが剛性に関しては細いスポークですので魔法は使えません。今回の対処は単純にスポークをCX-RAYからDTのコンペティションに変更するだけでした。

ホイールをお返しして、本日結果を教えていただきました。以下のコメントです。

今日ビワイチに使ってきましたが確実に剛性が上がっていてモサッとした感じがとれていました。ただ、やはりあのホイールじたいが重たいのでヨッコラショってなってしまうので重さだけがネックかなと思います。

スポークの重量が約20g増えたのですがやはり結果は良好でした。理論通りです。ねばりがあり軽量の最高スポークでも乗り手の体重、乗り方に応じて選ばないといけません。まさに20g増のマジックです。

また違うお客様のお話です。

約2か月前ですがホイールが固すぎるのでスポークをすべてコンペティションからCX-RAYに交換したお客様がおられます。コンペティションは剛性があって反応はいいのですが長時間乗ると疲れるとのことでした。

別のホイールで前後ともにCX-RAYスポークのホイールもお持ちで、こちらのほうが疲れないとのことでした。こんなことから剛性を下げることをお勧めしました。

コンペティションからCX-RAYに替えられた結果、とても具合が良く楽に乗れるとお返事いただきました。剛性が高すぎるのも疲れるホイールとなります。

このようにホイールに不満のある方はスポークを変えるのが結構安上がりでいい処方箋と思います。

シマノのローエンドホイールはガチガチの高剛性で組まれています。これは万人向けのホイールに仕上げているので仕方ないことです。前輪後輪スポークを体重にあわせてLaser、CX-RAYなどに替えると見違えるホイールに変化することは間違いありません。お試しください。

後輪スポークを取り換える

このブログの記事に何度か使わせていただいている方のカーボンホイール点検依頼を受けました。私の作ったホイールではありませんが一見さんではありませんのでお受けしました。ちなみにこの方は京都の方です。

DT350ストレイトプルハブ使用 非ドライブ側CX-RAY ドライブ側CX-sprint
お預かり時タイヤついた状態でのスポークテンショングラフ  タイヤのビードが影響してスポークテンションは大きく下がっていますが約100kgをキープしています。悪くないです。

ホイールは手組ディスクホイールです。後輪がどうももっさりするとのことです。このもっさりという言葉ですが、国語辞典では見てくれがぱっとしなく動作が鈍い様子と書かれていますが見た目は洒落たロゴが入ったホイールです。

乗り手はFTP300近いパワーライダーさんですのでおそらく剛性が足りないのではないですか?ということをお伝えしました。

ホイールの剛性が足りない場合はスポークを増やすのですが、スポーク数を増やせないなら、つまりリム、ハブを交換できない条件では太いスポークに変えるしかありません。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。ということはスポークを変えればいいのですがいきなり2mmの太いスポークに交換もできません。理由はカーボンリムの場合太いスポークはカーボンが割れる恐れがあるからです。

いつも使っているリムメーカーでは一番太くて1.8mmまでと注意を促しています。おそらく今回のリムも同じと思いますので太さは1.8mm迄のスポークに交換することにしました。

ホイールを調べますと左非ドライブ側にはCX-RAY、右ドライブ側にはCX-sprintと扁平スポークを使い分けています。粋な使い方です。

サピムのホームページでCX-sprintを調べますと

Some professionals use the CX-Sprint on the drive side and the CX-Ray on the non drive side. This shall bring a more equal stiffness on right and left side in one wheel.

ホームページのデータによりますとCX-sprintの重量は260mmで5.2gです。DTのコンペティションは4.9gの丸スポークですので扁平スポークのほうが軽いように見えますがコンペティションのほうが軽いのです。260mmでCX-RAYは4.3gです。

最終的には左スポークCX-RAYを取り換えてDTのコンペティションに替えることにしました。右ドライブ側はそのままCX-sprintで残しています。

取り換え前のCX-RAYスポーク 12本で54g
取り換えスポーク コンペティション12本で75g

総重量はCX-RAY12本で54g、コンペティションで75gでした。約20gの増加です。わずか約20gの重量差ですが理論的には剛性は上がっています。

タイヤ外してテンション調整前の状態 左側にばらつきアリ
左側のスポークをできるだけ均等に調整しました

再度乗られた印象を聞かせていただくのが楽しみです。

ヘッドインとヘッドアウト②

お預かりホイールを続けて研究させて頂きます。

先ずスポークの状態を見ます。グラフにするとわかりやすいのでいつも先ずグラフです。

スポークテンションは緩くてバラつき偏差値が高いです

状態がよくわかります。前輪は後輪と違い駆動には影響ありませんので緩いのかもしれません。

表をじっと見ますと先ず思いつくのは前輪のスポークテンションがとても緩く、ばらつきも大きいです。タイヤなしで約70kgf前後のテンションです。ホイールはクリンチャーホイールアルミですのでタイヤインストールしますとタイヤビードが影響してスポークテンションは10~20%下がります。ばらつきが大きいスポークテンションでしたら一部のスポークが50kgを割る可能性があります。緩いと問題です。

スポークテンションのバラつきと緩さが一番ホイールにとってスポークが折れたりニップルが飛んだりする原因になります。

現にお客様からの話では、特別に粗い乗り方をしたわけでもないのに2回ニップルが飛んだということを伺っています。ニップルはアルミなので破断することはブラスより多いのは事実ですが緩いスポークも原因の一つではないでしょうか?

ホイールのスポークはサピムのCX-RAYです。地面からの振動を吸収してくれるスポークですので乗り味は柔らかいです。柔らかい乗り味を狙って作っているのでしょうが何故ここまで緩いスポークテンションで仕上げるのかがわかりません。

73kgfは使えるテンションですが、私は緩いと思います。一般には100kgf前後で仕上げるといわれています。しかし正解はありませんのでこれが正解ですといわれると正解であるところがホイールです。

どの教科書を見ても(外国の本ばかりで日本語の教科書はありません)この数値が最適ですと書かれていません。しかしシマノからは発表されています。

先日、お客様よりご存知ですか?とシマノがホイールの適正テンションを表にして発表していると教えていただきました。これがその表です。シマノのディーラーマニュアルの16ページに掲載されています。

これはネットにアップされていますのでいろんな情報がよくわかり勉強になります。私はこの表を見落としていました。

シマノディーラーマニュアルより

シマノが発表している数値から考えますとお預かりホイールはギリギリOKですが通常は緩いと思います。

私には緩いと思いますが表を教えていただいたお客様はご自分でもホイールを組まれますので別の方法で調整されています。

先ず一番高い数値で組んでいろいろ乗ってみてゆっくり好みの数値にテンションを下げて調整する方法です。

私は大体このテンションと決めてしまいますがあとで微調整する方法もいいですね。ホイール組が出来る上級者ならではの方法です。

スポークテンションを均等に約100kgfで仕上げています

ホイールは上図のようにテンションを調整してお返ししました。どのように変わったかがわかるように引き取り時と調整後のグラフを添えています。

ヘッドインとヘッドアウト

あるビルダーさんの組まれたホイールを点検する機会を得ました。

ビルダーさんの作った前輪ホイールはヘッドインで作っています。CX-RAYで組まれています。

前輪ホイールを見ますとラジアル組ですが一般的な組み方ではありません。

ホイール組は外国の本で勉強しましたので呼び方はカタカナ英語の言い方で述べます。

左右のフランジ幅は70mmのハブです。ヘッドインで組まれています。ヘッドイン、ヘッドアウトというのは見た目からです。

スポークの通し方で決まります。スポークをハブの外側から内側に通して組む方法がヘッドアウトです。スポークを内から外側に通して組み上げるのがヘッドインです。

私のクロスバイク前輪ホイールはヘッドアウトで作っています。私も少し贅沢にサピムのCX-RAYです。

同じハブで作りましてもヘッドインとヘッドアウトでスポークの角度が若干違います。以下壁を支えるツッカイ棒の角度のような話をいたします。

このブレイシングアングルは計算ができますが、簡便にはスポーク長の計算ソフトで角度を知ることができます。下図は計算ソフトを利用してブレイシングアングルを出しています。

フランジ幅を外側から計測
ハブフランジの外側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル
フランジ幅を内側より計測
ハブフランジの内側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル

今回のハブではヘッドインでは7.2度、ヘッドアウトでは6.3度という結果が出ています。

0.9度の違いがあるのですがホイールの性能にどのくらい影響するのかはわかりません。

角度が多いほうが支えることが支える力が高いと思うのですがどのくらいよくなるのかはわかりません。まあよくなるのでしょう。

ではハブに与える影響はどうでしょう。

ハブを外から締め付けるような作り方になるのでリムのERDが短いと角度がつきますので支える力が強くなるのですがハブのフランジ角度次第ではハブフランジに余計な力が加わることになります。つまりハブを傷つけてしまうのではと心配します。

そんなに大きな影響を与える角度ではないのですがさあどっちがいいのでしょう?

フランジ幅がもっと広いバイテックスハブRAF12なら80mmの幅があるのでブレイシングアングル角度は8.1度になり横剛性は確かに高くなると思います。10mmの違いは大きいです。

TNIのエボリューションハブのようにフランジ幅が70mmのハブならヘッドインとヘッドアウトのブレイシングアングル角度差は0.9度ですので効果はよくわからないです。しかし見た感じは大きく変わります。造りが違うと主張しているように見えます。見た目も大切です。

完組ホイールはヘッドアウトで作る方法が一般的です。ほとんどのホイールメーカーがこの方法なのです。お預かりホイールのようにヘッドインはブレイシングアングルがわずかといえども大きくなるので横剛性を高める効果があると思うのですがどうなんでしょう?作るのに時間が掛かる割には効果がないとホイールメーカーは判断しているのかもしれません。