DURAホイールの調整依頼

以前手組ホイールをお買い上げいただきました方よりご連絡いただきました。

お預かりのDURAホイール

シマノDURAホイール7850―c24-TLをヤフオクで購入され2年乗られたのですが振れが目立って来たのでご自分で振れ取りされました。残念ながらうまく振れ取りできなかったので再調整のご依頼です。

私も駆け込み寺になれるほどの実力はないのですが一応お受けすることにしました。

当初簡単と思っていたのですが実際当たってみるとどうしたものかと悩むほどとても難しい仕事でした。

ヤフオクで購入された時にスポークテンションを測っておかれたのでその状態に戻されたそうです。テンションメーターを持っていると正確な数値は分からないですが元の状態に戻すことが出来ます。ヤフオクで購入時状態に戻してお送りいただきました。

ホイールの状態を戻してくださったのはよかったのですがもとのヤフオクで購入された時からすでにすごいハイテンションで変更されたホイールでありました。本当に驚きのテンションでした。

テンションが高すぎてグラフにできないほどの数値でした。

いつもホイールをお預かりしますと最初にスポークテンションを調べます。この時のスポークテンションが上図です。テンションが高すぎてグラフにできない数値でした。この時は本当に驚きました。この状態で乗っておられたのに驚きました。事故なく2年間乗れられたことはとても幸運と思います。

作業に取り掛かります。

各スポークのリム側に少量のオイルを注してゆっくり緩めることから始めました。ハイテンションなので硬くて回りません。あまりの硬さなので少し力を入れたらスポーク1本折ってしまいました。いきなりの失敗です。この時は気軽に引き受けたこと後悔しました。

人様の品物なので慌てました。最初は青くなりましたが落ち着いて考えますと部品はまだ手配できそうです。調べますとやはり手配ができます。先ず、折れたスポークの交換部品を手配してお客様に時間が掛かる旨連絡して了解を得ました。

詳細に部品には番号がつけられています。シマノマニュアルより

取り換えスポークが届きましたので作業再開します。

折れたスポークの取り換え作業は簡単そうに見えますがなかなか元に戻せないものです。取り外しは簡単ですが復元は難しいものです。シマノの取り扱いマニュアルをしっかり読み込んでどのように組み立てているかを考えました。

しっかりと読み込むことが必要です。プラグの回し方に注意!! シマノマニュアルより

マニュアルの項目順に進めていきますと躓づくところが必ず出てきます。どうしてうまくいかないのか考えて解決するしかありません。誰も教えてくれません。簡単ですよと言ってくれるだけです。

今回の解決方法は汚れ、ホコリを取り除いて徹底的にきれいにすることでした。新品状態に戻せば意外と簡単に進みます。

何とか無事に乗り越えることが出来ました。

シマノのマニュアルには推奨スポークテンションが書かれています。

スポークテンションの推奨値が書かれています。理解するには注意が必要です。 シマノマニュアルより

今回のホイールでは右ドライブ側は117kgf~143kgf、左66kgf~92kgfと書かれています。

この数値は推奨値ですので間違いないのですが、通常ハブでは左テンションは右の約半分以下になります。仮に左を92kgfにしてセンターを出すなら逆算すると右は180kgf以上になることです。お預かり時のグラフでは左平均92kgfです。どおりでお預かりしたときのテンションが高いはずです。

調整が終わってテンションを測りました。今回のホイールは右ドライブ側を140kgf、左67kgfでほぼセンターが出ています。最初は慌てましたが何とか調整終えることが出来ました。

調整済みのスポークテンショングラフ

今回修理お受けして感じたことです。

●少し前の製品ならまだ修理備品の手配ができることがありますが古い製品をオークションで購入される場合は本当に注意が必要です。

●オークションに出ている品物は何らかの理由があります。説明には書かれていない理由があります。

ホイール、自転車は買った時からメンテが始まります。自分で直せる人、直してくれる人が近くにいる人ならいいですがオークションなどでの購入は実力にあわせないと失敗することがあります。なかなか掘り出し物はないと心得たほうが良いと思います。

●大きい自転車屋さんも技術的にはいい加減な人が多いと聞きます。まずは腕の良い自転車屋さんを見つけて沢山買い物することで仲良くなることです。

スポークを交換しました

マビック36hオープンプロリム、シマノDURAハブ、DTチャンピオン(2.0mm)スポークで組まれたホイールのスポーク交換の依頼を受けました。

MAVIC rim Duraハブ DT チャンピオン 使用 
MAVIC rim Duraハブ DTチャンピオン 使用

2㎜スポークですのでとても剛性の高いホイールです。普段の通勤に使われた愛用のホイールとのことです。以前ブログに紹介しましたホイールですがこの時はテンション調整をさせていただきました。今回はこのホイールのスポークをすべて取り換えます。

前輪はサピムのLaser(2.0/1.5/2.0mm)、後輪にサピムのRace(2.0/1.8/2.0mm)に交換します。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例するといいます。お預かり時点ではチャンピオンの36本ホイールですので100㎏以上ある人がキャンプの道具を運んでも十分乗れるホイールです。

今回はご自分の体重を考えながらスポークを変えることにより軽量されました。

DTチャンピオン 後輪 36本
DTチャンピオン 前輪用 36本
前輪用 サピム Laser 36本
後輪用 サピム Race 36本

取り換える前にスポークの重量を比べてみます。

前輪チャンピオンLaser重量差
277156121
後輪チャンピオンRace重量差
27722849
合計170

170gの軽量化です。

前輪のLaserは中央部が1.5mmの細いスポークですが36本ありますので十分な剛性です。スポークの中央部がショックアブソーバーの働きをしますので地面からの振動を吸収してくれます。

後輪のRaceも中央部が1.8mmで振動を吸収してくれます。これらのスポークを使うことで疲れにくいホイールが出来上がります。ロングライドに最適なホイールです。

一般的に完組では少スポークホイールです。剛性を高めるために太いスポークを使って剛性を高めています。多スポークホイールに仕上げることでスポークの総面積は同じであっても細いスポークを使ったホイールは疲れにくいホイールに仕上がります。もちろん空力では若干劣りますが比べれば少しという程度です。他に良い点が多々あります。

前輪スポークテンション
後輪スポークテンション

さて、上のグラフはスポーク取り換え終わった時のスポークテンショングラフです。できるだけ振れを少なくし出来るだけテンションを均一になるように調整しています。

ずっと通勤に使われていましたホイールですので乗り味が変わったことはよくお分かりと思います。どれだけ変わったか教えていただくのが楽しみです。

エントリーモデルのスポークは太い

1万円台で購入できるシマノホイールのエントリーモデルをお使いの方に提案したいと思います。

シマノWH-R501のリム重量、スポーク重量を調べますと次のように仕様です。

前輪リム重量 538g
前輪スポーク 20本 144g

後輪リム重量531g
後輪スポーク 24本 179g
WH-R501
後輪リム重量 538g24本179g1本7.4g
前輪リム重量 531g20本144g1本7.2g

空気抵抗を減らすとして前輪には扁平スポークを使っているのですがこのスポークがなんと7gスポークです。扁平には間違いないのですが形だけの扁平スポークと考えます。

サピムのスポークをグラムでわかるようにしました。次の表です。データはサピムのホームページから得ています。

品名仕様1本重量g
cx-rayWeight: (64 pcs x 260 mm lg) 272 g4.3
cx-sprintWeight: 334 g (64 x 260 mm)5.2
   
LaserWeight: 283 g (64 x 260 mm)4.4
RaceWeight: 14G (64 pcs x 260 mm lg) 363 g5.7
   
LeaderWeight: 14G 2,0 mm (64 pcs x 260 mm lg) 431 g6.7
サピムホームページより

このシマノホイールはどなたにも使えるように考えられたホイールですから少スポークのホイールではありますがとても頑丈に作られています。つまりスポークを太くして剛性を高めています。本当にスポークの太さには驚きです。

体重の軽い人が乗ればなんとガチガチの硬いホイールだと感じることでしょう。大は小を兼ねるのですがこのようなホイールは長時間乗れば疲れるホイールであることは間違いありません。

仮に細い5gスポークを使って28hの前輪ホイールを作るとスポークの重量は今回のシマノホイールとほぼ同じグラム数になります。剛性は減らず地面からの振動を吸収するホイールが出来上がります。

ホイールの出来上がりではスポークの選択がとても重要です。スポークで乗り味、性能は大きく変わります。

現在シマノエントリーモデルのホイールでご不満の方は、簡単にはホイールの買い替えもありますがスポークを軽量スポークに変えるのも一つの案になるかなと思います。お試しください。

後輪スポークを取り換える②

今お使いのディスクカーボンホイールの走りがもっさりするので改善するのにいい方法はありませんかとご連絡いただきましたことは前回の記事に書きました。

非ドライブ側のCX-RAYをコンペティションに交換

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します、とお伝えしました。剛性を高めるにはスポークの数を増やせばよいのでリム、ハブを交換すれば一番いいのです。しかし費用も掛かることですのでそんなわけにはいきません。

ここで提案しましたのはスポークを太くする提案です。

今使われているスポークはCX-RAYです。最強のスポークと言われていますが剛性に関しては細いスポークですので魔法は使えません。今回の対処は単純にスポークをCX-RAYからDTのコンペティションに変更するだけでした。

ホイールをお返しして、本日結果を教えていただきました。以下のコメントです。

今日ビワイチに使ってきましたが確実に剛性が上がっていてモサッとした感じがとれていました。ただ、やはりあのホイールじたいが重たいのでヨッコラショってなってしまうので重さだけがネックかなと思います。

スポークの重量が約20g増えたのですがやはり結果は良好でした。理論通りです。ねばりがあり軽量の最高スポークでも乗り手の体重、乗り方に応じて選ばないといけません。まさに20g増のマジックです。

また違うお客様のお話です。

約2か月前ですがホイールが固すぎるのでスポークをすべてコンペティションからCX-RAYに交換したお客様がおられます。コンペティションは剛性があって反応はいいのですが長時間乗ると疲れるとのことでした。

別のホイールで前後ともにCX-RAYスポークのホイールもお持ちで、こちらのほうが疲れないとのことでした。こんなことから剛性を下げることをお勧めしました。

コンペティションからCX-RAYに替えられた結果、とても具合が良く楽に乗れるとお返事いただきました。剛性が高すぎるのも疲れるホイールとなります。

このようにホイールに不満のある方はスポークを変えるのが結構安上がりでいい処方箋と思います。

シマノのローエンドホイールはガチガチの高剛性で組まれています。これは万人向けのホイールに仕上げているので仕方ないことです。前輪後輪スポークを体重にあわせてLaser、CX-RAYなどに替えると見違えるホイールに変化することは間違いありません。お試しください。

後輪スポークを取り換える

このブログの記事に何度か使わせていただいている方のカーボンホイール点検依頼を受けました。私の作ったホイールではありませんが一見さんではありませんのでお受けしました。ちなみにこの方は京都の方です。

DT350ストレイトプルハブ使用 非ドライブ側CX-RAY ドライブ側CX-sprint
お預かり時タイヤついた状態でのスポークテンショングラフ  タイヤのビードが影響してスポークテンションは大きく下がっていますが約100kgをキープしています。悪くないです。

ホイールは手組ディスクホイールです。後輪がどうももっさりするとのことです。このもっさりという言葉ですが、国語辞典では見てくれがぱっとしなく動作が鈍い様子と書かれていますが見た目は洒落たロゴが入ったホイールです。

乗り手はFTP300近いパワーライダーさんですのでおそらく剛性が足りないのではないですか?ということをお伝えしました。

ホイールの剛性が足りない場合はスポークを増やすのですが、スポーク数を増やせないなら、つまりリム、ハブを交換できない条件では太いスポークに変えるしかありません。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。ということはスポークを変えればいいのですがいきなり2mmの太いスポークに交換もできません。理由はカーボンリムの場合太いスポークはカーボンが割れる恐れがあるからです。

いつも使っているリムメーカーでは一番太くて1.8mmまでと注意を促しています。おそらく今回のリムも同じと思いますので太さは1.8mm迄のスポークに交換することにしました。

ホイールを調べますと左非ドライブ側にはCX-RAY、右ドライブ側にはCX-sprintと扁平スポークを使い分けています。粋な使い方です。

サピムのホームページでCX-sprintを調べますと

Some professionals use the CX-Sprint on the drive side and the CX-Ray on the non drive side. This shall bring a more equal stiffness on right and left side in one wheel.

ホームページのデータによりますとCX-sprintの重量は260mmで5.2gです。DTのコンペティションは4.9gの丸スポークですので扁平スポークのほうが軽いように見えますがコンペティションのほうが軽いのです。260mmでCX-RAYは4.3gです。

最終的には左スポークCX-RAYを取り換えてDTのコンペティションに替えることにしました。右ドライブ側はそのままCX-sprintで残しています。

取り換え前のCX-RAYスポーク 12本で54g
取り換えスポーク コンペティション12本で75g

総重量はCX-RAY12本で54g、コンペティションで75gでした。約20gの増加です。わずか約20gの重量差ですが理論的には剛性は上がっています。

タイヤ外してテンション調整前の状態 左側にばらつきアリ
左側のスポークをできるだけ均等に調整しました

再度乗られた印象を聞かせていただくのが楽しみです。

ヘッドインとヘッドアウト②

お預かりホイールを続けて研究させて頂きます。

先ずスポークの状態を見ます。グラフにするとわかりやすいのでいつも先ずグラフです。

スポークテンションは緩くてバラつき偏差値が高いです

状態がよくわかります。前輪は後輪と違い駆動には影響ありませんので緩いのかもしれません。

表をじっと見ますと先ず思いつくのは前輪のスポークテンションがとても緩く、ばらつきも大きいです。タイヤなしで約70kgf前後のテンションです。ホイールはクリンチャーホイールアルミですのでタイヤインストールしますとタイヤビードが影響してスポークテンションは10~20%下がります。ばらつきが大きいスポークテンションでしたら一部のスポークが50kgを割る可能性があります。緩いと問題です。

スポークテンションのバラつきと緩さが一番ホイールにとってスポークが折れたりニップルが飛んだりする原因になります。

現にお客様からの話では、特別に粗い乗り方をしたわけでもないのに2回ニップルが飛んだということを伺っています。ニップルはアルミなので破断することはブラスより多いのは事実ですが緩いスポークも原因の一つではないでしょうか?

ホイールのスポークはサピムのCX-RAYです。地面からの振動を吸収してくれるスポークですので乗り味は柔らかいです。柔らかい乗り味を狙って作っているのでしょうが何故ここまで緩いスポークテンションで仕上げるのかがわかりません。

73kgfは使えるテンションですが、私は緩いと思います。一般には100kgf前後で仕上げるといわれています。しかし正解はありませんのでこれが正解ですといわれると正解であるところがホイールです。

どの教科書を見ても(外国の本ばかりで日本語の教科書はありません)この数値が最適ですと書かれていません。しかしシマノからは発表されています。

先日、お客様よりご存知ですか?とシマノがホイールの適正テンションを表にして発表していると教えていただきました。これがその表です。シマノのディーラーマニュアルの16ページに掲載されています。

これはネットにアップされていますのでいろんな情報がよくわかり勉強になります。私はこの表を見落としていました。

シマノディーラーマニュアルより

シマノが発表している数値から考えますとお預かりホイールはギリギリOKですが通常は緩いと思います。

私には緩いと思いますが表を教えていただいたお客様はご自分でもホイールを組まれますので別の方法で調整されています。

先ず一番高い数値で組んでいろいろ乗ってみてゆっくり好みの数値にテンションを下げて調整する方法です。

私は大体このテンションと決めてしまいますがあとで微調整する方法もいいですね。ホイール組が出来る上級者ならではの方法です。

スポークテンションを均等に約100kgfで仕上げています

ホイールは上図のようにテンションを調整してお返ししました。どのように変わったかがわかるように引き取り時と調整後のグラフを添えています。

ヘッドインとヘッドアウト

あるビルダーさんの組まれたホイールを点検する機会を得ました。

ビルダーさんの作った前輪ホイールはヘッドインで作っています。CX-RAYで組まれています。

前輪ホイールを見ますとラジアル組ですが一般的な組み方ではありません。

ホイール組は外国の本で勉強しましたので呼び方はカタカナ英語の言い方で述べます。

左右のフランジ幅は70mmのハブです。ヘッドインで組まれています。ヘッドイン、ヘッドアウトというのは見た目からです。

スポークの通し方で決まります。スポークをハブの外側から内側に通して組む方法がヘッドアウトです。スポークを内から外側に通して組み上げるのがヘッドインです。

私のクロスバイク前輪ホイールはヘッドアウトで作っています。私も少し贅沢にサピムのCX-RAYです。

同じハブで作りましてもヘッドインとヘッドアウトでスポークの角度が若干違います。以下壁を支えるツッカイ棒の角度のような話をいたします。

このブレイシングアングルは計算ができますが、簡便にはスポーク長の計算ソフトで角度を知ることができます。下図は計算ソフトを利用してブレイシングアングルを出しています。

フランジ幅を外側から計測
ハブフランジの外側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル
フランジ幅を内側より計測
ハブフランジの内側からハブセンターまで計測した数値で出したブレイシングアングル

今回のハブではヘッドインでは7.2度、ヘッドアウトでは6.3度という結果が出ています。

0.9度の違いがあるのですがホイールの性能にどのくらい影響するのかはわかりません。

角度が多いほうが支えることが支える力が高いと思うのですがどのくらいよくなるのかはわかりません。まあよくなるのでしょう。

ではハブに与える影響はどうでしょう。

ハブを外から締め付けるような作り方になるのでリムのERDが短いと角度がつきますので支える力が強くなるのですがハブのフランジ角度次第ではハブフランジに余計な力が加わることになります。つまりハブを傷つけてしまうのではと心配します。

そんなに大きな影響を与える角度ではないのですがさあどっちがいいのでしょう?

フランジ幅がもっと広いバイテックスハブRAF12なら80mmの幅があるのでブレイシングアングル角度は8.1度になり横剛性は確かに高くなると思います。10mmの違いは大きいです。

TNIのエボリューションハブのようにフランジ幅が70mmのハブならヘッドインとヘッドアウトのブレイシングアングル角度差は0.9度ですので効果はよくわからないです。しかし見た感じは大きく変わります。造りが違うと主張しているように見えます。見た目も大切です。

完組ホイールはヘッドアウトで作る方法が一般的です。ほとんどのホイールメーカーがこの方法なのです。お預かりホイールのようにヘッドインはブレイシングアングルがわずかといえども大きくなるので横剛性を高める効果があると思うのですがどうなんでしょう?作るのに時間が掛かる割には効果がないとホイールメーカーは判断しているのかもしれません。

パワータップハブの交換依頼がありました②

パワータップハブを交換しました後輪はお返ししました。

ハブ交換後のホイールです。
ハブ交換後のスポークテンショングラフ

グラフをお付けして納品していますのでご依頼いただきました時の状態とはあまりの違いに驚かれたようです。

このような話はどうしても自慢話になってしまいますのでいつも記事にはどうかと迷うのですがビルダーでホイール性能は違うということを知っていただきたいと思います。。

お客様はとても礼儀正しい方なのでビルダーさんの情報はお教えいただいていません。ただハブの組み換えをしてほしいということでした。

さて、前輪も心配になられたので見てほしいと再度ご依頼を受けました。

前輪のスポークを調整します。

お送りいただきましたホイールは振れもないきれいに回るホイールでした。

いつものようにテンションを点検します。

調整前のテンショングラフです

グラフにしますとよくわかります。見た目ではわかりません。

ホイールのスポークテンションは平均約50kgfで張られています。とても緩いです。タイヤインストール前でこれではとても危険です。

スポークは強弱、強弱とバランスはとれて張っています。これで振れが出ていないのです。

通常、クリンチャータイプのリムはタイヤインストールしますとタイヤビードの影響でスポークテンションは10~20%下がります。お預かりホイールは強弱、強弱でスポークは張られていますので緩いところのスポークは30kgf以下になるところが出てきます。

スポーク折れは緩いスポークに起こりやすいので30kgf以下に下がったスポークは強い衝撃でスポークが折れ、ニップルが破断する可能性がとても高くなります。安全性が一番大切なのにこれではとても心配です。

私が普段使っているカーボンリムメーカーの推奨するスポークテンションは

前輪が100~120kgf

後輪ドライブ側が125~135kgf

としています。メーカーは違いますが大体どのメーカーも同じと考えています。

今回お預かりの前輪は平均50kgfですのでメーカー推奨テンションの約半分です。

以下、点検して気になるところを書かせていただきます。

カーボンホイールを作れるビルダーさんなのでテンションメーターは持っておられると思います。ひょっとして校正していないメーターなのかもしれません。パークツールのメーターならば20%くらい狂っているのはよくあることです。

また、振れを取ったからこれで終わりということではありません。均一にスポークを張ることも大切です。テンションのバラつき偏差値はとても高い数値です。

使われているスポークはDTのレボリューションです。軽量ですが扱いがとても難しいスポークです。レボリューションはサピムのLaserと同じ種類のスポークで2.0/1.5/2.0mmの形状です。サピムのホームページではプライヤーなどでスポークの回転防止をしながら組まないといけないと書かれていますが今回のお預かりホイールのスポークにはプライヤーなどで抑えた傷がありません。これではスポークのテンションが緩いのはよくわかります。きつく締めあげるとスポークがねじれますがこれをやらずに組み上げています。スポークがゆるいはずです。

調整後のスポークはテンションです。均一に張っています。

人様が組んだホイールを観察させていただきますとよくわかります。辛口でホイールを評価しましたが自分のホイールに反映させ、いいホイ―ルを提案する動機付けとなります。

納品後お客さまより連絡が入りました。もうこの自転車屋さんに行くことはないそうです。

パワータップハブの交換依頼がありました

お客様より連絡がありました。

見た目はきれいに組まれたホイールです。振れもありません。
リムは国内の部品屋さんで調達されたそうです。
穴なしリムですが私の使っているメーカーではありません。

後輪カーボンホイールのパワータップを交換してほしいとのことです。穴なしリムで作られたカーボンホイールです。ハブを壊してしまい依頼されたビルダーさんにハブ交換を頼まれたのですがなかなか動いてくれないとのことでした。

当初は頼まれたビルダーさんにお願いすることが一番いいですとお伝えしました。

お返事ではなかなか取り掛かってくれなく数か月待っているということでした。業を煮やして私のほうに連絡があった次第です。

持ち込みの仕事は失敗すると弁償しないといけないことがあります。難しいことが多くありますので先ずお送りいただいて直せるかどうかをお返事しますということで納得いただきました。

後輪ホイールと新しいパワータップハブが送られてきました。

品物を確認しますと取り換えできないことはないことが分かりました。失敗しても弁償できると考えましてお受けしますとお返事しました。

お送りいただきましたホイールは以下の通りです。

リムメーカーは分かりませんが国内の部品屋さんで取り寄せられたそうです。ハブはパワータップハブG3、スポークはDTのレボリューション2.0/1.5/2.0mm黒、ニップルはアルミニップルという構成です。

いつもお預かりの時はスポークテンションを確認します。お預かり時のスポークテンションは次の通りでした。

スポークテンションが緩すぎるところがありグラフにできません。

とても緩い仕上がりです。通常ハブの構造から左スポークテンションは緩いものですがお預かりホイールは右が緩いので相対的に左も緩い仕上がりになります。一ヶ所はゆるすぎてテンションメーターで測れないくらいのゆるゆるでした。

グラフからわかりますが後輪右ドライブサイド約90kgf、左非ドライブサイド約36kgfと本当に驚きの数値です。しかし見た目はきれいな仕上がりで振れもありません。スポークをぐっと握ればゆるゆるですが見た目はきれいな状態です。

たくさんホイールを乗り比べておられる方はよくわかることですが、カーボンホイールが初めての方にはわからないことだと思います。私の感想をお知らせしまして驚かれました。

私も20年ほど前にホイールをあるショップに依頼した時のことを思い出します。出来上がった時はうれしくて乗っていたのですが2,3回乗って後輪スポークが折れました。ビルダーさんにもっていったのですが乗り方が悪いということで工賃を請求されたのです。何?工賃と怒ったのですがこれがきっかけでホイール作りにのめりこむようになりました。

閑話休題、

人様が作られたホイールをあーだ、こーだと批判するのはよくないと思っています。しかしながら今回のお預かり品はちょっとひどいと思いました。穴なしリムを扱えるのですからそれなりの技術があるビルダーさんと思います。本当に残念です。

お客様はとても礼儀正しい方でビルダーさんの詳しい話などは一切されません。

果たして失敗しましても弁償出来ることを確認しましたのでハブの組み換えをお受けしました。併せてアルミニップルからブラスニップルに交換も提案しました。やはり丈夫なブラスニップルがいいと思います。

作り直しを行いながら考えました。何故ビルダーさんは部品が揃っているのになかなか手をつけなかったのでしょうか?面倒な作業だから?すぐにできるのに勿体つけるために?いろんな事情があるにしましても数か月もお待たせするなんでひどいな、いろんなこと考えながら作業を進めました。

ブラスニップル分が重くなりました。右ハブは交換前のハブです。
スポークテンションはできるだけ均等にしています。右側を高くして相対的に左を上げています。

出来上がりのホイールの見た目はお預かり時点と同じです。違う点はスポークを均等に張っているところ、ブラスニップルで少し重くなりました。

ハブのセンターオフセット値が大きいので左スポークテンション値は高くできませんが出来るだけ右のテンションを上げて相対的にテンションを高める方法を取っています。もちろん均等にスポークを張ることが大切です。

お客様に報告しますと前輪も心配なので見てほしいとのことでした。お預かりすることにいたしました。後輪がどのように変わったか教えていただけるのが楽しみです。

タイヤ空気圧の問い合わせがありました

36mm高ディスクカーボンホイールをお求めいただきましたお客様よりタイヤの空気圧の問い合わせがありました。

リムメーカーではホームページで発表していますので詳しく知るには調べられたら良いのですが抜粋してお知らせいたしました。

以下その情報です。

体重と空気圧との関係です

お客様の体重から考えますとタイヤ空気圧は高すぎたようです。そんなに下げても良いのかと驚かれていました。

せっかくのカーボンホイールですのでお勧めの空気圧を知っておいてあとはご自分の好みに調整していく方法がいいのではないかと思います。私は低めが好みなので推奨気圧より1気圧ほど低いです。

特定メーカーの宣伝をするつもりはありません

空気圧計はポンプに付属品でもいいのですが専用品を持っていても良いのではないでしょうか?そんなに高価な物ではありません。タイヤは重要で乗り味は大きく変わります。空気圧もその一つです。