走行中に道路のキャッツアイを踏んでカーボンホイールの前輪が割れ修理できませんかと問い合わせがありました。お客様は中国メーカーに問い合わされたところ修理代金と送料代がかさむので直してくれるところがあるならそちら(日本)で直した方がいいということで修理してくれるところを探されました。
最初はちょっと戸惑いました。キャットアイを踏んだ、何これ?という感じです。キャットアイは自転車部品の会社しかこちらは知りません。調べますとこれです。
通常はこのようなご注文はお断りしているのですがやはりお困りなので修理をお受けしました。ちょっと偉そうですが、義を見てせざるは勇無きなりです。お客様は中国からリムを取り寄せられ当方に送られてきました。
お預かりしましたホイールはいつもスポークテンションを調べます。どんな作りをしているのかを調べるにはテンションを測るのが一番よくわかります。
今回のホイールはこんな状態でした。
一度衝撃を受けていますのでテンションバランスがすずれていると思いますがとてもハイテンションで作られていました。キャットアイを乗り越えたときの衝撃でリムが割れたのですがこのハイテンションもその一因ではないかと考えています。
CX-RAYスポークは弾力があるスポークでショックアブソーバーのような働きをしっかりしてくれるすばらしいスポークです。しかし今回は150kgfの値までカンカンに引っ張っているためかショックを和らげる働きはしなかったようです。
お客様は突然出てきた歩行者をよけるため仕方なくキャットアイに乗り上げたとのことです。大きな事故にならなくて本当によかったです。しかし残念なことに一瞬の衝撃でリムは割れました。リムが衝撃をダイレクトに受け止めたようです。衝撃を受ける側に弾力があればショックを吸収していたかもしれません。
あとからの理由付けです。ある意味勝手なことを言っているのですがホイールを作る側としていい研究材料をいただいたと思います。
ハイテンションで組み上げて真円を保つ、つまりリムが凹まないホイールを作ることはホイール作りの基本です。しかしこのハイテンションも限度があるなと感じます。
やはり闇雲なハイテンションはよくありません。因みに私が購入するリムメーカーの推奨テンション値は120~130kgfです。
いいホイールを作るにはしっかりしたテンション管理が必要と改めて感じました。今回は130kgfで仕上げました。タイヤインストール後は約110kgfくらいだと思います。
低価格で販売するICANのホイールの製作事情は分かりません。大雑把にいえば数を稼いで利益を出すビジネスモデルです。何度も馴染みだしを行いじっくり端正込めて作っているとは考えられません。振れがなくテンションが揃っていればOKとしていることを感じます。
ホイール作りは上手下手がはっきり出ます。ICANのホイールをすべて同じ人が作っているわけではないのであたり外れが激しいのかもしれません。
中華カーボンホイールはとても購入しやすい価格です。ただ中華カーボンホイールは当たりのホイールもあれば失敗だったと思うホイールも多々あるようです。何度も修理してきました正直な感想です。
あえて言いますと上級者向きのホイールと思います。つまり自分で直せて調整ができる人、または友人や親しいショップの人が近くにいて直せる環境を持っている人は有利です。何かトラブった時には修理代金や送料代金が高くなる覚悟はいります。今回のようにトラブった時はその時また考えるのも一案ですが…ただし修理屋さんを探すのが大変です。
人それぞれ個人の考え方がありますの人様のホイールなのにああでもないこうでもないと意見を言うのは少し行儀が悪いのですが私なりの意見を述べています。