46mm高カーボンホイールのインプレをいただきました

昨年11月にご注文いただきましたお客様より約1年使われた印象をお送りいただきました。

写真はお納めしましたホイールです。ブログ記事として昨年の11月14日に掲載しています。

後輪868g
前輪669g

ホイールは穴なしリムで作りました46mm高のリムブレーキカーボンホイールです。手組ホイールファンのいわば定番ホイールです。長期にわたって乗り込まれた印象はとても参考になると思います。

お客様にブログ記事にいいですかとご連絡しまして了解を得ました。厚かましいことですがホイールの宣伝という期待もあります。1年間という長期の印象は本物です。ノーブランドながら丁寧に作りましたカーボンホイールです。ブティックブランドと十分勝負出来ていることをわかっていただけると思います。

以下原文です。

1年で5000kmほど乗ったので、インプレをお送りさせていただきます。



■総論
非常に満足しております!

次は軽量の別手組ホイールもお願いしたいくらいです。


■0発進
元々キシリウムPROの軽量ホイールを使用していたため、0発進では重さを少し感じていますが、メインがサイクリングロードなのであまり気にしていません。後述の伸びの良さを考えれば十分すぎると思います。

■登り

長い登りなどはキシリウムに軍配が上がりますが、ロングライド中にある短い峠や坂程度であれば、46mmでもなんとかなる印象です。

長い登りを楽にということであれば、手組ホイール自体の価格がメーカー品よりもはるかに安いので2本用意した方がよいなと思っています。



■巡航
30kmを超えたあたりからの伸びと維持は、以前乗っていたアルミなどと比べると非常に楽です。以前は30km程度巡航でしたが、30km半ば程度の巡航が増えました!加減速がない場所での利用が多い私にとっては、46mmがメインホイールとなっていてほとんど1本で事足りてしまいます。


■乗り心地
ここが一番気に入っています。チューブレスレディ×corsaというのもありますが、非常にしなやかです。
振動なども吸収されている感があり乗り心地は今までの中で最高です。25c運用ですが、28Cなども試していこうと思います。

以上です。何かのお役に立てば幸いです。

このようにホイールを気にいっていただいています。リム高の低いホイールも考えていただいているようでありがたいことです。1年経っても忘れずにインプレをお送りいただけて本当にうれしいです。

スポークテンションを音で聞き分ける

NHKの自転車番組チャリダーでホイールを作る場面がちょこっと出ていました。番組のなかでスポークを調整する場面があり興味深く見ました。ビルダーさんがスポークを弾いて音を聞きながらテンションを揃えているしシーンがあったのです。

音を聞き分けて調整するときに便利です

スポークテンションを音で判断する方法は昔から行われています。私も同じことをするのですが音を出すのにギターのピックを使っています。これなら簡単に音をだすことが出来ます。手軽にスポークテンションを揃えることが出来るので振れ取り台の横にはいつもピックを置いています。ピンピンと弦をはねるようにして音を聞き分けています。

音を聞き分けてスポークテンションを揃えていくのですがこの方法には一つ欠点があります。それは何kgfで引っ張っているのかが分かりません。基準になる音が何kgfなのか知っておかないといけません。

何kgfで引っ張っているかを知ると調整がし易い  校正器があると楽です

テンションメーターと併用すればいいのですがパークツールのTM-1では正確な数値は期待できません。TM-1はとても誤差が大きいのが難点です。まずTM-1の校正が必要です。校正器はその気になれば簡単に作れます。正確に何kgfかを知る環境を整えれば音で聞き分ける方法はとても手軽で有益です。

音でスポークテンションを揃える方法はとても手軽ですがやっているとキリがないのです。いつまでも完ぺきに音が揃うまでと続けてしまうことがあります。テンションがきれいに揃っていなくてもホイールは使えますのである程度の妥協点を見つけてやめることも必要です。

力がなくてタイヤインストールが出来ない

握力が落ちてきています。最近はタイヤインストールで困っています。タイヤレバーなしでインストールなんてひと昔のことで今はレバーなしではタイヤをはめることが出来ません。

上 バイク・ハンズのタイヤセットペンチ 下 IRCタイヤレバー

何かいい道具がないかと調べていましたところアマゾンでヒットしました。バイク・ハンズのタイヤセットペンチというタイヤインストールに使う道具です。各セラーから出品しています。価格はまちまちですが同じもののようです。こんなところもアマゾンが面白いところです。定価はあるのですが値段はセラーが決めています。

同じものなので最安値のセラーを選んで買ってみました。失敗しても気軽に諦められる値段なので注文しました。翌日届きましたので早速使ってみました。

使ってみましたがこれはとても具合がいいです。勿論今まで通りのタイヤレバーで十分出来るのですが、ビードを上げてリムにセットするのが実に簡単にできます。

手組ホイールファンでは販促になるような道具の説明はやっていません。勿論アフェリエイトはやっていません。ぽちっと出来るボタンも用意していません。自前のネット環境でやっていまして広告付きではありません。使ってみて良かったと思う品物だけを紹介しています。

話を戻します。

タイヤインストールに道具を使うのは邪道と考えておられる方もおられると思います。リムやタイヤを傷めるので手でやるのが一番と思っている人にもお勧めです。実際やってみてリムもタイヤも傷つけることはなかったです。タイヤ交換を素手でできる方はそれでいいのですが簡単にできる道具もあるのでどんどん使えばいいと思います。

この道具は少しばかり大きいので携帯には少し無理がありますがパンクしても簡単にチューブ交換が出来ます。軽いのでバッグに入れても良いかなと思っています。

テンショングラフは分かりやすい

本日ホイールが届きましたと連絡いただきました。ホイールをお納めしましたお客様にはホイールのスポークテンションの状態を記録したグラフをつけて納品しています。グラフがあればわかりやすいとほめていただきました。

スポークテンショングラフがあればホイールの状態がわかり易い

写真のグラフですが一番気になる数字はグラフの上に記されていますスポークテンションばらつき度です。今まで点検しましたシマノのDURAホイールは大体5%くらいでした。このため手組ホイールファンでは5%以上の数値をいつも目標としています。

大体2~3%のバラつきで収まります。前輪は左右のスポークが同じ長さなので均等にするのは比較的楽です。後輪は左右の長さが違うのでバラつきが大きくなりがちです。

ホイール作りのビギナーさんが作ると振れ取りができているのにバラつき度が20%、30%はざらに起こることです。ホイール組の一番難しいところです。ニップルを均等に回していてもうまくいかないことが多いです。

スポークテンションを均一にする一番の利点は振れが出にくいことにあります。どのスポークも均一に引っ張っているなら誤差が出にくいのは自明です。

トルクを伝える力もスポークが均一なら均等に伝わりますので駆動ロスは少ないです。ただこの駆動ロスに関してはわかりにくいと思います。期待したほどではないとがっかりされるかもしれません。今まで使われていたホイールの出来がいまいちなら違いはよくわかると思います。まあそれぐらいと思っておかれるのが良いでしょう。

スポークテンションのバラつき度が大きくても振れ取りが出来ていればよくできたホイールと思います。バラつき度の5%と2%の違いがわかる人はまずいないと思います。

では何が違うのかといいますと振れが出にくいので長く使われても駆動ロスが少ないというメリットです。

また違う言い方で、ばっちりセンターが出ているとよく言います。センターが出ていることはとても大切ですがセンターを出すためにスポークテンションのバラつき度が悪くなることもあります。この場合はバラつきを度優先して作っています。スポークテンションが揃っていればそれ以上悪くなることは少ないのです。手組ホイールファンではテンション優先にしています。

ながながとグラフのことで記事にしていますがリム、スポーク、ハブ、ニップルこの4点で作るホイールですが奥が深いです。

36mm高チューブレスカーボンホイールの作製

ブログにご連絡いただきました。

ロードバイク用のカーボンホイールをこちらでお願いしたいと思っているのですが、どういった事をお伝えすればよろしいでしょうか?

このご連絡の通りです。顔を合わせての商談でありませんのでどういう方法で進めるのかわかりません。メールのやりとりだけで商談しますのでご心配は当然と思います。

こちらから体重と普段乗っておられる地域の様子や乗り方を伺いましてホイールを提案しました。メールでのやり取りはご面倒ですが何回か行います。お客様の疑問点にお答えしながらホイールの提案を行っています。

3種類のお見積りをしました。お客様はその中から選ばれたホイールが次のホイールです。

リム 36mm高28mm幅リムブレーキ 前輪20h後輪24h

   前輪のリム面はオプションで強化リムにしています

ハブ ノバテック 

スポーク ピラーwing21 黒

ニップル DSN

穴なしリム バルブ穴だけ1つ開いています

リムは穴なしリムです。チューブレスでも、クリンチャーでも使えます。リムテープがいらないのでメンテが楽です。チューブレスで使うときはシーラントが必要ですが、シーラントなしでも3,4時間乗れますのでシーラントなしで使うという方法をお客様より教えていただきました。パンクの時はチューブを入れる、これは簡単です。私はシーラントを入れていますがこの方法もアリだなと思います。

穴なしリムでのホイール作製はニップルに特殊な磁石ネジを取り付けて一つだけあいているバルブ穴に入れてニップルを磁石で取り出していく方法を取っています。面倒ですがこの方法がベストと思います。

ニップルをスポークに取り付けるのに失敗するとニップルはコロンとリムの中に転がります。失敗しましたニップルはあとで取り出すのですがリムを振り続けて取り出します。

調子のいいときは失敗なしで出来るのですが大概は1個か2個は失敗します。そのまま作業を続け仮組が終わった時点で失敗のニップルを取り出します。リムを振り続けてポロンと出てくるまで振ります。仮組までが大変ですがこれが終わると普通のホイールと同じです。

前輪644g
後輪823g
オプションでブレーキ面の強化ができます ZIPPのリムにもつかわれている方法です

組みあがりましたホイールですが、前輪644g後輪823g合計1467gです。

剛性が高いカーボンリムは駆動効率がいいです。理由はリムが体重で凹まないからです。リム高が高いほど凹みが少ないのですが重量も増えます。風の影響も受けやすいので50mmくらいまでが一般的です。今回のリムはどちらかといえば低いほうですが風の影響が受けにくく重量も軽いのでお勧めリムです。

お客様はクロモリフレームに取り付けられる予定です。クロモリフレームにカーボンホイールは独特の雰囲気があります。クロモリのしなりが剛性高いホイールを受け止めてくれますので疲れにくい乗り味を楽しめます。

クロスバイク用にフックレスカーボンホイールのご注文

スペシャライズドのクロスバイク( Sirrus) 用としてカーボンホイールのご注文をいただきました。

前々から私も乗っているクロスバイクのホイールをカーボンホイールに取り換えることを考えていました。やはり同じように考えておられる方がおられました。お客様のホイールはQR仕様のディスクホイールです。

ホイールのご希望は次の通りです。

36mm高のフックレスタイプ

ハブは前輪100mmQR 後輪135mmQR センターロックをご希望です。

スポークはお任せいただきました。

当初ノバテックハブを提案していましたがうまく入手できずバイテックスになりました。

BX106F 100mmQR センターロック

BX106R 135mmQR センターロック

ノバテック、バイテックスともに台湾の量産ハブメーカーです。どちらも優劣なくとてもいいハブメーカーです。ブティックブランドのハブメーカーにはない値ごろ感で性能はとてもいいです。

クロスバイクはとても乗りやすく、よく考えられた自転車と思います。このクロスバイクのホイールが上級ホイールに変われば走りは確実に変わります。チェーンコンポーネントが変わるのとホイールが変わるのでは違いは明白です。

前輪691g
後輪824g

私もクロスバイクのホイールをカーボンホイールに交換すればいいと考えていましたが今回は先を越された感があります。通常は自転車よりも高価なホイールを取り付けることなどなかなか思いつきませんが、お客様はとても良いところに気が付かれています。クロスバイクにカーボンホイールを取り付ける狙いはロード化ではなく、気持ちよく乗れるように自転車としての性能の底上げを考えていると仰っています。このホイールで間違いなくご希望は達成されると思います。

ナローリムでホイール作製

ワイドリムが主流となりつつありますが使われているフレームがサイズ的に適してなく、しかた無しにナローリムのホイールを使っておられる方もおられます。

お客様もそのおひとりでナローリムの部品を集めておられました。ご自分でホイールを作られる予定のようでしたが当ブログをお読みになってご連絡いただきました。

ホイールを自分で作るのは本当に楽しい時間です。いろいろな作業があり自転車を組むよりややこしいところもあります。実際に組んでみますと難しく、それなりに実用になるまでには50本くらい組まないとうまくいきません。これも楽しい時間ですがそんな時間を費やすなら乗ったほうが楽しいと思います。私は作るほうがてとても楽しかったのでホイール作りにのめり込みましたがまあそんな人は少ないと思います。

それなりに使えるホイールはできますが十分パフォーマンスを上げるにはいろいろと工夫が必要です。お客様はうまく近道を見つけられました。手組ホイールファンにお任せいただいたわけです。宣伝文になりましたが実際その通りと思います。餅は餅屋にです。

リム重量450g 30mm高ながら軽量です

TNIのAL300リムとノバテックのハブをお送りいただきました。持っておられるフレームに合うようによく研究されています。

AL300は重量450gの軽量リムです。30mmのリム高がありますので空力の援護射撃も得られます。シマノのアルミリムは530gほどありますのでこれだけでも大きい差です。

前輪59g
後輪229g

ハブは台湾のノバテックハブです。量産ハブでブティックブランドのハブと比べますと価格は1/3くらいの価格です。では性能は1/3なのかといいますとそんなことはありません。沢山作られているので量産効果があるわけです。微妙な差はあるかもしれませんがこの差を感じ取る人は少ないと思います。つまり必要十分なハブというわけです。

スポークの選択では私の方から2案出しました。お客様はDTのコンペティション黒を選択されました。中央部が1.8mmのバテッドスポークです。王道の選択です。鉄は叩けば強くなります。2mmの針金を叩いて1.8mmにしていますので軽量化と強度は上がります。

ニップルはブラスを選択しています。アルミニップルと比べて3倍重いのですがやはり腐食、割れを考えまして丈夫なほうを提案しています。

スポーク数は前輪24h後輪28hです。一般に販売されている20・24hホイールより8本多いのですがこれはよい選択と思います。下りコーナーでの安定感を感じていただけるでしょう。50gほど増えるのですが得るものも多いのです。軽量化だけがいいというわけではありません。

前輪694g
出来るだけスポークテンションの均一化を行っています
後輪889g
出来るだけスポークテンションの均一化を行っています

組みあがりました。前輪694g後輪889g前後で1583gです。

今使っておられるホイールと比べて400g軽いといっておられます。自動車のばね下理論ではないですが400gの軽量化は効くと思います。

チューブラーカーボンホイールのご注文の続き

リムがメーカーより届きました。約一ヶ月かかります。細々とホイールを作っています。カーボンリムは高価なので沢山在庫していません。注文発注の場合が多いです。

345g軽量です
ニップル穴がないチューブラーリム

チューブラーリムなのでタイヤを貼り付けます。このため通常穴アリリムでいいと考えられますが、自己満足かもわかりませんが穴なしリムを発注しています。リムベッドにはニップル穴はありません。チューブレスリムと同じ仕様で注文しています。

理由はリムの強化です。穴があるのとないのではないほうが強度は高いと考えています。微妙な差で感じ取れない差と考えられますが剛性は高いほうがいいのでこのような発注を行っています。

ニップル穴はホイール前後で56個です。穴なしリムなので結構な数と思います。組み立てには予定時間のほぼ半分が仮組にかかります。仮組が終われば通常の組み立てです。ニップルの回転がし易いように一個ずつグリスを塗っています。このひと手間も大切と考えます。

スポークは前後ともにサピムのLaserを使います。中央部が1.5㎜の細いスポークです。細いスポークはショックアブソーバーの働きをします。Laserは高級スポークのCX-RAYの元になるスポークです。空力ではCX-RAYより少し劣りますが強度、しなやかさなどほぼCX-RAYと同じです。価格は1/3の値段です。レースに出るなら少しでも空力がいいほうをお勧めしますが一般的な乗り方ならLaserもよい選択です。

丸スポークなので取り扱いは一番難しいと思います。理由はねじれです。ねじれやすいスポークなのでサピムのホームページでもOnly experienced wheel builders should mount up wheels with this spokeと書かれています。

難しいスポークですが安価で利点の多いスポークです。挑戦されたら良いかと思います。

10月4日の記事には詳しく使った部品を書いていますがお客様はシマノの下位グレードハブを指定されています。ソラシリーズの10速ハブです。11速ハブと比べましてギア1枚少ないのですがハブセンターオフセット値はギア1枚分少ないのでスポークテンション比率は安価なソラハブのほうがいいのです。何事もトレードオフの関係です。見た目は飾り気のない無骨で安価なハブですがギアの数を気にしなければ駆動効率が劣るとはいえません。正しく理由を知れば値段ではありません。安価でもいいものはいい。

このハブは残念ながら少スポークハブではありません。しかしスポークが28あるということは安定感が増すということです。まさに有段者のハブ選択と感じています。

前輪658g
後輪885g

スポークテンションの均一化と振れの最小化に注意して組み上げました。

前輪658g、後輪885g 前後1543gです。高価なハブ、スポークを使わなくてもいいホイールが出来るという見本と思っています。

前輪をヘッドインで組むのとヘッドアウトではどう違うか?

写真は20年ほど前のトレックMTBのホイールです。あまり乗りませんが今も現役です。

ヘッドインで組まれた前輪

注意して観察しますとフロントホイールのスポークはヘッドインで組まれています。

簡単にホイールの剛性を上げる方法として知られています。

ハブにスポークを通す呼び方としてヘッドイン、ヘッドアウトはとても分かりやすい言い方だと思います。スポークの頭が内側か外側かで分けています。世界標準ではこの言い方のようです。

前回の記事で紹介しましたSheldonさんのホームページでは同じリム、ハブでスポークの組み方だけを変えてホイールの剛性を測った結果のデータがあります。

ヘッドインで組みますと一般的なヘッドアウトのホイールと比べて13%剛性が高いというデータがあるようです。

記事を読むと詳しくわかりますが、簡単に言いますとスポークの角度が変わるから剛性が上がるということです。ハブフランジの厚みでハブからリムに向かうスポークの角度が内と外ではほんのわずかですが角度が違います。この差で剛性が違うわけです。

ヘッドインで組みますと剛性が上がります。しかしフランジの外側が少し斜めに加工してあることが必要です。フランジが角ばっていますとフランジにスポークからの無理な力が加わるのでフランジが割れるかもしれません。ハブのフランジに丸みがあればヘッドインで組んでも良いかもしれません。試してみても良いかと思います。