お預かりのホイールは24mm高のクリンチャーホイールです。前輪はラジアル組、後輪は左ラジアル右2クロスの1:1変則組です。ハブを持って回転させるとなるほど噂通りよく回るので驚きます。
なかなかゴキソホイールをさわれる機会などありません。このホイールの点検依頼いただいたことに感謝しています。
乗ったことがありませんので勝手なことは言えないのですがこの組み方を何故こうしたのか知りたいものです。ホームページにも書かれていません。通常は1:1組では左右2クロスですが左ラジアルにするとどう変わるのか知りたいです。縦剛性が高くなるということを聞いたことがありますが実際にはどうなのか教えていただきたいです。
ナローハブはハブセンターオフセット値が小さいので左スポークテンションを高く取れます。つまり左右のスポークテンション差は小さくなります。このホイールもその通りでとても左テンションが右の60%以上のとても高い仕上がりです。しかしリムに対してのスポーク角度、ブレイシングアングルは小さくなります。
あまり角度がないということは、つまりツッパリ棒でぐっと支える状態でないので横剛性は少し弱くなります。つまりコンタドールのようなグイグイとダンシングするタイプの乗り方ではシュータッチする恐れがあります。左テンションは高いけれどナローハブは横剛性が少し下がる恐れがあります。
対策としてナローハブでは左右のフランジ径を大きくしてブレイシングアングルを大きくすることが多いです。おまけにフランジを大きくするとスポークが短くなりますので剛性アップにもつながります。この辺りの良し悪しを工学的に詳しく知りたいものです。
欠点のないホイールはありません。どこかを我慢しているものです。ハブは恐ろしいくらいよく回りますのでウィークポイントはどこなんでしょう。
ちなみにゴキソという名前ですが今までどういう謂れがあるのかわかりませんでした。たまたま最近話題になっている中公新書の「荘園」という本を読んでいたところ作者の伊藤俊一さんが名古屋の御器所小学校を卒業したとこの本に書かれていていました。御器所という地名から10世紀には尾張国衙(こくが 国司の統治下にある土地)の陶器を生産する部署があったようです。お客様もゴキソの由来をよくご存じで、今もその地には御器所神社があり勝守り(かちまもり)をいただきにまいれる方が多いようですと教えていただきました。御器所の名前が本に書かれていて、それを読んでいた時にゴキソホイールの再調整の話をいただきましたので何か不思議な縁を感じます。ハブは10世紀まえから脈々と続く職人集団の心意気が感じられるハブでした。