後輪スポークの組み替え

カーボンホイールを昨年お納めしましたお客様より後輪スポーク交換のご依頼がありました。

昨年のホイール前輪はサピムのCX-RAYでしたが後輪はDTのコンペティションでした。

1年経ちまた新しいホイール、前後ともCX-RAYで組んだホイールを再注文いただきました。新しく組んだホイールの乗られた印象はコンペティションで組んだホイールよりもCX-RAYのほうがお好みでした。やはり比べると好みがはっきりしてきます。

ホイールの剛性はリムとスポークの剛性で決まります。リムの変更は勿体ないので簡単にはできません。剛性の調整にはスポークです。スポークを取り換えることで好みの乗り味に変えることが出来ます。

CX-RAYに替えました
スポークテンションが均一

ベテランライダーのお客様は1年半コンペティションのスポークで乗られたのですが新しくCX-RAYのホイールに乗られてからお好みがはっきりされたようです。CX-RAYのほうが足に優しいと感じられました。このためスポークを変更することを決められました。

つまりスポークの太さ調整です。太いコンペティションから細いCX-RAYに替えられました。

このようにスポーク変更の相談が増えてきています。ホイール乗り味が硬すぎて疲れる場合は柔らかくする、踏み込んでもっさりと今一つの反応の時は剛性を上げるかのどちらかです。

あまり知られていませんがスポークはとても大切なパーツです。フレームと共に自転車の乗り味に大きく影響しています。 長く乗り込んでいかないと分からないことですが乗り味の好みはだんだんはっきりしてきます。スポークの修正で乗り味は大きく変えることが出来ます。自転車を楽しく乗るにはとてもいい方法です。

アルテグラハブで多スポークホイールの作製

ブログより多スポークホイールのご注文をいただきました。世界的なアルミ不足でハブ、リムがなかなかそろわないこの頃ですが運よく部品を在庫していまして話が進みました。

今やなかなか手にれにくいアルテグラハブです。

ハブはディスコンのアルテグラHB6800,FH680032hです。今や市場にはないので貴重品のハブです。手入れさえ良ければ20年以上は十分使えます。リムは消耗品ですので取り換えればいい話です。こんなところがシマノハブが支持されるところです。

リムはキンリンのXR31T/RTです。リム高31mm、後輪はオフセットリムです。後輪スポークテンションの均等化に一役買っています。

リム重量が490g前後ありますので重いと感じますが24mmのワイドリムでこの重さなので軽くはありませんが重いリムでもありません。重量のマイナスを性能ではるかにカバーしている優秀なリムです。空力の援護を得られるので平地では足を休めることが出来ます。

スポークは前輪サピムLaser2.0/1.5/2.0mm、後輪はDTコンペティション2.0/1.8/2.0mmを使っています。ニップルは安全重視でブラスニップルです。

前輪スポークはLaser使用左右3クロス組

Laserは扱いにくいスポークですが中央部が細いため地面からの振動をショックアブソーバーのように和らげてくれます。とても乗り心地が良くなります。32本のスポークですので剛性はスポークが細くてもまず心配いりません。

後輪スポークはコンペティション使用、左右3クロス組

後輪スポークのコンペティションは手組ホイールの王道スポークです。扱いやすく中央部が1.8mmと細いため弾力があり振動にうまく対応してくれます。剛性も十分です。

出来上がりです。スポークテンションには気を付けて作製しています。

前輪845g
スポークテンションはできるだけ均一に
後輪1066g
スポークテンションはできるだけ均一に

完組の少スポークホイールばかりのこの頃です。派手さはありません。見た目が地味なホイールですが高性能です。決して安価なホイールではありませんが実利優先のとても優秀なホイールです。実用の通勤ホイールにも、輪行用のロングライドホイールにも使える多目的な働きをしてくれます。おまけに安心安全のホイールです。

ピラーのホームページからスポークの伸びを学ぶ

ホイール作りの重要なことにスポーク長の出し方があります。スポーク長の出し方は今や計算ソフトを用意にネットを利用して使うことが出来ますのでとても簡単に長さを出すことが出来ます。

私がよく使うwheelpro、DTの計算ソフトではスポークを選択する項目があります。これはスポークの伸びをあらかじめ考えられていてスポークの長さ調整をしています。

しかし丸飲みで信じてしまうと失敗することがあります。大方は長すぎることが多いようです。ただし長いのは失敗ではなく見た目が素人っぽくなるだけです。長めのスポークは安全を考えますと失敗ではありません。私は長めのスポークにしています。

一番注意がいるのは短いスポークです。短いと事故のもとになります。ニップルが飛んでしまうのはスポークが短いときに起こります。

しかし長すぎると見た目が良くないのでどうしても短めにしてしまうのですがヒントがあります。

ピラースポークの伸び

ピラースポークのホームページではスポークの伸びを書かれています。

大体100kgfの力でスポークを引っ張りますと約1mm~1.5mm伸びます。スポークの太さから計算で出したスポークの長さから伸びを引いてスポーク長を出せば適正なスポーク長が算出されます。

サピムでは伸びについては書かれていない

ピラースポークのデータですが他メーカーのスポークでは使えないことはありません。スチールはスチールです。サピム、DTのホームページでは伸びまでデータをだされていませんのでこのデータはとても参考になります。

正確にリムのERDを出して計算したスポーク長から予想される伸びを引くと正しいスポーク長になります。伸びを予想して出したERDでは間違います。

シマノハブで36mm高カーボンホイール作製

リムブレーキ用36mm高のカーボンリムを使って作製しました。

仕様は下記に通りです。

440g前後の穴なしリムは用途が広い

リム 36mm高28mm幅穴なしカーボンリム 18・28h

ハブ 前輪 シマノHB-6700 18h

アルテグラ HB6700 

   後輪 シマノFH-RS400 28h

ティアグラ FH-RS400

スポーク サピムCX-RAY シルバー

ニップル DT SquorxPro シルバー

ハブにシマノハブを使っています。シマノハブは前後で約520gと重いのですが丈夫でメンテナンスも楽にできる優秀ハブです。軽さを犠牲にしていますがメリットが多いです。

アルテグラの18hはディスコンハブです。もう販売されていません。

後輪ハブはティアグラハブで現行品です。

個人的に感じていることはシマノハブのグレード違いは外観、見た目を変えているだけで中身は共通部品が多いようです。DURAハブは少し違いますがアルテグラ、105、ティアグラなど中身の部品は共通品が使われていますので回転性能は同じと思っています。異論がある方がおられると思いますが今まで使ってみての印象です。

ティアグラとアルテグラは2グレード違います。外観の仕上げが違いますので下位のハブには高級感がありません。しかしシマノディーラーマニュアルを見ますと中の部品は共通部品が使われていますので回転は変わらないと思っています。

実利志向が強いのでティアグラハブは好きなハブです。ただしティアグラハブの新品はカップアンドコーン調整が固めなので少しゴリ感があります。ほんの少しですが玉押しを緩めて使っています。しっかりとハブの調整を行えば回転は見違えるほどになります。

前輪はラジアル組、後輪左非ドライブ側は3クロス組、右ドライブ側は2クロス組です。左右のテンション比率が1%ほど上がりますので取り入れました。劇的に性能が良くなるわけではありませんが1%上がりますので左3クロスで組みました。もちろん左右2クロスも良いかと思います。

スポークテンション値はリムメーカーの指定が120~130kgfとありますのでしっかりと守っています。テンション値の均一化と振れの最小化を守って作り上げました。

前輪697g CX-RAY使用
スポークテンションは均一に
後輪968g CX-RAY使用 左3クロス右2クロス組
スポークテンションは均一に

見た目は地味ですが手組感が大きく出ています。前輪697g後輪968g前後1665gです。

軽量にするなら台湾ハブを使えばいいのですがあえて重量のあるハブを使ったことには理由があります。前後で1600g台のホイールは軽くはありませんが重くもありません。前述通りハブのメンテナンスが楽です。丈夫なハブは乗った時のひずみが少ないので数値では表せないのですが駆動ロスが少ないと言われています。重くてもシマノホイールに使われているのはこの理由と推察します。

普段使いのホイールには勿体無いかもしれませんが丈夫なハブを使っていますので気兼ねなく使えるホイールです。外周部は剛性が高く軽量リムなので回転は駆動ロスが少ないです。是非ともおススメしたいホイールです。

36mm高ディスクカーボンホイールの作製

36mm高のディスクカーボンホイールのご注文です。一番よく使われる高さです。2本目のカーボンホイール買われる方が注文されるのはこの高さです。46mm高のほうは空力においては有利ですが登りが多い方はやはり2本目にこの高さのリムをご注文されます。

ブティックブランドのホイールと比べますと3セット購入できますのでもう1セットという感じになるのかもしれません。価格は1/3ですが性能は1/3ではありません。いかに宣伝費がたくさん投入され儲けているかを分かっておられる方は実利を先行されます。ただブティックブランドのホイールはセクシーです、これにはどうしても勝てません。当方のホイールは無骨で、簡単に言いますと無印がブランドです。

36mm高28mm幅 ディスクリム

36mm高は定番ホイールになりつつあります。何度もお買い上げいただいていますお客様より連絡いただきました。シマノの新DURAホイールに36mm高が発売されましたので勝負できますねということでした。新DURAを持っておられる方にお貸ししたいものです。

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ホイールの仕様は次の通りです。

リム 36mm高28mm幅 穴なしリム ディスク用24h

ハブ TNI REVOハブ 前後24h

スポーク前輪 サピムCX-RAY

    後輪 左 サピムCX-RAY 右 ピラー ウィング21

ニップル DT SquorxPro ブラス 黒

SquorxPro ニップル

この組み合わせで組んでいます。

最近Duraホイールをさわることがあり後輪右スポークには太いスポークで作られていることをご依頼主にお知らせしました。新しいホイールには左にCX-RAY、右スポークを少し太いウィング21で作る提案をしますと了解いただきました。

右ドライブ側を太くすることで剛性を上げスポークの応力の違いを使ってわずかですがテンションの均衡化を図っています。

スポークを太くすると剛性は上がります。

乗り手にあわせて太さを調整するのが良いと思います。ホイールがガチガチで硬く感じるなら少しスポークを細くするのも一案です。完組ホイールのエントリーモデルはどんな人でも乗れるように頑丈に作られています。重いホイールと嘆かないでスポークを替えるのが良い案と思います。ほとんどの人がホイールは完成品を買うものと考えている人ばかりなのでこのようなことを考えることはないと思いますがとても良いアイデアと思います。

話を本題に戻します。

使用するカーボンリムはニップル穴のないリムを使っています。従ってリムテープは要りません。リムテープは隠れたランニングコストとして結構負担が大きいものです。通常販売されているカーボンリムはリム面に穴があり使用の際リムテープが必ずいります。チューブレス、クリンチャー共にテープはいります。

当ホイールでは穴のないリムを使っています。ホイールを作るのは大変ですが使う立場に立つとこれほど楽なことはありません。リムテープが不要ということは経済的にもプラスです。またリム剛性にも影響しています。強度が増していることは確かです。

ハブはTNIのREVOハブです。DT,クリスキング、インダストリー9など世界的なブランドではありませんがとてもよく回るハブです。超一流の世界を知らないから好きなこと言えるのかもしれませんが今までお納めしましたホイールでハブが回らないというクレームは受けたことがありません。

作製に当たり注意事項はこれです。スポークテンションは均一に、振れは最小に。これしかありません。これを守ればよいホイールが出来上がります。

前輪676g CX-RAY使用
前輪スポークテンショングラフ
後輪 820g 左CX-RAY 右ウィング21 使用
後輪スポークテンショングラフ

前輪676g、後輪820g、前後1496gとディスクホイールとしてはとても軽量です。

グラフが出来上がりのスポークテンションです。均一に仕上げています。

お客様のインプレが楽しみです。

フックレスカーボンホイールの作製

チューブレスカーボンホイールをご依頼いただきました。リピートオーダーのお客様です。

いつも報告しますがt当方の作りをご理解いただいているということですから繰り返してのご注文はありがたいです。

フックレスリムです。

さて、今回は初めてのフックレスカーボンリムです。いままではフックありのリムばかりでしたが恐らくこれからは増えていくと予想されるリムでのご注文です。

タイヤが大きく変わってきました。フックレスタイヤはビードがなくタイヤ面をしっかりリム面に密着させてタイヤをインストールしますので扱いやすくなります。空気圧も下げて乗りますので乗り心地が良くなります。転がり抵抗も良くなると聞いています。

タイヤの選択肢がまだまだ少ないのですがもっと増えてくると思われます。

ENVE リムブレーキ用 フロント20h
ENVE リムブレーキ用 リア 24h

ハブはENVEのリムブレーキ用ハブです。このハブはお持ち込みです。ENVEハブも初めてです。ハブフランジが特殊です。ラジアル組ではスポーク長の計算は楽ですがクロス組になりますと少し難しいです。難しいといいましても通常の計算には変わりありません。ENVEのホームページで出されている数値データには十分再確認が必要です。やはり実測が大切です。

初めてのENVEハブですがお預かりのハブなので失敗はできません。十分注意を払いながら作業を進めました。前輪はラジアル組、後輪は左右2クロス組です。ハブはフランジ幅が広くとられているのでスポークのブレイシングアングルが大きく横剛性がとても高く仕上がります。このハブの特徴です。ベアリングもNTNのLLBベアリングを使用されています。

前輪654g ラジアル組

前輪スポークテンショングラフ
ENVEハブ フロント 20h
後輪 808g 2クロス組
後輪スポークテンショングラフ
後輪 CX-RAY 2クロス組

36mm高のリムでフックレス・ディスクホイールは次のような仕様です。

リム 36mm高28mm幅 前輪20h後輪24h ともにフックレス ニップル穴なし

ハブ ENVE hub リムブレーキ用 

スポーク サピムCX-RAY 黒

ニップル DT SquorxPro ブラス黒

エンヴィハブにフックレスと今回のホイールには2つも初めてのことを経験させていただきました。

やはり初回ホイールでご信頼いただけたことはありがたいことです。作製に関してはスポークテンションをできるだけ均一に、できるだけ振れを最小にすることを念頭に仕上げました。お客様のインプレが楽しみです。

DURAホイールのプラグ回し

DURAホイールは通常のニップルを使われていません。プラグといわれる形状です。スポークのねじ部分はハブのほうに取り付けます。

当然通常のニップルではありませんので3.2mmや3.45mmのニップル回しは使えません。専用の器具が必要です。

4.4mmと3.75mmが使えます。

シマノ用の工具として販売されています。4.4mm幅がいります。

パークツールのニップル回しですが少しばかり長さがありますのでてこの原理であまり力入れずに使えます。このニップル回しは便利なところもあるのですが何回転も回すときにはこれほど使いにくいニップル回しはありません。不便極まりない代物です。

おまけに2方向の押さえで回しますのでニップルを舐めやすいのも欠点です。

どんなものでも長所欠点はあります。

職人さんは自分用の道具を工夫して持っていると良く聞きます。私も自分なりに工夫した道具を使っています。これです。

改造したニップル回し

DURAホイールでは専用のニップル回しを使ってパークツールのニップル回しと併用で作業を行いました。

写真はパークツールのニップル回しを改造しています。ブルーのニップル回しはそのままでは使えませんのでシマノのプラグにあわせて削ってあります。硬い金属で作られていますので削るのは難儀しますが一つあればいつまでも使えます。やすりを数本潰して作りました。

スポークに添い易いように中央部分は切り取っています。これも一つの改良点です。角度の調整ができますので回しやすくなります。

シマノホイールを使っておられる方には便利な道具で楽に振れ取りができます。おススメです。

DURAホイールの調整依頼②

先日シマノDURAホイールの再調整を承りましたことを記事にしました。

この時のホイールの調整で感じたことをもう一度詳しく考えたいと思います。

ホイールのスポークテンションがとてもハイテンションで調整されていました。後輪の非ドライブ側が92kgfほどのテンションでした。

お預かり時のスポークテンショングラフ

通常スポーク数が1:1組の場合左:右のテンション比率は左50前後:右100の比率です。つまり右の約半分が左になりますのでこのホイールでは右は180~200kgfのスポークテンションでないとセンターが出ないことになります。

ご依頼主はヤフオクでDURAホイールを購入されたのですが購入された時からすでに左テンションは90kgfであったようです。つまり右は異常なハイテンションのホイールでした。私のほうに送られてきたときはスポークもねじれたスポークであったのですがねじれはヤフオクで購入したときからねじれていたと聞いています。

前のオーナーは自分で調整したがうまくいかずヤフオクに売りに出したと考えられます。ヤフオクで落札してそのまま2年間乗っておられたのですが事故なく乗れたのが幸いです。

さて、シマノのマニュアルはネットで検索できます。本当にこのシステムは素晴らしいといつも感心しています。自転車のことはシマノのマニュアルで勉強する、これだと思います。大概のことはこれで事足ります。

あるショップの人が自転車の組み立ての際パソコンを横に置いてマニュアルを見ながら作業しているショップオーナーさんがおられたことを思い出します。

しかし頼りになるマニュアルですが読み違えますと大変なことになると思います。

今回のDuraホイールではおそらくマニュアルの読み違いだと思っています。

マニュアルではホイールの推奨スポークテンションも細かく記載されています。

例えば次のように書かれています。

シマノマニュアルより

左側66~92kgfと書かれています。では右側92kgfと高いほうに調整しますと右側ドライブ側は当然左の倍180kgf以上になります。センターを出すには左の倍以上にテンションを上げることが必要です。

通常、後輪ホイールの調整は右ドライブ側から左非ドライブ側に行うのが手順です。先ず右を140kgfに調整してから左を調整すれば驚くばかりのスポークテンションにはなりません。この手順が一番うまくできる方法です。後輪は右から左です。

ホイールを組める人ならすぐわかっていただけると思います。

DURAホイールの調整依頼

以前手組ホイールをお買い上げいただきました方よりご連絡いただきました。

お預かりのDURAホイール

シマノDURAホイール7850―c24-TLをヤフオクで購入され2年乗られたのですが振れが目立って来たのでご自分で振れ取りされました。残念ながらうまく振れ取りできなかったので再調整のご依頼です。

私も駆け込み寺になれるほどの実力はないのですが一応お受けすることにしました。

当初簡単と思っていたのですが実際当たってみるとどうしたものかと悩むほどとても難しい仕事でした。

ヤフオクで購入された時にスポークテンションを測っておかれたのでその状態に戻されたそうです。テンションメーターを持っていると正確な数値は分からないですが元の状態に戻すことが出来ます。ヤフオクで購入時状態に戻してお送りいただきました。

ホイールの状態を戻してくださったのはよかったのですがもとのヤフオクで購入された時からすでにすごいハイテンションで変更されたホイールでありました。本当に驚きのテンションでした。

テンションが高すぎてグラフにできないほどの数値でした。

いつもホイールをお預かりしますと最初にスポークテンションを調べます。この時のスポークテンションが上図です。テンションが高すぎてグラフにできない数値でした。この時は本当に驚きました。この状態で乗っておられたのに驚きました。事故なく2年間乗れられたことはとても幸運と思います。

作業に取り掛かります。

各スポークのリム側に少量のオイルを注してゆっくり緩めることから始めました。ハイテンションなので硬くて回りません。あまりの硬さなので少し力を入れたらスポーク1本折ってしまいました。いきなりの失敗です。この時は気軽に引き受けたこと後悔しました。

人様の品物なので慌てました。最初は青くなりましたが落ち着いて考えますと部品はまだ手配できそうです。調べますとやはり手配ができます。先ず、折れたスポークの交換部品を手配してお客様に時間が掛かる旨連絡して了解を得ました。

詳細に部品には番号がつけられています。シマノマニュアルより

取り換えスポークが届きましたので作業再開します。

折れたスポークの取り換え作業は簡単そうに見えますがなかなか元に戻せないものです。取り外しは簡単ですが復元は難しいものです。シマノの取り扱いマニュアルをしっかり読み込んでどのように組み立てているかを考えました。

しっかりと読み込むことが必要です。プラグの回し方に注意!! シマノマニュアルより

マニュアルの項目順に進めていきますと躓づくところが必ず出てきます。どうしてうまくいかないのか考えて解決するしかありません。誰も教えてくれません。簡単ですよと言ってくれるだけです。

今回の解決方法は汚れ、ホコリを取り除いて徹底的にきれいにすることでした。新品状態に戻せば意外と簡単に進みます。

何とか無事に乗り越えることが出来ました。

シマノのマニュアルには推奨スポークテンションが書かれています。

スポークテンションの推奨値が書かれています。理解するには注意が必要です。 シマノマニュアルより

今回のホイールでは右ドライブ側は117kgf~143kgf、左66kgf~92kgfと書かれています。

この数値は推奨値ですので間違いないのですが、通常ハブでは左テンションは右の約半分以下になります。仮に左を92kgfにしてセンターを出すなら逆算すると右は180kgf以上になることです。お預かり時のグラフでは左平均92kgfです。どおりでお預かりしたときのテンションが高いはずです。

調整が終わってテンションを測りました。今回のホイールは右ドライブ側を140kgf、左67kgfでほぼセンターが出ています。最初は慌てましたが何とか調整終えることが出来ました。

調整済みのスポークテンショングラフ

今回修理お受けして感じたことです。

●少し前の製品ならまだ修理備品の手配ができることがありますが古い製品をオークションで購入される場合は本当に注意が必要です。

●オークションに出ている品物は何らかの理由があります。説明には書かれていない理由があります。

ホイール、自転車は買った時からメンテが始まります。自分で直せる人、直してくれる人が近くにいる人ならいいですがオークションなどでの購入は実力にあわせないと失敗することがあります。なかなか掘り出し物はないと心得たほうが良いと思います。

●大きい自転車屋さんも技術的にはいい加減な人が多いと聞きます。まずは腕の良い自転車屋さんを見つけて沢山買い物することで仲良くなることです。

ホイールは完成しても1日置く

今カーボンホイールの作製中です。まだ途中なのですがほぼ完成しています。完成しますといつも1日以上日を開けて再調整します。一日置くということはスポークがなじむというか変化します。センターも少しずれが生じます。

ではどのくらいなのか今まで検証してきませんでした。ただなじむという言葉だけです。

一度一日置いてどのくらい変化するのか調べてみました。

ホイールはほぼ完成していまして左非ドライブ側を少し調整、右ドライブ側をもう少しテンション上げようと思っています。

完成したときの状態です。116kgfのテンションです。

グラフがほぼ完成時のグラフです。グラフでは右側だけを計測しています。

次に1日間を開けてスポークテンションを計測しました。

一日置いて測りました。108kgfです。

データを取り、グラフにしてみました。116kgfから108kgfと大きく下がっています。

ホイールはなじみだしの繰り返しとスポークテンションの均一化が必要です。完成したと思っても日を開けて再点検が必要です。

ホイールの出荷前にスポークテンションの再調整を行っていますがやはりこのひと手間が大切のようです。

自分用のホイールなら一番いい方法は一度乗ってみて調子を見てから再調整です。これが最良の方法です。私は売り物のホイールを作っていますので出荷前に再度調整しかできません。しかし良心的と自負しています。