TM-1の校正依頼

何度もテンションメーターは校正が必要とブログ記事にしてきました。

これに共感いただいたお客様よりTM-1の校正依頼がありました。

左お客様のTM-1 右私のTM-1 同じ値は出ません バラつきがあります

3種類のスポークの校正表をお作りするということです。3本のなかでスポーク1本はお送りいただくことになりました。そのスポークはイタリアのACI Alpina というメーカーのダブルバテッドで2.0/1.7/2.0 スポークです。珍しいです。ご依頼ではこのスポークと他2mm、1.8mmのスポークを調べるということです。

右の秤は校正済みの秤です  スポークを引っ張りテンションを測ります
こんな表にして使いやすくします

調べ方は単純です。ただ時間が掛かります。50kgf、60kgfと130kgfまで10kgf単位でスポークを張り、TM-1を当てて目盛りを読むというやり方です。スポークの当てる位置も中央に固定しています。3本調べて表にしてパウチ仕上げにします。そばに置いておけば扱いやすいです。この作業は単純ですが結構ノウハウが詰まっています。

後で伺いましたのですが、お客様はすでにホイールを完成されたようですが作られたホイールのスポークテンションが張りすぎていないか心配だったようです。TM-1は20%も誤差のある製品もあります。使っておられるテンションメーターの精度を知ることでホイールに反映することが出来ると判断されました。とても正しい選択です。

先日ですが、スポークを弾いて音で判断する方法を行っているメカニックさんがNHKの自転車の番組で紹介されていました。音を聞き分けてスポークテンションを揃える方法は昔からよく使われる手法です。スポークテンションを一致させるのに手際よくできる方法としてとてもいいです。

この方法は便利ですが絶対値が分かりません。やはりテンションメーターとの併用がいいと思います。まずメーターで測って必要な値を知ったうえでその音を聞き分けていけば作業は早いと思います。

今回はお預かりしましたTM-1が私の使っていますTM-1とは大分違っていました。均質ではないということです。私のメーターより優秀でした。このことからもメーターの精度にはバラつきがあることがよくわかります。絶対値ということではTM-1はあまり信頼できないということ知って使われることです。

36mm高ディスクカーボン定番ホイールの作製

5月初めに当ブログにあるお客様よりオールラウンドホイール用としてディスクホイールを提案してほしいと連絡がありました。いつものようにお勧めの46mm高と36mm高のホイールをご案内いたしましたところその時お返事はいただきませんでした。まあこういうものは縁のものですのでよくあることです。

どういう経過なのかわかりませんが5月末に再度ご連絡いただきました。約1月考えられたようで最終的に36mm高のディスクホイールをご注文いただくことになりました。ありがたいことです。

昨今の部品事情の悪化や円安など自転車部品調達に関しての状況はそんなによくありません。注文してもなかなか入ってこないのが実情です。しかし今回不思議な縁でしてご注文いただきました3日前に予備で発注していましたカーボンリムが入荷していました。すぐに取り掛かることが出来ます。約一週間で納品ができます。

定番ホイールですので今まで何度も内容を書かせていただいています。おさらいしますと次のような部品の組み合わせです。

前輪700g
後輪809g
穴なしリムは利点が多い

リム 28mm幅36mm高カーボンリム 

   フックタイプ 前後ともに24h 穴なし ディスク用

ハブ TNI REVOハブ 前後ともに24h

スポーク ピラーwing21 黒 

ニップル DT SquorxPro ブラス黒

穴なしカーボンリムはチューブレスホイールとして最適です。穴があるとテープを巻いて運用しなくてはいけません。このリムはバルブ穴が1つだけです。手組ホイールファンの定番ホイールは穴なしリムを使います。

実際の運用ではテープを巻くリム、巻かないリムの違いは使ってみれば非常によくわかります。穴なしはとても便利で経済的です。テープ運用ですとパンクの時にはテープをはがして、またテープを巻かないといけません。このことは何度も書いていますのでまたか!になりますがユーザーに向き合ったリムといえます。

リムが円安で少し高くなりましたのでホイールの価格は若干円安の影響を受けています。しかしブランドホイールの価格と比べますと格安で価格は1/3の値段です。無名のホイールですが性能は安物ではありません。

カーボンリムは剛性が高いので真円に仕上げていくのはアルミリムよりも高精度に仕上ります。そしてスポークテンションを均等にして仕上げることが肝要です。

リムメーカーの指定ではスポークテンションは120~130kgfがいいということなのでこの案内に従って仕上げています。勿論校正したテンションメーターを使っています。タイヤインストール後のテンションダウンを考慮して強すぎず弱すぎずというところです。ハイテンションはリムを真円に保つのにはいいのですが引っ張りすぎるのもいけません。本来衝撃を和らげるショックアブソーバーの働きもするスポークがリムの割れるもとになるのです。何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しです。

スポークはピラーのwing21です。知名度はサピムのCX-RAYと比べて低いと思います。

しかし実力はなかなかのものを持っています。Jベントの部分が2.2mmと太いのがいいです。弱いといわれている部分を強化されています。中央部の比翼型の部分が空力をよくしています。風洞実験でも好成績ということです。詳しくはピラーのホームページでわかります。

ニップルはDTのSquorxProです。ニップル内部に滑り止めを注入してあります。ニップルは普段注目されませんがとても大切です。カーボンリムの場合アルミニップルではガルバニック腐食も考えられますので丈夫さを考慮してブラスのほうを選んでいます。とても高価なニップルですが使う価値はあります。

穴なしリムの作業は仮組までが大変です。時間が掛かりますので集中力が必要です。注意してニップルを取り出さなくてはなりません。ポロっとリム内に落さないようにするのが大変です。

スポークテンションを均等に張ることが大切です
振れ取りとスポークテンションの均一化は別のものです

仮組が終わると通常のホイールと作業は同じで振れ取りを行います。注意点はスポークテンションが均一でなくても振れ取りはできることです。スポークが強弱強弱とバランスが取れていますとテンションが均一でなくても振れ取りが出来ます。

ホイール作りの上手下手はこれで分かります。下手な人が作るときれいに振れ取りされていても一か月もすれば振れが出てきます。スポークテンションにバラつきがあるとこのようになります。ホイールはスポークテンションを均等に張って仕上げることが肝心です。勿論当ホイールのスポークテンションのバラつき度は非常に低いです。

仮組は一日でおわります。しかし仮組が終了してからが腕の見せ所です。組みあがってから何度もスポークテンションの調整を行います。お客様には早くお届けしたいのですが辛抱していただいています。時間をあけて出来上がったホイールを休ませながら調整するのがコツです。ストレスリリーブというのですがしっかりと何度も馴染みだしを行っています。こうすることで長く使われても真円を保っていることが出来ます。特別な手法ではありません。丁寧に組み上げているだけです。ご安心願います。

ICANカーボンホイール前輪の修理

走行中に道路のキャッツアイを踏んでカーボンホイールの前輪が割れ修理できませんかと問い合わせがありました。お客様は中国メーカーに問い合わされたところ修理代金と送料代がかさむので直してくれるところがあるならそちら(日本)で直した方がいいということで修理してくれるところを探されました。

最初はちょっと戸惑いました。キャットアイを踏んだ、何これ?という感じです。キャットアイは自転車部品の会社しかこちらは知りません。調べますとこれです。

通常はこのようなご注文はお断りしているのですがやはりお困りなので修理をお受けしました。ちょっと偉そうですが、義を見てせざるは勇無きなりです。お客様は中国からリムを取り寄せられ当方に送られてきました。

前輪669g 軽量です
150kgを超えて作られているのが気になります

お預かりしましたホイールはいつもスポークテンションを調べます。どんな作りをしているのかを調べるにはテンションを測るのが一番よくわかります。

キャットアイを踏んで割れたところ
45mm高 421g 新しいリムです

今回のホイールはこんな状態でした。

一度衝撃を受けていますのでテンションバランスがすずれていると思いますがとてもハイテンションで作られていました。キャットアイを乗り越えたときの衝撃でリムが割れたのですがこのハイテンションもその一因ではないかと考えています。

CX-RAYスポークは弾力があるスポークでショックアブソーバーのような働きをしっかりしてくれるすばらしいスポークです。しかし今回は150kgfの値までカンカンに引っ張っているためかショックを和らげる働きはしなかったようです。

お客様は突然出てきた歩行者をよけるため仕方なくキャットアイに乗り上げたとのことです。大きな事故にならなくて本当によかったです。しかし残念なことに一瞬の衝撃でリムは割れました。リムが衝撃をダイレクトに受け止めたようです。衝撃を受ける側に弾力があればショックを吸収していたかもしれません。

あとからの理由付けです。ある意味勝手なことを言っているのですがホイールを作る側としていい研究材料をいただいたと思います。

ハイテンションで組み上げて真円を保つ、つまりリムが凹まないホイールを作ることはホイール作りの基本です。しかしこのハイテンションも限度があるなと感じます。

やはり闇雲なハイテンションはよくありません。因みに私が購入するリムメーカーの推奨テンション値は120~130kgfです。

左ブレーキ側を約130kgfで仕上げています
スポークテンションは正確に測りたいものです

いいホイールを作るにはしっかりしたテンション管理が必要と改めて感じました。今回は130kgfで仕上げました。タイヤインストール後は約110kgfくらいだと思います。

低価格で販売するICANのホイールの製作事情は分かりません。大雑把にいえば数を稼いで利益を出すビジネスモデルです。何度も馴染みだしを行いじっくり端正込めて作っているとは考えられません。振れがなくテンションが揃っていればOKとしていることを感じます。

ホイール作りは上手下手がはっきり出ます。ICANのホイールをすべて同じ人が作っているわけではないのであたり外れが激しいのかもしれません。

中華カーボンホイールはとても購入しやすい価格です。ただ中華カーボンホイールは当たりのホイールもあれば失敗だったと思うホイールも多々あるようです。何度も修理してきました正直な感想です。

あえて言いますと上級者向きのホイールと思います。つまり自分で直せて調整ができる人、または友人や親しいショップの人が近くにいて直せる環境を持っている人は有利です。何かトラブった時には修理代金や送料代金が高くなる覚悟はいります。今回のようにトラブった時はその時また考えるのも一案ですが…ただし修理屋さんを探すのが大変です。

人それぞれ個人の考え方がありますの人様のホイールなのにああでもないこうでもないと意見を言うのは少し行儀が悪いのですが私なりの意見を述べています。

パークツールスルーアクスルアダプターは便利です

ディスクホイールの調整に最近このスルーアクスル用アダプターを使っています。これは便利だなと感心しています。うまく考えられています。振れ取り台に挟み込むだけで使えます。アイデア商品ですね。買ってよかったと思います。

ホイールを挟み込むだけです
簡単にホイールをセットできます
ミノウラのアダプター

今まで安価なミノウラの製品を使っていました。これはそれなりに便利で、ねじで固定しますのでセンターがずれません。

パークツールの振れ取り台だけでなくほかの製品にも使えます。これはいい、いいですよというのはアフェリエイト広告のようで嫌なのですがディスクホイールの振れ取りにはお勧めです。念のため当ブログではアフェリエイト広告はしていません。

キンリンXR31T/RT32hリムに組み替え

今まで何度もご注文いただきましたお客様より手持ちホイールの組み替えをご依頼いただきました。

ホイールはDTリムRR411を使用したホイールです。RR411リムのホイールを他にも持っておられるお客様は1セットをキンリンのワイドリムに組み換えを希望されました。

RR411からキンリンのワイドリムXR31T/RTに変更です。リム重量は重くなりますが空力アップです。分解しましたRR411リムはしばらくお預かりしましてシマノ105ハブで再度組み上げる予定です。今はハブが手に入らないので少し先になります。部品不足はまだまだ続きそうです。

お預かりしたRR411

さて、ハブはDuraハブを使われていましたのでそのまま移行します。新しくリムとスポークを交換します。シマノハブは丈夫で長持ちです。高価なハブですがいろいろ組み替えを楽しめます。

組み換え後の前輪 829g スポークはLaser
均等にスポークを張っていいるので振れが出にくい
組み換え後の後輪 1008g スポークはRace
左を高いテンションで作れます(ブルー)オフセットリム使用

新しいホイールの内容は次の通りです。

リム XR31T/RT 前後とも32h 後輪は3mmオフセットリム

ハブ Duraハブ HB7900 FH7900 32h

スポーク 前輪 サピムLaser 2.0/1.5/2.0mm

     後輪 サピムRace 2.0/1.8/2.0mm

ニップル SquorxPro シルバー ブラス

31mm高24mm幅のキンリンXR31T/RTは約500gのリムです。軽くはありませんが剛性が高く空力が高いリムです。軽さを取るか剛性かとなりますと、どちらも大切ですが、あえて言いますと剛性です。こちらの方が重要と思っています。

スポークはお客様からのご指定で前輪はLaser、後輪はRaceと太さを変えています。細いスポークを沢山使ったホイールは疲れにくいホイールです。今までから何度も記事にして提案しています。多スポークホイールはスポークがショックアブソーバーの働きをしてくれますのでロングライドに適しています。

DTのRR411リムも後輪はオフセットリムでした。今回のリムも後輪は3mmセンターがずれたオフセットリムを使っています。

ハブのギア数が増えましたので物理的な理由で左右のスポークテンション差が大きくなりました。後輪右スポークがカンカンに張っているのに左はゆるゆるの状態となります。この大きなテンション差を少なくする方法にオフセットリムを使います。

今までの記事に何度も書いていますので参考にしていただきたいのですがギアが増えたためにハブのセンターオフセット値が増えます。ハブの形状は変えることが出来ません。リム側のセンターをずらすことでハブオフセット値を是正するという方法です。

簡単に一言でいえば10%ほどスポークテンション差を改善できます。この値は大きいです。駆動効率が大きく上がります。掛かりが良くなるということです。

ワイドリムで剛性が高く、チューブレスで走れて、ロングライド向きのホイール、最後にリーズナブル、いいとこだらけのホイールです。お勧めです。

リムブレーキ用定番カーボンホイールの作製

今まで作製しましたカーボンホイールについて多くのお客様がインプレをお送りいただいています。これらのご連絡は私にとって宝です。インプレは記事にしていますので多くの方がお読みいただいています。ホイール購入の参考にしていただいている方が多く、何日の記事と同じホイールを欲しいというご連絡や、定番となっているホイールを作ってほしいとご連絡いただいています。

今回も定番カーボンホイールのご注文をいただきました。46mm高28mm幅のリムブレーキホイールです。

ハブは台湾製軽量ハブを使いました。前後で310gと軽いノバテックハブです。ブティックブランドのハブではありませんが丈夫さ、回転性能など必要十分な条件をこなしていると思います。軽くてよく回ります。値段もこなれています。この価格差は作られる量の差であると考えています。性能の差ではないというのが私の持論です。圧倒的に作られる量が違います。ネットでもあふれるばかりで品切れなど起こしていません。メーカーはこの量的なことで利益を上がていると考えています。少量生産で高い、大量生産で安いの違いで性能に値段ほどの大きな差はないと考えています。勿論性能差はあるでしょうが値段ほどの差ではないということです。こんなことからお勧めハブとしています。

スポークは最近一番気に入っていますピラー社wing21です。このスポークは根元が2.2mmで太く、中央部は比翼型です。空力ではcxrayよりも優れているという風洞実験結果が出ています。ブランド力には少し劣ると思いますが実力では高い評価と考えます。やはり後から出てくるものは改良されているということなのかもしれません。

しかし長年培ってきたブランドという力はいつもすごいものです。多くのホイールメーカーはcxrayを使っていると書いています。

私はどちらのスポークも使っています立場ですので、こんないいスポークもありますよということで紹介しています。

ニップルは定番化していますDTのSquorxProブラスニップルを使っています。ニップルの中には緩み止めが注入されています。高級ニップルですが最近はこのニップルに注文がよく入ります。ニップルはSquorxProにしてほしいという方が増えています。だんだん知られてきたようです。

カーボンリムはアルミリムのように長いチューブをつないで作るという製法ではありません。つなぎ目がないため均質に作れるのでしょう、縦ブレを取るのがとても楽です。

いつも使うリムは穴なしリムなので仮組までが大変です。時間が掛かるのですが振れ取りは均質なためとても作業がし易いです。

ニップルにはグリスを塗っています。高テンションになったときに回しやすくするためにグリスを使っています。液状のオイルを使えば作業は楽ですが、仕上がり後リム側にオイルが漏れてリムがべとつきます。自分用のホイールならこの方法でもいいのですが販売用のホイールですので出来るだけきれいに仕上げたいものです。注意してグリスが漏れないようにしていますがどうしてもリム面に出てくるのが問題です。しかし上手になったことは事実です。きれいに仕上げるようになりました。

スポークテンションが均一です
右テンションを高くして相対的に左を上げています

できるだけスポークテンションを均一に、出来るだけ振れを最小になるように仕上がることにしています。とても地味な作業ですが皆さんこの作業を評価していただいているようです。

前輪661g
後輪851g

前輪661g、後輪851gです。前後で1512gです。46mm高のカーボンホイールでこの重量は軽いと思います。剛性があり軽量の当ホイールは無名ですがよく走るホイールです。ブティックブランドのホイールと比べますと価格は1/3のお値段ですが性能は負けていません。ご安心ください。

ダイナモハブ使用 銀輪ホイールの作製

ブログ記事をお読みいただきました方より通勤用のピストにダイナモハブを使ったホイールをご注文いただきました。

完成した銀輪ホイールです
シャッタープレシジョン 373g

私は以前お客様より教えていただきました台湾のシャッタープレシジョンハブでクロスバイク用に作りました。このハブはシマノの製品に比べますと高価なハブです。発電容量が高く使い心地はとてもいいです。取り付けたライトはずっとついたままにしています。電池のことを気にしないのがいいです。昼間もついたままで安全度が増します。

352gは軽い

お客様のいつも使われているリムはアラヤのゴールド16、チューブラーホイールです。ピストフレームに銀輪ホイールとシンプル自転車の極みです。とても美しいスタイルと思います。

アラヤのリムはどちらかといえば柔らかいリムと思います。組んでいて気になりましたので念のためアラヤに適正テンションを問い合わせました。

果たして丁寧な回答を得ました。以下の通りです。

ご質問についてですが、
16B GOLDのスポークテンションにつきましては最大値100kgfとなっております。
適正値につきましてはお客様の好みもございますので、
一度販売店様にてご相談ください。

ホイール組等をなされる場合はお客様の安全性にも関わってきますので、
販売店様にて組立なさるようお願い致します。

この回答を得ましたので安心いたしました。いつも前輪ホイールは100~110kgfで仕上げていますが今回は約85kgfで仕上げました。

競輪用のゴールド16リムは結構難しいリムです。比較的柔らかいリムなのでスポークテンションの上げ方にコツがいります。前輪リムなので左右均等です。ゆっくり小刻みにテンションをあげていけばいいと思います。慌てずゆっくりが一番楽に出来上がります。急がば回れです。勿論硬いリムでも同じですが特に柔らかいリムは急いでニップルレンチを回さないことです。

私は神の手を持っていませんのでテンションメーターを多用します。こまめに測っています。慣れればいりませんが表にすると楽です。どのスポークが緩いということがよくわかります。

私の経験では50本くらい組みますとうまくなったなと実感しました。費用対効果を考えますと割にあいません。自分の楽しみとするなら少々の出来不出来は辛抱できますが高い効率の製品を得るとなりますと難しいと実感しています。どのあたりで折り合うかです。

お客様は毎日使うホイールなので少し高価なハブですが気に入ったものを使うということでご注文いただきました。このお気持ちはよくわかります。私もクロスバイクと同じくらいの費用をかけて前輪ホイールを組みました。

997gですが外周部が約350g

今回のホイールはとても趣味性の高いホイールですが実益面でも素晴らしいものだと思います。特に美しいホイールということがとてもいいです。

130mmから135mmハブに変更してホイールを作製

昨今の自転車部品不足が影響しまして作りたいホイールがなかなかできません。今回こうしたことからハブ軸変更でホイール作製依頼を受けました。2度目のリピートオーダーです。

お客様の自転車はクロモリフレームです。クロモリフレームのエンド幅は比較的容易に調整できます。今回はこのクロモリの性格をうまく使ったホイールといえます。

上ハブが通常のハブ したハブは135㎜に改造したハブ

ハブの軸幅が広いとホイールの左右スポークテンション差を少なくできます。通常の130mm幅から135mm幅に変更しますとハブセンターが2.5mm左に寄ります。この2.5mmがスポークテンション値に大きく影響します。

スポークテンション差を少なくしてホイールの駆動効率を上げるには2:1組にする方法があります。この場合ハブは特殊なハブが必要です。手に入る部品で効率よいホイールを得る方法としてエンド幅135mmに変更するのはいいヒントになります。

オフセット値を変更しますと左右のスポークテンション差は大きく改善できます。つまり駆動効率が良くなります。この手法は以前の記事でクロスバイクのホイールについて書いています。参考になるかと思います。

ハブ軸は容易に手に入ります。ネットで買えるというのが昔と違うところです。ハブ軸というキーワードで簡単に購入できます。しかし手に入れるのは楽ですがハブ軸交換は意外と厄介です。慣れの問題と思いますが作業が終わると出来たと達成感は得られます。やってみる価値はありますがメーカーは勧めていません。あくまで自己責任です。

お客様はFTPが300近くあります。当然高剛性のホイールを希望されます。柔なホイールでは持っておられる力が発揮できません。乗り手に合ったホイールを提案できるのも手組ホイールの良いところです。

前輪スポークはコンペティション2.0/1.8/2.0mm、後輪右は当初チャンピオンでしたが私のほうでホイールスミスのDH13という2.3/2.0mmのベント部分が太いシングルバテッドスポークを在庫していましたのでご提案しました。後輪左はコンペティションです。ドライブサイドを太くしています。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。硬いホイールに仕上げたいならスポークを太くすることで解決できます。

前輪728g 外周部は軽い 重いハブは丈夫です
後輪1028g 総量は重いのですがリム外周部が軽いです これが利点です
ハブ軸を5mm広げました 左右3クロス組
CX22チューブラーリム

リムはTNIのCX22チューブラーリムです。アルミのチューブラーリムは絶滅危惧種になりつつあります。

剛性が高く価格も安価で今までよく使われていますマビック、アンブロシオと比べますと約半額です。外周部が軽くて剛性が高く安価、いうことなしです。おまけに体重、乗り手の力量にあわせて剛性調整ができます。手組チューブラーホイールはもっと知られても良いかと思います。 今回のホイールは剛性が高く外周部が軽いホイールです。おまけに135㎜にしてハブのオフセット値少なくしています。後輪左スポークはとてもハイテンションイン仕上げています。

好みのリムを使い、スポークやハブで工夫する手組ホイールの醍醐味が詰まっています。インプレが楽しみです。

初めてのスポーク折れ

ホイール作りを始めて15年以上たちますが作りましたホイールのスポーク折れを初めて経験しました。

2年前にお納めしたディスクホイールのスポークが1本折れたとご連絡をいただきました。まずはお怪我がなくて良かったです。すぐにホイールをお預かりいたしました。

RR411ディスクリムで作ったホイール
1本根元で折れています

ホイールはDTのアルミディスクリムRR411を使い、ハブはREVOハブ、スポークはCX-RAYという仕様です。サピムのCX-RAYは強度的には最上位に位置するスポークです。ホイール作製でもスポークテンションを均一にすることを心がけています。スポークが折れたというご連絡には初めてのことなのでちょっとびっくりしました。

Jベントは折れるということは良く聞く話です。私はこの意見には反対の立場です。スポークの取り扱いを間違わなければそんなに折れるものではないと思っています。

ニップルの頭が飛んだことは5回あります。5回お客様よりご連絡いただきました。これはアルミニップル使用していたことから起こったことです。アルミニップルの弱点をよく知っていたつもりでしたが少しスポークが短くて頭が飛びました。ニップルの頭が飛んだというご連絡いただいてからはブラスニップルに切り替えました。約20gアルミと比べて重くなりますが今はブラスの丈夫なほうを選択しています。

今回のスポーク折れはJベントの曲がりの箇所が折れました。スポークが折れますとほかのスポークテンションに影響します。バランスは大きく変わりました。振れが出たのはもちろんですが他のスポークも変化しましたので再度チェックは必要です。

スポーク交換後、縦ブレ横ブレを修正しました。スポークテンションの均一にすること、通常の作業を行ってお返ししました。

今回のことからどのように改善するかということですがなかなか妙案が浮かびません。アルミニップルからブラスに切り替えるというような中止ということはなかなかできません。折れにくいといわれている(実際はストレイトプルでも折れる)ストレイトプルスポークに変更するということはJベントをやめるということですのでホイールの選択肢が狭くなります。このようなことはできません。

結局出来ることは今まで通りスポークテンションの均一化と適正テンション値の追求くらいかなと思います。緩すぎると折れやすいです。テンションが揃っていないことも理由に挙げられます。

一ついいアイデアがあります。ピラーのスポークはJベントの部分が2.2mmあります。サピム、DTにも曲がり部分が太いスポークがありますが流通面で取り扱いが少ないです。ピラーなら曲がり部分が2.2mmありますのでこれはいいなと思います。

昨年来スポーク不足、自転車の部品不足が続いています。サピムCX-RAYがなかなか手に入らない状況からピラーを使うようになったのですが今回の事案からJベントの太いピラーを使うのはいいアイデアかもしれません。

最後に一言、お客様はこのホイールを気にいっていただいています。漕ぎ出しが軽くよく回るということです。カーボンホイールもご注文いただきましたがスポークが折れたといっても当分はメインホイールのようです。

32hカーボンホイールの作製

DURAハブを使ったホイールからハブを取り出しカーボンホイールを作るというご依頼を受けました。

丈夫で美しい 台湾ハブより重いがメンテが楽でよく回る
丈夫で美しい形状です

DURAハブは前後とも7700の旧タイプのハブです。旧といいましても性能は逆に現行より優れている面があるのです。まず仕上げが美しいです。ハブの構造は10速用です。現行の11速よりギア1枚少ないのですがオフセット値から見ますと旧タイプはギア1枚分少ない分スポークの左右テンション差は少なくできます。つまり駆動効率は高いというわけです。トレードオフの関係です。11枚のギアがいらない人には10速のほうが効率の良いホイールを使えます。

カーボンリムはアルミリムより剛性が高いです。リムは体重の影響で地面部分が凹みながら回転しています。剛性が高いということは凹みが少なく真円状態に近い形で回転するので駆動ロスが少ないわけです。アルミリムで走っていた人がカーボンホイールに替えて走りが良くなったといわれる由縁です。軽くてアルミより剛性が高いのでカーボンがいいといわれています。

お客様はいつも六甲山に上っておられるクライマーなので空力も大事ですがそれ以上に高剛性をご希望でした。ブレーキシューがリムに触れることなくぐいぐい進んでいくホイールを好まれています。

当初はスポークをLaserでご提案していましたがより剛性を上げるということで前後ともに1.8mm径のコンペティションをご希望されました。32hありますので1.5mmのスポークでも剛性は得られるのですがそれ以上の硬さを選ばれています。

リムメーカーは2mmのスポークは硬すぎてリムを壊す恐れがあるということで1.8mmまでのスポークを推奨しています。今回のホイールはメーカー指定の最大1.8mm径スポークで組み上げています。

リムは穴なしリムで作っています。穴なしのリムはホイールを作るには難易度が高いリムです。しかし剛性面、運用面から見ますとテープがいらないリムは容易にチューブレスホイールとして楽しめます。

リムにはニップル穴がありません チューブレス対応です

出来上がりましたホイールは32本のスポークでガチっと組めています。スポークを握っても緩いという感じがしません。加えてスポークテンションはバラつきなく揃っています。振れの出にくいホイールに仕上がりました。クランクから伝わる力もロス少なく伝わります。

リムが軽くて剛性が高い 多スポークでシルバーが美しい
できるだけスポークテンションを揃える
できるだけスポークテンションを揃える

銀色のハブ、スポークの多スポークカーボンホイールはあまり見かけることがありません。お客様のクロモリフレームによく似あいます。お客様のインプレが楽しみです。