ミニベロ後輪ホイールは難しい

普段通勤にも使っておられるミニベロのホイールを10速で走りたいとのご希望でご連絡いただきました。ミニベロホイール後輪のご注文です。今回は手に入るハブの関係で後輪だけ作りました。

DA16 329g
シマノハブ FHTX500 32H

リムはアレックスリムのDA16、ハブはシマノFHTX500、32穴です。スポークは短いスポークでも手に入りやすい星のスターブライトを使っています。

本来ならバテッドスポークを使いたいところですがなかなかこの短いスポークに対応できるセラーはありません。

各スポークの間隔が狭いのでニップルレンチが使いにくい

このようなミニベロのスポーク間隔は32穴ありますととても幅が狭いです。通常の12㎜のニップルではスポークとスポークの間が狭すぎてニップルレンチを回すのに手間がかかります。ではどうすればいいのか?ということですがニップルは後ろから回せるニップルを使えばうまくできます。

ホイール作りの作業としては全く普通のホイールと同じですが12mmの通常ニップルでは時間が掛かると思います。慣れた人なら出来るのかもしれませんがミニベロは難しいと思います。

理由は次の通りです。

①ニップルが普通のレンチでは回しにくい

②テンションメーターはスポーク長が短いので使いにくい。使えないときもある。

③テンションメーターがない場合は、使えない場合はスポークを弾いて音で聞き分けスポークテンションを揃えます。しかしこれもまた難しいです。音でやる場合キリがないのでなかなか終わりがありません。

今回は右側左側、各16本で8ペアのスポークで組んでいます。幸いにも1ペアの片側にはテンションメーターをあてることが出来ました。2,4,6,8と8本のスポークにはテンションメーターをあてることが出来ていますのでこれで先ず8本のテンションを揃えることにしています。あとはペアの片方スポークを弾いて音で聞き比べて揃えるという方法を取っています。

いつもの大きいホイールならメーターをあてることが出来るのでスポークテンションばらつき度は5%以上にできますが今回はそこまで出来ていないと思います。しかしスポークが短いので振れは出にくいと思います。

19cmほどのスポーク長です 3クロスで組んでいます 綾も取りました

今回のホイールは小さい径ですがスポークはしっかりと綾を取りました。本来は綾まで必要ありませんが見た目重視にしています。

B5のノートを後ろに置きました 大きさがわかります

納品後にご連絡いただきました。10速に出来て喜ばれているようです。ホントに良かったです。

ヨーロッパのセラーからDT製品が買えなくなりました

7月からDTSwissの製品をヨーロッパのセラーから購入できなくなりました。今月のはじめですがDTのスポークを購入しようとヨーロッパのセラーに注文したのですが購入できません。理由を尋ねたところこのような返事がありました。

残念ながらヨーロッパのセラーからは日本に発送出来なくなっています

Unfortunately DT Swiss started a “selective distribution network” the last week, which doesn’t allow European retailers to ship to most countries outside of the EU anymore. There is unfortunately no exception possible. We’re really sorry for that. 

選択的流通ネットワークという方式が始まったようです。理由はよくわかりませんがDTさんが、いいよ、いいよと大人(たいじん)ではいられなくなったような気がします。勿論DTさんは日本の商社さんと契約していますので全く買えないという訳ではありません。残念ながら製品はヨーロッパの価格では購入できなくなりました。日本の商社さんにとっては取り扱いが絞られたのですから喜ばれているかもしれません。DTさんも販売商社を絞ることで扱い高を増やそうと考えているのかもしれません。

この選択的流通ネットワークという方式はヨーロッパのメーカーはよく使います。ブランド戦略がとても成功している筆頭にローレックスや宝飾ブランドなどあります。どのメーカーも生産数量を絞って消費者の持ちたい意欲をあおっています。しかしもともとの製品に魅力があることが一番です。

では何故DTSwissさんは日本の消費者を締めだしたのか?間口をぐっと絞ったのかをこの一週間考えました。DTのハブはスターラチェット方式で爪方式のハブよりも構造的には優れています。ずっとこの優れた方式で優位を保って大いに儲けてきたわけですがハブの特許が切れました。

最近はスターラチェット方式のハブが中国の通販会社で沢山見受けます。まるで雨後の筍のような感じです。性能もしっかりしています。そりゃそうでしょう、DTさんの特許があって販売が出来なかったのが、辛抱していた縛りがなくなったのですから自由に売ることが出来ます。まるでアジアの逆襲のような感じです。

ホイールは購入した時点からメンテが始まります。スポークが折れたら取り換えないといけません。ハブの修理も必要です。勿論日本では販売店で修理はできますが今までのように自由に部品が手に入らないので一般店では扱わなくなるかもしれません。部品を扱える店はとてもメリットがありますが部品入手が面倒な製品は取り扱い店が減ることも予想されます。ヨーロッパに押さえ込まれるのか、アジアが逆襲するのか、さてこれからどうなるのでしょう?

XR31T/RT32hリムでホイール作製

15年と長く乗られたクロスバイクのホイールを交換したいとご連絡いただきました。お客様はこのブログを楽しんでお読みいただいたようです。XR31T/RTのリムを使ったホイールに興味を持っていただきました。今回はシマノハブをお送りいただいてのご注文です。このリムで作るホイール注文が続きます。

ハブは持ち込みです  一緒にホイールを作っていく感覚です

手組ホイールファンではお持ち込みは大歓迎です。ある意味共同作業的な感覚で、ご一緒にホイールを作っていきます。

リムは500g前後です 軽くはありませんが剛性面ではとても優秀です

ホイールの内容は次の通りです。

リム キンリンXR31T/RT 前後共に32H

ハブ 前輪 シマノ HB-RS400 32H

ハブ 後輪 シマノ FH-RS300  32H

スポーク 前輪 TB2015

スポーク 後輪 左TB2015

スポーク 後輪 右TB2018

ニップル ダブルスクエア

後輪ハブは10速ハブです。使えるギア数は1枚少ないハブですがハブのセンターオフセット値は11速ハブよりも小さいので左右のスポークテンション比率はとても良いホイールに仕上がります。8~10枚とスプロケットのギア数は少ないホイールですがスポークのテンション比率でみると効率の良いホイールが出来上がります。おまけにリムの穴位置が3mm寄っているリムを使いますのでリムでテンション比率は約10%改善できます。スポークのテンション比率を計算上では約70:100の比率に仕上げることが出来ます。

スポーク長計算ソフトでスポークテンション比率がわかります

リムの重量は約500g、ハブの重量は前後で約510gと重いホイールですが駆動比率でホイールの性能を見ますととても優秀なホイールに仕上がります。

一般には軽いホイールを求める人が多いです。しかし力のあるライダーさんは剛性を求めます。軽くて剛性があるのがなお良いと考えますが価格面で難しいと思います。

前輪867g
後輪1102g

コスパを考えますと今回のシマノハブとXR31T/RTリムで作られた多スポークホイールはとても良い組み合わせです。性能と価格を組み合わせた評価では最高の得点を取るホイールではないかと考えています。

出来上がりのホイールは前後で1969gといわゆる文鎮ホイールですが走りの良さは驚かれると思います。ホイールの走りは重量だけで決まるものではありません。

今回のホイールをお勧めする理由はリムの剛性です。ホイールの良さは7割がリムで決まると考えています。当ホイールのリムは31mm高ありますが重量は約500gです。リム高があるので空力の援護を得ることが出来ます。軽くて剛性のあるカーボンリムには及びませんがリム価格は1/4です。コスパよくライドを楽しむにはうってつけのリムと思います。おススメします。

XR31T/RTリム、シマノハブでホイールのご注文

ご自分でも自転車のホイールを組める方よりご注文いただきました。オートバイのホイールも組める超ベテランのライダーさんからのご注文です。普段通り組めばいいのですが今回のご注文にはちょっと張り切ってしまいます。

シマノホイールから取り出した20Hハブ
シマノホイールから取り出した24Hハブ

ハブはシマノホイールWH-R501から取り外した前輪20H後輪24Hハブです。シマノハブは通常28H、32Hと多スポーク用のハブしか販売されていません。今回の20・24Hのシマノハブはこのブログを読まれてヒントにされたそうです。

ご注文の内容は以下の通りです。

リム XR31T/RT 20・24H

ハブ シマノハブ 20・24H お送りいただきました

スポーク 前輪 ピラーTB2015 2.2/1.5/2.0mm

スポーク 後輪 ピラーTB2015 2.2/1.5/2.0mm

スポーク 後輪 ピラーTB2018 2.2/1.8/2.0mm

ニップル ダブルスクエア ブラス

見積もりを出しましたところダブルスクエアのニップルについて問い合わせがありました。ニップル重量が重いのではないかとご心配されました。

12mmニップルの場合、重量は10個で9.5gです。ダブルスクエアの場合10個で12.5gということで64個での差は約19gですので、前からも後ろからも調整出来る利点は大きいですとご説明しますと了承いただきました。

前輪はスポーク20本ですので一般にはラジアル組ですが2クロス組をご希望されました。乗り味を柔らかくしたいとのことでした。スポークが長くなりますのでショックアブソーバーの働きは大きくなります。

今回のホイールは前後ともに2クロス組です。後輪スポークは左右の太さを変えています。右ドライブ側には中央部が1.8mmのスポークにして剛性を上げています。もともとリムに剛性がありますのでお伺いしました体重、乗り方から考えまして剛性が足りないことはないと思います。しかしホイールの剛性に関しては好みがありますので最終的には乗ってみないと分かりません。

スポークはとても大切な働きをします。完成されたホイールをチューニングできる部分はハブとスポークです。ハブの場合はベアリングの取り換えなど考えられますが走る時速を考えますとなかなか目に見えての改善は望めないように思います。スポークの場合はっきり変化を感じることが出来る部分です。しかしスポークの交換などなかなかできるものではありません。特に完組の場合キシリウムホイールのように特別なハブに特別なスポークですので交換は難しいです。しかしRovalのように手組を謳っているメーカーの場合スポークは汎用品を使っていますのでチューニングアップにスポーク交換は可能です。考えて見られるのも良いかと思います。

前輪766g 左右2クロス組 乗り味は柔らかくなる
後輪1019g 左右2クロス組
センターオフセット値が小さいハブと3mmオフセットリムで左右テンション比率はとても良い

何度も馴染みだしを行いホイールは完成しました。お客様は経験豊かなライダーさんです。道場破りの客人を迎える気持ちですがとても良いホイールが出い上がりました。ご感想が楽しみです。

グランボア650ホイールのスポーク替え

ランドナーで有名な京都のグランボアホイールのスポーク替えをご依頼いただきました。グランボアのホイールは初めての出会いです。部品がグランボアということで、ビルダーさんがグランボアかどうかは確かでありません。

お預かり時のホイールです ハブ、リムはまだきれいに出来ていません
ドライブ側 4クロスで組まれています 少しオーバーラップしています
4クロスで組まれています オーバーラップしています

さて、お預かりしましたホイールはスポークが1本折れていました。ご依頼はスポークをすべて新しく交換です。

いつもホイールをお預かりしますとルーティン作業としてスポークテンションを調べますが今回は各スポークが緩んだり締めすぎたりでホイールになっていないのでテンション調べはやめています。分解前にハブの部分を見たのですがスポークは36H4クロス(8本どり)で組んでいます。

オーバーラップはトラブルの元になる

36Hハブの場合は4クロスで組むと考えがちですがこの組み方ではスポークがハブの部分でオーバーラップします。勿論スポークがオーバーラップしても使えないわけではありません。しかしスポークが重なると不要な曲がりが起こりますのでトラブルの元になりやすいです。また、重なり下のスポークを取り出すには2本緩めないと取り出すことが出来ません。このようにスポークの重なりは何かと面倒です。

スポークがオーバーラップするかどうかはDTのスポーク計算ソフトやエクセルを使うスポカルクでは分かりません。オーバーラップを計算できるソフトの研究が必要です。

シングルウオールのリムはスポークが長いとリムテープが巻けない
スポークがニップルから突き出ていませんのでリムテープは巻けます

グランボアの650リム内部はシングルウオールでした。あまり見かけることがないとても珍しいリムといえます。新しく組み直しましたが意外と剛性が高いリムでした。

リムがシングルウオールなのでスポーク長はニップルから突き出ない長さでないとリムテープが巻けません。ピッタリの長さになるようにスポークの長さには注意が必要です。使用スポークは取り出したスポークとほぼ同じ径のTB2015で組んでいます。

3クロスで組むとオーバーラップしません
スポークテンションのバラつきを出来るだけ少なくします

今回のようなスポーク折れの原因は主にスポークテンションを揃えていないことが多いです。勿論金属疲労で折れるのですが疲労の元になるのはテンションの不揃いからです。出来るだけスポークテンションを揃え、出来るだけ振れを取ることに注意して仕上げました。

RR411リム多スポークホイールのご感想をいただきました

5月24日に記事にしていますDTのRR411リムを使用した多スポークホイールのご感想をいただきました。勿論手組ホイールファンの宣伝になるのですが手組ホイールを考えておられる方に参考になると思います。お客様にご了解を得ましたのでインプレ記事にさせて頂きます。

以下原文です。

希望通りのホイールを製作して頂き、ありがとうございました。

走行後の感想です。

まず走り出しの安定感や漕ぎ出しが軽くなりました。

以前のホイールと比べて重量が軽くなったせいもあると思いますが、オーダー時に教えて頂いた

スポークテンションによる影響が大きいのでしょうか、性能表を見るとほんとにバラつきの数値は小さいですね。

そして乗り心地も良くなりました。

もともとフレームはクロモリ(正確にはモリブデン鋼)ですので乗り心地としては硬めでしたが、

荒い舗装や減速帯の凹凸も角が取れたような感じになり、クロモリ本来のしなやかさに戻った感じです。

こちらもオーダー時に長距離で疲れにくいとホイールと伝えておりましたが、スポークの種類はお任せしていましたのでそこも最適な選択をして頂けた結果なのかと思っております。

までは平地130キロほどで後半の疲労感がありましたが、交換後はまだまだ行けそうな感じですので、今後の長距離が楽しみです。

とてもありがたいインプレをいただきました。

文内に性能表とありますのはテンションデータをグラフにしてお渡ししています。このグラフはテンションのバラつき度が分かりますのでホイールの状態がよく理解できます。

ホイールは早く走れるに越したことがありませんが、どれだけ長く安定した走りが出来るかが大切と思います。乗り手の好みに合わせてお作りするホイールは安心できます。

お勧めいたします。

ICANホイールのスポーク調整

5月30日、31日の記事にしていますお客様はもう1セットICANホイールを持っておられました。ご購入の時期はわかりませんが今販売されているICANホイールではありません。このホイールのスポーク調整をご依頼いただきました。2セット連続です。前回のスポークを組み替えしたホイールは調子が良かったので今回のホイールと比べてみるというお考えです。

前輪571g 軽量です
後輪733g  軽量です

お送りいただきましたホイールは40mm高のホイールで、前輪は18H、後輪は24Hでした。前後で1304g、とても軽量です。

右ドライブ側ラジアル組 左側クロス組

前輪はラジアル組、後輪はドライブ側がラジアル組、反対側がクロス組という組み方です。スポークはすべてCXRAYで組まれています。

ホイールメーカーの宣伝文ではよく最強のスポーク、CXRAYで組んでいるというのがウリのホイールをよく見かけます。CXRAYはとても優秀なスポークですがすべてCXRAYで組めば良いホイールが出来るのかというのも疑問です。CXRAYは万能スポークではないということも知っていただきたいと思います。

個人的には左右クロス組が好きな組み方です。いわゆるオーソドックスな組み方です。好きな理由はプルスポークが24本の場合12本あるので引っ張るスポークが多いのが理由です。左右の効率まではわかりませんが数が多いのが好きな理由です。

今回お預かりホイールでは右12本はラジアル組です。プルスポークではありませんので駆動には大きく影響しません。左側12本の6本がプルスポークです。この6本のスポークがギアからハブシェルを経由して来るトルクを伝えています。24本の内6本ですのでこれで十分なのかはわかりません。走れているので大丈夫と思うのですが個人的には左右クロス組の方が好きなのはこれが理由です。お客様には組み方については説明していますのでご理解いただいていると思います。

お預かり時点のスポークテンションをグラフにしています。

スポークテンションのバラつきがとても大きい センターが出ていない
スポークテンションのバラつきがとても大きい センターが出ていない

スポークテンションのバラつきが前後ホイール共に大きいです。ギアからくる力は均等にスポーク伝わるのですが力を受ける側のスポークがバラバラのテンションでは駆動ロスが大きいです。加えてセンターも出ていません。

処方箋としましては各スポークの張りを出来るだけ均一になるようにしてセンターが出るように調整します。文章にしますとこれだけです。約2時間かけて調整しました。

前輪 出来るだけスポークテンションを揃えてバラつきを少なくします
後輪 出来るだけスポークテンションを揃えてバラつきを少なくします

出来上がりのスポークテンションをグラフにしました。まずまずの仕上がりです。前回のホイールはスポークを取り換えて剛性を上げています。すべてCXRAYで組んである今回のホイールと乗り比べていただきます。どちらのホイールがお客様に合っているのか楽しみです。

軽量アルミホイールの作製

何度もご注文いただいているお客様よりご連絡いただきました。

前回は31mm高のアルミリムでご注文でしたが今回は22mm高24mm幅のリムで前輪20H後輪24Hのホイールです。

詳細は次の通りです。

リム TNI AL22W 前輪20H後輪24H 後輪はオフセットリム

ハブ ノバテック A291SB F482SB

スポーク 前輪 ピラー WING21 シルバー

スポーク 後輪左 サピム CXRAY シルバー

スポーク 後輪右 ホイールスミス DH13 2.3/2.0mmシングルバテッド シルバー

ニップル ダブルスクエア ブラス シルバー

リムはTNI、ハブはノバテックです。スポークは相談で決めています。ほぼすべてお客様がご指定されています。組み方は前輪にはラジアル組、後輪左を3クロス組、後輪右には2クロス組です。後輪はいわゆるヨンロク組です。

後輪24穴のホイールでヨンロク組をしますとハブの左側スポークはスポークがわずかですがオーバーラップします。ヨンロク組では左スポークテンションが左右2クロス組より少し高くなります。計算上は1~2%高くなりますのでお客様はこちらを選択されています。

もう少し詳しく説明しますと、後輪は穴位置が3mmオフセットしていますのでスポークテンション比率は約10%改善します。それにプラスしてヨンロク組で1~2%のアップです。通常の左右を2クロスで組むのではなく少しスポークが重なってもテンション比率のいい方を選択されています。ご自分のプラン通り試してみることは良いことだと思います。

スポークは前輪にCXRAYよりも少し剛性が高いWING21を選ばれています。20本のスポーク数ではより剛性が高い方がよいと考えられました。後輪ドライブ側には2mm径の高剛性スポークを使い、左側には高級スポークのCXRAYを選択されています。

ドライブ側ホイールスミスDH13 左側CXRAY 太さの違いがよくわかります

ホイール組にはどれが正しい方法というものがありませんので好きな方法で組めばいいのですが、後輪は右ドライブ側から左へと組むのが組みやすいので右から左で行っています。何のことやら?ですが、この説明で分かる人はわかると思います。

前輪665g
前輪スポークテンショングラフ
後輪864g
後輪スポークテンショングラフ

組み上がりの重量です。前輪665g後輪864g、前後で1529gと軽量です。 スポーク選択でホイールの剛性調整を行っているよく考えられたホイールです。

お客様は今までのご注文で出来上がりに関してのデータを持っておられます。ご自分のプラン通りにご指示いただきました。軽量+剛性というバランスを考えられたご注文でした。

前回のホイールは31mm高でしたので主に平地用、今回の22mm高ホイールは登りがメインの使い方をされると想像しています。

ご自分でホイールのプランを立て、組み立てを手組ホイールファンに委託されています。出来上がりのご感想が楽しみです。

マビック キシリウムホイールの調整

何度もホイールのご注文いただきましたお客様よりキシリウムホイールの調整依頼を受けました。

前輪596g
後輪857g
ドライブ側スポークはラジアル組 反対側はクロス組

当初マビック製品の場合、手組ホイールファンは代理店ではありませんので部品調達がむずかしくホイール調整は出来ない旨お知らせしていました。しかし出来る範囲でOKということでしたのでお受けいたしました。

スポークテンションの調整とハブのグリスアップを行います。

フリーは引き抜けば容易に外せます きれいにしてグリスアップ行いました

キシリウムホイールはアルミスポークを使われています。スポークの剛性に関してアルミスポークはスチールのスポークとほぼ同じですが見た目が太くなりますのでとてもがっちりした印象です。この見た目にほれ込むユーザーが多いのも事実と思います。

お客様はキシリウムとわかるのが嫌でシールをはがし、写真のように一見普通のホイールのように見えますが現物は正真正銘のキシリウムです。

グラフのテンション数値はソフトと連動していませんのでバラつき度のみ確認しています
スポークテンションのバラつきがなくなるように調整しました

スポークの調整が終わりグラフにしました。グラフにしますと分かりやすいです。数値は高めですがタイヤをインストールしますと10~15%テンションが下がりますので数的にはいい数字かもしれません。

前輪ハブのフランジ幅は80mmと広いので横剛性が高い
前輪スポークの角度は8.2度あります  とても優秀で横剛性が高いホイールです

もともとの調整をお受けしましたお預かり時点の数値をもとに調整しています。スポークテンションのバラつきはなくなり均一化しています。

今回の調整ではアルミスポークを扱うのは難しいというのが印象です。何度か別のホイールでアルミスポークをポキンと折っていますのでアルミスポークの扱いは難しいと思います。

スポークの供回りを防ぐためにプライヤーなどの工具で押さえます。急に力を加えることなくゆっくりと行えば折れません。時間が掛かりますが急がば回れです。無理な力を加えなければスポークは折れません。時間は掛かりますが丁寧にするのがコツのようです。

スポーク替えしたICANホイールのインプレ

ご友人のホイールと乗り比べてみてあまりの違いだったのでご相談いただきました。お客様のホイールは剛性が強すぎたようです。ロングライドで帰るとくたくたに疲れておられました。剛性が強すぎると疲れ易いホイールになりますので剛性を下げるといいですよということでスポーク交換のご依頼をいただきました。詳細は5月30日、5月31日のブログ「ICANホイールのスポーク替え」で記事にしています。

ICANホイール 前輪
ICANホイール 後輪

この度、組み換え後の新しいホイールに乗られたご感想をいただきました。ご了解をいただきましたのでブログ記事にさせていただきました。今使っておられるホイールをよくするための参考になると思います。以下原文です。

休みが取れましたので、そこそこ長い距離(80kmほどですが)を作り替えていただいたホイールで走ってきました。その感想を申し上げたいと思います。

 乗り始めてすぐに気が付いたことは、乗り心地が凄く良くなっていることと、以前に比べてスムーズに転がることです。

いつもと同じ道、いつもと同じ幾分荒れたアスファルトで、タイヤとの間に薄いカーペットを一枚挟んだ感じと言いましょうか、タイヤの空気圧はいつもと同じはずなのに地面からの突き上げが半分以下になった感じです。

 そして一番驚いたことは、「剛性がありすぎるホイールは初心者には使いこなせない」という意味が自分なりに良く理解できたことです。

比喩的表現で判りづらいでしょうが、以前のホイールは鬼軍曹、現在のホイールは親身で優しい先生と言った感じです。

剛性が下がったおかげなのか、スポークを両側クロスで組んだおかげか、はたまたテンションがきっちり揃ったおかげなのか私には判別できませんが、どこで力をかければ一番進むのかをホイールが教えてくれる感じがします。

バネを効かせて前に飛び出す感覚と言うのでしょうか、そこを狙って踏んでそれ以外は無駄な力をかけないので、気が付けばいつもよりスピードが出ているのにほとんど疲れないのです。

以前のホイールはどこを踏んでも同じで、それ故に常に力をかけている感じで、きっと踏まなくていい所でも踏んでいたからすぐに疲れていたのではないかと思いました。

きっとテンション、スポーク、組み方すべてのバランスが取れているからだと思いますが、走り終えた後の疲労度も全然違います。大変気に入りました。

 今更ながら思うことは、知らないということは恐ろしいことだと言うことです。

ブログを拝見していなかったら、きっと私は「これが普通だ」と信じて転がらない疲れるホイールで必死に漕いでいたのでしょうね。

良い機会を得られたこと、良い職人さんに出会えたことを感謝します。

ちなみに、費用対効果は私の物差しでは抜群に良いと思いました。

ありがたいご感想をいただきました。良いホイールになってよかったと思います。過分な評価を頂き感謝しています。

ホイールはカメラのレンズとよく似ています。解像度が素晴らしいレンズを使っていて、もうこれで十分と思っていても違うレンズで撮影するとまた違った好きな画像に出会うことがあります。比べるとよくわかります。好きなレンズに出会うには比べるしかありません。ホイールも全く同じで比べたらわかります。お金を出せばいいものに出会える確率は高くなりますが誰もが出来ることではありません。レンズ沼、ホイール沼にはまり込むとなかなか抜け出せないのも事実です。しっかりと足元を見据えながら沼を渡っていきたいものです。