ホイールを今までに3セットご注文いただきましたリピーターのお客様よりメールをいただきました。
内容は次のとおりです。
アレックスリムズのRXD 3というホイールをギャップでフロントホイールのリムを曲げてしまわれたようです。購入された店でリムを取り寄せて、修理を依頼されたのですが、技術的に修理出来なかったようです。どうしてもスポークが折れるとかで仕上げることができません。仕方なく別の店に持っていかれて組み直しをされました。しかし出来上がったホイールはすぐにフレが出るそうです。このようなことから手組ホイールファンでもう一度直してほしいとのことでした。
お送りいただきましたホイールはもともと黒のスポークでしたがこれしかできないということでシルバーのスポークに交換されています。
このアレックスリムのホイールは2つのお店を経て私のところにやってきました。
いつものようにホイールを点検しました。スポークテンションを測りますとホイールの状態がよくわかります。グラフにしますと作り手の腕前がはっきりします。
ホイールは横ブレが出ていますが縦ブレは少ないホイールでした。残念ながらスポークテンションは強弱強弱と均一ではありません。この状態のホイールは暫く使うと必ず横ブレが出てきます。またスポークテンションは非常にハイテンションで張られています。極度のハイテンションはリムやハブを傷め、スポークが折れる原因となります。
お客様は詳しいことを仰いませんがどちらの店主もメカニックとしてとても有名だそうです。今は完組ホイールが全盛なのでまともな手組ホイールが出来るショップはとても少ないということがこのことでもよくわかります。リムブレーキからディスクブレーキと覚えることがたくさんあります。ホイール組などしなくても十分ビジネスは出来るのが現実です。新しいホイールを買ってもらえばよいということでしょう。
さて、お客様と打ち合わせの結果、前輪スポークをピラーのwing21黒に交換しました。後輪はそのままでスポークテンションの調整を行います。
組み上げましたが一度強い圧力がかかったリムは歪んでいることが多く非常に組みにくいことが多々あります。今回も強く当たって凹んだリムなので歪んでいる部分がどうしても調整しにくく、スポークの均一化を行うと凹み部分に大きな振れが生じてしまいます。
結構難しいのでこんな場合は少しぐらい振れが残ってもスポークテンションを優先したほうがいいです。このほうが後で狂いが少ないです。無理すれば振れは取れますがスポークテンションが揃っていないとあとあと狂いが必ず出てきます。少々の振れよりテンションを優先するほうが良いかと思います。そうはいっても今回の振れ取りはよくできたと思います。
スポークを緩める、強く張るの繰り返しで調整していきます。2回目のベテランメカニックさんが組んだ結果が上記のグラフのようになったのは仕方のないところもあるのですが時間をかけて振れとテンションのバランスを取りました。まあ簡単に言いますと少し妥協することです。
リムにひずみがありますので今回の妥協点はバラつき度5%前後です。通常のホイールでは3%以上になるように仕上げています。DURAホイールが5%前後なのでこれ以上を目標にしているのが理由です。細かくテンションメーターでチェックすることで何とか左右のバラつき度を5%以内に仕上げることが出来ました。
一般的には一人オーナーさんの自転車ショップは技術力があるのですがすべてに優れているショップは限られています。完組ホイールばかり販売している最近の自転車屋さんは自転車の整備技術はあるがホイールは組めないようです。組めても精度は低いです。やはりメカニックとホイールビルダーは違うので餅は餅屋がいいです。