お客様より連絡がありました。
後輪カーボンホイールのパワータップを交換してほしいとのことです。穴なしリムで作られたカーボンホイールです。ハブを壊してしまい依頼されたビルダーさんにハブ交換を頼まれたのですがなかなか動いてくれないとのことでした。
当初は頼まれたビルダーさんにお願いすることが一番いいですとお伝えしました。
お返事ではなかなか取り掛かってくれなく数か月待っているということでした。業を煮やして私のほうに連絡があった次第です。
持ち込みの仕事は失敗すると弁償しないといけないことがあります。難しいことが多くありますので先ずお送りいただいて直せるかどうかをお返事しますということで納得いただきました。
後輪ホイールと新しいパワータップハブが送られてきました。
品物を確認しますと取り換えできないことはないことが分かりました。失敗しても弁償できると考えましてお受けしますとお返事しました。
お送りいただきましたホイールは以下の通りです。
リムメーカーは分かりませんが国内の部品屋さんで取り寄せられたそうです。ハブはパワータップハブG3、スポークはDTのレボリューション2.0/1.5/2.0mm黒、ニップルはアルミニップルという構成です。
いつもお預かりの時はスポークテンションを確認します。お預かり時のスポークテンションは次の通りでした。
とても緩い仕上がりです。通常ハブの構造から左スポークテンションは緩いものですがお預かりホイールは右が緩いので相対的に左も緩い仕上がりになります。一ヶ所はゆるすぎてテンションメーターで測れないくらいのゆるゆるでした。
グラフからわかりますが後輪右ドライブサイド約90kgf、左非ドライブサイド約36kgfと本当に驚きの数値です。しかし見た目はきれいな仕上がりで振れもありません。スポークをぐっと握ればゆるゆるですが見た目はきれいな状態です。
たくさんホイールを乗り比べておられる方はよくわかることですが、カーボンホイールが初めての方にはわからないことだと思います。私の感想をお知らせしまして驚かれました。
私も20年ほど前にホイールをあるショップに依頼した時のことを思い出します。出来上がった時はうれしくて乗っていたのですが2,3回乗って後輪スポークが折れました。ビルダーさんにもっていったのですが乗り方が悪いということで工賃を請求されたのです。何?工賃と怒ったのですがこれがきっかけでホイール作りにのめりこむようになりました。
閑話休題、
人様が作られたホイールをあーだ、こーだと批判するのはよくないと思っています。しかしながら今回のお預かり品はちょっとひどいと思いました。穴なしリムを扱えるのですからそれなりの技術があるビルダーさんと思います。本当に残念です。
お客様はとても礼儀正しい方でビルダーさんの詳しい話などは一切されません。
果たして失敗しましても弁償出来ることを確認しましたのでハブの組み換えをお受けしました。併せてアルミニップルからブラスニップルに交換も提案しました。やはり丈夫なブラスニップルがいいと思います。
作り直しを行いながら考えました。何故ビルダーさんは部品が揃っているのになかなか手をつけなかったのでしょうか?面倒な作業だから?すぐにできるのに勿体つけるために?いろんな事情があるにしましても数か月もお待たせするなんでひどいな、いろんなこと考えながら作業を進めました。
出来上がりのホイールの見た目はお預かり時点と同じです。違う点はスポークを均等に張っているところ、ブラスニップルで少し重くなりました。
ハブのセンターオフセット値が大きいので左スポークテンション値は高くできませんが出来るだけ右のテンションを上げて相対的にテンションを高める方法を取っています。もちろん均等にスポークを張ることが大切です。
お客様に報告しますと前輪も心配なので見てほしいとのことでした。お預かりすることにいたしました。後輪がどのように変わったか教えていただけるのが楽しみです。