お客様よりご依頼がありPrime black edition を調べる機会を得ました。
ご購入の時点では調子が良く、数か月すぎて少しスポークのバラつきがあるのではないか心配になりましたと相談を受けました。
結論を言いますとスポークのテンションはとてもよく整えられています。バラつき偏差は5%以下の仕上がりで、今まで点検しました完組ホイールの中ではとてもよく調整されたホイールでした。お客様はホイールに慣れて購入時点の感動が薄れただけでした。ホイールはしっかりしていました。
このホイールの詳細です。
前輪スポークはDTのエアロスポークです。後輪ドライブ側に同じエアロスポークでも少し1.2mmの厚みがあるエアロコンプを使い左非ドライブには0.9mm厚スポークです。
とてもよく考えられたホイールと思います。
ハブはPrimehubとして販売されていますが形状、サイズからノバテックハブと推察します。このハブはストレイトプルスポークを使うハブです。各寸法を計測しまして計算上の左右スポークテンション比率は37:100です。
少し左スポークテンションが低い数値となります。逆にいいますとスポークの角度を取れますので横剛性は高いといえます。いわば支え棒の考え方です。何事も良いとこばかりではありません。どの点に目が行き、どの点に目をつぶるかです。
点検していて一つ気になることがありました。
非常に後輪右ドライブ側スポークテンションが高いことです。スポークのテンションを高くしたから剛性が上がることではありません。ホイールの剛性はリムの剛性+スポークの総面積に比例します。スポークテンションを高くすることで剛性は上がりません。ではなぜこのホイールは右側テンションが高いのでしょうか。
理由はハブの構造上ハイテンションに仕上げないといけないようです。左右のテンション比率差が大きいので右側を高く上げないと左スポークがゆるゆるで仕上がってしまします。緩くても乗れないことはないのですが過去の経験上、左は50kgf以上が望ましいと考えられています。正解値はありません。
グラフで示すように右側を大きく上げることにより相対的に左を上げています。強度的にはハブはストレイトプルスポークを使いますので構造上引っ張りには強い形です。このハブだからできるスポークテンションと考えます。しかし常に160kgf近いハイテンションで引っ張っているので経年劣化は通常より早いのではないかと心配します。ただしこのことに関しては残念ですがよくわかりません。
私がいつも買っているカーボンリムメーカーではスポークテンション値は125~135kgfで仕上げてくださいとマニュアルに書かれています。
この160kgfの数値ですが私のテンションメーターが間違っているのかと心配になりましたのでテンション校正器で調べました。ホイールに使用されているスポークと同じエアロコンプを持っていますのでスポークを160kgfで引っ張り、メーターで測りますと同じ数値を検出できました。おおむね合っています。
ホイールはタイヤをインストールしますとスポークテンションは10~15%下がります。場合によっては20%下がるホイールもあります。このホイールのハイテンションはおそらくテンションダウンを想定して作っていると思います。タイヤインストール後、左側50kgfアップを得るために右ドライブ側をハイテンションに仕上げているのでしょう。それにしても驚くばかりのハイテンションです。
このホイールに乗ったことはないのですが総じてとてもよくできていると思います。作り方が丁寧です。ただハブの構造上、左テンションを上げるために右側をハイテンションに仕上げないといけない造りです。
このホイールはUCI公認ということでプロチームに提供されているホイールのようですが耐久性に対して知りたいものです。とても高いテンションで作られていますのでどのくらいでプロは交換していくのでしょう。想像ですが意外と交換サイクルは早いのかもしれません。
お客様が心配されたスポークテンションはとてもよく管理されていると思います。ホイールはとてもよくできています。グラフを参考にしてください。
いつも思うのですが海外通販で購入されたホイールは皆さんどうされているのでしょうか?面倒見てくれるショップはそんなに多くはないと思うのですが…
消費者は集められた評価、星の数を頼りに購入されると思います。価格の面で有利なところが多い海外通販ですがこういう機械ものにはメンテナンスが欠かせません。自分でメンテナンスができる人には良い買い物です。周りに面倒見てくれる人がいる人も安心できる良い買い物が出来ると思います。
しかしながら大方の自転車屋さんは面倒を見てくれません。うちでは扱えませんと断られるのが目に見えています。面倒見てくれる場合でもショップで買われた場合と価格が違います。お客様だけにいい目が出る仕組みにはなっていません。
このPrime black edition ホイールは現在価格88000円で販売されています。予備スポークもついています。業者のカタログを見るとビッグブランドの価格と比べてとても安価です。送料無料ですが関税7.8%と地方税がかかることを承知しておかないといけません。
縁あってこのホイールを点検させていただきました。ホイールはよくできていて何もさわることなくお返ししました。お客様もよくできているホイールと聞かれて安心されたようです。
プライベートブランドのホイールを10万近く出すのは勇気のある買い物です。掲載されている☆評価だけを頼りの買い物です。返品もできるシステムで安心できる会社で私もよく利用します。ただ私はよくわかっているものだけにしています。もっと高価なブティックブランドのホイールの場合どうなんかなと思います。買ったが近所の自転車屋は面倒見てくれない、どうしたらいいのでしょう。オークションにでも出しますか?