スポークの選択

ホイールに関してのブログを読んだり、メーカーの説明文を読んで感じることですがサピムCX-RAY が最高のように書かれています。

サピムのホームページ(https://www.sapim.be/)からの引用ですが

CX-RAYのテクニカル・スペックは

Weight: (64 pcs x 260 mm ) 272 g
Quality: AISI 302
Strength on middle section: 1600 N/mm2

なるほど強度も最高値です。空力もいいです。

 

アメリカのノベンバーサイクルズ(https://novemberbicycles.com/)というホイールビルダーのブログが面白く参考になることが多いのでよく目を通すのですがこのビルダーさんが風洞実験をしました。サピムCX-RAY とLaserの違いをホイールで実験した結果が掲載されていました。

Laserのテクニカル・スペックは以下の通りです。

Diameter: 2.0 – 1.5 – 2.0
Length: 145-310 mm
Weight: 283 g (64pcs x 260 mm)
Strength on middle section: 1500 N/mm2

 

ノベンバーサイクルズの風洞実験の結果は1Wの違いでした。風洞実験ではCX-RAY が1W分優れていたと発表しています。あくまで風洞実験の違いです。

Laserは数グラムCX-RAY より重くて強度的にも少し劣っています。しかし価格は1/3の値段です。この違いは大きいです。

私は長い間CX-RAY が一番と思っていました。実際スペックを見ますと一番です。価格も一番高いといえます。

ではノベンバーサイクルズはそんなに違わないからLaserでいいのではないですかといって販売はしていません。CX-RAY を勧めています。販売ホイールのカタログにはCX-RAY を中心に販売しています。

しかしLaserも悪くないですよ、という姿勢も出しているので信頼できるビルダーだなと感心しています。

 

私もこれを見習って奥様のホイールを注文いただいたときに1Wの違いを説明したことがあります。ご主人はそれでしたらLaserにしておきますと変更されました。

CX-RAY は販売しているほうとしましたら一つのウリになります。実際優れているので嘘ではありません。

ただ何がなんでもCX-RAY ではなく乗り手の実力、乗る場面などに応じてスポークを選択すればいいと思っています。

後輪ホイールの改良

『手組ホイールの評価』の続きです。

前にシクロAクラスの選手に評価いただいたホイールの改良を提案いただきました。

前輪はそのままで後輪のみの変更です。

テストライディングではとても満足のいく結果となりました。下り坂でも、緩い登り坂、きつい登り坂の3か所計測でも前回の結果を上回るようになりました。タイムはストップウォッチではなくパワーメーターからのデータを読み取った時間です。手動でのタイム計測ではありません。

以下結果報告です。

有名手組 XR31t/rt
下り坂-3% 4.59 4.34
緩い登り+3% 6.56 6.39
きつい登り+7% 6.37 6.31
単位:分.秒


ニップル アルミ

スポーク 左右 サピムCX-RAY  左右ともに2クロス組

ハブ ノバテックス 28h

キンリン XR31RT 28h

元のホイールの
変更部分はスポークの変更です。

 

変更部分

スポーク 左 サピムRACE 2.0/1.8/2.0㎜  2クロス組

右 DTチャンピオン 2.0mm   2クロス組

 

組み方も同じでスポークの太さを変えることにしました。

これはスポークの総面積が増えたことを意味します。このことによりホイールの剛性が高まりました。ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。

扁平のCX-RAY から太いスポークに替えたことによりホイールの剛性が大きくアップしたわけです。

 

評価していただいた選手曰く後ろから押してくれる感覚があると言ってくれました。踏み込めば答えてくれるホイールですと評価いただきました。

 

ホイールは乗る人との相性で決まります。パワーのある人がぐいぐいと漕いでいく乗り方もあれば、そこまでのパワーがなく、くるくる回して乗る人がいます。

今回の改良ではパワーのある人に合ったホイールに仕上がりました。

 

今回の改良では重量が増えたので漕ぎ出しが若干重くなった感じがするが回りだすと後ろから押してくれる感覚でタイムがよくなっています。

このテストで重量が増えたたから性能が悪くなったということでしたら非常にがっかりしたと思います。しかしそうではなかったのです。

 

最初のテストではCX-RAY を使っていて平地や下り坂ではとてもいいタイムを出しているのに登りではタイムが出ない。このことから推測して剛性不足の結論に至りました。このことからホイールの剛性を引き出すにはどうすればよいのか。これにはスポークを太くすればよいのではないかと推論し、スポークを太くして再度テストライディングとなりました。結果は予定通りの良好な結果となりました。とても満足しています。

 

  • 軽さだけを追求したために剛性が不足するなら、少し重くなっても剛性のあるほうが登りに強いです。
  • スポークもCX-RAY が最高と考えがちですが用途によって違います。

 

アドバイスいただいたシクロ選手はもともと理科系のご出身でして、論理的な推論で今回の改良を提案いただきました。ありがたいことです。

ユーラスと後輪ホイール比較

後輪ホイールの仕様

リム キンリンXR31 RT オフセットリム  (左スポークテンションが高い)

ハブ シマノ ティアグラFH-RS400 28h (重いがよく回る)

スポーク DTコンペティション2.0/1.8/2.0mm 28本

ニップル アルミ

重量 リムテープ込み 1076g

 

ユーラスの後輪リムハイトは30mm、スポーク数21本、重量864g

 

前にも比較をお願いしましたシクロのAクラスの選手の方に評価をお願いしまして結果を教えていただきました。

私も年齢の割には走ることができますがやはりパワーが足りません。力のある選手に評価していただくことは正しくホイールに反映することができます。気分だけとか見た目だけの品物を作る間違いをしなくなりとても得るものが多いです。

 

今回はユーラスと比較しました。カンパのユーラスは軽量で、実力のクラス的には

ゾンダ<ユーラス<レーゼロ

の順と言われています。

数値的な表現は控えますが今回のホイールはほぼユーラスと同じくらいの登る力です。約7%の上り坂を270Wの一定の力を保ちながら登ったタイムを計るという方法です。登り方はダンシングをしないでシッティングで登る方法です。 一定に270wで登り続けることが私の力ではできないので本当にありがたいです。

計測した結果はほぼ同じタイムでした。下り、平地ではXR31のホイールがダントツにエアロ効果で力を発揮するのでXR31がユーラスに勝つのは以前から知っていましたが登りにいささか不安がありました。

 

心配はハブ重量です。ユーラスに比べるとハブの重さが100g以上重いので、重量が大きく影響するのではないかと思っていました。果たしてそれは杞憂に終わりました。

 

若干漕ぎ出しの際重さを感じるが気になるほどではないとのこと。走ればエアロ効果もあり巡行の際良好な感覚を得ることができ、登りも重量があるにもかかわらずしっかりパワーを伝えることができると評価いただきました。

 

後輪の剛性不足をスポークの総面積を増やすことで対応する、少し重くなるが重量が増えるマイナスよりも剛性のプラス面が勝っているということがよくわかりました。

ハブの重量はホイールの総重量が増えることになるので漕ぎ出しには少し影響するが、外周部は軽いので基本的な回転に関しては大きく関わってこないことが分かりました。

手組も負けていないことが言えます。

 

サイスポの4月号のタイトルは『軽さは正義』ですが単純に軽量化だけを考えるのは早計ということがよくわかりました。剛性が伴っての軽量化です。

単純に登りの比較をしただけで、この通りですと結果を出すことは慎まないといけませんがホイール作りの参考になることは間違いありません。

自転車談義

いつもの自転車屋さんでまたホイール談義をいたしました。

話した内容の要約です。

 

  • 上級者はチューブレスを使っている。リアはクリンチャーでもフロントはチューブレスの人が結構多いとか。チューブレスの乗り心地、グリップの良さを知ってチューブレスで乗っている人が増えているということです。私も食わず嫌いでしたがチューブレスタイヤを気に入っています。

 

  • シマノの低価格ホイールは優秀。低価格シマノに勝つ手組ビルダーは少ない。手組ビルダーも日々研鑽が必要です。

 

  • やはりタイヤが一番安上がりで効果のあるアップグレードです。チューブも大切です。タイヤ、チューブで走りがよくなるのです。

 

  • 50万円のフレームと5万円のフレームを比べて45万円の差を出すのは難しいです。それならコンポーネント、タイヤ、ホイールにお金をかけたほうが買い物上手といえます。自転車屋が言ってはいけない話ですが。

 

  • アルミリムでは400g以下は剛性の面で難しい。最低でも420~430gは必要とのこと。400以下の軽くて剛性高いリムが必要ならカーボンリムを選ぶしかないでしょう。

 

30分くらいの話でした。いつも仕事を止めてしまって申し訳ないのですが楽しい話でした。特に上級者のチューブレスは面白い話でした。シーラントなしでチューブレスを使っている人も結構多いとか。いろいろ試してみることですね。

手組ホイールの評価

キンリンの24mmワイドリムを使って作ったホイールをシクロクロスAクラスの選手に評価していただきました。

縁あってお話ができるようになりテストしていただくことができありがたいです。

24mm wide XR31t/rt  20/24h

 

詳しいことを書くと何枚ものレポートになるのでざっとお話をいたします。ホイールは5本用意されました。完組ではユーラス、レーゼロです。走るコースを3種類に決めます。

 

1 約-3%の緩い下り坂を漕がずに下る。

2 約3%の緩い坂をのぼる

3 約7%のきつめの坂をのぼる

 

この3種類のコースを走って時間を計測いたします。距離はおおよそ6,7分走るコースです。

テストする人はFTP300wの力をお持ちです。体重は72kg。この人が270wの力でパワーメーターを見ながら一定の力で漕いでタイムを計るという方法で評価したしました。

 

結果は

私のホイールはエアロ効果を発揮できるのか1番のテストでは5本の中で一番、しかしのテスト3の登りでは5番目でした。ちょっとがっかりしましたがこれが現実です。3のテストでは一番はレーゼロです。やはり剛性が高いようです。

 

私のホイールは1と2のテストでは総合的に上位に位置しますが登りでは負けるという結果です。この結果は何を意味するのか?やはり剛性です。軽いから登りに強いのではなかったのです。

 

以下が私のホイールのいただいた評価です。

 

平坦や緩い坂・下りではエアロ効果で速さを発揮するが、ヒルクライム的な使い方には向かない。後輪の剛性が足りていないと言えると思います。

後輪へのウエイトのかかり方が大きくなる上りで体重72kg,SST強度が270Wである私が使う場合での話です。逆に、軽量でパワーもあまり出せない人は、剛性不足に至るまでのパワーが出せないわけですから、「平坦や下りは速くて快適。上りもそこそこいける」となると思います。

 

このような評価をいただきました。

勘違いをしていただきたくないことは一般の人ではなく強力なパワーのある人が乗って評価していることです。

負け惜しみのような言い方になってしまいますがシクロの試合で要求されるホイールはエアロ効果よりも剛性ですのでロードレースの場合とは少し違うかもしれません。簡単に言いますと私のホイールはシクロ向けではありません。ロードレースではエアロ効果が重要な場面があると思います。

 

私のホイールは販売価格15万円前後のレーゼロに挑むのは無理があるとは思います。しかしヒルクライムのコースでは向かないが少しの登りが組み合わされたどちらかといえば平坦コースであれば勝負できるホイールということがわかりました。ありがたいなと思っています。

まさにホイールは乗り手との相性がありますので場面で使い分けることが必要なのかもしれません。

 

私のホイールの改良案をいただきました。全体としてのエアロ効果のあるホイールですので登りの剛性をどう補うかです。答えはスポークを太くすることです。引っ張り剛性を高めるにはスポークの総面積を増やせば剛性が高まります。重量は増えますが剛性が高まります。前輪はそのままで次回はスポークを太くした後輪でテストする予定です。

 

ホイールは軽さだけではだめということがよくわかりました。いや、本当にホールは難しいです。軽さは正義と名を打ったタイトルがサイスポの今月号ですが簡単に答えが出る話ではないといいたいです。