ダイナモハブでホイール作製

シマノのダイナモハブを使ってホイール作れますか?とお問い合わせがありました。お客様は通勤用に使われる予定のようです。

手組ホイールファンでもクロスバイクにダイナモハブで作ったホイールを取り付けています。

シャッタープレシジョンのダイナモハブを使っています リムXR31T 32H スポークはCXRAY

このダイナモハブのホイールはとても便利で気に入っています。電池を使ったライトでいいのでは?という方もおられますがこの気軽さ、便利さを知ってしまうとなかなか元に戻れません。

確かにハブの回転は手で回すと重くて大丈夫かな?と心配するのですがレースに出るとかでない限り摩擦の問題はないと思います。ブルべ・レースに出ておられる方から教えていたのですが、電池を気にしなくていいのがいいとのことです。ダイナモホイールは携帯充電にも使えるようです。

シマノ ダイナモハブ DH-S501 32H

お客様からのご指定で使用するハブはシマノGH-S501です。ディスク仕様のQRタイプです。リム、スポークはお任せとなりました。

リムはキンリンのXR26RTを使います。24mm幅26mm高で3mmオフセットしています。3mmオフセットがない場合スポークテンション比率は100:75%です。

リムにはオフセットリムを使いますので計算値では左右のスポークテンションは100:94%です。

スポーク長はほぼ同じですが左右のスポークテンションはほんの少し違いますのでホイール作製には注意が必要です。

スポークはサピムのLaserを使います。細いスポークを使った多スポークホイールは乗り味が柔らかく疲れにくいホイールに仕上がります。

ダイナモハブ使用 ディスクブレーキタイプ 32H

ホイールは出来るだけスポークテンションが均一になるように作ります。このフレーズは毎回の記事に出ていますので、またか!になりますがとても重要です。前輪ではテンションの均一なホイールと均一でないホイールの差異はほぼ感じることはありません。しかし長く使われると振れが出やすくなったり、スポーク折れが出たりとトラブルの原因になります。安心安全の上ではとても大切です。

電池のことを気にしなくて昼間でもライトをつけっ放しで走る。これがいいです。実際使っているので便利さがよくわかります。おススメです。

スズエのトラック用ハブで後輪ホイールのご依頼

2月にスズエの36穴ハブと24穴リムでピストホイールのご依頼がありました。今回はこの続きのご注文をいただきました。

スズエのベロマックス28穴ハブ

スズエの28穴ハブはカップアンドコーンで新品でした。ハブはすでにディスコンですが上手に手に入れられました。最近ではシールドベアリングタイプが手に入ります。メンテナンスフリーのシールドベアリンタイプですがお好きな方はカップアンドコーンを探されるようです。

リム重量503g  軽くはありませんが剛性が高いリムです  使ってみれば走るリムだと分かります

リムはXR31Tリムを使用します。24mm幅31mm高で重量は500g前後と重いのですが剛性が高いリムです。重いリムだと敬遠しがちですがプラス面の方が多いお勧めリムだと思います。

スポークは前回のホイールと同じサピムのRaceスポークを提案しています。

サピムのホームページからの引用ですがThe Race provides a better shock absorption thanks to a thinner middle section than the one of a non-butted spokes. Dealers say about this traditional spoke: “Never change a winning team…”

とても扱いやすく価格もこなれています。いいスポークだと思います。

ニップルはダブルスクエアニップルを使っています。標準タイプのニップルよりは少し割高ですが前からでも後ろからでも回せますのでおススメです。難点は手に入れにくいことです。

ハブが両切りですのでJIS組で組み上げました。スポークテンションのバラつき度を出来るだけ小さくなるようにスポーク調整を行っています。時間をあけて何度も馴染みだしを繰り返すことで振れが出にくいホイールに仕上がります。

オーソドックスな組み方です スポークはサピムのRaceを使っています
28穴3クロスJIS組み
出来るだけスポークテンションが均一になるように仕上げています

前輪は36穴ハブで24穴リムを使って変則組をしています。今回の後輪は通常の28穴3クロス組です。これで前後セット完了です。ご感想が楽しみです。

クリスキングハブ使用ミニベロカーボンホイールの作製②

テンションメーターが使えないという条件で正確にギア側120kgfのスポークテンションで作り上がるにはどうすればいいのか?

この幅ではテンションメーターは使えません
テンションメーター校正器に使用するLaserスポークを取り付けて120kgfまで引っ張ります
ギターピックでスポークを弾いて音を聞き、ホイールのスポークと同じ音になるようにする

答えは音で聞き分けて仕上げることにしました。テンションメーター校正器にサピムのLaserスポークを取り付けて120kgfで引っ張ります。この時のスポークをギターピックではじいて音を出し、この音をキーにしてスポークテンションを上げていくことにしました。ギターの弦を調整するのと同じです。

基本は120kgfで引っ張るとどんな音がするのかを知ることです。音を聞き分ける。慣れないと難しいことですがキーとなる音が分かりますと作業ははかどります。

各スポークが均一であればホイールの駆動効率がよくなりますが完璧を求める必要はありません。こだわり過ぎることは要りません。ホイールは振れ取りが出来ていれば十分使えます。すべてのスポークが同じ音色でないといけないということはありません。音がそろっているほうがいいという感じでよいと思います。

非ドライブ側はどうすればいいのか?

スポーク長を出すときにスポークの左右テンション比率が出ます。100:74という感じです。この比率をもとに非ギア側の予想テンションを出し、校正器のスポークテンションの音を聞き取ります。センターが出たホイールのスポークを予想テンションに近づける方法で最終の微調整を行って仕上げるという方法です。

前輪649g 
後輪865g

音を聞き分けてスポークテンションを揃える方法は手軽でいい方法です。しかし完璧を求めるとキリがないのである程度で切り上げると良いかと思います。十分いいホイールに仕上がっています。

クリスキングハブ使用ミニベロカーボンホイールの作製

2月18日の記事でクリスキングハブを使ったミニベロホイールを分解したことを書きました。

お預かり時点の前輪ホイール
お預かりの451規格 後輪ホイール

このハブを使ってカーボンホイールを作製します。

ホイールから取り出したクリスキングハブ 前輪用155g
ホイールから取り出したクリスキングハブ 後輪用 333g
クリスキングハブ 実測しています
451規格カーボンリム 32穴 352g

リムは451規格のカーボンリムです。穴数は32穴、ERDをシッカリと計測してスポーク長を出します。ハブの計測もホームページで発表されているデータではなく実測します。

サピム Laser 約180mmほどのスポーク長は別注になります

スポークはサピムのLaser黒をご希望です。ニップルは前からと後ろからの2方向で回せるニップルがよいと思います。各スポークの間隔はとても狭いので後ろから回せるニップルを使うほうがいいでしょう。ニップルはSquorxPro黒ブラスを使いました。

算出しましたスポーク長は手のひらサイズですので特注になります。2㎜径のスポークなら容易に手に入りますがバテッドスポークでは別注を受けてくれるセラーさんに注文しないといけません。入手には手間と時間が掛かるスポークです。

ホイール組み立ての作業として仮組まで結構難しいのですが超難関ということではありません。普通に組んでいけます。しかし組み上がってから問題が起こっています。

スポーク長が短いのでクロス組を行いますとテンションメーターをスポークにあてることが出来ません。テンションメーターなしの条件で、適切なスポークテンション範囲で組み上げる。しかもスポークテンションを出来るだけ均一にして組むという難題が持ち上ります。

お預かり時点の前輪スポークテンショングラフ
お預かり時点の後輪スポークテンショングラフ

分解する前のクリスキングハブで作られていたホイールのスポークテンションは驚くばかりのバラつきで組まれたホイールでした。お客様には申し訳ないのですが見た目だけのホイールでした。

何故このようなバラつきになるかと言いますとこのホイールビルダーさんは振れ取りだけできればいいという考えだったと思います。他所さんの仕事に文句を言いますのは行儀が悪いと思いますが、やはりビルダーとしては問題だと感じています。

ではどうすればいいか?手組ホイールファンではアナログ的な方法で解決しました。次回説明します。

チューブラーリム、Bitexハブを使って2:1組ホイールの作製

前回記事の続きです。ロバ―ルハブとフルクラムリムの組み合わせで2:1組のホイールはうまく作ることが出来ませんでした。ハブ軸の歪が原因です。

Rovalハブはハブ軸不良のためホイール作りは出来ません

フルクラムのチューブラーリムが残りますのでBitexの2:1組ハブを使って作り直すことを提案しましたところ了解を得ました。

Bitexハブ 7:14 2:1組ハブ

ハブは写真の通りです。ストレイトプルスポークを使ったギア側14本、非ギア側7本の2:1組ハブを使います。スポークはwing21のストレイトプルスポークです。ハブのサイズデータは発表されていませんので正確な実寸計測が必要です。

リムはインターナルニップル使用、ハブはストレイトプルスポークを使います。この二つが条件です。正確な寸法が分かると計算式に入力すれば適正スポーク長は出ます。

後輪チューブラーホイール 762g

インターナルニップルを回すにはスポークが一緒に回らないように固定しながら回すことが肝心です。補助道具が必要ですので難しいホイール作りだと思います。難易度が高いので作り上げた満足感は大きいです。

ロバ―ルハブとフルクラムリムの組み合わせでホイールを作る

前回の記事にはこの逆の組み合わせを説明しています。ホイールはうまく完成しました。次はロバ―ルハブとフルクラムリムの組み合わせで2:1組のホイールを作ります。

結論から言いますとこの組み合わせは上手くいきませんでした。

ロバ―ルハブ 2:1組用
フルクラムリム

フルクラムリムはチューブラーリムで、穴はインターナルニップルを使う仕様です。見た目は簡単そうに見えますが結構難しい組み替えです。ERDの決定には特に注意が必要と思います。

仮組したホイールを回すとハブ軸が振れ取り台から浮き上がりました

スポーク長を出して仮組をしました。振れ取り台に載せたホイールを回してみますと何故かきれいに回りません。仮組が終わったホイールはきれいに回るものですが回してみるとハブが振れ取り台から浮き上がりました。こんなことは初めてのことで何がどうなっているのか分からない状態です。

ハブをじっくり観察しまして原因が分かりました。ハブ軸が歪んでいたのが原因です。ほんの少しですが軸が歪んでいてきれいに回らなかったわけです。

軸が歪んでいるときれいに回らないということは当たり前のことですがホイールをお預かりした時点では分かりませんでした。理由は分かりませんが何かが傷んでいたようです。

スーパーチームのホイールを分解してリムを取りだしました

ハブ軸が歪んでいると分かったのはきれいに仕上がっているスーパーチームのホイールからリムを取り外してロバ―ルハブに組んでみて初めて分かりました。フルクラムリムにはひずみがないと調べました。取り外したスーパーチームのリムもきれいに回っていましたのでひずみがありません。これでやっと原因はロバ―ルハブにあると分かりました。

ハブ軸が歪んでいるとホイールは組めません。遠回りしましたがロバ―ルハブにフルクラムリムの組み合わせは出来ないことが分かりました。ハブ軸が僅かに歪んでいる、こんなことは初めての経験で理由を見つけることに時間が掛かりました。ハブ単体を手回しで回して回っていても微妙な歪は分からないときがあります。

一度はスーパーチームリム、Rovalハブで仮組したホイールを分解しました。しかし再度確認の為組み立ててみました。振れ取り台にセットして回してみましたところ、同じような回り方でハブ軸が振れ取り台から乗り上げる感じになります。残念ですがホイールはばらしました。  

ホイール作りは難しいです。

フルクラム後輪とRoval後輪の組み替え依頼

フルクラム レーシングクアトロLG後輪ホイールとRoval RapideCLX50後輪ホイールのハブとリムを組み替えるご依頼です。

お預かりの後輪ホイール 右RapideCLX50  左フルクラム レーシングクアトロLG どちらも21本 2:1組

レーシングクアトロはチューブラーホイール、Rovalホイールはクリンチャーホイールです。どちらも50mm高リムでスポークは右14本左7本の2:1組です。各スポークの位相はあっていますので組み替えは可能です。

今回のご依頼は

①Rovalのリムとフルクラムのハブを組み合わせる

フルクラム レーシングクアトロLG チューブラーリム使用 取り外したタイヤです
Roval RapideCLX50 784g 後輪 ギア側スポークにはソルダリングが施されています

②フルクラムのチューブラーリムとRovalハブを組み合わせる

この2つを行いますが難易度は高いと思います。

フルクラムハブの計測です

フルクラム レーシングクアトロの分解は難しい仕事でした。あまり使われていないきれいなホイールでしたがこれが影響してかハブの分解には苦労しました。使われていない部品が固着していましたのでなかなか部品が外れません。しかしいろいろ資料を調べて分解することが出来ました。

ホイールの分解できればハブを計測して、スポーク長を出して再度組み立てです。スポークはドライブ側にはサピムCX-SPRINT、反対側にはWin21を使いました。

簡単な説明を書きましたが実際は難しい仕事です。

Rovalリムにフルクラムハブの組み合わせ 
Rovalリムにフルクラムハブの組み合わせ

写真のようにロバ―ルリムとフルクラムハブの組み合わせはうまく出来ました。良く出来ています。オリジナルホイールです。

RapideCLX50のスポークにはソルダリングされていましたので切り取るしかありません 勿体ないことです

分解前のロバ―ルホイールにはサピムのCXRAYが使われていました。スポークにはソルダリングが施されていました。このように針金でくくられているスポークは分解しても再利用が出来ません。切ってしまうしかありません。1本600円ほどのスポークを切ってしまうのですから勿体ないと思います。このソルダリングにはどんな効果があるのかいつも考えてしまします。因みに手組ホイールファンではソルダリングは行いません。

次はロバールハブとフルクラム チューブラーリムの組み合わせです。詳細は次回にします。

65mm高32mm幅波型リム使用カーボンホイールの作製

お客様はFTP300あるハイアマチュアの選手です。新しくビルダーさんにディスク仕様のクロモリフレームを注文されていて、この際ホイールも新しいホイールにするということでご注文いただきました。力のあるライダーさんはホイールの軽さも大切ですが先ずは剛性を優先されています。

前輪774g 

後輪885g  65mm高でこの重量に驚きます

今回選ばれたリムは65mm高のリムです。じゃじゃ馬ホイールを手なずけるには技術と力が必要です。乗り手と相性がうまくあうと驚くばかりの力が出ると想像しています。

黒一色のホイールは力強い
リムにはシールがありません 迫力を感じます

リムメーカーもこの65mmサイズになりますと24穴リムしか作っていません。スポークが短くなるので剛性は十分担保出来ると判断しているのか28穴リムは作っていません。

凄い迫力です 乗りこなすにはパワーも必要です

お客様は既に46mm高の定番ホイールで走っておられます。46mm高には慣れておられます。

ホイールの役割はリムが7割、スポーク、ハブで3割と考えています。今回のご注文には手組ホイールファンとしましても大いに期待しています。ご感想が楽しみです。

46mm高28mm幅チューブレスカーボンホイールの作製

定番ホイールになっています46mm高28mm幅のリムを使ってご注文いただきました。今回のリムはグロッシータイプのつやアリリムです。柄がありますので今までの無地の定番ホイールとは少し印象が違います。

リム重量 427g グロッシータイプ
穴なしリム  穴はバルブ穴のみです

リムは穴なしリムですのでチューブレス仕様となります。勿論クリンチャーホイールとして使っていただけます。

ハブは必要十分なTNIのREVOハブを使います。スポークはwing21の黒です。

wing21はサピムのCXRAYと比べて少し剛性が高いスポークです。CXRAYはホイールメーカーの宣伝文には最強スポークと書かれていることが多いのでCXRAYは最強スポークと信じている方が多いのも事実です。CXRAYは優秀スポークですが最強ではありません。もともと1.5mmの細いスポークを扁平にしていますので剛性は高くないスポークです。

ホイールの前後を最強のサピムCXRAYで作っていますという宣伝文句にのって買ったホイールが今一つ踏み込んでも伸びないと不満が出るのもCXRAYが剛性の低いスポークであるからです。

今回のwing21はCXRAYと比べて少し剛性が高いスポークです。このため24本では適正の時が多いのです。しかし32本の多スポークになりますと剛性がありすぎると感じることもあります。

ホイールの剛性はリムとスポークで決まります。ホイールはスポーク数と使うスポークを考えながら組み上げることが肝心です。

前輪708g
後輪823g
カッコイイホイールです これなら欲しいです

組み上がったホイールを写真でお客様にご確認いただきました。カッコイイホイールですねと連絡しました。気にいっていただいたようです。ホイールは組み上がっても2、3日時間をいただいています。スポーク調整には時間をあけて行うことが大切です。

いいホイールが出来上がりました。これなら欲しいです。

比べてみると違いがわかるベアリング交換

スポーク調整など点検でお預かりしましたホイールです。

フリーを外して振れ取り台にのせてハブ軸だけで回しましたらとてもきれいに回ります。ベアリングはご自分で打ち換えられました。上手にベアリングを取り付けておられました。

お預かりのカーボンホイール ハブはF482SB 24H ベアリングはNTNに取り換え済み

比較のために同じハブを使って組み立てた新品ホイールがありますのでフリーを外して回転の比較をやってみました。

XR31T 24H  F482SB 24H フリーを外して回転性能を比べました

同じハブですが使っている中のベアリングは違います。どちらも新品ベアリングです。同じくらいの力を加えて回してみました。何回も繰り返して回転の平均を取りますと明らかに回転の違いが出ています。倍くらいの違いが出ています。

お預かりホイールのベアリングはNTNのベアリングです。勿論比較に使ったデフォルトのベアリングは悪くはありません。しかしこの違いを見るとベアリングの取り換えは効果があると思います。少しの勇気があればベアリングの取り換えは出来ますのでやってみる価値はあります。