フリーの爪をハブシェルに収める方法

ハブの整備でお困りのお客様より問い合わせがありました。

ノバテックの後輪ハブF482SBをグリスアップして外したフリーをハブシェルに納めるときです。爪が4つ立っているのでどうしてもハブシェルに入らないとのこと。

グリスの量は難しい 多すぎても爪が立ちにくい 少なくてもダメ
4つの爪が邪魔をしてハブシェルに入らない

フリーをハブシェルに入れるのですが4つある爪が邪魔をしてすんなり入らないということです。一つの爪を押さえても後の3つが立っているので入りません。どうしたらいいのかと考え込んでしまいます。

実は初めてハブフリーを引き抜いたとき同じように悩みました。じっとフリーを眺めていてピンとひらめきました。知恵の輪のゲームみたいなものです。

荷造り用のPP紐を用意する
紐でグイっと縛るとフリーは入る

答えは荷造り用の平らなPP紐を20cmほど切りフリーの爪に巻き付けます。平らな紐がミソです。紐をグイっと引っ張りと4つの爪を締めあげてハブフリーをシェルに押し込めばすんなり入ります。あとは紐を引っ張り出せば終わりです。簡単にフリーは収まります。

お問い合わせのお客様には喜んでいただきました。たぶん皆さん同じようにされていると思うのですが今回のように問い合わせてこられる方もおられるのでお知らせいたしました。

24gの増加で剛性を高める

7月16日に記事にしました改造レーシング3ホイールですがオーナー様よりご連絡いただきました。ホイールの乗り心地は柔らかくていいのですが踏み込んだ反応が柔らかいということをお知らせいただきました。言わばぬるいホイールということで改善できないかとお問い合わせいただきました。

解決策としてスポークを太くすることで剛性が上がることをお知らせし、当初のスポークwing21からDTのコンペティションに変更することを提案しました。

果たして了解を得ましたので21本のスポークをすべて取り換え、5gスポークから6gスポークに変更です。

因みにスポークは海外の自転車フォーラムでは4gスポーク、5gスポークと呼ばれています。日本ではこのような言い方はあまり聞かないのですがどうでしょう?

さて、大雑把な言い方ですがホイールの剛性は使用するリムとスポークとその数量で決まります。今回はスポークを太くしました。しかし使用のカーボンリムメーカーでは剛性が高すぎるスポークを使用するとリムが割れる恐れがありますので太さを制限しています。つまり1.8mmのスポークまでなら使用可ですが2mmスポークは使わないように注意されています。このことを守りながら剛性を上げることにしました。

wing21で作製 853g
コンペティションに変更後 877g

ホイールがぬるい、硬いの違いはいろいろ乗り比べないとわかりません。お客様はハイパワーの持ち主でしかも長い経験がおありなので違いがわかりました。最初にお納めしたときの上写真(853g)と今回の下写真(877g)を比べますと24gの差があります。他の部品は同じものです。

ホイールの剛性はスポークの総面積に比例します。今回の24gの増加はスポーク4本増えたのとほぼ同じです。スポーク交換でどれだけ変わったのかお客様のご感想が楽しみです。

HUNTのホイールをお預かりしましたが…

何度もご注文いただいていますお客様よりご紹介いただきました方よりHUNTのホイールの点検依頼を受けました。

6,7年前のことですがHUNTというブランドは手組ホイールファンがホイール販売を始めたころ知りました。比較的新しい英国のブランドです。

当時、手組ホイールファンではXR31T・RTの20・24Hホイールを作って販売していました。英国でも同じリムメーカーのリムを使った同じホイールを販売しているのでこのメーカーを知りました。英国の自転車雑誌でも大きく取り上げられたホイールとして販売されていたことを思い出します。

前輪 左ブレーキ側12本 右6本
前輪 左クロス組右ラジアル組  2:1組のホイールです
とても軽量です
左右クロス組 20H

このHUNTのホイールが送られてきました。最新のカーボンスポークが使われたホイールでした。

残念ながらカーボンスポークのデータは全く持っていません。このためスポークテンションが揃っているかどうかはテンションメーターで分かりますが何kgfで張っているかはわかりません。

さらにニップルは3.4mmのレンチで回せるのですがとても硬く固めてありましたのでニップルは全く回りません。。無理に回せば折れるのではないかという心配もあります。結局手組ホイールファンでは扱えませんとホイールはお返しすることにしました。

カーボンスポークについてはデータがありません。サピムやDTSwissのようなデータがあればいいのですが惜しいと思います。軽くて強度があるのですが広く流通していないのも難しい点です。幸いにもいつも購入しているカーボンリムメーカーがカーボンスポークを販売してくれます。しかし価格はとても高価です。手に入らないから値打ちがあるのかもしれませんが今のところこれまでのスチールスポークで十分事足りています。シマノ、カンパが扱っていませんのでもう少し様子を見ようと思っています。

クリスキングハブでホイール作製

6月にONYXハブでホイールのご注文いただきましたお客様より再度ご連絡いただきました。

今回はクリスキングハブを持ち込みされてのご依頼です。

前輪102g  べリングが大きいのでこの重量です
後輪222g 軽量です

前輪24穴後輪24穴でリムはキンリンのXR31T・RT前後ともに24Hで左右2クロスのホイールです。スポークはwing21黒でお作りすることになりました。

写真はお送りいただきましたハブです。とても滑らかな回転はさすがに高級ハブと感じました。ハブは再利用ですので穴位置には出来るだけ注意を払って組み立てます。お客様より前の穴位置には気を使わなくていいと了解いただいています。

前輪はラジアルで組まれていましたハブですので今回2クロスで組んでも穴位置には心配いりません。後輪ハブはドライブ側2クロス非ドライブ側にはラジアル組で組まれていましたので今回の左右クロス組でも大きくハブを傷つけることはありません。再利用のハブには注意が必要です。仮組には前のスポーク通し穴と同じ穴を使って組み立てることが出来ました。

各スポークを均等にテンションアップしていきます。後輪リムはオフセットリムです。3mmセンターからずれていますので左スポークテンションは10%ほど通常リムより高く仕上がります。左右のスポークテンション差が少なくなり駆動ロスが減少しスポーク折れも防げます。

前輪767g
後輪882g

前回は前後共32穴のホイールでしたが今回は前後ともに24穴ホイールです。どちらも同じXR31T/RTリムなので乗られた印象がどのように変わるのか楽しみです。

MTBホイールのご注文

9月に開催される王滝のレース用としてホイールを新調したいとご連絡いただきました。今までにロード用として3セット、今回のMTB用ホイールで4セット目のお客様です。

シマノハブにスタンスのリムを使いました

リムはお客様がご用意されお送りいただきました。ハブ、スポークはこちらで準備しています。リーズナブルに手に入れた部品を持ち寄って良いホイールを作り上げていきます。

Stans MK4リム 378g

リムはスタンスのCrest MK4に決まりました。27.5規格の軽量リムです。1.5㎜のオフセットがありますのでスポークテンションの左右差を軽減することが出来ます。

ハブはアルテグラグレードのシマノハブを使います。スポークはエアロ効果を期待することはないので丸スポークで提案しています。

前輪はピラーのTB2015 2.2/1.5/2.0mm

後輪左 TB2015 2.2/1.5/2.0mm

後輪右 TB2018 2.2/1.8/2.0mm 

後輪右を少し太くして剛性を上げています。お客様と打ち合わせしましたところ左右を1.8㎜にしますと剛性がありすぎて足が残らないかもしれないということで右側だけ太くして剛性を上げすぎないようにしています。

リムは378gと非常に軽量です。外周部の軽いホイールに仕上がりアップダウンの激しい場面にはとても有利なホイールに仕上がります。

ホイール作製の注意点としまして、穴位置に1.5mmオフセットがありますのでリムの向きには注意が必要です。クランクから伝わる力が減じることなく伝えるにはスポークの張り方はとても重要です。スポークテンションを均一に張ることで駆動ロスを少なくできます。ホイールでは一番大切なところと考えています。

前輪713g
出来るだけスポークテンションを均一に
後輪947g
出来るだけスポークテンションを均一に

シマノハブは重いのですが重いということは剛性が高いということでもあります。大きな力がかかるハブの剛性が高いということは回転のロスが少ないということです。決して重さはマイナス要因ではありません。

MTBホイールについてお客様とご相談しながらハブ、リムを決めました。いろいろと勉強できありがたいことです。

キンリンTB25で作ったホイールが5セット

キンリンのTB25で作ったチューブラーホイールが今5セットあります。ハブはどれもシマノハブで作っています。いろんなタイプで作っていますが基本はすべて3クロスです。いろんなスポークの組み合わせで作りました。

沢山作ったTB25ホイール

最初のころは星のスターブライトで作っていました。2mmの太いスポークが32本ありますのでとても剛性が高く硬い印象でした。最初はこんなものだと思って乗っていましたがスポークで乗り味が変わることを知ってDTのコンペティションに組み替えたり、サピムのLaserで作ってみたりと徐々に内容が変わっていきました。何度も組み替えしていますのでこんなに増えてしまった訳です。

作ったホイールがタイヤとスポークで印象が大きく変わることを知りました。いろいろ試した結果落ち着きましたのは、廉価版タイヤではコンチネンタルのGiro、高級版ではヴェロフレックスの高級タイヤです。どちらかといえば乗るよりも作るほうが多いので試したタイヤの種類も少ないですが高いタイヤと安物タイヤははっきり違うことが分かりました。

いいタイヤで走るのは安価にできるチューンアップです

タイヤにお金をかけるのが一番安価なチューンアップといいますがまさにその通りです。しかし一般にはそんなにとっかえひっかえできるものではありません。

何故5セットもあるのかといいますと理由はコスパです。いろいろ作って比較してきましたので自然と増えてしまいました。ホイール作りの勉強には最適です。

TB25で作ったホイールはとても安価にできます。高級タイヤ1本の値段でホイール一つが出来てしまいます。チューブラーにすると外周部が軽いので漕ぎ出しが軽くよく走ります。チューブラーのタイヤ交換は簡単で、おまけにホイールはリーズナブルな価格というのが理由です。

ホイールは多スポークで作っていますのでロングライドに最適です。郊外でパンクしてもテープで貼り替えれば楽に交換できます。

2本で860gは軽量です

またTB25を2本買ってしまいました。クリンチャータイヤ1本分の価格でした。今では人気のないチューブラーですが食わず嫌いの方には是非お勧めしたいTB25ホイールです。

10速ホイールに11速スプロケットを入れてみた

お客様より10速ハブに11速スプロケットを取り付けることが出来ると教えていただいたことを既にブログに記事にしています。

FH-7900にCS-HG700を取り付けました

しかし実際はどうなのかは試していませんでした。果たして取り付けは大丈夫でした。CS-HG700にはスペーサーがついていました。これを使わずギアだけを10速ハブに取り付けるとうまくいきます。教えていただいたとおりの結果です。ロー側は34TなのでディレーラーはGSタイプがいりますので注意が必要です。

既に10速ハブは使えることを記事にしていますがリムブレーキ部品はだんだんと絶滅危惧種になりつつあります。安価なハブに注目が行きますと値上がりしますので光が当たってほしくないのです。手持ちのディスコンハブは大事にしたいと思っています。

36穴ハブ24穴リムでホイール作製

シマノカップアンドコーンハブで前輪20H後輪24Hのカーボンホイールを作るために手に入れたホイールがあります。シマノの下位グレードwh-rs100ホイールを分解しました。

ハブを取り出して組み立てたカーボンホイールがこのホイールです。

TNIカーボンリム シマノ24穴ハブ スポークwing21使用
559gの24穴オフセットリムが余りました

ハブだけ使いましたのでリムが余ってしまいました。後輪用の24穴オフセットリムを使わずに置いてあったのですが36穴ハブを使って組み立てることにしました。使用するハブはティアグラハブFH-RS400 36穴ハブです。

スポーク長はspocalcで計算 2.17クロス組

36穴ハブ、24穴リムを使って組むのは今までにブログ記事にもしていますが今回はSpocalcの計算ソフトで2.17クロスを入力してスポーク長を出しました。変則組ではいろんなやり方があります。日本流では5本どり、6本どりというのですが英語圏の言い方で作ります。

24穴ハブを台湾ハブで作ると軽量にできますが価格も当然高くなります。最初の目的は24穴のカップアンドコーンハブでカーボンホイールを作るということが目的でした。余ったリムが勿体ないので今回のように手持ちの36穴ハブで変則組ホイールを作製しました。

後輪1087g 重い=剛性が高い 決してマイナス要因ではありません
2.17クロス組

実用ホイールとしては元のホイールよりもいいホイールが出来上がりました。古い36穴ハブがあれば24穴リムに使えますのでカーボンホイールも作れます。ダイナモハブも36穴なら安価に手に入りますので24穴カーボンリムを用意すれば面白いホイールが出来上がります。36穴ハブはアイデア次第で楽しめると思っています。

45mm高30mm幅フックレスホイールの作製

FTP280の猛者ライダーさんより以前ブログ記事(23年6月8日)に発表しましたホイールに興味を持たれお問い合わせいただきました。

当初は記事のホイールと同じものということでしたがご希望のリムで作るには別の種類でなければならなく最終的に今回のリムに決定しました。

リムは亀甲柄でつやアリリムです  特注です
フックレスリム

リムは45mm高の軽量リムでリム面には亀甲柄が施されたとても美しい特注リムです。

ハブはノバテックのハブ、スポークは前輪にはサピムのCX-RAY、後輪左CX-RAY、後輪右にはwing21と少し太くして剛性を上げています。

前輪707g
スポークテンションは出来るだけ均一に
後輪843g
スポークテンションは出来るだけ均一に

前輪707g、後輪843g、前後で1550gと軽量です。リムが美しいので存在感がたっぷりのホイールに仕上がりました。

使用部品はすべてが海外調達です。円安なので価格面では影響ありますがブティックブランドのホイールと比べますと1/3の価格で作れますので価格競争力はあります。性能もスポーク調整に時間をかけていますので踏み込んだ力は正しく伝わります。駆動ロスの少ないホイールに仕上がっています。

10速FH-RS300は11速でも使える用途が広いハブ

恥ずかしいことですが最近10速ハブで使える11速スプロケットの存在を知りました。お客様が教えてくれましたのですが個人的にはずっと10速で乗っていましたのでなんの不便もなかったのが知らなかった理由です。

しかし11速で乗っておられる方にはとてもいい話だと思います。勿論使えるスプロケットは限られていますのでギアの選択肢はありませんがとても良い点が沢山考えられます。

FH-RS300は375gと重いのですが重いハブは剛性が高い

下図はシマノホームページより引用いたしました。ハブの詳細がよくわかります。

XR31RT で左右テンションレシオを計算しますと62%、69%の違いが出ます

①11速ハブよりもフランジ幅が広いので横剛性が高くできる。僅か1mmほどですが幅が広くセンターオフセット値が11速よりも少ないのがいいです。

②ハブの価格が安い。現行の10速ハブはFH-RS300ですが価格は安価でよく回ります。重いハブですが重い=剛性が高いということでもあります。見方を替えれば欠点が長所にもなります。キンリンリムXR31RT との組み合わせはとてもいいと思います。

③シマノは大々的に宣伝していませんが11速ユーザーに10速ホイールが使える道を用意したことは素晴らしいと思います。しかしシマノのホームページから互換表を調べてみたのですが使えるとは書かれていません。ピンとくる人は使ってくださいというところなのかもしれません。とても細い道ですが通れるように作ってくれたことは歓迎です。

④説明が重複することになりますがスポークの左右のテンションレシオが高いホイールが出来ます。左テンションが高いことは駆動ロスが少ないことに通じます。

上記のように長所が沢山あるハブFH-RS300は注目されて良いハブと思います。スプロケットが限定しますが11速で乗られている人は10速ハブが使えます。勿論ヤフオク、メルカリで上手に古い10速ハブを見つけられたら一つくらい買っておかれるのも良いかと思います。兎に角軽いホイールがいいという方には向きませんが実用でよく走るホイールが欲しい方には最適と思います。