ミニベロホイールの調整依頼

漕ぎ出しに異音がするということでホイールの調整依頼を受けました。お預かり時点ではシルバーの12mmブラスニップルが使われていました。この標準ニップルでは通常のニップルレンチしか使えません。スポークの間隔が狭くてレンチが使えないホイールです。スポークのテンションがゆるゆるで振れ取りだけ行ったホイールで駆動効率の悪いホイールと言えます。

スポークの間隔が狭くてレンチが使えません

ホイールを新しく組み替えました。ニップルも新しく黒のSquorxProブラスで仕上がることにしています。このニップルなら後ろから回せますので微妙な調整ができます。スポークの間隔が狭い小径車にはぴったりのニップルです。高価なだけはあります。

小径車のホイールは作るのが簡単そうに見えますがそんなことはありません。どちらかといえば難しいホイールです。ニップルを少し回しても大きく反応しますのが理由です。おまけにスポークが短いのでテンションメーターが使えません。各スポークテンションが適正な値で揃っていることが必要ですがこれが容易ではありません。

テンションメーター校正器でスポークを100~120kgfで引っ張り、弾いて音で調整すればよい
ギターピックでスポークを弾きます  音を揃えて調整します  シンプルですが難しい

方法としまして音で調整しています。使っているスポークと同じスポークを100~120kgfで引っ張ってギターのように弾いて音を出し、この音を頼りに調整していきます。これならテンションメーターがなくても調整は可能です。方法はシンプルですがとても正確です。ただし適正な一定の音になるようにするのは結構大変です。難点はキリがないことです。ピアノ調律のような厳密なものではありませんのである程度揃っていればいいということで納得します。これは個人の性格によって変わるかもしれません。

お住まいが近くの方なのでホイールを引き取りに来られました。音で調整することを説明しました。試しにスポークを弾いてみましたら納得されました。

簡単そうに見える小径車のホイールは意外と難しいです。音で合わせることが出来るなら道具なしで調整ができますので試されるのも良いかと思います。キリがないことは覚悟してください。

カンパ用のチューブラーホイールの作製

カンパ用のチューブラーホイールの見積もり依頼がありました。カンパ用のハブとアルミチューブラーリムは部品入手にかなりハードルが高いと思います。

手組ホイール用としてのカンパハブはなかなか手に入りませんがミケ社のハブなら32Hで手配出来ます。リムはキンリン社のTB25が剛性高く優秀ホイールに仕上がります。スポークは前輪に中央部が1.5mmのスポーク、後輪にギア側は中央部が1.8mmのスポーク、反対側に1.5mmのスポークを使う提案をいたしました。

後輪 929g カンパフリー
前輪 749g

お話いただいてから部品の手配と組み立てで約3週間かかりましたが完成しました。最近のホイールはスポークが黒色のスポークが多いのでシルバーハブにシルバースポークは目を引きます。

各スポークのテンションを出来るだけ均一になるようにして振れを最小に作り上げます。

現在アルミのチューブラーホイールは完組では販売されていません。今回のホイールは部品は既成ですがホイールとしてはすべて誂えです。いいホイールができたと思っています。

リムとハブ持ち込みでミニベロ後輪ホイールの作製

何度もご注文いただいているお客様よりリムとハブの持ち込みでホイール作製のご依頼いただきました。

アレックスリム R390 756g
DT350ハブ 32H  3クロス組

お送りいただきましたハブはDT350、リムはアレックスリムR390です。

32穴で3クロスで組みます。必要なスポークは短いので用意できるスポークは限られます。CXRAYなどのスポークでは別注扱いになります。当然入手に時間はかかります。

今回は2㎜径のストレートスポークで対応しています。小径車のホイールは通常ホイールと製作工程は変わりません。

しかし

①各スポークの間隔は狭いのでニップルレンチが使えない場合があります。

そのうえ

②完成後の馴染みだしがやりにくいという難点があります。

③テンションメーターが使えない。

しかし①②③どちらも工夫をすれば出来ることです。

スポーク長が短いからと言って馴染みだしの工程を省くことは出来ません。

結論としまして小径車はとても難しいと思います。小さいので簡単そうに見えますがそんなことはありません。ニップルを回した反応は通常の700cのような反応ではありません。微妙なニップルの回転でスポーク大きくテンションは変化します。

テンションメーターの値をグラフ化しました  均一にスポークが張られています

上記の注意点をクリアして完成しました。手前味噌ですがよくできていると思います。

今回も喜んでいただけると思います。

シュパーブハブでホイール作製

1985年くらいの古いロードバイクをお持ちの方からご連絡いただきました。

シュパーブ100/126mm28Hハブを持ち込みでクリンチャーホイールの見積もりをご依頼いただきました。使用タイヤは23cということです。ハブは新品です。約40年前に使われていたハブですが新品でしたのでびっくりしました。

前輪用 138g 28H
後輪用 218g ボスフリー 28H

リムはナローリムをご希望されました。提案リムとしてTNIのAL300かAL22ですが軽量の後者リムを選ばれました。

AL22 28H 379g 軽量です

AL22 は400gを切る軽量リムです。ナローリム全盛の時代にはよく使われていました。勿論、今でも軽量ホイールが出来ますのでよく使われています。特にクライマーの方には人気があります。

お送りいただきましたシュパーブハブは前輪100mm後輪126mmボスフリーハブです。昔のハブは後輪ギア数が少ないのでハブのセンターオフセット値は今の11速と比べて小さい値です。左右のスポークテンション比率を計算しますと左右のテンション比率は63:100の割合です。現行の11速ハブでは45:100くらいになるのハブが多いです。左右のスポークテンション比率で比べますと非常に優秀です。

後輪スポークテンション比率を左右100:100に出来るだけ近づけようとゾンダのような2:1組ホイールがあるわけで、後輪ホイールの左テンションは大切な要素になります。

少し偏った意見になりますが、古いロードは使用ギアが少ないだけで使うホイールの性能としましてはけっして最新のホイールに負けないものがあります。8速ギアのクロスバイクをチューンアップすればロードバイクに負けないものが出来ると思っています。

出来上がりました。出来るだけスポークテンションの均一化を図りました。

前輪 698g
前輪スポークテンショングラフ
後輪 790g
後輪スポークテンショングラフ
40年前のボスフリーハブ 新品です

前輪スポークは中央部1.5mmのスポークを使っています。

後輪ギア側に中央部1.8mmスポークを使い剛性を上げています。

前輪698g後輪790g前後1488gの仕上がりです。

使うタイヤを上手に選べば現行ホイールに負けないホイールが出来ます。

50mm高カーボンホイールの作製

リピータのお客様より連絡いただきました。

カーボンリムとストレイトプルハブの持ち込みでホイール作製のご注文です。
スポークとニップルはこちらで準備いたします。

50mm高リム ノバテックハブ Wing21
前輪642g
50mm高リム ノバテックハブ Wing21
後輪816g

用意しましたスポークはピラーのWing21のストレイトプルスポークとDTのSquorxProブラスニップルです。

スポークオフセットの計測が大切です

ストレイトプルスポークを使うハブではハブサイズを測るのに注意が必要です。
スポーク長を出すのにスポークオフセットの実測が大切です。
この数値がでたらめでしたらスポーク長が長すぎたり短かったりします。
しっかりと測ることです。

ハブにスポークを通しますとリムの穴位置は決まっています。
決められた穴に通してニップルを取り付けます。
仮止めでスポークテンションは緩い状態で一度組み上げます。
どのニップルも一度に締めるのではなく少しずつ均等に締め付けていくのがコツです。

馴染みだしを繰り返して仕上げます。時間尾あけて繰り返します。
スポークテンションが揃うように組み上げます。
ホイールの良し悪しはこれで決まります。

フルクラムRacing600を分解して新しいホイールの作製

使わずに置いてあったフルクラムのRacing600を組み替えて新しくシクロレース用で使いたいとご連絡いただきました。

お預かりしました後輪 きれいなホイールです
お預かり時点のスポークテンショングラフ  テンションのバラつきが大きいのは仕方ないです

お客様のプランでは新規のリムはTNIのAL22Wです。リム幅が広くなり軽量化を図れます。リム剛性も高いリムです。シルバースポークを希望されました。

お預かり時点の前輪  右側スポークはラジアル組ではなくクロス組です
お預かり時点の前輪スポークテンショングラフです  テンションのバラつきが大きいのは仕方ないです
お預かり時点の後輪  反ギア側スポークはヘッドインです。内側からスポークを通しています

ホイールは16:8の2:1組で作られています。前輪はブレーキ側16本3クロス組、反対側は8本1クロス組です。後輪はギア側16本3クロス組、反ギア側はラジアル組ヘッドインで組まれています。ヘッドインで組む理由は左右のスポーク間隔を広く組むことで横剛性を高めています。

2:1組のハブは手に入れるのが難しいです。 良いハブです。このホイールは中古では安価に出ている
前輪ハブ144g 2:1組ハブは手に入れにくいので安価に出ているホイールを見つけるのもいいと思います。

ホイールから取り出したハブを点検しました。とても良く出来ています。なかなか2:1組のハブは手に入りません。中古市場ではこのホイールは比較的安価で出ていますので出物があれば手に入れるのも良いかと思います。いいハブです。

お客様にもお知らせしましたが、カーボンリムでこの2:1組ハブを使う場合、通常の市販リムでは穴の角度が1:1組とは違いますので購入には注意が必要です。今回のアルミリムでは穴位置がオフセットなしであけられていますので普通に使えます。

組み上げましたホイールは前輪スポークには中央部が1.5mmのバテッドスポークを使っています。後輪には中央部が1.8mmのバテッドスポークで剛性を上げています。

もとのホイールでは前輪が左右1.8mmのバテッドスポーク、後輪左に2mm、後輪右に1.8mmのバテッドスポークが使われていましたのでお客様の体重から考えまして前輪スポークを細くしています。

中央部が1.5mmのスポークは軽量化には非常に有効です。最強スポークと言われていますCXRAYは1.5mm径のスポークを扁平にしたスポークですのでいわば兄弟スポークです。丸スポークではねじれを防ぎながらのテンション調整ですので扱いは難しいスポークです。性能差では空力が1Wほど勝るCXRAYですが価格は丸スポークの3倍しますので今回は丸スポークで提案しています。

TNIのAL22W 24H TB2015スポーク使用 1.5mmのスポークは軽量化に使えます
前輪スポークテンショングラフです  左右のテンション差がなく2:1組の理論が生きています
後輪16:8 857g 中央部1.8mmのバテッドスポークを使用  反ギア側はヘッドインにしています
ギア側ハブフランジが70mmと大きいのでスポークが平行に張られています このデザインが素敵です
スポークテンションを均一になるようにしています 左右のテンション差も少ない  いいハブです

出来上がりました。2:1組の特徴がよく出ました。左右のスポークテンション差はほとんどなく出来上がりました。ご感想が楽しみです。

チェコスロバキアのトラックハブでホイール作製

競輪場のスプリント系競技の練習用としてホイール作製のご依頼がありました。

ハブは持ち込みです。

前輪ハブ 195g 24H
後輪ハブ 両切り 227g 24H

たたき台の提案ですがすぐに受け入れていただきました。

リム TNI AL31W 

ハブ RAKETA RAW HUB 前後共に24H

スポーク 前輪 ウィング21 シルバー 

スポーク 後輪 コンペティション シルバー

ニップル SquorxProブラス

前輪はラジアル組、後輪は2クロスのJIS組で作製します。

ピスト愛好の方にはこのRAKETAブランドがよく知られているようです。シマノハブでは24Hは作られていません。36穴か32穴のハブしか選択肢がないのが残念です。RAKETAのRAWハブはハブシェルが太くて剛性が高いと感じます。数値的な比較情報は持ち合わせありませんが見た目からでも丈夫な印象です。

リムはTNIのAL31Wです。剛性が高い優秀リムです。とてもいい選択と思います。

スポークは前輪にピラーのWING21で作ります。丸スポークと翼型のスポークを比較しますと強度は変わりませんが空力では翼型が勝ります。僅かとはいえ競技用なら空力が勝る方を選択されるのは良いと思います。

スポークの張りは100~120kgfです。この値は経験からでた数値でこれでないといけないという訳ではありません。好みの張り具合があるのですが先ずはビルダーからの提案で作らせていただきます。

前輪 848g
後輪912g 
後輪はJIS組みです

出来上がりホイールはシルバーハブ、スポークでなかなかいい感じです。最近のホイールは黒いホイールが多いのでシルバーで仕上げますと新鮮です。お客様のご感想が楽しみです。

BoraOneのハブを使ってG3ホイールの作製

お客様よりご連絡いただきました。

カンパのbora one 35(ディスク)を所有しております。 所有しているboraのリム内幅は17mmですが23mmワイドリムにしてみたく、ハブは現物の物を流用。リム(カーボン製)とスポークは新規で手配して頂き、組む事は可能でしょうか?

前輪45mm高、後輪55mm高でG3用のリムを特注することになりました。リムメーカーにはハブの計測や図面の確認などメーカーとのやりとりを行いました。新規の図面を起こしてもらいG3リムの別注を行いますので通常より時間が掛かります。

BoraOneから取り出した後輪ハブ

届きましたリムは期待通りのリムでした。BoraOneから取り出したハブを使って組み立てます。スポーク長はハブの正確な計測から始まります。ストレイトプルスポークを使うハブではスポークオフセットがあるハブが多いので注意が必要です。

前輪 45mm高 727g 穴なしリム使用
前輪 45mm高 8:16 穴なしリム使用

スポークはギア側にサピムのRace、反ギア側にwing21を使っています。リムは穴ナシリムで注文していますのでリムの穴はバルブ穴だけです。リムテープがいらないリムです。穴がないので通常の穴有リムよりは強度が高いのは間違いありません。

後輪 879g
後輪 55mm高 8:16 穴ナシリム使用

出来上がりましたホイールの費用は高級ホイールの約1/3ですのでお客様には喜んでいただいたようです。BoraOneをもう1セットをお持ちなので追加でご注文いただきました。

46mm高ホイールを使って3位入賞されました

10月4日の記事で「前輪が乗り味に影響する」と書いています。

Hopeハブを使いました46m高のホイールを使われたお客様がレース3位入賞を果たされたことご連絡いただきました。10月19日のレース後、直ぐにお知らせいただきました。

28mm幅46mm高リムブレーキ用 前輪カーボンホイール  Hopeハブ使用18H
HopeハブRS4 18H ウィング21 ラジアル組

先日は46mmホイールの作成ありがとうございます。本日、神奈川県で開催した『川崎マリンエンデューロ』レースにて、年代別(40代)で3位入賞することができました。ありがとうございます。
今回のホイールでのレース参加初回での入賞です。最終周回まで脚を残す事が出来ました。

この結果は日頃のトレーニングの賜物です。お手伝いできましたこと喜んでいます。厚かましくブログ記事に使わせていただきました。おめでとうございます。

BoraOne ホイールの分解

BoraOneのハブを使って特注の幅広リムでホイールを作るご注文をいただきました。リムは特注しますので穴位置の連絡をして特別にオーダーします。リムメーカーは特注リムを受付してくれましたが時間は通常よりも時間が掛かります。

特注リムの受けてくれたことをお客様に連絡しまた。事前にBoraを送ってこられたので今回はこのBora分解の話をしたいと思います。

BoraOne ディスク用 前輪675g
BoraOne ディスク用 後輪803g
お預かり時点の後輪スポークテンショングラフ  少しバラつきがあるのは仕方ないことです

お預かりのBoraはとても良く出来た製品です。さすがに高価なホイールだけあってスポークはよく調整してありました。カンパの製品はいつも感心するのですがすべてオリジナルの部品を使っています。

ホイールはリム、ハブ、スポーク、ニップル、4つの部品を組み合わせて作りますがすべてオリジナル規格の部品です。今更すごいなと感心するのも変ですが真似できないようにしているところがすごいです。

ホイールの構造は16:8の組み方ですので同じ構造のホイールは作ることが出来ます。手組ホイールファンの16:8組ホイールとBoraならどちらがよく走るか?を考えますと一般にはBoraを選ばれます。今回このBoraをばらしてオリジナルのホイールを作ってほしいとご依頼いただきましたことは本当に感謝です。おまけにいろいろ勉強出来るチャンスを与えていただきました。

後輪ハブ 245g 8:16
35mm高 リム 396g
左ニップル DT SquorxProブラス  右ニップル BoraOne用 ねじ部分が長いので緩みにくいと思います

Boraを分解するには普通のレンチでは分解できません。ニップルはカンパのオリジナルニップル(4mm角)です。このためニップルレンチも特別サイズでないと回せません。

幸いにも手組ホイールファンでは自作(特別な道具ではありません)のニップルレンチがありますので通常より時間が掛かりますが分解することが出来ました。

リム、ハブ、スポーク、ニップルすべての部品がオリジナル部品ですので部品交換の必要が生じた場合新しく取り寄せが必要です。代品は使えません。これがいいのか悪いのかを言う資格はありませんが不便なこと、高価であることは確かです。時間もかかるし扱えるショップさんも制限されています。しかしもともと完成度は高いので頻繁に調整が必要なことはないように作られています。スポークのねじ部分を見ても分かります。その分十分な価格になっています。

ハブだけでなくニップルまでオリジナルを作って真似できないようにしているカンパ、一目でカンパを使っていると分かってもらえるデザイン、どれをとっても感心しました。このカンパBoraを分解して新しいホイールを作る注文をいただきましたお客様に感謝しています。