ミニベロ後輪ホイールは難しい

普段通勤にも使っておられるミニベロのホイールを10速で走りたいとのご希望でご連絡いただきました。ミニベロホイール後輪のご注文です。今回は手に入るハブの関係で後輪だけ作りました。

DA16 329g
シマノハブ FHTX500 32H

リムはアレックスリムのDA16、ハブはシマノFHTX500、32穴です。スポークは短いスポークでも手に入りやすい星のスターブライトを使っています。

本来ならバテッドスポークを使いたいところですがなかなかこの短いスポークに対応できるセラーはありません。

各スポークの間隔が狭いのでニップルレンチが使いにくい

このようなミニベロのスポーク間隔は32穴ありますととても幅が狭いです。通常の12㎜のニップルではスポークとスポークの間が狭すぎてニップルレンチを回すのに手間がかかります。ではどうすればいいのか?ということですがニップルは後ろから回せるニップルを使えばうまくできます。

ホイール作りの作業としては全く普通のホイールと同じですが12mmの通常ニップルでは時間が掛かると思います。慣れた人なら出来るのかもしれませんがミニベロは難しいと思います。

理由は次の通りです。

①ニップルが普通のレンチでは回しにくい

②テンションメーターはスポーク長が短いので使いにくい。使えないときもある。

③テンションメーターがない場合は、使えない場合はスポークを弾いて音で聞き分けスポークテンションを揃えます。しかしこれもまた難しいです。音でやる場合キリがないのでなかなか終わりがありません。

今回は右側左側、各16本で8ペアのスポークで組んでいます。幸いにも1ペアの片側にはテンションメーターをあてることが出来ました。2,4,6,8と8本のスポークにはテンションメーターをあてることが出来ていますのでこれで先ず8本のテンションを揃えることにしています。あとはペアの片方スポークを弾いて音で聞き比べて揃えるという方法を取っています。

いつもの大きいホイールならメーターをあてることが出来るのでスポークテンションばらつき度は5%以上にできますが今回はそこまで出来ていないと思います。しかしスポークが短いので振れは出にくいと思います。

19cmほどのスポーク長です 3クロスで組んでいます 綾も取りました

今回のホイールは小さい径ですがスポークはしっかりと綾を取りました。本来は綾まで必要ありませんが見た目重視にしています。

B5のノートを後ろに置きました 大きさがわかります

納品後にご連絡いただきました。10速に出来て喜ばれているようです。ホントに良かったです。

ヨーロッパのセラーからDT製品が買えなくなりました

7月からDTSwissの製品をヨーロッパのセラーから購入できなくなりました。今月のはじめですがDTのスポークを購入しようとヨーロッパのセラーに注文したのですが購入できません。理由を尋ねたところこのような返事がありました。

残念ながらヨーロッパのセラーからは日本に発送出来なくなっています

Unfortunately DT Swiss started a “selective distribution network” the last week, which doesn’t allow European retailers to ship to most countries outside of the EU anymore. There is unfortunately no exception possible. We’re really sorry for that. 

選択的流通ネットワークという方式が始まったようです。理由はよくわかりませんがDTさんが、いいよ、いいよと大人(たいじん)ではいられなくなったような気がします。勿論DTさんは日本の商社さんと契約していますので全く買えないという訳ではありません。残念ながら製品はヨーロッパの価格では購入できなくなりました。日本の商社さんにとっては取り扱いが絞られたのですから喜ばれているかもしれません。DTさんも販売商社を絞ることで扱い高を増やそうと考えているのかもしれません。

この選択的流通ネットワークという方式はヨーロッパのメーカーはよく使います。ブランド戦略がとても成功している筆頭にローレックスや宝飾ブランドなどあります。どのメーカーも生産数量を絞って消費者の持ちたい意欲をあおっています。しかしもともとの製品に魅力があることが一番です。

では何故DTSwissさんは日本の消費者を締めだしたのか?間口をぐっと絞ったのかをこの一週間考えました。DTのハブはスターラチェット方式で爪方式のハブよりも構造的には優れています。ずっとこの優れた方式で優位を保って大いに儲けてきたわけですがハブの特許が切れました。

最近はスターラチェット方式のハブが中国の通販会社で沢山見受けます。まるで雨後の筍のような感じです。性能もしっかりしています。そりゃそうでしょう、DTさんの特許があって販売が出来なかったのが、辛抱していた縛りがなくなったのですから自由に売ることが出来ます。まるでアジアの逆襲のような感じです。

ホイールは購入した時点からメンテが始まります。スポークが折れたら取り換えないといけません。ハブの修理も必要です。勿論日本では販売店で修理はできますが今までのように自由に部品が手に入らないので一般店では扱わなくなるかもしれません。部品を扱える店はとてもメリットがありますが部品入手が面倒な製品は取り扱い店が減ることも予想されます。ヨーロッパに押さえ込まれるのか、アジアが逆襲するのか、さてこれからどうなるのでしょう?

XR31T/RT32hリムでホイール作製

15年と長く乗られたクロスバイクのホイールを交換したいとご連絡いただきました。お客様はこのブログを楽しんでお読みいただいたようです。XR31T/RTのリムを使ったホイールに興味を持っていただきました。今回はシマノハブをお送りいただいてのご注文です。このリムで作るホイール注文が続きます。

ハブは持ち込みです  一緒にホイールを作っていく感覚です

手組ホイールファンではお持ち込みは大歓迎です。ある意味共同作業的な感覚で、ご一緒にホイールを作っていきます。

リムは500g前後です 軽くはありませんが剛性面ではとても優秀です

ホイールの内容は次の通りです。

リム キンリンXR31T/RT 前後共に32H

ハブ 前輪 シマノ HB-RS400 32H

ハブ 後輪 シマノ FH-RS300  32H

スポーク 前輪 TB2015

スポーク 後輪 左TB2015

スポーク 後輪 右TB2018

ニップル ダブルスクエア

後輪ハブは10速ハブです。使えるギア数は1枚少ないハブですがハブのセンターオフセット値は11速ハブよりも小さいので左右のスポークテンション比率はとても良いホイールに仕上がります。8~10枚とスプロケットのギア数は少ないホイールですがスポークのテンション比率でみると効率の良いホイールが出来上がります。おまけにリムの穴位置が3mm寄っているリムを使いますのでリムでテンション比率は約10%改善できます。スポークのテンション比率を計算上では約70:100の比率に仕上げることが出来ます。

スポーク長計算ソフトでスポークテンション比率がわかります

リムの重量は約500g、ハブの重量は前後で約510gと重いホイールですが駆動比率でホイールの性能を見ますととても優秀なホイールに仕上がります。

一般には軽いホイールを求める人が多いです。しかし力のあるライダーさんは剛性を求めます。軽くて剛性があるのがなお良いと考えますが価格面で難しいと思います。

前輪867g
後輪1102g

コスパを考えますと今回のシマノハブとXR31T/RTリムで作られた多スポークホイールはとても良い組み合わせです。性能と価格を組み合わせた評価では最高の得点を取るホイールではないかと考えています。

出来上がりのホイールは前後で1969gといわゆる文鎮ホイールですが走りの良さは驚かれると思います。ホイールの走りは重量だけで決まるものではありません。

今回のホイールをお勧めする理由はリムの剛性です。ホイールの良さは7割がリムで決まると考えています。当ホイールのリムは31mm高ありますが重量は約500gです。リム高があるので空力の援護を得ることが出来ます。軽くて剛性のあるカーボンリムには及びませんがリム価格は1/4です。コスパよくライドを楽しむにはうってつけのリムと思います。おススメします。