カーボンホイールのアルミニップルをブラスに交換

中華カーボンホイールの中では名前の通ったホイールのアルミニップルを交換してほしいとご連絡いただきました。

ご自分でもホイールのテンション調整ができるベテランライダーさんですがテンションメーターの校正が出来てなく少し不安があるそうです。やはりカーボンホイールのテンション調整はシビアにしたいとご希望です。

お預かり時の前輪スポークテンション  バラつき度が高い

このメーカーのリムは購入したことがあります。いいリムで長く使っています。ただ今回知ったのですが、残念ながらこのメーカーが販売する既成ホイールに関してはスポークテンションのバラつき度が大きく本来の力が発揮できないホイールと思いました。メーカーのビルダーさんに当たり外れがあるのかもしれません。

前輪603g
後輪734g
ダブルスクエアニップル

ニップルはダブルスクエアのブラスニップルに交換しました。このニップルなら前からでも後ろからでも回すことが出来ます。テンション調整で締め増しするには後ろから調整したほうがしやすいと思います。ダブルスクエアはとても使いやすいお勧めのニップルです。

スポークテンションは出来るだけ均等になるように調整します
スポークテンションのバラつきを少なくします

ニップル交換が終わりスポークテンションのバラつき度を5%以下にするように(数値が少ないほうがいい)しています。今まで何度かDuraホイールを調べたことがあり、バラつき度が5%前後でしたので手組ホイールファンでは5%よりよくなるように調整しています。Dura以上を目標としています。

スポークテンションは125~130kgfで均一になるようにしています。タイヤをはめると10~15%テンションダウンしますのでそれも計算に入れて調整しています。

最近のアルミニップルは強化アルミを使われていますので強度面では心配することは無用といわれています。しかしダート環境でのレースに出られることが多いのであれば腐食のことを考えた方が良いかと思います。アルミニップルも弱点はあります。レースで泥だらけになることが多いのであるなら、レース後洗っていても腐食は知らない間に進むものです。見た目はきれいでもスポンとスポークが抜けることがあります。その点ではブラスニップルは重くなりますが安心度は高いです。

再生バルブを使ってみると合格でした

使用済みのチューブから取り出したバルブを使ってチューブレスタイヤをインストールしてみました。

再利用のバルブは使えるか?試してみました
ゴムワッシャーを一枚入れました

空気をコンプレッサーで入れてみますと一気にビードが上がり、これは使えると思いました。

では空気漏れはどんなものかと調べてみますと大丈夫でした。丸一日置きまして再度測ってみると良い結果が出ています。

空気を入れて測ると6.12気圧です  一日後にもう一度測ります
一日経って5.72気圧を表示

6.12気圧を入れて一日経って測ってみますと5.72気圧でした。

一日経ってこの減りでしたら合格です。

再生バルブは使えます。ホームセンターで買ったゴムワッシャーで空気を止めれば古いバルブでチューブレス運用はできます。但しシーラントは入れています。

キャノンデールhollowgram 35ホイールを調整

シクロ選手のお客様よりご連絡いただきました。今まで何度もレース用のホイールを作らせていただきましたリピートオーダーのお客様で、今回はキャノンデールhollowgram 35カーボンホイールの再調整依頼です。

前輪721g ブレーキ側16本 右非ブレーキ側8本
前輪 左クロス組右ラジアル組
後輪861g 左14本右14本 1:1組
左右クロス組

お預かりしましたホイールは前輪24H後輪28Hの組み合わせで前輪は2:1組、後輪は1:1の組み方で作られています。

ホイールはいつものようにスポークテンションを調べてからどうするかを決めていきます。

前輪、後輪は次のような状態でした。グラフにしますとよくわかります。

前輪のグラフ  左ブレーキ側約120kgf右約158kgfと右が高過ぎる
後輪グラフ テンションは均一ですがもっと揃えることが出来ます

前輪は2:1組で左ブレーキ側と右非ブレーキ側とのテンションを見ますと右側が少し高すぎるように見えました。少しテンションを下げることをお勧めしました。

調整後の前輪  全体として少しテンションを下げました

低すぎるのも問題ですが高過ぎるのも注意が必要です。少しだけテンションを下げて調整しています。

調整後の後輪  左右のスポークテンションは出来るだけ均等になるように調整しています

後輪はテンションをあげて、均一化に注意をはかり調整を行いました。

前後共にスポークは出来るだけ揃えることです。振れ取りかテンションかとなりますとテンションが優先です。

もともとよくできたホイールでした。しかし使われる前に状態を知っておかれたので安心されたと思います。今シーズンはこのホイールで大会に出られるようです。お手伝いできてありがたいと思っています。

使用済みチューブのバルブを使う

ずっと使用済みのチューブを何かに利用できないかと思っていました。

パッチを当ててチューブを再利用するのもいいのですがなんとなくチューブが固くなるのと継ぎはぎから空気が漏れるのではと気になってやっていません。結局は捨てていました。バルブが残るのでこのバルブを取り出してチューブレスタイヤ用のバルブにできるのではないかとふと思いつきやってみました。

最初はバルブ周りのゴムを切り取ってやってみたのですが全くうまくいきません。あきらめて捨てようと思ったのですがホームセンターのネジコーナーでゴムワッシャーが売られているのを見つけました。M5x12x1.5というゴムワッシャーです。一袋140円でした。このゴムワッシャーを使ってもう一度タイヤインストールに挑戦しました。

ホームセンターで買ったゴムワッシャー
チューブから取り出したバルブ  余分なゴムをきれいに切り取りました ゴムワッシャーを使っています
パキパキとビードは一瞬で上がりました

バルブを取り付けてねじは手まわしでOKです。とりあえず石ケン水をタイヤ周り吹きかけてコンプレッサーで一気の空気を入れてみました。果たしてうまくビードはパキパキ音を立てて上がります。うまくいったようです。

予備のバルブはありますが捨てるチューブの再利用は話が違います

バルブは沢山予備を持っています。使用済みのタイヤからバルブだけ取り出すのはけち臭いといえばそのとおりですが、やはりもったいないです。ゴムワッシャーと一緒に使えば再利用できます。但しチューブレスタイヤの運用ではコンプレッサーはあった方がストレスなく進みます。うまくいって良かったです。骨までしゃぶっています。

ヨンロク組をどう思いますかと質問いただきました

だいぶん前にブログ記事にしていますが表題の件で何度か問い合わせがありました。

最近も問い合わせいただきました。どう思いますか?とご質問なのでざっと考えていることお返事しました。

10年以上前のことですがこの組み方を知りました。へー、こんな組み方があるんやと驚きました。いろんな方がブログ発信されて大きな風が起こったことを覚えています。

しかし日本ではこんなにヨンロク旋風が巻き起こっているのに海外では全く話題にもなっていなかったことも印象に残っています。

スポークテンション比率は計算できます。比率は左右のスポークの長さで決まるのですが今はスポーク長の計算ソフトにテンション比率も出るようになっていますので容易にわかります。

Wheelproのソフトで理解できますので見ていきたいと思います。勿論Spocalcでもテンション比率が簡単にわかります。

シマノのティアグラハブとキンリンのXR31T/RT 28穴リムを使ったホイールを計算してみましたので理解しやすいです。

Crossの入力部分に入力しました。左非ドライブ側3クロス右ドライブ側3クロスでは次の数値となります。

左右のスポークテンション比率は44*100 左が低いことが分かります。

左非ドライブ側3クロス右ドライブ側2クロス(いわゆるヨンロク組)では次のようになります。

Crossと書いてあるところに左は3右は2の数字を入力しています。結果は45%:100%の数値が出ます。1%左スポークテンションが上がりました。

ヨンロク組では左右のスポークテンション比率が45:100となり1%改善されます。

次に穴位置が3mmオフセットしたリムを使いますとこのようになります。

リムセンターが3mmずれたオフセットリムを使いますと左右のテンション比率が58:100です

こうして見ますと3mmオフセットリムを使うとテンション比率が58:100と劇的に改善できます。ヨンロクでは1%改善できるのでこれを大きな数字ととらえるか、なに?それだけ?と捉えるかです。

私もヨンロク組を使ってホイール組をいたします。マージナルゲインを追求する上でも良い方法だと思います。チェーンを洗う、ハンドルバーを替える、ヘルメットは空力のよいヘルメットを使うというような細かいことの積み重ねを大切にするという考えの一環です。しかしオフセットリムを使えば大きくテンションの改善が出来るのでこの場合はほとんどヨンロクでは組みません。お客様からのご指定の場合は別ですが...

左側のテンションを上げるには右側を135kgfくらいに上げて相対的に左を上げるという方法が一般的です。ヨンロク組で組み方を工夫してテンションをあげるという方法はホイールメーカーでは取り入れられません。手間がかかるし、効果としましてはわずかな数値からだと想像します。イソパルスで組んでも2%の効率アップです。このため組み方として一番効率が良くなるのは2:1組です。この組み方はいろんなホイールメーカーが取り入れています。世界的といっても良いくらい広まっているのが2:1組です。

このようなことを書きましてお返事いたしました。ヨンロク組は1%のアップですが意外と手間がかかります。ハブを再利用する場合はヨンロク組でしか使えません。穴位置に跡が出来ていますので他の組み方ではハブが割れる原因となりますので注意が必要です。

以上のことから

①オフセットリムを使う

②右ドライブ側のテンションを出来るだけ上げて相対的に左も上げる

この2つの方法が一般的だと思っています。

手組ホイールとゾンダの試乗比較です

カーボンホイールをご注文いただきましたお客様からの紹介でご縁が広がりました。

石垣島で自転車の乗り方を指導されているフランキー・たけさんから手組ホイールファンのホイールに乗ってみたいということでご連絡いただきました。いままで存じ上げなかったのですが長年のプロとしての経験から効率よい自転車の乗り方を教えておられます。

今回はご自身のゾンダと手組ホイールを比較するという企画です。最初はどんな乗り味なのか心配されていたと思います。

このブログ自体がある意味広告となっていますのでなかなか言い辛いことですが、結論から言いますと丁寧につくられた手組ホイールはブティックブランドの完組ホイールと十分勝負が出来ています。価格面でははるかに安価ですが走りの性能では負けていません。

ホイールの造り手があれこれ言うのもどうかと思いますのでYouTubeをご覧になってください。https://youtu.be/bA-pIhZI6rg

感覚の鋭い人はサドルを1mmずらしても変化を感じ取れるといわれていますが元競輪選手のたけさんもその感覚を持っておられるようです。勿論計測には機械を使っておられますが走りでの感覚はご自分の五感を大いに働かせておられます。バイクを走らせるときに感じる感覚を言葉にされるのですがとても興味深いものです。

キンリンホイールは次の通りです。

前輪679g
後輪911g
後輪 2:1組 16:8ハイテックスハブ使用

ゾンダとほぼ同じくらいの重量です。リム高31mm24mm幅のアルミリムでリム重量は約500gです。決して軽くはありませんがリムの高さから考えますと軽いリムです。ハブは台湾のバイテックス製でストレートプルスポークを使用しています。

このホイールは2:1で組んでいますが通常の1:1組も優秀なホイールが出来上がります。ブランドホイールに乗っておられる方に是非知っていただきたいと思っています。

キャノンデールAIフレーム用のホイールに作り直す

キャノンデールにはシートステーの位置を6mmずらしたAIフレームが販売されていました。今はディスコンになっているようです。このAIフレームに使えるようにホイールの調整依頼です。

キャノンデールのホームページより

ギアが増えることによるホイールのスポークテンション差を是正する方法としてうまく考えたものだと思います。リムに穴位置をずらしたリムがありますがこのセンター位置をずらすアイデアをフレーム側に応用しています。

シートステーをずらすことでホイールセンターの位置が変わりこのずらしでホイールの左右テンション差をなくすという方法です。画期的ですがコストもかかるのでしょう。今は販売されていません。

このフレームに合うように通常のホイールを調整して作りなおします。

後輪794g 通常の組み方です

ホイールはマビックのクロスマックス・カーボンホイールでノーマル仕様の650cホイールです。センターは通常の位置にあります。6mm左によってはいません。

ホイールのフレはほとんどありません  スポークテンションは全く揃っていません 残念です

いつものようにスポークテンションを測ってみまして調整を行うことにします。グラフにしますと状態がよくわかります。このグラフが現状です。

とてもスポークのバラつきが大きく、このホイールはプロが作ったホイールなのか疑いました。これではホイールの健康状態はよくないです。力を引き出すことはできません。

調整後のグラフです。

センターを左に6mm寄せたので左右がほぼ同じテンションになりました

一般にカーボンリムに於いてスポークテンションは120~130kgfが推奨されていますのでこれに従っています。リムセンターを左に6mm寄せたグラフです。左右のスポークがほぼ同じテンションで張ることが出来ています。おまけに揃っていますので駆動効率は上がります。

あまり一般的ではないフレームにあわせるホイールなので知っておられる方も少ないと思います。しかしアイデアとしてはとても面白いホイールなので結果が楽しみです。

シマノWH6800アルテグラホイールの再調整

ホイールの調整依頼が続いています。

後輪975g  この重量はハブが重いのが原因です

シマノのアルテグラクラスWH6800チューブレスホイールを調整する機会を得ました。

ホイールは結構使い込んでおられ黒いスポークですが黒が剥げてシルバー色が出てきています。オーナーさんはパンクすればチューブを使って帰るという方法を取られていますのでリム内部はとてもきれいなホイールです。

ご自分で調整されたのかもわかりませんがとても振れが大きいホイールです

いつものように現状を把握します。各スポークテンションを測りグラフにするとわかりやすいです。グラフで確認するとどの部分を修正すればよいか一目瞭然です。

シマノホイールはホームページから製品の構造図を容易得ることが出来ます。このホイールは特殊なニップルを使っています。一般に販売されているニップルレンチは使えません。サイズが合わないです。シマノより販売されているレンチを使うしかないようです。残念ながらパークツールではこのホイールに使えるニップルレンチは販売されていません。

シマノの純正ニップルレンチ 残念ながらとても使いにくい

この専用レンチはとても使いにくいレンチです。しっかりと固められたニップルをこのレンチで回すのはなかなか難しく力が必要です。あまりに硬いのでこれで回すのを諦めました。自作のニップルレンチで回すことにしています。

ニップルに合うように削って手作りしました

WH7850、WH6800と一昔前のホイールは中古でよく販売されていますがこのホイールはばらして再利用はなかなかできないホイールです。通常はハブ側にスポークを通してリムにニップルをねじ込むという構造ですがこれらのホイールはハブ側にスポークのねじ部分がとおり、リム側には特殊なニップルを使ってテンションを上げていくという構造です。専用のニップルが使われていましてとても取り扱いが難しいです。

おまけにもう一つ頭を切り替えなければなりません。このホイールではニップルレンチを時計周りに回しますとスポークは緩みます。反時計回りでスポークは締まります。これはリム側に特殊なニップルが使われているからですが通常のニップルと思って回しますと考えていることの反対になりますのでホイールはぐちゃぐちゃになってしまいます。

以前DURAホイールを持ち込まれた方がおられますがこの方もニップルの回転を間違われました。リムセンターが大きくずれてしまってどうにも出来なくなりました。通常のニップルと勘違いされたのが理由ですがこれに気付く人はなかなかおられないと思います。

とても調整が難しいホイールでした 

再調整ができました。このホイール調整の勘所はニップルレンチにあります。皆さんそれぞれやり方がありますので一概には言えませんが回しやすいニップルレンチを用意すること、回転は通常ニップルの逆ということが一番のポイントと思います。

分解して再利用ができないようにしていると疑ってしまう難しいホイールでした。しかしホイール、ハブを分解できないことはありませんのでこのハブを利用することはできます。このハブを使ってほしいと自転車さんに依頼するとびっくりする工賃を請求されるのは間違いありません。玉あたりなどの調整はとても簡単で使い良いハブですがスポーク交換が難しいハブです。結論として、このホイールはややこしいです。

誰でも再利用できるホイールならいいのですがリユースできない製品は残念なことです。このハブを使って新しいホイールを作るのは誰でも出来ることではありません。しかしこのホイールは中古は沢山出回っています。スポークの両側をねじ切りしたスポークを用意して魔改造ホイールとして楽しめそうです。挑戦してみたいホイールです。ジャンクのホイールを見つけようと思っています。