お客様よりご連絡がありホイールの組み換えのご注文をいただきました。これで4セット目になります。
お預かりホイールは46mm高のカーボンホイールです。組み替えに使うハブも同梱いただきました。
ホイールを分解して新しいトラック用のDTハブを使って組み替えます。
組み方もご指定されています。
仕様は次の通りです。
リム 46mm高カーボンリム 前輪20H後輪24H
ハブ DT 370track 20・24H
スポーク ピラーwing21 シルバー
ニップル DT SquorxPro ブラス シルバー
前輪は2クロスでイタリアン、後輪も2クロスでJIS組みです。
ホイールをばらして再度組み立てる作業を行います。
ハブを取り出すとニップルはリムの中に残っています。穴なしリムの為バルブ穴が1個あるだけなのでひたすら振り続けてニップルを取り出します。沢山ニップルがあると意外と楽に出てくるのですが個数が少なくなると時間が掛かります。ガラガラと振り続けてすべて出し切るまで耐えるだけです。運が良ければ数分で終わりますが出てこないときは5分くらい振り続けても出ないときがあります。気分転換でコーヒータイムにして休憩するとポロっと出てくることが間々あります。面白いものです。
ニップルすべて取り出したリムを使って新しく組み立てします。
ハブはDTの370トラック用のハブで作ります。DTのハブには前輪用に20Hハブがあります。トラック用で20Hがあるのは知りませんでした。通常の20/24Hホイールリムが使えるのが今回のポイントになります。お客様の情報力に感心しています。
後輪ハブは両切りの通常のハブです。JIS組みで組み上げます。
スポークではwing21、CX-RAYのどちらかと迷われました。前輪の総グラム数ではスポーク1本分の違いです。ほんの少しですがwing21のほうが重いのでわずかに剛性も上がります。この差がお好みの乗り味にどう影響するかも今回のスポーク選択の結果に興味あります。
私は鈍感なので分からない分野ですが分かる人はわかるのでスポーク選択は非常に奥が深いです。
今回組み上げの段階で一つ不思議なことが起こりました。
前輪ですが左右のテンション差はスポーク長が同じなので通常に組み上げますとスポークテンションが左右ほぼ揃ったら理論上センターはしっかり出ます。
組み上げて馴染みだしも終わって左右のテンション差も同じに仕上げたのでセンターが出ているか調べました。すると約0.5mmもずれているのです。理由が分からないのでしばらく戸惑いました。
落ち着いて考えてみますとわかりました。ストレスリリーブ(なじみだし)が足りなかったのです。もう一度しっかりと馴染みだしを行いました。
テンションを測りますと左右テンション差が出ていました。もう一度スポークテンションを揃えます。果たしてテンションを測りなおしますと左右一致しています。
ストレスリリーブが足りないとセンターは出ないということがよくわかります。一つ賢くなりました。細かいことですがホイール作りはこのような積み重ねだと思います。
ホイールは完成しました。左右のスポーク長が同じなので100~110kgfで仕上げています。
通常のギアが沢山ある後輪なら左右のテンション差が大きいので緩いほうの左スポークテンションを高めるために右スポークテンションを130kgf前後の高い数値で仕上げます。今回のホイールでは左右が同じなので100~110kgfで十分です。カーボンリムの為、剛性が高く歪は少ないので130kgfまで上げる必要はありません。
テンション値が低過ぎる場合リムが体重で歪み駆動ロスが発生します。しかし高過ぎるとリムを傷めるもとになります。スポークテンション値を決めるのも意外と難しいものです。私の場合リムメーカーの指定値範囲で仕上げるようにしています。直感的な勘でのホイール作りは難しいということでお勧めしません。
カーボンリムの場合150kgfと高い数値で仕上げても耐えるだけのリム強度はありますが割れやすいという欠点もありますので注意が必要です。高過ぎず緩すぎずの頃合いで仕上げることがポイントのようです。
出来上がりましたホイールは手組感ある美しいホイールです。