グラベルロード用のディスクホイールの組み換え

ホイール組み換えをご依頼頂きました。

DT RR421 disc rim使用

ホイールはお近くの自転車屋さんで組んでもらったグラベルロード用のディスクホイールでした。組んでもらって1年もたっていないとのことです。組み直しの理由は1本ゆるゆるのスポークがあり、どうしても直らないので組み直しを考えられたようです。

 

自転車屋さんには何度も持っていかれたのですがもうこれ以上は無理ですといわれたようです。

スポークが緩すぎてテンションメーターが使えない

お預かりホイールのスポークテンションを調べました。これで大体の様子がわかります。

グラフを見ていただくとわかりやすです。

 

よそ様が作られたホイールにどうのこうのいうのは失礼かもしれませんがちょっとひどい組み方です。見た目はとても恰好良いホイールです。このホイールはもともとがリムが歪んでいますので自転車屋さんも困ったのでしょう。

最大限に直してこのスポークテンションでした

ニップルを一度緩めて組み直しましたがうまくいきません。どうしても一ヶ所緩いところが出てしまいます。自転車屋さんが言われるようにリムのひずみが影響していると思います。お預かりしたときに緩いスポークがありましたがその位置です。通常これだけ歪のあるリムは使わないで新しいリムを用意するのが自転車屋さんのプライドだと思いますが少し残念なことです。

 

このホイールを作られた時テンションが異常に偏っています。どうしてもうまく作れないリムは確かにあります。お客様とお店とはいろんなやり取りがあったと思いますが詳しくはわかりません。

新しいリムで作り直します。RR421は軽量です。

さて、新しいリムが届き組み直しました。ニップルは当初はアルミでした。重くなりますが丈夫さのほうで勝っているブラスに替えていただきました。

お預かりのホイールではスポークがニップルを突き抜けて作られていればそのままアルミでもよかったかもしれませんがやはり丈夫さではブラスですのでブラスニップルをお勧めいたしました。

スポークの頭だ見えません アルミニップルでこの状態は危険です
取り換えたニップルの頭部ねじ山はきれいな状態でスポークがつきぬけていなかったことがよくわかる

今までに数百本とホイールを組んできていますがアルミニップルの頭が飛んだとご連絡いただいたことは4回あります。率にすれば本当に少ないのですがやはり頭が飛んだことには多い少ないはありません。

十分注意してアルミの弱点を知っているつもりでも頭が飛ぶときはあります。原因はほんの少しですがスポークが短かったことです。ニップルのすり割りのところまでスポークが来ていても経年変化で弱点が出たのだと思います。すっかりと突き抜けていれば頭は飛ばなかったと思います。

こんな経験もありますので安全性を考えますとブラスです。ホイールメーカーがブラスニップルを使うのはこんな理由からだと思います。

ニップルをすべて取り換えて完成しました
前輪スポークテンショングラフ
後輪スポークテンショングラフ

今回のホイールでいろいろ勉強させて頂きました。

●どうしても歪のひどいリムはあります。ひどいリムでは無理して組まずに新しいリムで組んだほうが安全です。

●振れが少ないホイールだけでは良いホイールとは言えないことです。オーダーされたホイールのスポークが適正に張られているかどうかを調べることが肝要です。スポークをたたけばよくわかります。音がバラバラでは揃っていません。いいホイールはスポークを叩けば、弾けば同じ音がします。

●アルミニップルは軽くてホイールの軽量化に貢献します。しかし扱いが難しいのでブラスを選択されたほうが楽に組めると思います。

銀輪ホイールの作製

以前ホイールをお納めした方のご友人からご注文いただきました。

前輪28h
前輪スポークテンショングラフ
後輪 28h
後輪スポークテンショングラフ

 

今回は銀色のヴェロシティA23アルミリムと銀色のハブを使います。この部品を使ってのご依頼です。クロモリ自転車にはぴったりの組み合わせです。見た目はクラシックでありながら中身は新しい高性能の部材を使っています。

ヴェロシティ A23
ヴェロシティ ハブ 28h
TRADIZIONE クラシックハブ28h

ロングライドでは地面からの振動で疲れるので振動を吸収してくれるホイールがいいというご希望です。

ホイールはリムとスポークの選択で乗り味が大きく変わりますのでスポークは私のほうで提案いたしました。

 

前輪はピラーのTB2015 2.2/1.5/2.0mmのトリプルバテッドスポークを使います。中央部が1.5mmの細いスポークはショックアブソーバーの働きをします。振動を吸収してくれますので乗り味の柔らかいホイールに仕上がります。

 

後輪は右ドライブ側にDTコンペティション 2.0/1.8/2.0mmと太くして左側にはサピムD-light 2.0/1.65/2.0mmを使っています。剛性を高める意味もあって太くしています。後輪の左右の違いは軽量化と左右スポークの応力の違いを利用して左スポークテンションを高めています。もちろん後輪リムはオフセットリムなので左テンションは通常リムよりも10%ほど高くでき力の伝達ロスを防いでいます。

ハブは計測してスポーク長を計算します

A23リムは精度が高くとても組みやすいリムでした。銀輪リムはなかなか手に入らないのでよい選択をされたと思います。銀輪ホイールは完組ではあまり販売されていません。結果的には手組ホイールになります。

 

フレームとのバランス、走りの具合など聞かせていただけるのが楽しみです。

キンリンXR31T/RTホイールのインプレをいただきました

昨年10月にお納めしましたホイールのインプレをいただきました。記事にさせていただくことにご了解を得ました。これからのホイール作り、購入の参考にしてください。

前輪

リム  キンリンXR31T 18h

ハブ  シマノ アルテグラHB-6700 18h

スポーク サピムCX-RAY 黒  ラジアル組

ニップル  ブラス

重量  757g

 

後輪

リム  キンリンXR31RT オフセットリム 24h

ハブ  シマノ アルテグラFH-6700 24h 10速用

スポーク  コンペティション2.0/1.8/2.0mm 黒 2クロス組

ニップル  ブラス

重量   1013g

前後1770g

以下ご感想いただきましたメールです。

 

ずいぶんと遅くなりましたが、平坦も登りも走れたので感想をお伝えさせて頂きます。

正直エアロ効果をあまり期待はしてなかったですが、その違いにとても驚きました、私はリムAL22WにRS400ハブの手組も所有していますがそれよりは明らかに時速30キロ保持の巡行が楽です、リムハイトが高い分、重量は重たくなったとしても今回作成していただいたホイールのほうが明らかに楽に走れます。ハブの回転もとても滑らかで良く回りますね、足を止めていた時にスルスルと転がっていく感覚はとても気持ちいいものです。あと、フリーの音が静かなのが私は好きなので今回のハブ選択は私にはベストです。

登りもリムの剛性が高いからでしょうか、ダンシングしたときに力が逃げずにちゃんと前に転がっていきます、横にたわまないという言い方だとわかりやすいでしょうか。登りでも向かい風は普通にあるわけですから軽さも大事でしょうが空力も大事なのがよくわかりました。今回作って頂いたホイールは万能に使えますが、ロングライドに使うのに適したホイールと思いました、楽に長い距離を走るのに適していると思いす。見た目も悪くないです。私の自転車には最高にマッチしていると思います。

それと、私が何より気に入ったのが製作者の高い技術力と、ホイール作成に真面目に取り組んでいただいたことがハッキリとわかる品物だったということです。リムとハブの選択や完璧と呼ぶにふさわしい調整は私の所有欲を満たすには十分すぎるものです、また機会があればよろしくお願いします。ありがとうございました。

 

こんなにほめていただきまして恐縮いたしますがXR31T/RTリムがいいことには間違いありません。

 

1本500gほどのリム、ハブも前後で約500gありますのでビギナーの方は少し重いホイールと敬遠されますが剛性がありますのでご心配は取り越し苦労に終わります。

踏んだ力が逃げなく適度の空力も得られます。ゾンダ、レー3何するものぞ!と思っています。

ブランドのあるなしに関わらず剛性の高いリムを使いスポークが適正に調整できているホイールはよく走ります。

DTSquorxニップル用の電動ビット

DTのニップルの中でもSquorxニップルをよく使っています。このニップルは長さ15mmでねじ部分が長く、頭部分が強化されています。ニップルの頭が飛びやすいアルミニップルの弱点を補っています。最近はブラスばかり使っていますがこのニップルならアルミもいいかなと思います。

DT Swiss pro lock SQUORX nipple

RR411などのDTアルミリムには一緒についています。リムとニップルのセット販売です。単品で購入しますと1個80円ほどの高価なニップルですがリムと一緒に販売されています。リムが安いのか高いのかわかりにくいのですがこのリムはお買い得かな?と思っています。

 

このニップルは専用のニップル回しが用意されています。手回しではとても時間が掛かります。よく使うので電動用のビットが欲しかったのですがいろいろ探しても販売されていません。売ってないのでニップル回しを一つ潰して電動ビットを作りました。

上が手回し部分を取り除いたニップル回し

中がどのようになっているのかわからなかったので金鋸で少しずつ握りの部分を切り取りました。バイスに挟んでのこぎりで刻んでいけば簡単に取り外しができました。あとは適当な長さに切っています。

しかしこの方法は回り道でした。取り出した金具部分は上写真ようになっていますのであっさり根元を金鋸でカットしてしまう方法が一番良いと思います。

これを使って最後までホイールを仕上げることはできませんが仮組まではこのビットが活躍します。手回し用と電動用と2つ使って時間短縮しています。